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No.19454の一覧
[0] ゼロの使い魔 蒼の姫君 土の国物語 (オリ主[タマネギ](2010/07/26 18:23)
[1] 第一話 二人の出会い[タマネギ](2010/07/07 21:51)
[2] 第二話 魔法・・・それは、人類に残された最後のアルカディア。人はそれを求め、数多の時を(ry[タマネギ](2010/07/07 22:02)
[3] 第三話   ハルケギニア[タマネギ](2010/07/07 22:17)
[4] 第四話   就職?[タマネギ](2010/07/07 22:26)
[5] 第五話   姫君の苦悩[タマネギ](2010/07/07 23:19)
[6] 第六話   魔法と印[タマネギ](2010/07/07 23:52)
[7] 第七話   騎士見習い[タマネギ](2010/07/08 00:08)
[8] 第八話   決闘と報酬[タマネイ](2010/07/08 00:36)
[9] 第九話   王の命令[タマネギ](2010/07/08 01:07)
[10] 第十話   リュティスに吹く雪風[タマネギ](2010/07/08 01:18)
[11] 第十一話   姫君の意思[タマネギ](2010/07/08 01:34)
[12] 第十二話   王の裁き[タマネギ](2010/07/08 22:37)
[13] 第十三話  名も無き丘で[タマネギ](2010/07/08 23:10)
[14] 第二部 第一話   使い魔  (一部修正[タマネギ](2010/07/27 15:53)
[15] 第二部 第二話   日常   (旧タイトル 新撰組 大幅に修正しました[タマネギ](2010/07/26 18:58)
[16] 外伝  異世界の事変[タマネギ](2010/07/10 12:48)
[17] 第二部 第三話   王。再び[タマネギ](2010/07/21 21:30)
[18] 第二部 第四話   魔法学院[タマネギ](2010/07/21 20:52)
[19] 第二部 第五話   休養[タマネギ](2010/07/21 20:52)
[20] 第二部 第六話   戦場[タマネギ](2010/07/24 08:50)
[21] 第三部 第一話  光の国[タマネギ](2010/07/26 20:06)
[22] 第三部 第二話  北花壇騎士[タマネギ](2010/08/01 23:10)
[23] 第三部 第三話  吸血鬼[タマネギ](2010/08/02 01:18)
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[19454] 第八話   決闘と報酬
Name: タマネイ◆f923a62f ID:4d9e94b0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/08 00:36








第八話    決闘と報酬
















「始めっ!」

決闘の立会人であるカステルモールの声が響く。
彼我の距離は凡そ15メイル。
和磨は、相手――――――グレゴワール――――――の構えを見て戦慄した。



・・・隙だらけだ。どこからどう打ち込んでも、一本取れそうな、そんな構え。



しかし、だからと言って油断して良い訳ではない。
実際、以前和磨は、剣道の大会に出たとき。似たような相手と戦った事が有る。
構えが隙だらけだったので、弱いと思い込んで攻めに行ったら、見事な反撃を食らって負けた。そんな過去の経験があるため、和磨は相手の出方を伺うように、ジリジリと、ゆっくり間合いを詰めようとした所

「そちらから来ないなら、こちらから行こう」


え?


此方の攻撃を待つカウンタースタイル《反撃型》だと思っていた相手の、攻撃宣言に驚き、僅かに思考が停止した。
だが、その一瞬が致命的。

「ファイアーボール!」

杖であるサーベルを振りながら叫ぶグレゴワール。
切っ先から放たれる1メイル程の大きさの火球。
火球は、あっと言う間に和磨との距離を縮め、着弾。

ドゴーン!

「カズマっ!?」

どこからか聞えた、悲鳴の様な少女の叫びは、爆煙と轟音にかき消される。

すると直後、着弾地点から、何かが転がるようにして、いや、実際地面を転がりながら飛び出して来た。

「ゴホゴッホゴホ!あぶねっ!つか、魔法ありかよっ!?」

煙を吸い込み、咳き込みながら涙目で抗議の声をあげるが

「何を言っている。訓練ではなく、これは決闘だ。魔法を使って当たり前」

相手はそんな宣言と共に、再び火球を打ち出す。

「マジかよっ!?」

今度は先程よりも余裕を持って回避。
しかし

「それで避けたつもりかね?」

言いながら、次々に無数の火の玉が、こちら目掛けてカっ飛んで来た。

「ちょっ!?ま!あぶ!!」

それらを必死に避け、和磨は逃げ回る。








「おい!カステルモール!どういう事だ!」

そんな和磨を見かねたのか、イザベラが怒気を発しながらカステルモールに詰め寄った。

「姫様、どうか落ち着いてください」

「落ち着いていられるかっ!お前が、カズマなら決闘でも勝てると言うから私は」

「えぇ。ですから、まだ負けていません。どうか、冷静に。それに、相手もまだ全力ではありません。ご覧下さい。彼は火のトライアングル。しかし、使っている魔法は先程からドットの火球のみ。恐らく、やりすぎてしまわぬように手加減しているのでしょう」

肩で息をするほど憤慨する姫君を、どうにかこうにか宥め透かし、カステルモールはひっそりと嘆息した。

ついさっきも、似たようなやり取りをした記憶がある。
グレゴワールが、和磨に対し出て行けだの、名前に傷がだの、バカにする様な発言をしていた時も、この姫君が自らグレゴワールを切り捨てるのでは無いかと、何度肝を冷やした事か。
結局、決闘で本人に決着を付けさせましょうと提案し、なんとか納得してもらえた。
その時、決闘なんかやって大丈夫かと質問され、カステルモールは自信を持って答えた。
「大丈夫です」と。
だが、いざやってみれば・・・。
それはまぁ、怒りたくなるのも理解はできるのだが・・・。

