第二話 魔法・・・それは、人類に残された最後のアルカディア。人はそれを求め、数多の時を(ry
注(タイトルは適当。思いつかなかったOrz
「んぐ!?ん・・・?むんぐあああああぁぁ!あつっいっつううううう!!」
「うひゃ!わ、わきゃーーーーーー!!」
唇を重ねていた男女。
その口付けが終わると、男は急いで服を脱ぎだした。
と、そう書くと実に怪しいシーンだが、実際は少し違う。
「サモン・サーヴァント」で呼び出した使い魔と契約する「コントラクト・サーヴァント」の魔法。
そのやり方は、呪文を唱え、呼び出した使い魔にキスをする事。
そして今まさに、青い髪の少女――イザベラ――は、自分の呼び出した使い魔の青年―――――伊達和磨―――――と契約を交わしたのだが・・・
「お、お、おおおおお前!いきなり服を脱いでどうするつもりだい!?この変態!!」
「っっつ~~~~ばっ、おま、そっちこそっ俺にっ何しやがった!?いつっっ胸がっ!!」
「ふむ。どうやら契約は成功したようですな。使い魔のルーンが刻まれております」
いきなり服を脱ぎだした和磨から、顔を真っ赤にしながら体を離し、自分の体を抱きしめるイザベラ。突然の事で混乱しているのか、少し涙目である。
一方、ルーンとやらを刻まれた和磨はたまったものではない。何の心構えも無しにいきなりキスされ、その上急に胸が痛み出したのだ。言うまでもないが、恋をしたとかなんとか、そういった比喩的な意味でなく。
少し離れてそんな二人を見ながら、冷静に状況を分析するカステルモール。
そして、突然襲ってきた胸の痛み。
そのあまりの痛さに、何が起こっているか確認するために和磨は上着とシャツを脱ぎ捨て、自分の胸を見て息を呑んだ。
見るとそこには、見たことも無い、ミミズがのたくったような記号だか文字だかが浮かび上がっていたからだ。
「なんじゃこりゃああぁぁ!?」
「使い魔のルーンだよ!見りゃ分かるだろ!いいから!さっさと服を着ろこの変態!!」
「ルーン!?ナニそれ!?見てもわかんねーよ!つか、変態じゃねーよ!!そっちこそ、俺に何しやがったんだこのクソアマ!!」
「だ、誰がクソアマだってぇ!?その首刎ねてやろうか!?あぁん?」
「ざけんな!たかがクソアマっつっただけで首刎ねられてたまるか!」
「うるさい!この私に暴言を吐いたんだ!それくらい覚悟できてるんだろう!?」
「知るか!お前何様!?裁判すっとばしていきなり極刑とか、どんだけ偉いんだよ!?」
「私は偉いんだよ!お前みたいな貧相な平民と違ってね!!」
「はあああぁぁぁ?なにそれ?自分で偉いとか・・・・・・・・・おい、お前。日本語話せたのか?」
「ニホンゴ?なんだいそりゃ?それより、お前こそちゃんと言葉喋れてるじゃないか」
「いやいや、俺さっきからずっと日本語しか話してないから・・・どういう事?」
いきなりの異常事態に、お互い混乱し、どうすればいいのかも分からずに怒鳴りあっていたが、少し時間が経ち、冷静になって、言葉が通じる事が分かると二人ともその矛先を収めた。
「彼が我々の言葉を話せるのはルーンの効果。恐らく翻訳のルーンかと。彼の発した言葉を我々に分かる言葉に変換し、また我々の言う事を、彼に理解させる。そんな所ですかな」
「「・・・はぁ・・・」」
相も変わらず、一人冷静に状況を分析するカステルモールの言葉を聞き、二人は息の合った生返事をした。
「で、えーっと・・・とりあえず言葉が通じてるっぽいんで、できれば現状を説明して欲しいんですけど・・・」
とりあえず、上着を着直して、その場にあぐらをかいて座る和磨は、話を聞いてくれそうな人物。カステルモールへと視線を向けながら問いかける。
「うむ。その前に一つ確認だ。君はガリアの民では無いのだね?」
「ガリア?いえ、俺は日本人。日本国民ですけど」
「ニホン?聞いたことが無いが・・・まぁいい。とりあえず、ここはガリア王国。首都リュティスだ」
「はぁ・・・というか日本知らないんですか?結構有名だと思うんだけど」
「ふむ・・・聞いたことが無いな。姫様はご存知ですか?」
「いや、私も聞いた事無いね」
「はぁ。まぁんじゃそれは置いといて、どうして俺はここに?最近話題の拉致とか、そういうのって訳じゃなさそうですが」
「違う」という答えを期待しての問いかけだったが、その返答は和磨の予想外の物だった。
「うむ。まずそれを説明する前に、確認だ。君は魔法が使えるかな?」
は?
