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No.19454の一覧
[0] ゼロの使い魔 蒼の姫君 土の国物語 (オリ主[タマネギ](2010/07/26 18:23)
[1] 第一話 二人の出会い[タマネギ](2010/07/07 21:51)
[2] 第二話 魔法・・・それは、人類に残された最後のアルカディア。人はそれを求め、数多の時を(ry[タマネギ](2010/07/07 22:02)
[3] 第三話   ハルケギニア[タマネギ](2010/07/07 22:17)
[4] 第四話   就職?[タマネギ](2010/07/07 22:26)
[5] 第五話   姫君の苦悩[タマネギ](2010/07/07 23:19)
[6] 第六話   魔法と印[タマネギ](2010/07/07 23:52)
[7] 第七話   騎士見習い[タマネギ](2010/07/08 00:08)
[8] 第八話   決闘と報酬[タマネイ](2010/07/08 00:36)
[9] 第九話   王の命令[タマネギ](2010/07/08 01:07)
[10] 第十話   リュティスに吹く雪風[タマネギ](2010/07/08 01:18)
[11] 第十一話   姫君の意思[タマネギ](2010/07/08 01:34)
[12] 第十二話   王の裁き[タマネギ](2010/07/08 22:37)
[13] 第十三話  名も無き丘で[タマネギ](2010/07/08 23:10)
[14] 第二部 第一話   使い魔  (一部修正[タマネギ](2010/07/27 15:53)
[15] 第二部 第二話   日常   (旧タイトル 新撰組 大幅に修正しました[タマネギ](2010/07/26 18:58)
[16] 外伝  異世界の事変[タマネギ](2010/07/10 12:48)
[17] 第二部 第三話   王。再び[タマネギ](2010/07/21 21:30)
[18] 第二部 第四話   魔法学院[タマネギ](2010/07/21 20:52)
[19] 第二部 第五話   休養[タマネギ](2010/07/21 20:52)
[20] 第二部 第六話   戦場[タマネギ](2010/07/24 08:50)
[21] 第三部 第一話  光の国[タマネギ](2010/07/26 20:06)
[22] 第三部 第二話  北花壇騎士[タマネギ](2010/08/01 23:10)
[23] 第三部 第三話  吸血鬼[タマネギ](2010/08/02 01:18)
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[19454] 第二部 第五話   休養
Name: タマネギ◆52fbf740 ID:60f18e82 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/07/21 20:52









第二部 第五話   休養










ケンの月も既に半ば。
和磨とイザベラがリュティスの魔法学院に通学し出して、既に半月が経過していた。
最初こそ、その蒼色の意味を理解する子供達は、彼らにどう接すれば良いのか分からず距離をとっていたのだが、ジャンヌ・ダルクとジル・ド・レーエの二人が普通に会話をしているのを見て、少しずつ。他の子供達も二人に話しかけたりするようになってきていた。
そうなって来ると、護衛だなんだといよいよ忙しくなるのが和磨なのだが、彼はそれを相棒に。つまり、自分の使い魔である銀狼ガルムに押し付け・・・もとい、任せた。
ここリュティス魔法学院ではトリステインにある魔法学院と同じように、二年生の進級試験に使い魔召喚の儀式が取り入れられている。しかし、家の事情などで既に使い魔を召喚している子供も居るので、事前に学院側に届出をしておけば代わりの試験が用意される。
その制度を利用し、和磨は己の使い魔ガルム(子犬)を、イザベラ。エリザベータの使い魔として学院に申請。受理されたので、現在彼女は子犬を連れて授業に参加している。



ゴ~ン。ゴ~ン

学院中に響く大きな鐘の音と共に、本日の授業も何事も無く終了。
すると生徒達は、思い思いの放課後を過ごすべく行動を開始する。
ある者は真っ直ぐ家に帰り、ある者は友人達とお茶を楽しむ。またある者は魔法研究塔に向かうなど、様々。
そもそも、このリュティス魔法学院に学生寮はあるが、それは全寮制の為では無く、外国や地方。もしくは、事情のある家の子供達のための施設であり、多くの子供達はリュティスにある家、または別邸から直接通学している。
何せここに通学できるような大物貴族は大抵、領地にある屋敷とは別にリュティスに別邸を持っているので、わざわざ全寮制にする意味が無い。
そんな訳で、授業が終わってからは特にする事も無い者達は、ダラダラと会話なりお茶なりを楽しむなりなんなりと過ごしているのだが