ここに至って、カステルモールは周囲に気付かれないように、ブツブツと小声でルーンを唱える。








「くっそ!あんの野郎好き勝手撃ちやがってっ!!}

彼我の距離を縮められないまま、一方的に火球を打ち込まれる。
一応、全て回避はしているが、このままではこちらの体力が尽き、負けてしまう。
剣で打ち合って負けるなら、納得できるのだがこれは流石に・・・だが、策も無く突撃したらこんがり丸焼きになる事必定であり・・・・・・・・・

そんな所に、唐突に声が聞えてきた。

《何をしているのかね?カズマ君》

「えっ?あれ?この声・・・先生?」

《そうだ。これは特定の相手とだけ、会話をするという魔法だ。あまり距離が離れると使えないがね》

「へーえっ!魔法って相変わらずっ!便利ですね!っと」

器用な物だ。

会話をしながら火球を避け続ける和磨に、素直に関心しながらカステルモールは続ける。

《それはともかく。どういうつもりなのかな?まさか、全力を出すまでも無い等と、思い上がって無いだろうね?》

「全力も何も!今やってますよっ!でも、全っ然近づけない!からどうしようも無いんでっすっ!」

《はぁ・・・何を言っているのかね?昨日、私と戦った時に君がやった事をすれば良いではないか》

「だって!あれはお遊びでしょ!?でもコレは真剣勝負の!決闘な訳で!そんな場所で、お遊びなんかやったら!相手に対して失礼ですっ!」

その台詞を聞いて、昨夜の事が脳裏に蘇る。

夕食後、和磨に
「ちょっと試したい事があるから付き合ってもらえませんか?」
と言われ、表に出て剣を交えた。
それは、とてもお遊び等では無かった。
こちらもかなり真剣に相手をせざるを得ない程、和磨の言う「お遊び」は手強かった。
だが、同時に理解した。
和磨は、決闘は純粋に剣のみでの真剣勝負と認識している。
そして昨日のアレは、和磨にとって遊びで、どんなに有効と思われても真剣勝負の場に持ち出す物では無いと。そんな認識なのだろう。
相変わらず、妙な所で生真面目な青年だ。

だが

《だが、昨夜のアレも、君の”力”だろう?真剣勝負に対して、全力を。全ての力を出さない方が、相手に無礼では無いのかな?》

「・・・・・・・・・・・・・・・」

和磨からの返答が無い。
だが、こう言う言い方をすれば、彼は間違いなく

「わかりました。なら、やってみます。でも良いんですか?立会人なのに俺にそんな事言って」

《気にするな。このままでは私の命・・・では無く、皆が納得できないだろう。何よりも、君自身がだ。何、この会話は誰も聞いていない。君が漏らさなければ、他に知る者は居ない。では、健闘を祈る》

それっきり、声が途切れた。

「全く・・・元はと言えば先生が決闘なんかにしたせいで・・・」

ブツブツと文句を言いながら、その口元には笑みが浮かぶ。
和磨にとって、魔法とは想像の産物。
多少使えるようになった今も、どこか非現実的な物であると、未だにそんな認識だ。
そして、そんな物《想像の産物》を、現実の。というか真剣勝負である決闘に使う。という発想は無い。というより、無かった。
だから昨夜。カステルモールに、思いついた事。即ち、魔法を使い、漫画やアニメ。想像上の人物達のように戦ってみようと。それを試したくて挑んだのだ。だが、それは所詮お遊び。そう思い、また割り切っていたのだが、カステルモールの一言で考えを改めた。
そしていざ、魔法を使う段階になると、自然と笑みが零れる。純粋に楽しくて。
魔法と言う超常の力を、自分が使っているという高揚感から。

「ま、やって良いってんならやりましょうか。それに良く考えりゃ、てか、普通に。相手魔法使ってるし。いいよね?」

答えは聞いてない。
そんな自問をしながら、何事か行動を起こそうとした所に

「チョロチョロとネズミのように逃げるのが上手いな。だが、これで終わりだ」

グレゴワールのそんな勝利宣言と共に、凡そ十数発。火球が群れを成して飛来する。

「うお!なんという弾幕!?」

案外余裕がありそうな和磨の言葉は、だがしかし、大量の火球の着弾による轟音で誰にも聞えなかっただろう。



火球が着弾したのを確認し、グレゴワールは勝利を確信。笑みを浮かべた。
先程カステルモールに評された通り、彼は火のトライアングルメイジである。
だが、そんな彼がドットの火球を使ったのは、何も手加減していたからでは無く、平民如きドットスペルで十分と、侮っていたからだ。だが、予想に反してその平民はしぶとかった。だから最後に少しだけ、本気を出した訳だが。

「いかんな。これでは死体も残らないか」

さすがに、やりすぎてしまったと。そう思った時。

突如、風が吹いた。







「カズマっ!?」

大量の火球が着弾。
先程と同じように、悲鳴をあげるイザベラ。
だが、そんな悲鳴を無視するかの如く、轟と。
突如強風が吹き、火球の着弾により発生した煙を吹き飛ばす。

そしてそこには、木刀を下段に構え、不敵な笑みで笑う黒髪が一人。

一番驚いたのは、相手のグレゴワール。

「バカなっ!?何故!」

そこまで言いかけて気付いた。
煙を吹き飛ばし、視界を回復させた風は、今もまだ五体満足の平民から吹いている事に。
その事に気づいたのは、何も彼一人では無い。周囲に居た騎士達も、また気付いていた。

