「自動人形量産計画の大幅コストダウンに成功したよっ!」
「・・・こんな短期間でよくもまあ簡単に出来ますね」
面倒な学校から下校し、のんびりワイドショーを見ているといつも通りアリシアちゃんが居間に叫びながら飛び込んできました。
というかなぜ何かある度に叫びながらここへやってくるんでしょうか。まあ歳相応?に子供らしい行動と考えれば微笑ましくも思いますが。
・・・あ、アナウンサーが今噛みました。
しかし、僅か一ヶ月程度で大幅なコストダウンに成功してしまいましたか。こんな簡単にコストダウン出来る自動人形は本当に安全なのか疑問ですが、どうなんでしょう?
いきなり間接が粉砕してバラバラ死体になったりしたら物凄い騒ぎになりますよ?間違いなくリコールの嵐です。
「安全性は大丈夫!むしろ今までは頑丈に作り過ぎてたから、ちょっと簡単にしただけなんだよね」
「それだけで大幅コストダウンに成功するんですか?いったい最初はどんなものだったんです?」
「魔力衝撃・物理衝撃は勿論、次元震にもある程度耐えられる設計だよ。具体例を出すとしたら・・・なのはちゃんの全力全開の収束砲でも壊れないくらい?」
「街中でぶつかった衝撃だけで骨が折られそうな程頑丈そうですね」
いったいどんな環境を想定してそんなとんでもない自動人形を作ろうとしていたのか疑問です。まさか管理局に売るつもりですか?それくらいしか使い道が無さそうな丈夫さなんですが。
というか、そんなありえない位に頑丈な自動人形を作れる素材があった事に何より驚きですよ。そんな素材があるならそれでデバイス作れば壊れないんじゃないですか?
いや、それ以前に加工出来るんでしょうか?
「でね、結局ここまで頑丈にしなくても良いって事になったからそれなりの状況に耐えられる程度にしたんだよね」
「それなりの状況がどれ程の状況かは気になりますが、まあ問題は無いんでしょう。で、値段にしてどれくらいで作れるんですか?」
「高級車よりちょっと高いくらいだと思う」
安いのか高いのか・・・いえ、物凄い技術である事には変わりありませんし、きっと安いんでしょうね。それに作る価格ですし、実際に販売する事になったら利益を考えてもう少し高くなるんでしょう。
でもそれくらいなら買いそうな人は多そうですよね。多分従順な美人さんのメイドさんをお金で買えるんですし。富豪さんとかに売れそうです。
・・・割と本気で事業にしても何とかなるんじゃないでしょうか。このままだと本気でバニングス家への交渉に発展しかねませんね。製造資金自体はこちらで何とか出来るでしょうし。
「問題は魔法を使って作らないと私達でも一年に一台くらいしか作れなさそうな程大変なんだよね・・・」
「成程、未だ量産計画の発動は不可能な訳ですね。ちなみに魔法アリなら三人でどれくらいで作れますか?」
「余計な機能を追加しなくていいなら一ヶ月くらいかな?リニスもだけど、何よりおかーさんの魔法がまさしく大魔導師の名に恥じない超レベルだから」
プレシアさんってそんなに凄かったんですか・・・出会った当初の魔女っぽい時から何度か魔法を見てますけど、あんまり凄いイメージは無かったんですよね。
何せ研究が絡まなければ普通の優しいお母さんですし、しっかりしている様で時々変にボケた発言をしますし。
「何とか魔法無しで作れないかなぁって思ってるんだけど・・・ミッドならともかく地球じゃあ問題だし」
「ふむ、ならミッドの会社とかに協力要請して地球とミッドの両方で販売しては?」
「さっき提案したけど、おかーさんもリニスもミッドの会社にはツテも何も無いって」
暗礁に乗り上げた訳ですね。今までが順調すぎたからむしろ丁度良い様にも感じます。
「ところでプレシアさん達はまだ向こうに居るんですか?」
「あ、忘れてた。今休憩中でついでに飲み物持ってく所だったんだ」
「とうとうテスタロッサ家には飲み物すら置かなくなりましたか・・・」
今更言う事ではありませんが、もう私の家に住んでいるも同然ですよね。
まあ私の親公認なので別に問題は無いんですけどね。私としてもまあ、最近は多少騒がしくても嫌ではありませんし。慣れたともいいますが。
飲み物を持っていったアリシアちゃんを見送り再びテレビを見ていると、なのはさんの家に遊びに行っていたフェイトさんが帰宅しました。
「お土産にケーキがあるけど、食べる?」
「食べます」
「ちょっと待っててね」
翠屋のケーキは大好物です。今回フェイトさんが持ってきたのはオーソドックスなショートケーキですね。
さて、何やらやけにこちらを見てくるフェイトさんが気になりますがいただきましょう。
まずは一口・・・ん?
「美味しいですが、いつもと微妙に味が違いますね」
「やっぱりわかっちゃうんだ・・・桃子さんに教えてもらいながら作ってみたんだけど、やっぱり難しいな」
「え、これフェイトさんが作ったんですか!?」
「うん。桃子さんにも手伝って貰ったけどね」
いや、確かに桃子さんが作るケーキよりは舌触りや風味が違いますけど、これでも十分美味しいですよ!
独自の作り方とかもあるんでしょうけど、まさかフェイトさんがここまで美味しいケーキを作るとは・・・今まで作っていた物とは比べ物になりませんよコレ。
「・・・うん。決めた。中学に入ったら翠屋でアルバイトする」
「えっ?まさか桃子さんに弟子入りでもするんですか?」
「弟子入りするかどうかは判らないけど、もっと近くで色々見て勉強したいんだ」
おぉう、久しぶりにフェイトさんの目に強い思いが見えます。どうやらスイーツ作り目覚めてしまった様で・・・もしかして以前話していた通りにこのまま翠屋二号店の店長になったりするんでしょうか?
実際、翠屋二号店とまではいかずとも、パティシエにはなりそうな勢いです。結構本気みたいですね・・・
フェイトさんがパティシエになったら美味しいスイーツを安く食べさせてもらえそうですし、応援しましょう。頑張ってくださいフェイトさん!
その後、フェイトさんのケーキを食べた残りの皆さんも驚いていました。そして皆でべた褒めしたためフェイトさんは流石に照れてしまったらしく、暫く顔を赤くしたままになってしまいました。
・・・店を開いたら男性客が多くなりそうですね。