「・・・・・・エリザ。一体何をやっているんだ?」

金髪の少女。ジャンヌは、最近出来た友人。蒼髪のエリザベータことエリザの背中に話しかけた。
彼女は今、廊下の角から頭だけを出し、何かを観察。いや、追跡している。対象が移動するにつれ、遮蔽物に隠れるようにしながら移動、追跡する姿は、傍から見るに非常に怪しい。
しかしまぁ、本人は真面目にやっているらしい。声をかけたジャンヌに振り返り、人差し指を口に当て「し~っ」と。
良く分からない行動に首をかしげながら、とりあえず。彼女も一緒に物陰に隠れ、今度は小声で

「それで?何をしているんだ?」

「アレだ。アレ」

ちょんちょんと、指差した先を見るとそこには黒髪の青年。そして

「あれ、ジル?お~っむぐ!?」

大声で叫ぼうとしたジャンヌは、突如。後ろから羽交い絞めにされ、その口を塞がれた。

「ぷは!エリザ!いきなり何を!」

「静かに!見つかるだろ!?」

叫ぶジャンヌの頭を押さえつけ、声を落とす

「ここ最近。放課後になるとあの二人、良く一緒に出かけてるみたいなんだよ」

「そういえばそうだな。最近ジルの奴、屋敷に帰る時間が遅いと思っていたら、カズマと何処かに行っていたのか」

ちなみに、彼女。ジャンヌとジルは同じド・レーエ家のリュティス別邸で生活している。

「そうだ。カズマも最近、城に戻る時間が遅いんだよ。何処に行ってたか聞いても「ちょっと野暮用」としか答えないし・・・」

「ふ~ん・・・ん?城?」

「あ、いや、ゴホン。とにかく!何をしているのか知らないけど、気になったから後をつけてみようと思ってさ。ジャンヌはどうする?」

「ふむ、そうだな。とりあえずアレだ、私にまでコソコソと隠す事が気に入らん。よし!エリザ。つけよう!」

こうして少女二人。物陰から物陰にサササっと移動しながら、談笑しながら歩く和磨とジルの後を追う。その姿は大変に不審なのだが、彼女達はそんな些細な事を気にしない。イザベラの腕にグッタリしている子犬が―――最初和磨の行動について尋ねられ、知らぬ存ぜぬを貫いた―――抱かれているのも、些細な事。

そんな二人、付かず離れずでしばらくすると、やがて。
和磨とジルは街外れの森の中へと入って行った。

「こんな森の中で・・・何するつもりなんだ?」

「さぁ?」

二人して首をかしげながら後を追う。
少しして、森の中から何かを切る音と、重くて大きい物が倒れる音が聞えてきた。

「あれ、カズマだ。何だ?木を切っているのか?」

ザシュ!

ズシ~ン!

ザン!

ズド~ン!

イザベラの言葉の通り。和磨は木刀にブレイドを纏わせ、次々に木を切り倒していく。そして後ろに控えるジルが、杖の先から伸びる水の鞭を器用に操り、切り倒された木をの葉を落としてから次々と。予め用意されていたのであろう荷車へと載せていく。
そ作業を延々。
二人は荷車二台分が一杯になるまで繰り返し、やがて。作業を終え、何やら二、三会話をしながら二人。荷車を引いて引き返してきた。