ザワザワと。

囲んでいる騎士たちがざわめく。
そんな様子を見て、カステルモールは、一人小さく笑みを浮かべる。

「さぁ、見せてやりたまえ」







「あっぶねー。いやぁ、今のは危なかった」

風の初歩に当たる魔法。ウィンド《風》。
ただ風を吹かすだけの単純な魔法で、煙を吹き飛ばしながら、和磨は額の汗を拭う。

「貴様!一体何をした!?」

なにやら驚きの叫びをあげるグレゴワール。

「何って?避けただけだけど」

確かにその言葉に嘘偽りは無い。
文字にすれば一文で済む。
和磨は火球を全て避けた。と。
だが、もしその方法を知れば、周囲に居る騎士達が全員驚愕する事確実である。

和磨がやった事は三つ。
一つ。自身をエア・シールド《風盾》の魔法で守る。
二つ。同時にフライ《飛行》の魔法を使用。
三つ。飛んでくる火球を全て回避。

言うは安し。
実際にやれと言われて出きる者がどれ程か。
二つ同時に魔法を使い、さらに大量の火球を避けるという凄まじい集中力。
だが何よりも、フライの使い方だ。
普通、フライは文字通り《飛行》の魔法。
だが、飛行と言っても1サントでも宙に浮けば、それはもう立派な飛行である。
だから、和磨は普通に飛ばず、ほんの少し。判るか判らないかというくらい僅かに、自身を浮かせるだけに留める事により、フライ《飛行》を《重量軽減》の魔法として使用した。
そして、重量は軽減されても、今まで火球を避け続けた健脚はそのまま。
なので、より素早く。
後は、少しくらい至近弾を受けようと、エアシールド《風盾》で防ぐ。

「ま、一々説明する義理は無いけどね」

そんな事を呟きながら、下段から上段に、さらに、木刀を逆手に持ち替えて

「今度はこっちの番だ!いっくぜー!君の手でーっと」

そのまま地面に振り下ろし、突き刺す

「錬!金!」

すると、和磨の周囲5メイル程の地面が光り輝く。
何故錬金を?何を作る気だ?
そんな周囲の疑問を無視するように、特に変化は

「いっけええええ!」


ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオオオ


和磨の叫びと同時に、十以上の土の柱が水平に、グレゴワールに向け伸び、いや。
グレゴワール目掛け、土の柱が襲い掛かった。

「「「なっ!?」」」

ソレは、グレゴワールだけではなく、見ていた者全ての口から漏れた言葉。
錬金の魔法は、物を作ったり、作り変えたりと、あまり戦闘に使う魔法では無い。
だが、和磨はそれを戦闘で使用し、さらに

「くっ!こんな物で私がっ!!」

叫びながら、飛来する石柱を防ぎ、かわす。
石柱も、当然ながら全てが命中する訳でも無く、グレゴワールの周囲に次々と着弾。
どうにか攻撃を凌ぎきり、人知れず安堵の吐息を吐くグレゴワールだったが、一瞬でその顔が強張った。

確かに、石柱での攻撃は凌いだ。が、攻撃が終わった後も炎や風と違い、石柱はその場に残る。
そして、石柱により作られた道を、《風》と《重量軽減》を併用し、自慢の健脚を持って凄まじい速度で走り来る和磨の姿が。

「舐めるなよ!平民がっ!!」

叫びながら、グレゴワールは火の二条。
フレイムボールの魔法を一発。
一瞬で双方の距離が縮まり、直径3メイルを超える巨大な火球が和磨を捉え

「おっと!」

命中する直前、和磨が走ってきた勢いをそのまま、上空へと大ジャンプ。

「掛かったな!トドメだ!ファイアーボール《火球》!!」

空中で逃げ道の無い相手への追撃。
普通ならこれで焼死体が一体出来上がるが

「うおおおおおぉぉぉぉぉ!!」

フライも併用している和磨は、何とかこれを回避。
タイミング的には、かなりきわどかった。
そしてそのまま一気に頭上に向けて木刀を振り下ろす。

仕留め切れなかったグレゴワールが、舌打ち一つ、サーベルで防御の体制に。
いくら剣を振り下ろそうが、足場の無い空中で、しかも火球の回避でバランスを崩しながらの攻撃は大した脅威では無い。
そう判断し、次の一手を思案するが

「でええええええええい!」

木と金属がぶつかる音。
そして

ミシ

防御に使ったサーベルから、嫌な音がした。

「ぐお!?」

そしてグレゴワール自身もまた、そのありえない剣の重さに驚きと苦しみの声を漏らす。

先程も述べたが、フライは飛行の魔法である。
それを和磨は重量軽減に使った訳だが。
それとはまた別にの使い方。
浮かせる事が出来て、空中で前後左右と自在に飛べるという事は即ち。
逆に上から押し付ける事も可能だという事。
それ即ち、和磨はフライ《飛行》を《重量制御》として使用しているのだ。

結果、空中で放たれたとは思えない程の、重い一撃がグレゴワールを襲った。

「ぐっ!この!」

だが、それでも、大地にしっかりと、両の足で踏みとどまっているグレゴワールの優位は動かず

「はぁっ!」

気合の篭った叫びと共に、和磨が吹き飛ばされる。
否。
自ら、相手の力を利用して一旦間合いを取った。
だが、そこで生じる着地するまでに僅かな隙を、グレゴワールは見逃さず

「鎌鼬《エアカッター》!」

追撃の魔法を放とうとしたが、和磨が空中で横一文字に木刀を一振り。
その一振りで生じた風の刃がグレゴワールを襲う。

「くっ!」

仕方無しに、追撃を諦め防御に。
だがその隙に和磨が着地。
そして腰だめに木刀を構える。

それを見たカステルモールは息を呑んだ。

あれは、彼が召喚された日。自分と戦った時の最後の行動と同じ。
あの時和磨は、自分が引き、間合いが開いた時にあの構えを取った。
そして今回は自身が引き、間合いが開いた今、あの構えを。
自分はそこから先を恐れ、彼が何をするか見極めずに潰した。
だが今度は見れる。

自然、笑みが浮かぶ。




カステルモールの期待に答える様に。


「はああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!」


凄まじい気合と共に。


ドゴン!


蹴った地面が轟音を鳴らし。



「刺突《つき》いいいいいいいぃぃぃぃぃぃ!」



気合と共に、木刀の切っ先を、相手の胸に叩き込んだ。


瞬間。


ズドンッ!
ズシャン!
ズザザザザザザザザ!

