暫く車の中でのんびり会話をしながら、潜伏先と思われる場所へと車は進んでいきます。
「しかし何でまた誘拐なんですか?運転席の方から聞こえた分だと月村さん狙いみたいですけど」
「詳しくは知らねぇよ。俺等はただ請け負った仕事をこなすだけだ」
「おおー、しょくにんみたいだね」
「誘拐の場合は多分仕事人じゃないかな?」
「・・・えっと、誘拐原因の私が言うのもどうかと思うけど、何でこんなに和気藹々としてるの?」
特に危険性を感じていないからですね。いざとなればこのまま車を操作して帰ることも出来ますし。・・・はっ!?私の能力を使えば心霊現象の様な無人車両を量産出来るのではないでしょうか?
むむむ・・・海鳴を新たな心霊スポットに。面白いかもしれません。それで生放送のロケ何かが来たらもっと面白い事が・・・夢が広がります。
「ところでお兄さんは口は悪いですけど割といい人ですよね。何でこんな仕事を?」
「・・・就職先を必死で探して入社した会社が色々な意味でブラックな企業だっただけだ」
「「「「うわぁ・・・」」」」
「おかげで逃げたら消されるし、休みもねぇし、こんな胸糞悪い仕事しなくちゃなんねぇし、最悪だ・・・」
実行犯も被害者とかそんな展開ですか。何がいけないかったんでしょうか・・・やっぱり就職難の社会でしょうか?世知辛いです。
私は能力のおかげで働かなくても何とかなりますけど、これが無かったら同じ様な事になってたかもしれないんでしょうね・・・
「いっそつかまっちゃえば?」
「消されないならそれもアリだよなぁ・・・もう普通に暮らせるならムショの中でもいい」
「えっと・・・が、頑張ってください?」
「いや誘拐された人が励ましてどうするんですかフェイトさん。天然にも限度がありますよ」
そんなこんなで海鳴郊外にある廃ビルに到着しました。住み良い町の海鳴にもこんな場所があったんですね。
「(それじゃあ、お邪魔しますね)」
『---』
とりあえずお世話になる廃ビルさんには挨拶をしておきましょう。もしかしたら暴れまわるかもしれませんしね。
「(はい、大丈夫なので安心してください)」
『---』
「(へぇー、誘拐を指示した人も月村の関係者なんですか。お家騒動なんでしょうかね?)」
『---』
「(えぇ!?自動人形ですか!?)」
なんと・・・ここにいる犯人は自動人形を連れているらしいです。月村の自動人形・・・つまりそれはメイドロボの事でしょう。これは奪うしか・・・!!
「(その自動人形ってどんな感じですか?)」
『---』
「(なんだ戦闘特化ですか。じゃあいりませんね)」
ガッカリです。ノエルさんみたいな家事が得意なメイドロボじゃないといらないです。戦闘なんてフェイトさんとリニスさんとアルフさんだけで十分ですし。
はぁ、喜び損しました。
「杏、終わった?」
「あ、はい」
「よろこんだ後にすぐおちこんだけど、なんかあったの?」
「ええ、ちょっと残念な事がありまして」
「何の事かわからんが黙ってろ。・・・月村のお嬢さんはそっちだ」
おや、やはりメインのすずかさんとは別の場所に連れて行かれるんですか。まあ当たり前なんでしょうね。
まあ重要人物扱いでしょうしすずかさんの心配はソレほど必要は無いでしょうけど、私達はどうなるんでしょうかね?
なんか明らかにアレな目で私達を見てきている二人の男性が居るんですけど・・・って、運転席と助手席に居た変態の人じゃないですか。
「ひひひ・・・こっちのガキ共は何してもいいんだろ?」
「おーおーロリコンめ。まぁ俺もなんだがな・・・」
うわぁ・・・
「不快です。喋らないで下さい」
「あの、近づかないで下さい」
「きもーい」
「なっ!?てめぇら・・・」
「馬鹿野郎!だからクライアントに聞いてからっつってんだろうが!お前等も煽る様な事を言うなめんどくせぇ!」
「ちっ・・・んじゃあ聞いてくるか」
いや、だって物凄い気持ち悪いんですよこの二人。口調とか目線とか雰囲気とか・・・もうこの廃ビルの壁に埋め込みたいくらいです。
でもまあ、このお兄さんに悪い気もするので止めておきましょう。・・・襲われることになったら容赦しませんけどね。ふふふ。
「フェイトさん、バルディッシュは大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫だよ」
「なにもなくおわるといいねー」
何も無く終わる事は無いでしょうけどね。まあそれがどういう展開かはわかりませんが・・・あ、変態二人が戻ってきました。
「許可貰ってきたぜ」
「ひひひ、可愛がってやるぜぇ?」
「マジかよ・・・胸糞悪いクライアントだ・・・」
よーし正当防衛始めまーす。まだ襲われてませんけど貞操の危機なんで問題は無いですよね。それじゃ・・・
「廃ビルさーん、そこの変態二人を動けない様にしてくださーい」
「は?何を・・うわっ!?」
「な、何だこれ!?」
お願いすると変態二人の足が膝までコンクリートの中に埋まりました。これで動けませんが・・・私はやりすぎると死んじゃう危険性があるんですよね。
「フェイトさん、気絶お願いしてもいいですか?」
「えっと、良いのかな?管理局に怒られる様な・・・」
「正当防衛ですから問題無いと思います。いざとなったら私が色々しますし」
「そうかな?じゃあ気絶させるね。バルディッシュは・・・いいかな。魔力変換した電撃で何とかなりそうだし」
「ふたりともおつかれー」
そういうとフェイトさんは電気に変換した魔力を二人にぶつけてあっという間に気絶させました。便利ですよねぇ、電気変換って。
さて、これで私達の安全は確保出来た訳ですけど・・・やっぱりすずかさんを助けた方がいいですよね?ここで帰ったら何言われるかわかりませんし、何よりフェイトさんとアリシアちゃんに怒られますし。
「・・・いやいやいやいや、何だこれ?コンクリが溶けた?つか電気?手から電気?つか魔力って言ってなかったか?・・・いやいやいやいや」
「・・・ねえ杏、この人どうしよう?」
「悪い人じゃないみたいですし、放っといていいと思いますよ。多分現実逃避で忙しいですし」
「じゃ、いこっか」
さて、すずかさんのとこに行きましょうか。