「やば!こっちに来る!隠れろ!」

「あ、あぁ!」

彼らの進路上に居た二人は慌てて木の陰に身を潜める。
すると彼らが近くを通りかかった際に、其の会話の一部が聞えてきた。

「ふ~。とりあえず、コレで最後かな?」

「だな。もう十分だろ。後は足りなくなったらまた採りに来れば良い」

「それじゃ、後はいよいよ」

「あぁ。さて、上手くいくかどうか・・・」

「大丈夫だって。ボクも出来る限りの事はするから」

「そか。いやぁ、悪いねぇ」

「今更でしょ。気にしないでよ」

ガラガラゴロゴロ

荷車を引く音が遠ざかり、ホっと安堵の息二つ。

「しかし、あんなに木を切って、一体どうするつもりなんだろう?」

「さぁ?」

最初、自分達に隠れて男二人。何やらよからぬ企てでもしているのではないか?と疑っていたのだが、それは今も変わっていないが、ともかく。いよいよをもって彼らが何をしているのかが気になってきたので、再び尾行再開。





しばらくすると、彼らはリュティス東部地域。最近、ハルケギニアで最も治安の良いとされる地域へと入り、ある建物。いや、空き地の前で停止した。荷車の木材を次々と、魔法を使って空き地に下ろしていく。

空き地の広さは丁度1アルパン―――約0,33平方km―――程。そしてその空き地には何本か。所々に地面から木の柱が生えて、いや、建っている。
また端の方に先程の木材と同じように、切られた木が山となって積み上げられている。その上には雨避けだろうか?大きな布。
何かを建設途中の土地。その表現が当てはまる様な光景だが、一つ決定的に足りないのがある。人。そう、建物の建設には普通多くの人手が要るのだが、現在この空き地にはたった二人しか居ない。それが不自然で

「おーい、何時までそうやってコソコソとしてるつもりだ?」

ビクッ!

尾行がバレているとは欠片も思っていなかった二人は一瞬、体を硬直させ、そのせいでバランスを崩し、二人して前のめりにすっ転んでしまい、その姿を晒してしまった。

「で、どうしたのさ?二人とも」

和磨の隣。ジルもこちらを見て、不思議そうに首をかしげている。
対してジャンヌとイザベラは、あはははと乾いた笑いで誤魔化し

「いや、その・・・えっと・・・いつから?」

何時から気付いてた?との姫君の問いに、和磨はやや呆れ気味に嘆息してから

「俺、これでも風のメイジなんですけど?それと・・・」

風のメイジは音に敏感である。まぁ、それ以前にアレだけ大声で騒いだり不審者丸出しの行動をしておいて、尾行に気が付かれていないと思う方がどうかしていると思うのだが、ソレは口に出さず。
和磨は続きを言わず、未だイザベラの腕の中でグッタリしている子犬へと視線を向ける。
その動作だけで、彼女は理解した。

そう言えば、コイツ《ガルム》はカズマの使い魔だった!?

彼女自身すっかり忘れていた。というか、当たり前すぎて意識すらしていなかったというか、ともかく。和磨の使い魔であるガルムに刻まれたルーンは共感のルーン。五感を共有し、離れていても意思疎通ができるオーソドックスだが便利なルーンだ。だから和磨は彼女の使い魔としてガルムを傍に置いておくだけで、常に警戒しておける訳だが、今回はそれを逆手に・・・というか、忘れてた彼女達の落ち度―――実際はそんな物使わなくても気付いた訳だが。ちなみに、ガルムが知らないのは本当。彼にも説明されていなかったし、平時に感覚の共有なんて使っていないのだから分かるはずもない―――。