木刀が当たった瞬間、黄金の塊が凄まじい勢いで、ビリヤードのキューで突かれた球の如く吹き飛ばされ、仰向けに倒れた。
それでもまだ勢いが収まらず、僅かの間だが地面を滑り、ようやく運動エネルギーを使い果たし、動きが止まった。

目の前の出来事が信じられず、唖然とする周囲を他所に、和磨は、仰向けに倒れたままのグレゴワールとの距離を一気に詰め、その眼前に木刀を突き付け一言。

「まだやりますか?」

僅かな静寂が生まれ

「そこまで!この決闘。カズマの勝利っ!」

カステルモールの叫び。

次の瞬間。ワっと歓声があがった。









サッカーで得点を入れた選手のように、周囲を囲まれ、ビシバシと叩かれる和磨。

痛い痛い!ちょ!髪引っ張らないでくださいっ!痛て!カンベンして!

そんな悲鳴も、歓声に掻き消される。
そんな和磨を救ったのは、やはりいつもの如く騎士団長。

「さぁ諸君!決闘は終わりだ。それぞれ訓練に励め。和磨。話がある。来てくれ」

それぞれ文句を言いながらも、律儀に和磨を解放し、訓練に戻っていく団員達に苦笑しながら、やってきた和磨に労いの言葉をかける。

「よくやったな。見事な勝利だ」

「いやぁ、まぁ。ありがとうございます」

「最後の突きはだが、あれは・・・」

「あぁ。アレ、最初に先生と戦った時も、最後に使おうとしたのと同じですよ。普段使わないんですがね」

「ふむ。切り札という事かな?」

「いや、まぁ、切り札って言い方もありますけどね。そうじゃなくて、全力で突く事は師に禁止されてまして」

幼い頃から―――――理由はともかく―――――鍛えてきた強靭な足腰。
そして、その力をフルに使い、更に上半身の筋肉も完全に連動させて繰り出される和磨の突きは、師曰く「突きだけは文句の付け様が無く、完璧だ」と言わしめた程だったと。
同時に「全力で突くと危険。なので使用する場合は半分の力で使用する事」と。
そして、言われた通り半分の力で使うと、これが大変。
完璧と言われたのは、あくまで全力での突きである。
つまり、全力でなく、半分という中途半端な力で突こうと、意識すればする程、要らぬ所に力が入ったり、体のバネの使い方も可笑しくなり、威力が激減。
半分のつもりが、三割か。下手をすればもっと酷い突きになってしまった。
結果、試合でもマトモに使えない突きに成り下がった。
なので、普段からあまり突きを使わないのが和磨である。
だが今回は、相手が鎧を着ているので安心して全力で突いたのだ。
しかも《重量制御》と《風》による追い風も+して。

「だけどまぁ、今回は相手が鎧着てるから平気かと思ったんですけど・・・」

「む?どうかしたのかね?」

「あの、先生。今度さっきの人に言っといてもらえませんか?観賞用の鎧じゃなくて、ちゃんとした鎧着ないと危ないって」

「・・・それは、どういう意味だね?」

グレゴワールの鎧は、観賞用の鎧等ではない。
彼曰く、由緒正しい、歴史有る防具だとか。
実際そこまでの物かは知らないが、あの鎧で何度か実戦にも出ている。
のだが

「いや、だって。危なかったんですよ?てっきり本物の鎧だと思って全力で突いたら、貫きそうになっちゃって・・・慌てて最後、力抜いたんですよ」

カステルモールが絶句した。
固定化や硬化の魔法で、多少強化されてるとはいえ、和磨の木刀は所詮木である。
それが、金属。恐らく鉄であろうが、金属性の鎧を貫きそうになった。
どれ程の威力で突いたのだろうか。そんな事か信じられるか。
いや、本人が信じていないからこそ、あの鎧を観賞用だと思い込んでいるのだろう。

「そ。そうか。所で、最後に力を抜いたと言ったが、それを計算して、先程の突きは何割程の力だったのかな?」

とりあえず、言及しないで流す事にしたようだ。

「ん~・・・多分八割くらいですかね。全力で。それも木刀で突いた事なんて無いんで、ハッキリとはしませんが」

「八割で・・・貫きかけたのかね」

「ですね。倒れてる所見て冷や汗掻きましたよ。凹んで、回りにヒビまで入ってて。あと少し力を抜くのが遅かったらと思うと・・・やっぱ全力での突きは封印指定しとこうかな」

決闘が終わった後、グレゴワールはそそくさとその場を後にしてしまった為、カステルモールはその傷を確認していない。
が、和磨が言うなら本当なのだろう。
この青年は、くだらない嘘やハッタリは言わないのだから。
まぁ、なにはともあれ、勝ったのだ。
いままで認めなかった者達も、考えを改めるきっかけになっただろう。
そう思いなおし、大きく頷きながら

「まぁとにかく、改めて。おめでとう。君の勝ちだ」

「はい。ありがとございます」

「うむ。おっと。それより、イザベラ様の下に急げ。呼んでおられる」

「はいさ。んじゃちょっくら」

「あぁ、少し待ちたまえ」

言いながら、杖を取り出し魔法を一つ。

「うはぁ~~~さすが先生~~~サンキューです~~」

目を細め、真夏に扇風機の前に立ち、全身で風を受けて涼むかのごとく。カステルモールが放った魔法の風を受ける。
この魔法はただの風を吹かせるだけではない。
水と風のラインスペル。
水の粒で体の汚れを洗い流し、風で吹き飛ばすという、和磨曰く「制汗の魔法」だ。
現在和磨はドットなので使えないが、その内絶対にラインになってこの魔法を覚えると言うのが彼の目標だとかなんとか。






イザベラの下へ歩み寄り、和磨勝利の一言。

「ふ~。何とか勝ったぜ」

「あぁ。ご苦労」

彼女は何もしていないのだが、何故か胸を張り、誇らし気だ。

「なんだ。先生がリザが怒ってるだの何だの言ってたけど、何か機嫌良いじゃん。そんなに面白かったか?さっきの試合」

「あぁ。実に愉快だったね」

実際、イザベラが怒っていたのは本当。
その原因の”半分”が、グレゴワールによる和磨の罵倒にあるのも。
だが、もう半分の原因は、今も目の前で不思議そうな顔をしている男にある。