魔法?
魔砲?
マホウ?
MAHOU?
あれか?
この世に生を受けて三十年。
人間の三大欲求の内の一つである性欲を、自身の強靭な精神力で押さえつけるという、壮絶な修行をこなす事で得られるとかいう、あの伝説の魔法の事だろうか?
どちらにせよ自分はまだ三十路に行ってない
「いや、魔法って・・・勿論そんな物使えませんけど、手品の事じゃないですよね?」
「手品?いや、違うな。いいかね?魔法とは―――――――」
その後、しばらくカステルモールによる説明が続いた。
最初のうちは「魔法?なにそれおいしいの?」という感覚で説明を聞き、「何この人たち。もしかして怪しい宗教団体か何かですか?」と思い始めた所でカステルモールによる説明が終わった。
「えっと、つまり、その「サモン・サーヴァント」とやらで俺が呼び出されて、今こうして話していられるのはあのキs・・・「コントラクト・サーヴァント」の魔法のおかげと、そういう事ですか?」
「キス」と言いかけた所で、青い髪の少女に睨まれて言葉を切る。
思い出させないで欲しいのか、単純な羞恥心か、はたまた怒りからか、イザベラの顔は真っ赤に染まっていた。
「要約するとそうなるな。そして君はこちらに居られるイザベラ姫殿下の使い魔になったと言う訳だ」
「はぁ・・・えと、とりあえず家に帰してくれませんかね?使い魔云々は置いといて、連絡なしにいきなり居なくなると迷惑かけちゃうし」
「そうは言っても、召喚した使い魔を送り返す魔法というのは存在しなくてな・・・」
「あ~、別に魔法とやらじゃなくてもいいですから。電車とか飛行機とか船で。無ければもう車でもいいんで。とりあえず、連絡先を教えて頂ければ折り返し電話しますんで」
完全に彼らの事を怪しげな宗教団体か何かだと思った和磨は、とりあえず一旦帰宅し、警察に連絡。後は彼らに任せようと決め、どうにかして帰ろうとしていた。
「ヒコウキ?とやらは分からんが船はある。だが、そもそも君の言うニホンという国の場所が分からんしなぁ」
「んじゃ、地図見せてもらえますか?国内のじゃなくて世界地図で」
「ふむ・・・まぁそれくらいなら良いだろう。姫様。地図を取って参りますので、少々お待ちください」
言いながら、一礼して退室するカステルモール。
彼はそのまま、プチ・トロワ内にある書庫へと向かって歩き出す。
「これは好機だ」
誰も居ない廊下で、ポツリと呟いた声だけが響いた。
オルレアン公爵が殺害されて以来。
オルレアン派の者達から「裏切り者」と後ろ指を指されながらも、本心を隠して現王ジョセフに頭を垂れて来た。
決して自分がオルレアン派である事を感づかれないよう、今日まで慎重に行動してきた。
少しづつ、仲間を増やしながら。
今日もこの後、仲間達と訓練と称した会合がある。
その場でカステルモールは、ある提案をする事を決めていた。
「簒奪者の娘が人を使い魔として召喚したのは、始祖様が我らに与えたもうた幸運」
人。
カズマ・ダテと名乗った異国の青年。
彼をうまくこちらに引き入れ、そこからイザベラを操り、現王派を「イザベラ派」と「ジョセフ派」の二つに割る。
そこでお互い相争わせる事で双方の力そ削ぎ落とす。
失敗しても、王がイザベラを処分するというお家騒動でどちらにせよ元王派の力を削げる。
その際、可愛そうだが平民の青年の口を封じれば自分達まで飛び火もしない。
それが、先程カステルモールが思いついた計略であった。
「所詮魔法もろくに使えぬ無能姫。操るのも容易い」
それに、カズマ。
彼はどうやら故郷に帰りたがっている様子。
だが、そこを権力を使い上手く押しとどめ、それをさせているのがガリア王ジョセフであるだのなんだの、ある事無いこと吹き込んで協力を取り付けるなり、自分達に協力すれば故郷に帰す手助けをすると取引を持ちかけるなり、方法はいくらでもある。