どう言い訳しようかと頭を悩ませるイザベラだったが、対してジャンヌは勢い良くその場で立ち上がり

「えぇい!面倒だ!お前達こそ!二人してコソコソと一体何をしているんだ!」

ドーンと、そんな効果音すら聞えてきそうな程、堂々と。ビシっと人差し指を向け、さぁとっとと吐けと言わんばかりの態度。

それを見て一瞬呆気に取られた和磨とジルは、互いに目を合わせて苦笑。

「まぁ、別に隠す事じゃないよな?」

「うん、良いんじゃない?というか、何で今まで黙ってたのさ?」

「別に黙ってた訳じゃなくて、説明が面倒だったんで聞かれても適当に流したら、リザがそれ以上追求してこなくて・・・・・・」

「それ、やっぱりカズマの責任だよ。面倒なんて言わずにしっかりと説明してあげなきゃ」

「いや、しかしだなぁ・・・何と言うか、こう、男のロマン?みたいな。こういうのは」

「う~ん、それは分かるけど、やっぱり何の説明無しってのはねぇ・・・」

「ゴチャゴチャと!一体何の話しをしている!」

「そうだ!良いからとっとと話せ!」

いつまで経っても話が進まない事に焦れたジャンヌと、同じく姫君が叫ぶ。

「とは言って何をどこから話せばいいのか・・・そうだなぁ、アレは丁度、二週間くらい前だったかな?俺とリザが入学して少ししたころか」





その日。二人が学院に入学してまだそんなに日が経っていない日。
授業が終わった所で、ジャンヌの「学院を案内してやろうか?」との申し出をイザベラが快諾。和磨も誘われたが、彼はそれをやんわりと断ったため、二人して教室を後にした。
一人残された和磨は何枚かの羊皮紙を眺めながら、腕を組んで何やらうんうんと考え込んでいる。
教師に何か言われていたジルが戻ってきて、そんな和磨に声をかけた。

「何を悩んでるんだい?」

「ん?あ~、ジルか・・・うん、まぁ~・・・ん~・・・」

「?」

言葉を濁す和磨の姿を、相変わらず笑顔のまま首をかしげながら眺めるジルは、つい先日できた友人の事について少し考えていた。



蒼と共に、彼女を守るように。いや、実際に護衛の任務で入学してきたのであろう騎士《シュヴァリエ》の称号を持つ剣士。
最初、いきなりジャンヌが声をかけた時は正直、相手を選んで話せ!と叫びたかったけど、まぁその程度はいつもの事だ。後はボクが上手く場をまとめて誤魔化すなり、何なりすれば良い。そう思いながら話しかけたんだけど、コレが意外に。彼との会話は中々、いやかなり楽しかった。騎士である事を鼻にかける事もせず、自己紹介をしても特に態度を変えようともしない。―――後で知ったが、彼は本当にボクの家の事を知らなかったらしい―――ここの生徒は大抵、家の事を知ると、ボクが三男のクセに魔法学院に通えるという家の力やら何やらに対して、やっかみやら怯えやら、もしくは実家から何か言われているのかな?どっちにしろ距離を置こうとする。けど、彼はそんな事どうでも良いとばかりに全く気にしなかった。
そんな態度が新鮮で、それと彼の人柄のせいもあってかな、ついつい話さなくても良い事まで話しちゃったけど、結果が良かったからそれも良いさ。
ジャンヌとの決闘の時も、木剣で戦おうとした時は本気で怒った。彼女を舐めているのかと、思わず怒鳴りそうになるのを堪えるのに必死だった。けど、彼はそんな気は一切無かったらしい。お姫様が言ったように、木剣の方が遠慮無く戦えると、後で聞くまでも無く、彼は本気で戦っていた。決闘が終わった時も、自分の勝利だなんんだと言わずに、ボクの意図を察してジャンヌを宥める為に自分から負けだと言ってくれた。あれからも良く話すけど、彼もなにやら、色々と事情があるらしく大変そうだ。それになにより、彼も相方に対してかな~っり苦労しているらしい。何か、こう、シンパシーを感じてしまったよ・・・。そんな彼が、久々に、というか、学院に来て初めて出来た友人が悩んでいるなら、出来る限り力になろうかな。



「カズマ。何か悩みがあるなら、ボクで良ければ相談に乗るよ?コレでも色々と君達の事情は理解しているつもりだし」

「あ~、いや、ソッチは関係無くて・・・なんつ~かなぁ・・・」

「え?」

てっきり公にできない事柄について悩んでいるのだと思っていたジルは、呆気に取られて聞き返してしまった。

「ん~、そうだなぁ・・・こういうのはやっぱ、頭良さそうな奴に聞いたほうが良いのかな?それに、同じ男だし」

何やらブツブツと。そして、決断。

「なぁ、ジル。コレ見てくれ。どう思う?」

「いや・・・どうって・・・コレ、何?」

和磨がカバンの中から取り出したのは木製の箱。
蓋を開けると、中には木製の家が。
箱庭、という物をご存知だろうか?小さな箱の中に作られた庭付きの建造物のプラモデル。簡単に言うならそんな感じ。とは言っても、和磨が取り出したのはプラスチック製では無く、草木も建物も全部木製だったが。