あれだけ好き勝手言われて、怒る事もせず、ひたすら下手に出て場を収めようとする姿。
それは、いつも自分に偉そうにアレコレ言う和磨に対して、自分がそんな癖に、私には偉そうに!という怒りと、いつも自分を励まし、元気付けてくれる男が、情けない姿―――――イザベラ主観で―――――を晒しているという何とも言えない悲しみ。
そして何より。
自分の使い魔である和磨が、大した家柄でもない一伯爵家の次男坊如きに、好き勝手言われているという、やはり怒りだったのだが。

「そんな事はどうでもいい。それより、凄かったじゃないのさ!」

アレだけ尊大な態度を取っていた相手に、最初は逃げに徹していた和磨が、いざ攻めるとあっと言う間に勝負を決めた。
結果、相手を無様に、仰向けに押し倒して。
そして、相手は逃げるように鍛錬場を後にした。
相手はガリア東花壇騎士団の正騎士。しかも火のトライアングル。
それを、見習いのドットが倒したのだ。
そしてそれを成し遂げたのが、自分の使い魔である。
その事実だけで、姫君はご満悦である。
先程までの不機嫌なオーラなどとっくに何処へやら消え去り、今は快活な笑顔で、和磨をアレコレと質問攻めにしている。

そこへ、クリスティナ侍従長が。その手にはなにやら手紙だろうか?

「姫様。こちらを」

言いながら手渡す。

「ん?ふむ・・・・・・・・・!そうかっ!」

読み進め、急に叫んだかと思うとそのまま手紙を突っ返して一言。

「私”達”はこれから少し出かける。お前はもう帰っていいよ」

「お待ち下さい。それならばせめて、お着替えを為さってからに。その格好のままではいろいろと問題が」

「ん?あぁ、そうだね。それじゃ、着替える。行くよ、カズマ」

「へ?何で俺?リザ、出かけるんじゃないの?」

トントン拍子で話が進む中、ボーっとしていた所、いきなり話を振られ、混乱する和磨だが、当の姫君はそんな様子一切気にしちゃいない。
何やら鼻歌まで歌いだす始末で、やたらご機嫌である。

余程良い知らせだったのだろうか?

そんな事を考えていると、いつの間にか後ろに回りこんでいた侍従長に襟首を掴まれ、そのまま抵抗空しく引きずられて行った。











「えっと、これ、この道コッチでいいのか?」

「ん?あぁ。それでいいはずだ」

ガリアの首都。
三十万人の人が住まう大都市。
リュティスの一画を、一組の男女が歩いている。
一人は、黒い髪に紺色の胴着。黒の袴という、ハルケギニアではまず目にしないだろう服装の男。腰には木の剣が下げられている。
もう一人は、蒼い髪を後ろで束ね、町娘が着ているような紺色のワンピースを着ている少女。頭に乗っているのはいつもの王冠では無く、小さな帽子。

「えっと、んで、ココを右に曲がって・・・」

「そこ、左じゃないのかい?」

二人して一枚の地図を見ながら、あーだこーだ言いつつ町を歩く。
傍から見たら、仲の良いカップルに見えるだろうか。

「んで・・・お、ココじゃないのか?」

「ん・・・あぁ。ここだね」

そんな二人。
和磨とイザベラは、道を間違える事度々。
ようやく目的の店に到着した。

そして、イザベラは迷う事無くその店に足を踏み入れる。

「店主。この手紙を」

言いながら、一枚の紙を取り出してそのまま店主に突き出した。

「これは・・・はい。確かに。少々お待ちください。すぐにお持ち致します」

そのまま店の奥に引っ込む。
すると、すぐに布の包みを持って出て来た。

「こちらになります。お確かめ下さい」

しかしイザベラは、差し出された包みを受け取らず、目で和磨に受け取るように指示。
和磨も素直に従い、受け取る。

「アンタが確かめてみな」

言われ、店主に目を向けると、頷かれた。
何がなにやらわからなかったが、とりあえず包みから中の物を取り出す。

それは

「これは・・・・・・」

「どうだい?話に聞いていた通りの物だと思うんだけど」

鞘から少し抜いて眺める。

反り返った不思議な剣。極薄の刃。その刃には、美術品としての価値もあるという程、美しい波紋。

まさしく、日本刀である。

なぜ、こんな物がここに?

半ば放心しながらも、じっと、吸い込まれるような感覚を覚え、しかしその感覚に身を委ねながら刀を見つめる。

所々に三日月の様な美しい刃文が

「っ!?店主!ちょっと中心《なかご》をっ!あぁ、いや。木槌と杭。それと綺麗な布を貸してください!!」

じっと刃を見つめていたと思ったら、弾かれた様に目を離し、大声で店主に詰め寄る。
そんな和磨の姿など、未だ見たことが無いイザベラは何事かと目を見開いた。

「あの、えっと、お客様?」

「いいから!早くっ!」

「は、はい!ただいま!」

和磨に怒鳴られた店主は、駆け足で奥に引っ込み、要求された物を渡した。
すると、和磨はそれらを受け取り、「机借ります」と言うだけ言って、口にハンカチを咥え、何やら刀を弄り始める。
イザベラが何か声をかけようとした所、何と、いきなり刀の柄を分解し始めた。

「ちょっと、何を?」

だが、和磨はイザベラの問いを完全に無視。
というか、まったく耳に入っていないようだ。
そうこうしている内に、見る見る刀が、柄が分解され、やがて一本の刃となった。
真剣の手入れの仕方は、一通り師に習った。
流石に振らせてはもらえなかったが。分解するくらいなら手馴れた物だ。
その手際の良さに、イザベラと店主二人しての感嘆の声も、和磨の耳には入らない。

今、彼の全神経は、中心に刻まれた銘を読む事に向けられている。

「これは・・・む・・・むね・・・ちか?・・・・・・・・・・・・宗近?」

ポツリと呟き、急にハっとなって刀身を見る。その刃の下半には、刃縁に添って、随所に美しい三日月の紋様が

三日月?

