小学五年生になりました。身長が伸びる気配がまるでありません。他のクラスメイト達は成長著しいというのにこの差はなんでしょうか・・・とうとうクラスどころか学年最低身長になってしまいましたよ。
生粋の日本人であるなのはさんとはやてさん、希さんは常識の範囲内の成長なのですが、海外と異世界の血を引いているアリサさんとフェイトさんは凄いです。身長とか胸とか。
そしてすずかさんもかなり成長しています。こちらは吸血鬼の血なんでしょうか。それともどこかで西洋人の血が流れているんでしょうか。どちらにしろ妬ましいです。
私は身長も胸も変わらずだというのに・・・アリシアちゃんにも抜かれるそうだというのに・・・なのに体重は1kg減りました。
何でそんなグーたタラしてるのに体重が減るんだとアリサさんに突っ込まれてしまいましたが、友人が増え始めてからは何かと行動している事が多いからだと思います。前は外出すら滅多にしませんでしたからね。
「というか、最近の私はちょっと動きすぎだと思う訳です」
「そうかな?・・・確かに出会ったばかりの時と比べたらよく動いてる気はするけど」
いつも通り居間のソファーでコーヒーを飲みながらフェイトさんとのんびり。ちなみに最近ちょっとだけ砂糖とミルクを減らしてみました。苦美味しいです。
他の家族は仕事や研究でここにはおらず、おかげでとても静かに午後の昼下がりを満喫出来ています。春なので気温も穏やかですし、開けた窓から流れてくる風が気持ちいいですね。
「う~・・フェイト~お腹空いた~」
「もう、呼んだ時にちゃんと来ないと困るよ?」
「きりのいいとこまで進めたかったんだもん」
のんびりしていると空腹のせいか疲れのせいか、ぐったりとしているアリシアちゃんが隣のテスタロッサ家という名の研究所から帰ってきました。
確か最近はユニゾンデバイスの研究を進めてるんでしたっけ。どこまで進んだんでしょうか。
「んーと、とりあえずユニゾン出来る様にはなったよ。あとはユニゾン時の安定化とかAIとか、ユニゾンの時にどうサポートする様にするかとかかな」
「おお、もうユニゾン出来るんですか」
「うん。でも今のままだとほぼ確実に融合事故が起きると思う」
「恐ろしいですね」
アリシアちゃんの説明によると、ユニゾンというのは魔導師のリンカーコアとユニゾンデバイスの擬似リンカーコアの同期によって相乗効果を生み出し、同時に魔導師の魔法処理能力をデバイスが負担することによって魔力の底上げと魔法効率化を行うものらしいです。
今作ってあるユニゾンデバイスはリンカーコアの同調は可能らしいのですが、リンカーコアの波長を合わせて同期させるまでには至っていないらしいです。つまり、重なるけど合体は出来ないという事ですね。
そんな状態で無理にユニゾンすると発生するのは融合事故。デバイスが暴走したり、デバイスのAIと特徴が表に出て魔導師の精神に負荷がかかったり、最悪の場合だと融合解除が出来なかったりショックで死んでしまったりするらしいです。
この融合事故は完成されたユニゾンデバイスでも相性が悪ければ発生するらしいです。危険な存在だったんですね、リインフォースさん。
「今度はその部分を調整しないといけないんだけど、大変だよ~」
「はいアリシア、チャーハン。・・・でも、楽しんでるんでしょ?」
「勿論。っと、いただきまーす」
アリシアちゃんはフェイトさんが作ったチャーハンをパクパクと食べ始めました。
それはともかく・・・ユニゾンデバイスですか・・・
「ユニゾンデバイスと融合してリンカーコアの無い人が魔導師になれたりはしないんですか?」
「むぐっ、ん・・・多分無理だよ。リンカーコアは誰にでもあるんだけど、ただ無いのと同じくらいだったりするだけなんだよね。そんな弱いリンカーコアだと波長の確認も出来ないからほぼ確実に融合事故。相当運が良かったらたまたま波長が合ったりするかもしれないけど・・・」
「あ、そうなんですか?」
「私も知らなかった・・・」
リンカーコアって誰にでもあったんですか・・・まあ魔法の無い世界にも魔力があるみたいですし、もしかしたら当たり前の事だったりするんでしょうか?・・・いえ、フェイトさんも知らなかったみたいですし、それは無いですか。
・・・あれ?って事は私にもリンカーコアがある訳ですよね?ただ弱すぎるだけで。という事は。
「私なら問答無用でユニゾン出来るのでは?」
「・・・ああああぁぁぁぁぁ!!!!そうだよそうだよ!!杏お姉ちゃんの能力使ったら融合事故を起こさないでユニゾン出来るよ!多分!」
「今、最後に多分って言って予防線張ったね」
「ちゃっかりしてますね」
「いや、だって非魔導師のユニゾンなんて前例が無いから・・・」
まあそうでしょうね。私が例外過ぎるだけでしょうから仕方がありません。
しかしこれで本当にユニゾンが成功したのなら、私も魔法少女デビューですか・・・いや、魔法少女はちょっと恥ずかしいので魔導師デビューに言い直します。小学五年生ならまだセーフでしょうが、ちょっと恥ずかしいです。
「杏お姉ちゃんのユニゾン結果を検証して他の非魔導師でもユニゾン出来る様に出来たら、魔法世界の歴史が変わるよ・・・ふふふ、これはリニスとお母さんにも協力して貰わなきゃ!!」
あれ?私が魔法使いたいから言ってみただけだったんですけど、そんなに大事になるんですか?というかこの様子だと何度も検証実験に付き合わされるんじゃあ・・・墓穴を掘ったのかもしれません。
・・・まあ多分実際にユニゾンを試すのは当分先の話でしょうし、今は気にしない事にしましょう。未来の自分に丸投げです。