「ん、家だよ。錬金で作ってみたんだけど、どう?」

「へぇ、変わった作りだね」

「あぁ。俺の国で昔作られてた武家屋敷ってのをモデルにしてるんだけどさ」

「ふんふん。それで、コレがどうかしたの?」

「ん~・・・実はさ」



少し前に。入学祝い、っと言う訳では無いのだが、まぁタイミング的にそんな時期。和磨が仕切っている組織―――別に仕切っている訳でも無いが―――リュティス東部組織連合。新撰組の幹部一同より、一枚の羊皮紙を渡された。
何かと、問いながら内容を確かめるとなんと。ソレは土地の権利書だった。
権利書と言っても、リュティス周辺の土地は全て王領。王政府の土地である。そしてここガリアの土地は全て、王侯貴族の所有物であり、平民に所有する権利は無い。平民達は税金を納める事により、その土地に住まわせてもらっていると、そんな感じである。だからコレは「この土地に住む権利を譲渡します」と、そう言う物であり、現代の様に土地そのものの所有権では無いのだが、それは余談として。
この土地はリュティス東部にある、とある商会の本店になっていた元貴族の屋敷だった。そして件の商会は、最近大変治安の良い東部で業績を伸ばし、仕事が増えて収入も増加したため、かなり昔に建てられ古くなっていた屋敷であり、修繕費用がかかる上に本店として手狭になってきた屋敷を、丁度良い機会だと、治安維持に貢献している新撰組への感謝と、これからもよろしくという、まぁある種の賄賂として、格安で譲渡したと言う事らしい。
しかし彼らもそろそろちゃんとした本部を建てようと、色々と根回しやら金策やらをしていたので、古くなった屋敷は正直要らないのだが、無下に断る訳にも行かず。
どうしようかと協議した結果、ならば局長の入学祝いにと、誰かが言い出してそのまま。
しかし、和磨も家なんぞ貰っても意味が無い。何せ彼はプチ・トロワに立派な部屋が用意されている訳で、新しく屋敷を貰っても使い道が・・・・・・・・・そこまで考えて、ある事を思いついた和磨は、彼らの好意に甘えて屋敷を譲ってもらう事にした。
とは言え、さすがにタダでというのは気が引けるので、買い取るという形で。それでも騎士年金全てと、近衛の給与の半分程しか使わなかったのでまだまだ金銭に余裕があるのだが。




「まぁ、そんな訳で屋敷を建てようと思ってるんだ」

「それで、今ある古くなったって屋敷は壊すの?」

「あぁ。解体して材料としてリサイクルしようかとね。この世界は固定化とか錬金って便利な魔法があるからさぁ」

「ふ~ん・・・まぁ、それは良いとして。それで、一体何を悩んでるのさ?」

「あぁ・・・実は、っつか、そもそも俺に建築の知識なんぞ無いから、外見はこうだ!ってイメージはあるんだけどさ、実際に建てるとなると上手くいくかどうかが」

「て、ちょっと!?もしかして一人で建てるつもりなの?」

「ん?そうだけど?」

何を当たり前な事を聞いてるの?ってな感じの顔をした和磨に、笑みを引きつらせながら叫ぶジル。

「いや、いやいやいやいや。普通、そういうのは職人に頼むんじゃないの?もしかして、お金足りないからとか?」

「ん~・・・金はまぁ、多分足りるかな?でもさ、こう言う建物を建てられる職人って、多分こっちには居ないんじゃないかな?それに」

「それに?」

和磨の言う通り、ハルケギニアの建造物とは異なる武家屋敷(の様な物)を創れる職人など居ないだろう。外見は同じように作れるかもしれないが、中身が彼のイメージと異なるかもしれない。
それになにより。
和磨は少し楽しそうに笑いながら