「三日月・・・・・・・・・宗近?」

唖然。

吐く息が刀にかからないように、口に咥えていたハンカチは、あんぐりと。和磨が口を開いた事により、ヒラヒラと舞いながら床に落ちた。

そのまま、和磨は呆然とし、一言も発さない。

「店主。それで、コレはいくらだい?」

そんな和磨を横目でチラリと見てから、イザベラが切り出した。

「え、あ。はい。こちら、千五百エキューになります。何分、こちらは場違いな工芸品と呼ばれる東方からの」

「店主!これ、これは、東方から来たのか!?」

そこに、いきなり和磨が割り込んできた。

「え、えぇ。何でも、時たま聖地の近くにこれらの工芸品が現れるとかで、当店では以前も似たような物を扱った事が」

「それは!それは、どこの誰が買ったっ!?」

「ひぃ!ろ、ロマリアの神官様がお買い求めに」

「カズマ!いいから、少し黙りな!そんな質問より、早くその刀を元に戻せ!」

鬼気迫る和磨に怯え、顧客情報を漏らしてしまう店主だったが、イザベラが和磨を一喝した事により、どうにか場は収まった。

「従者が失礼したね。それで、千五百エキューだったな?」

「え、えぇ。はい。その通りで」

「王宮に。プチ・トロワに請求しておけ」

「かしこ参りました。では、こちらの紙にサインをお願いできますか?」

言われるままに、紙に書き込む。
終わると、店主はそれを確認し、恭しく頭を下げながら、またのお越しをと。
そんな所に、元に戻った刀片手に、和磨が声をかけた。

「戻したけど・・・」

「そうかい。それじゃ、行くよ」

そのまま、返事を待たずに店を後にするイザベラを、慌てて追いかける。
やがて少し歩き、店から離れた所で、突然に。
イザベラが、ニヤリと。邪悪な笑みを浮かべながら尋ねてきた。

「それで?その刀はどれくらいの値打ち物だったんだい?」

どうやら、和磨の反応からかなりの値打ち物だと当たりを付けていたようだ。
だから店主に何か言われる前に急いで購入したのか。
改めて価値を問うイザベラだったが、和磨は何やら渋面のまま考えている。

「・・・どうした?」

「いや・・・うん。値打ち物。か」

何やら一人呟き、いきなり刀を半分ほど抜く。

「なぁリザ。コレ見てどう思う?率直な感想が聞きたい」

人差し指を顎に当て、考える素振りで言われた通り、抜かれた刃を眺める。

「う~ん・・・変わってるよね。話には聞いてたけど、こんなに反り返ってるし。薄っぺらいし。あと、この波みたいな模様。結構綺麗だね。こことか、三日月みたいに見える」

その感想を聞き、そうか。とだけ呟くと、そのまま鞘に収め、再び渋面で思考する和磨。

一体どうしたのだろうか?

少し不安になり、尋ねようとした所、唐突に和磨が切り出してきた。

「昔。戦国時代って呼ばれる時代。俺の国が、国内で争ってた時な」

神妙な様子に、イザベラは黙って続きを促す。

「その時、天下五剣って言う。まぁ要するに、その当時名刀って言われた五振りがあるんだ」

黙って頷く。

「その一振りの名が、三日月宗近」

「ミカヅキムネチカ?」

「その刀の作者の名前が、宗近ってんだ。だから刀も宗近と呼ばれる」

「三日月っていうのは?」

「三日月ってのは、刀の刃文。まぁ、模様が所々、三日月に見えるからと。そこから名づけられたらしい。そして、刀の名前。銘は、中心。柄の部分に当たる金属に彫られる」

ここまで言われて、ハっと気がついた。

「さっき見た時、その刀には何て?」

「宗近」

「じゃぁっ!?」

驚きの声をあげるイザベラに対し、和磨は未だ渋面を崩さずに首を横に振る。

「いや。そもそも、本物は博物館に保管されてるハズだ。仮にもし、万が一何かが原因で、ソレがこっちにきても、こんな綺麗な物じゃない。一度写真。絵で見たけど、もっとボロボロに見えた。でもコレは、固定化の魔法のお陰かね。新品同然に見える」

つまり同じ名前の偽物。
だが、それなら和磨も悩んだりなどしない。

「何か、引っ掛かる事でもあるって事かい?」

「・・・これもまた、少し話が変わるんだが。昔読んだ漫画。作り話の事なんだが、百五十年くらい前の俺の国を題材にした話でな。そこで少し出てきた。真偽は調べてないからわかんないけど。刀匠。刀を作る人ってのは、同じ刀を二本作るんだと。んで、出来の良い一本を神社。教会に収めるんだとさ」

「それじゃぁ、そのもう一本が・・・」

「所が、だ。それは百五十年前の話で、この刀が本物なら、コレは千年前の物だ。同じ事をしていたとは限らないし、そもそも創作の話かもしれない。それ以前に、他にも宗近って刀匠が居て、その人の作品かもしれない。俺に目利きでも出来れば、また話は違うんだけどね。残念ながらそんな事できないし。結局、真偽はわからん」