「まずは、なるべく彼と親しくなる所からだな」
今後の予定を考えながら、彼は無表情で資料室へと入って行く。
表情からは、彼が何を考えているのか読み取ることが不可能。
その顔こそが、彼が優れているのが武力だけではない事の証明。
それが、陰謀渦巻くガリアの官邸で、若くして騎士団長となった男。
バッソ・カステルモールのもう一つの顔である。
一方、そんなカステルモールの考えなど露知らず、一人。いや、正確にはもう一人と、合わせて二人で部屋に残された和磨は、カステルモールが戻ってくるまでこのなんとも言えない空気をどうしようかと頭を悩ませていた。
なんというか、気まずい。
宗教だの魔法だのいろいろな事はとりあえず置いといて、先程からこちらをジーっと見つめる。いや、観察していると言った方が正しいだろうか?ともかく、その視線に耐えられなくなってきていたのだ。
とりあえず、何か話そうかな
「・・・・・・なぁ?」
「っ!な、なんだ!?」
イザベラは、つい先程自分が召喚した青年を穴が開くほど凝視していた。
平凡な顔。黒い髪に黒い瞳。
一見パッとしない男。
だが、先程の戦い。
彼はあの、東薔薇騎士団長を勤めるカステルモールを相手に、真正面から挑みかかった。
その気迫は凄まじく、いくらか騎士の訓練風景を見たことのあるイザベラだが、今まであんな気迫を見た事が無かった。
気迫だけなら、カステルモールをも凌駕していたのではないだろうか?
少なくとも、周囲を囲んでいた騎士達は彼の気迫に気圧されていた。
結局、魔法を使われて負けてしまったが、最後のカステルモールの様子から見るに、魔法を使ったのは想定外だった様子だ。
つまり、それだけ目の前の男に脅威を感じたと言う事だろうか?
そう思うと、今朝からの苛立ちが嘘のように消えていった。
「メイジの実力をみたければ使い魔を見よ」
と言われる程、メイジと使い魔は深いつながりがある。
そして、無能だの出来損ないだのと言われてきた自分が召喚した使い魔が、ガリアの誇る花壇騎士団の団長に一泡吹かせた。
たったそれだけで、彼女には十分だった。
ほんの少しの優越感。
今まではどんなに望んでも、それは決して手に入らない物だったのだから。
そして、自分にそんな気持ちを抱かせてくれたこの平民の使い魔。
彼は確かに平民で、本来自分とは口を利くような身分では無いし、ましてや不敬罪になるような発言をしてはいるが、それでもある程度大目に見てやろう。
そんな事を考えていた所、突然話しかけられ、驚いてしまった。
「いやさ、えーっと・・・」
意を決して話しかけてみたが、言葉が続かなかった。
声をかけたのはいいけど、何を話したものか
1、「ここって教団員どれくらいいるの?」
2、「結局、どうやって俺をここに連れてきたのさ?」
3、「いきなり知らない男にキスするのって、嫌じゃない?」
4、「君も大変だねぇ」
・・・我ながらろくな選択肢が無い。
どれも却下だ。
と、そこまで考えてふと思いついた。
「そういえば、お前、名前は?」
「ん?さっき聞いて無かったのかい?イザベラだ」
アレって、名前だったのか・・・
地位とか階級とか、なんか役職とかそういうのかと思ってた。
「ふーん。まぁ、とりあえずよろしく?でいいのか?リザベラさん?」
「『リ』じゃない!『イ』だ!イ!イ・ザ・ベ・ラ!!」
「いざべら・・・言いにくい。リザベラでいいじゃん。ついでに長いから短縮してリザで」
「んなぁ!?お、お前!平民の癖に王女であるこの私の名前を、よりによって言いにくいからって理由で勝手にっ・・・ふざけるんじゃないよ!!」