「こういう、秘密基地っての?まぁ日曜大工の延長でも良いけど、そういうのって、やっぱ自分の手で作りたいじゃん」

それを聞いて、ジルも笑顔でうなずいてしまった。

「そっか・・・そうだね。ところで、それをボクに話したって事は」

「あぁ。良かったら手伝ってくれないかな?って言おうとしたの。こう、細かい計算とか、そういうの得意そうだろ?ジルってさ」

「うん。良いよ。というか是非。楽しそうだし」

なんだかんだで彼、彼らにもそういう子供な部分があった訳で。
以来、二人して武家屋敷モドキの建築に取り組んでいる。
最初、学院の図書塔に行って資料を探してみたが、当たり前だが貴族が通う魔法学院に「正しい武家屋敷の建て方」なんてハウトゥ本なんぞあるはずも無く。しかし、彼らは諦めるどころかますます闘志を燃やし、和磨の拙い建築の知識と、ジルの計算によりどうにか図面に書き起こし、現場へ。
まずは古くなった屋敷の解体作業。これは、魔法を使って次々にバラして行った。
そうして新地にした土地の、まずは地面を掘り返してしっかりと基礎を組む。
とはいえ、二人とも専門では無い上、和磨の聞きかじった程度の知識を元にしているので、ソレは本職が見れば呆れるほどお粗末な物となったが、それでも。硬化、固定化という魔法の恩恵により、見た目以上にしっかりと基礎が打てた。
そして少しずつ、森から木材を切り出し、運び込み。いよいよ予定の材料が揃い、いざ本格的に建設開始と、言う所で


「そこに、不審者が二名。俺達の後をつけてきましたとさ」

「というかジャンヌ。何で最初からボクに聞きに来なかったの?別に隠してた訳じゃないから、誰かと違って面倒だからなんて理由で適当に誤魔化さなかったのに」

「いや・・・それは・・・エリザが・・・」

「おい!私のせいにするなっ!というかそもそもカズマが最初に話していればだなぁ!」

「いやいや、リザが追求しなかったからじゃね?」

「いや、ソレは君が悪いと思うけど」

やいのやいの。

そのまましばらく、四人してあーだこだと話続け、ゴホンと。イザベラが咳払いをしながら

「とにかく!私も手伝ってやる」

続いてジャンヌも、胸を張りながら少し偉そうに。

「うん。そうだな。私も手伝ってやろう」

「だってさ。どうする?カズマ」

「いや、まぁ別に最初から隠してた訳でも無いしなぁ。でもこういうのって男のロマンというかだなぁ」

「だよねぇ、それ、分かる気がする」

「おぉ、分かってくれるか友よ!」

「うんうん。女性にはこういうのって分からないと思うんだよね」

「だなぁ」

何やらうんうんと、お互いの言にうなずきながら会話する男二人を見て、いい加減焦れた二人は声をそろえて怒鳴った。

「「ごちゃごちゃうるさい!」」

和磨とジルにしても、絶対自分達でやるんだとか、そんな気は元々無く、ただなんとな~く、こう、男だけでやりたいよね~とか、そんな感じだったので結局。
彼女達も加え、武家屋敷モドキ建設は四人+一匹で行う事になった。
実際、四人になってからの作業は早かった。

まず、ジルが計算した図面に従い、ジャンヌがブレイドを使って木を切る。次に、ジルが切っただけの木を錬金の魔法でそれぞれの部品として加工。それを、イザベラがレビテーションで浮かせ、和磨の下へ。最後に、ガルムに位置の微調整をやらせながら、和磨が運ばれてきた木材と柱とを錬金でつなぎ合わせ、元から一つであったかのように作り変える。