それでも

「でもさ、はっきりと違うって言えないって事は」

「そう。コレが本物である可能性もある訳なんだが・・・・・・」

「なんだ。なら、どっちでもいいじゃないか」

「・・・・・・へ?」

いつもとは逆だな。
そんな事を思い、思わずクスクスと笑いながら、イザベラが続ける。

「だから、真偽なんてどっちでも良いだろ?そもそも、今の話を知ってる奴が、このハルケギニアに何人居るってんだい?」

それは

「俺と、リザだけ・・・かな。多分」

「だろ?だったら、それが本物でも、似てるだけの偽者でも良いじゃないか。使えるか使えないかが大切なんだよ」

使える。
先程店で軽く見た感じだが、錆びも刃こぼれも無く、新品同然。
表情からそれを読み取り、再びイザベラは続ける。

「使えるなら、それを三日月宗近って呼べば良い。誰も真偽はわからないんだ。カズマがその刀を何て呼ぼうが、誰も文句なんか付けないさ。別に他の呼び方をしても良いしね」

そこまで言われて、ようやく和磨の顔にも笑みが。

「そうだな。そりゃそうだ。確認仕様も無し。なら三日月宗近で良いか。ふ~む。リザに諭されるとは・・・」

「固定概念ってのは、中々拭えない物だろ?」

「あぁ、いや全くその通りで」

お互い声を出して笑いあう。

「てか、これ俺がもらっていいの?」

「いいさ。私が持ってたってしょうがないだろ?」

「まぁ、そうだけどさ」

「そうそう。あぁ、それに、その刀がカズマの国から来たって事は、もしかしたら帰る方も・・・」

途中まで言って、自分で言っておいて自身が気落ちしてしまった。
そう。もしこの刀が和磨の世界から来た物なら、双方を行き来する方法があるという事で。そうなれば和磨も帰るのだろうか。
そう考えると・・・

「ん、あぁ。ソレか。考えたけど、無理っぽくね?」

対して、こちらはあまり気にして無い。あっけらかんと言い放つ。

「え?だってソレは」

「いやさ、確かに。向こうからコッチに来るのは可能かもね。でもさ、さっきもちょっと言ってたけど、刀とか物は来てるみたいだけど、じゃぁ人は?」

聞いた事も無い。異世界から来た人間など。
物だけ奪って、人を殺しているという可能性も否定できないが

「それと、仮に人が来れてても、多分一方通行だよ。向こうからこっちへのね。俺の世界でも全くそんな話聞かないもん」

確かに。
聞いた話によると、和磨の元居た世界は情報伝達がかなり進んでいるらしい。
その世界で、異世界から人間なり、エルフなりが現れたとなったら瞬く間に知れ渡るだろう。政府が隠そうとする可能性もあるが、それでも、いつ、どこに、どのように移動してくるか判らないのだ。全て隠蔽するには無理がある。

「だから、多分無理。まぁ、何かの手がかりにはなるだろうから、その内行って見たいとは思うかなぁ。東方ってのに」

言いながら東の空を見上げる和磨を見て、イザベラは見る見る落ち込んでゆく。

「そうか・・・やっぱり・・・帰りたいよね」

「ん?あぁ。何も言わずに出てきちまったからなぁ。しっかりと報告しなきゃならん」

「報告?」

「あぁ。就職決まったってな」


「・・・・・・は?」


あんまりに予想外の展開に、沈んでいたのもどこへやら。

「いや、だってよ?18にもなって特に進路決まって無かったからさぁ。とりあえず、大学に行こうとは思ってたけど、スポーツ推薦狙って毎日竹刀振り回してるだけだったし。それが突然。幸か不幸、異世界に呼ばれてみれば、王国のお姫様の使い魔ですよ?そんな職業、未だに誰もなった事無いね。間違いない。そんで、今は見習いだけど、侍従という仕事もあるし。騎士団の鍛錬場で剣振り回せるし、好きな事やれて、待遇も良いとか。もう何処に文句付けろと?」

HAHAHAと、大げさに笑う和磨を見て、なにやら力が抜け、ガックリと肩を落とすイザベラ。

心配した私がバカみたいじゃないか何がHAHAHAだ故郷が恋しいとかそんな感情ないのか?いやこいつにそういう繊細な心を期待するのは間違いだそう私が間違っていたのか

ワナワナと肩を揺らしながら、なにやらブツブツ呟いている。かなりの迫力である。

「ま、後は侍従見習いの「見習い」を少しでも早く卒業して、正規の侍従職に着きたいね。そうすりゃ給料もアップアップ。HAHAHA!」

「・・・騎士見習いはどうしたんだい?騎士にはならないのか?」

「おい、おいおいおいおいリザさんや。俺が騎士?冗談言っちゃいけませんよ。何で俺が見ず知らずの国民の為に剣を振らなきゃいけないんですか?つか、自分で想像してそりゃ無いと思うんよ。憧れる気持ちはあるけど、自分がなりたいとは思わないね。それに、なるなら騎士じゃなくて武士か侍になりたい!と、まぁそれに、騎士じゃなくて、俺はあくまで、剣が振れれば良いんよ。今の訓練で十分さ。給料良くても、命掛かってる仕事はゴメンだね。HAHAHA」



ブチッ



「あぁ、そうかいっ!!そうだろうね!!少しでも期待した私がバカだったのさっ!!」

いい加減我慢の限界を超え、イザベラ激怒。
そのままプイと。顔を背け、ズンズンと通りを伸し歩く。
一国の王女である前に、女性としてそれどうよ?てな歩き方。

そんな怒れる姫君を慌てて追いかける和磨。

「おい、どしたんだいきなり?」

無視

「おーい。リザさーん?」

無視

「・・・はぁ・・・いきなり落ち込んだと思ったら次はコレか・・・女心とやらはよーわからん」

無視。
お前が悪いんだこのスカタン。
そんな言葉が喉まででかかるが、あくまでも無視。

「はぁ・・・ん?おぉ。いい物めっけ。リザ。ちょいストップ。買い物ができた」

そのまま和磨は返事を聞かず、店の中へ。

無視。
しようかと思ったが、ここで先に行ってはぐれてしまっては意味が無い。
誠意のある謝罪を聞くまでは無視しなければならないのだ。
そう。これは戦いである。どちらかが先に負けを認めるかの。