「はいはいおーじょさまおーじょさま。偉い偉い。それより、リザはここで何してるのさ?」
「バカにしてるだろ貴様あああぁぁぁぁ!!」
拳を振り上げ、顔を真っ赤にして怒るイザベラを見て、
「あぁ・・・こいつをからかうのって面白い」
などと少し妙な考えが浮かんでしまった。
イカンイカンと軽く頭を振るが、口元はニヤケている。
なんというか、寝ている猫にちょっかいをかけたくなる時の気分と似ている。
そんな事を少し考えている間に、目の前の青い髪の娘は次第にヒートアップしていく。
しかし、普段から相当ストレスを溜め込んでいるのか?最初は罵詈雑言だったのが、今じゃ愚痴っぽくなってきてるぞ?「どいつもこいつも~」や、「ボンクラ貴族共が~」等。
やがて、一通り吐き出して落ち着いてきたイザベラを見て、ふと、和磨は疑問に思った事を口にした。
「なぁ、リザ。その髪って地毛?」
「はぁ・・・はぁ・・・イザベラだと何度も・・・もういい疲れた。あぁ。そーだよ。この国の王族の証さ」
怒鳴りつかれ、肩で息をしながら、ペタンと和磨の隣に腰を下ろしたイザベラが、投げやりながらも答えた。
「ほぉ~、すごいな。そんな髪、染めてる奴以外見たこと無い。染めてるのでもそんな綺麗な蒼色なんて居ないんじゃないかな?」
「そ、そうなのか?」
「あぁ。ほ~、ふ~ん」
言いながら、じっくりとイザベラの髪を見る和磨。
唐突に、こんな事を呟いた。
「なぁ、触ってもいい?」
「へ!?あ、いや、私の髪にか!?」
いきなり「触って良い?」と聞かれた時、イザベラは何処に!?何に!?と一瞬狼狽したが、今までの話の流れと、彼が自分の顔。
正確には髪を見ているのに気がついて、和磨の考えを理解した。
「あぁ」
「なっ!なんでさ!?」
「いや、ただなんとなく。良く手入れしてあるっぽいし、触ったら気持ちよさそうだな~と思ってさ」
「・・・・・・・・・・・・いいよ。どうしてもって言うんなら」
「んじゃ、遠慮なく」
言いながら手を伸ばし、和磨はその蒼い髪を撫で付ける様に触れた。
イザベラは最初「駄目だ」と断るつもりだった。
だったのだが、よくよく考えてみれば、髪の毛を褒められたのはこれが初めてだった。
自分の髪なのだから当然かもしれないが、彼女はこの蒼い髪がお気に入りだ。
王族の証としての蒼。
魔法が上手く使えない自分に、王族であるという誇りを持たせてくれている蒼。
毎日念入りに、自身の手で手入れをしている。
そんな髪を、今まで誰も褒める事は無かった。
社交界や謁見やらで自分に頭を垂れる貴族達は、皆自分を「美しい」と賞賛するが、所詮社交辞令でしかなく、またそれは「ガリアの王女」への言葉であって、イザベラへの言葉では無い。
それが分かってしまう程鋭かったのはある意味不幸と言うのだろうか。
それはさて置き、和磨の言葉は、そんなイザベラには心地の良い物だった。
単純に思った事が口に出たのであろう。
だが、それはどんなに綺麗に飾り立てられた賛美の言葉よりも嬉しかった。
だから思わず頷いてしまったのだが
「おぉ~」とか「すげー」だとか言いながら蒼い髪をゆっくり撫でる黒髪の青年。
そしてほんのりと頬を赤く染め、俯くというなんとも珍しい姫君の姿が、カステルモールが地図を抱えて戻ってくるまでの間、王女の執務室で見られたとか。
あとがき
あんまり進んでないですね。申し訳ないOrz
とりあえず、第二話投稿です。
ちょっと意見を聞かせて欲しいのですが、視点変更とかって入れたほうがいいですかね?「~サイド」だのと。
一応、分けて書いているつもりなのですが、書いてる本人が分かってても読み手に正確に伝わっているかどうかが少し不安で・・・
2010/07/07ちょっとだけ修正