本来、日本の木造建築は構造部分に関しては釘を使わない「仕口工法」という木組みで柱と梁を固定している。つなぎ目同士をパズルのピースの様にしてつなぎ合わせたりと。そして木材にしても、切り出した物をそのまま使うのでは無く、日干しにしたりなんなりと一手間加える必要がある。それに、大地に根をはっていた所の状況によって木材になっても曲がったり、真直ぐになったりと、木を使う場合、土台に向く木なのか柱や梁に向く木なのかを見誤らずに、なおかつ曲がった木は曲がったなりに、真直ぐな木は真直ぐなりに使うということが、本当の木の性質を活かすということで、構造として長持ちもする。「適材適所」とはよく言ったもので、それは本来。綿密な計算と熟練の業が無ければ出来ない事だ。
断じて、それらの事を少し知っているだけの素人には出来ない。

しかし、彼らはそれを可能にした。彼らというか、彼。和磨がと言うか。

「うん。やっぱ魔法ってのは素晴らしいな」

錬金しながら呟いた和磨の一言に、イザベラはいつか彼が言っていた言葉を思い出した。

「魔法には魔法でしかできない事もある。だったか?」

「ん?リザ、何か言った?」

「いや、昔お前が言った事だよ」

「カズマ、そんな事言ったのかい?」

新しい木材の加工を終えたジルが話に入ってきた。

「ん~・・・言ったっけな・・・言った気が・・・しないでも無いけど覚えてないというか・・・」

はぁ。姫君の溜息が聞えるなか、ジルは苦笑しながら続ける。

「いや、でも本当に、君の言う通りだと思うよ」

現在彼らがやっている事も、本来ならもっと人手が要る。それ以前に、ジルが和磨から聞いた話によると、素人が思いつきだけでできる作業では無いと。そう思い、彼は最初に和磨に聞いたのだ。
「君の話からすると、素人のボク達には出来ないんじゃないの?」
すると和磨は、ニヤリと笑い
「何言ってるんだよ。俺達はメイジ。魔法使いだぞ?素人でも、魔法が使えりゃなんとかなるさ。その為の魔法だ」
最初意味が理解できなかったが、いざ建設を始めるとその意味が理解できた。
切った木から何かを作るのではなく、加工の為に錬金を使用する。曲がっている繊維を真っ直ぐに。または縦になっているのを横にと、図面に合うように。そして、つなぎ合わせる時も釘を使わず、木材同士を錬金し、元々一つであったかのようにつなぎ目を加工する。強度が足りない部分には硬化を。それ以上錬金する必要が無い部分には固定化を。

「材料から何か新しい物を作るんじゃなくて、木を木に加工する為に錬金を使うなんて、今まで考えた事も無かったよ」

例えば、石を金に変えるとか、そういう事ならばそれこそスクウェアクラスの魔法と膨大な精神力。魔力が必要になる。しかし、石の形を変えるだけならドットでも十分で、消費する魔力も極小だ。前者がハルケギニアで一般的な錬金の魔法の使い方。後者のような使い方は、あまりされない。

「そりゃ勿体無い。せっかく便利な力なんだから、もっと有効に使わないと」

「そうだね。ボクもこれから錬金について、もっと研究してみようかな・・・中々奥が深くて面白そうだ」

「お~い!ジル~!この木、これくらいで良いのか~?」

何やらブツブツと呟きながら考え込んでいたジルは、ジャンヌに呼ばれてはいはいと。すぐに彼女の下へ。

「あいつら、仲良いよな」

「そうだね」

こちらの主従も傍から見れば大変仲が良いと思うのだが、二人にそんな自覚はなさそう。銀狼の溜息が聞える中、四人と一匹は力を合わせ、適材適所。
切り、加工し、運び、つなげる。