そんな良く分からない思考により、店の前で、仕方無しに待つ事しばし。

「丁度いい物があったあった」

言いながら、何かを手に持って店を出てきた和磨。
そしてその場で、左手で杖《木刀》の柄を握り、右手に店で購入した銀細工のイヤリングと、青い石を握り、魔法を発動。

「錬金」

一瞬。
握り締めた右手が光り、和磨はゆっくりその手を開き、ふむふむと。錬金したらしき物を眺める。

「ん。ちょっと色がアレだけど、他は殆どイメージ通りかな」

そう呟きながら、イザベラの下へ。

プイと。
また顔を背ける。

ご立腹の姫君に苦笑しながら、和磨は右の手の平を差し出し

「ホイこれ。刀のお礼」

ちらりと。盗み見るようにして見たそれに、すぐに目を奪われた。

「何・・・これ?蛇・・・じゃないよね」

思わずそんな呟きが零れ出る程、それは美しかった。

「あぁ。それは竜。東洋の。俺の国で伝えられてる空想の竜さ」

鱗で覆われ、立派な角と髭を持つ蛇。否、竜が、鉄の棒。いや、よく見ればこれは、日本刀というやつだろうか?刀の周りに纏わりつくような細工。
そしてなにより。

「この色・・・」

「あぁ。サファイアか何かの原石かな?青い石があったからさ。銀細工のイヤリングと錬成して、リザの髪の色を出そうと思ったんだが、無理だった。それじゃ蒼色じゃなくて、ブルーメタリックなんだよなぁ」

途中から聞いていなかった。
見たことが無い竜。
見たことが無い美しい青銀。
鱗の一枚一枚にいたるまで、細かく作りこまれている。
錬金で。
ここまでしっかりとイメージを持って作ったという事か。

刀のお返しと言っていたが、必要無いのに。
本来、注文だけしていおて、いつか何かの機会にでも渡すつもりだったのだが、今回の決闘は丁度タイミングが良かった。
しかも、勝った和磨は、特に報酬を要求していなかった為、これ幸いと来て見たのだが。
自分の機嫌を直すためとは言え、ワザワザ錬金で精製したのだ。
だが、そんな所もまた、和磨らしいなと。

そう思うと、自然と頬が綻ぶ。
何せ、これは世界で一つだけ。
自分だけの為のハンドメイド。
しかも、こんな美しい細工はこの世界には無いだろう。

いそいそと。店のガラスを鏡に見立て、早速イヤリングを両の耳に付ける。
そんな姿を見て、和磨ホっと一息。

どうやら、姫君はご機嫌を直してくれたようだ。

気難しい―――――和磨主観―――――主を持つと苦労すると、自分の事はどこかに置いといてそんな事を思っていると

「どうだ。似合うか?」

先程とは一転。
花の咲くような笑顔。
太陽のような笑顔と。
恐らく、今の彼女の笑顔を見たら、どこかの国のモグラの主は、千の言葉を尽くして褒めちぎるだろう。
普通の男でも、手放しに賞賛するだろう。

だが、和磨はそんな彼等とは一線を画す。

カステルモールやイザベラをして「妙な所で生真面目」と度々評される和磨は、
だから笑顔で答えた。












「わからん」



・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・


その瞬間。
彼女の笑顔が凍りついた。

「・・・・・・え、今何て?」

あくまでも、笑顔のままで。

「わからん。と。そう言ったの。そういうのは、女のクリさんや他のメイドさん達に聞いてくれ。俺に聞かれてもわからん」

左右に首を振りやれやれと。
そんな事もわからないの?
みたいな感じの和磨。

一秒。二秒。

何秒か。

もう我慢の限界だ。

「こ、ここここここ」

「?」

「こ、こっ・・・こぉ・・・・こぉっ!」

「リザ?どした?」

「殺す」

絶対零度の無表情で、杖を抜き。

「ブレイド」

ブゥン!

「おわ!?あぶねぇ!?今日一日で二番目に死ぬかと思った!」

「そのまま刺ね」

あくまでも、抑揚の無い声でブレイドを突き刺す。

ブォン!

「ちょ!?」

和磨も、慌てて杖《コテツ》を抜き、ブレイドを。
だが、いくらなんでも反撃する訳にはいかない。

「ちょ!ちょっとタンマ!!それ、洒落になってないっすよイザベラさん!!」

「もちろん。私はいつでも本気だ。だから死ねぇ!」

ブン!ブォン!バチィン!ビシィ!

姫君の剣が乱舞。

「あぶ!素人が刃物振り回すな!」

刃物ではないが、似たような物。
下手に防いでも、相手を傷つけかねないので、和磨大苦戦。

「うるさい!うるさい!うるさいっ!うるさあぁいっ!!いいから死ね!刺ね!死ね!市ねぇっ!いつもいつもいっつも!いっっつもっ!!もう我慢の限界だぁ!」

ブォン!
ブン!
ズシャァ!バチ!
ブン!ブン!ビシ!
ブォン!ブシャーン!

ジェダイナイトもかくやと言う程の、大立ち回りを見せる役者二人。
音声さえ入れなければ、このまま映画にでも使えるワンシーンだろう。

「ちょ、落ち着け!マジあぶね!ここ一般市民の皆様がってあっれえええぇぇぇぇ?何で皆さん屋内に非難していらっしゃらあぁぁ!?あぶ!!」

メイジ同士の乱闘など日常茶飯事。
という程頻繁に起こっていないが、リュティスの民にとってこの程度なら寧ろ大した事は無い。なにせ、ブレイド同士で切りあっているだけで、他に魔法が飛び交っている訳でもないのだ。酒の肴に丁度いい。

「遺言くらいは聞いてやる!だからお前マジいっぺんqあwせdrftgyふじこIp!!」

「ちょ、日本語でうをああぁぁぁぁぁ!?」







結局、二人揃ってボロボロの姿でプチ・トロワに帰還したのは、日が沈んでから。
そこで仲良く正座させられ、侍従長様から特大の雷を落とされたとか。
そんなお話。

















以上でした。
戦闘描写ってこんなもんでも平気でしょうかね?
そして相変わらず短かったり長かったりOrz


ついでに。ブレイドを勝手にコモンマジック指定。
何か、メイジみんな使えるっぽいし、コモンでいいかな?と。


2010/07/07修正


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