彼らが屋敷の建設を始めてからおよそ一月。ギューフの月も半ば。僅か一月という短い時間で、武家屋敷モドキ。カズマ邸が完成した。


書院造りの建物。部屋と部屋の間は全て襖。床は一部を除いて畳。屋根には瓦(藁、石から錬金した)居間、寝間、台所、玄関、広間のほか、座敷、書斎、縁側、茶屋(見よう見まね)などを備えている。そして更に、囲炉裏や掘りごたつ。離れには蔵、道場まである。室内には元の屋敷にあった調度品(高価な物は無かったのでそのまま残してくれたらしい)を和風に錬成し直した物が置かれ、敷地を囲むように、周囲には腰の辺りまでしか高さの無い垣根、入り口の門も、門と言う程大層な物ではなく、これも腰の辺りまでしか高さの無い木の扉。庭には所々に木や草が生えているが、その辺りには特に細工は無し。その内、まだ余っている裏の土地に小さな畑でも作るかと、和磨がこぼしているらしい。何を育てるか未定なので計画段階であるが。
ともかく、なんとも色々ごちゃごちゃした家になったが、和磨のイメージ通りとの事らしい。

木造による独特の暖かさと低い垣根による開放感は、この世界ではあまり見られない独特な空気を持つ家、と相成りました。



そんなマイホームを建築してから半月程たった現在。
和磨は一人、縁側でズズっと茶を啜っていた。

東方からの輸入品って事らしいけど、やっぱもっとシブい日本茶が飲みたいなぁ・・・畑作って育てるか?でも、作り方がわからん・・・

嘆息しながら、ボーっと空を眺める。コレが結構気持ちの良い物で、なんだかんだで和磨はこの家に入り浸っている。

「よし、良いか。こうやって、こう!だ。ほら、やってみろ」

庭では、今日も遊びに来ているジャンヌが、小さな子供達に剣を教えている。

「コレが「ア」だ。そしてコレが」

広間ではメガネをかけ、細い棒を片手に、新しく置いた黒板に字を書き、子供達に教える蒼の姫君と

「そうそう、そこを真っ直ぐに伸ばして」

紙の変わりにA4サイズの黒板と、チョークを片手に、イザベラに教えられた通りに文字を書く子供の傍で、丁寧に教えるジル。


リュティスに突如出現した日本家屋。カズマ邸は、すっかり小さな子供達の遊び場と化していた。

『平和で結構では無いか』

和磨の頭の上でグッタリとまどろむ子犬。

「だけどなぁ・・・本来の目的の方が・・・」

目的。和磨がこの家を建てようと思ったのは、何もロマンだの、秘密基地だの、日曜大工だのそう言った意味だけでは無い。
あの日、入学初日にジャンヌと決闘した日。
彼は思った。いつもいつも命のかかった戦場で戦ってたら、身が持たないと。体もそうだが、何よりも精神的に。今まではただ、忙しかったり必死だったりと、じっくりと考える時間が無かったが、最近時間に余裕が出来てからは結構そんな事を考える事が多かった。そんな時、ジャンヌという少女との決闘。アレが、ある意味きっかけだった。
命のやり取りでは無く、純粋な力比べ。久しく感じていなかった高揚感。北花壇騎士として刀を振っているだけでは決して得られなかっただろう感覚を、他の団員にも。同じ北花壇騎士として、彼らにも感じさせてやれないものかと。彼らも苦労をしているのではないかと。そんな同僚達の憩いの場として、また、腕試し、交流。とにかく何でも良い。同じ組織に所属しているのに、一度も顔を合わせる事すら無いなんて寂しすぎると。
だから、家を建てた。
そしてイザベラに頼み込み、ある命令を全北花壇騎士に向けて飛ばしてもらったのが一種間前。
それは命令と言うより提案。ようは「暇な奴は指定の―――カズマ邸―――に来い。強制はしない」と。
蔵で麦を発酵させたビールモドキ(よく判らなかったので最後は錬金してソレっぽい物を造ってみた)も用意した。味見したら、まぁ飲める物。美味いとか不味いとかじゃなくて、変な味。珍味として出すかと、そんな事を思いながら、内心結構わくわくしていたのだが・・・・・・。
いざ当日になって待ってみれば、来たのはたったの一人。
しかも、何と彼が先生と呼ぶカステルモールだった。何故か、片手にはナイフ。
カステルモールは「地下水」と名乗り、和磨を驚かせた。
何でも、地下水は丁度暇だったのだが、最初は来る気は無かったらしい。しかし、たまたまこの家を見て変わった家だと興味を引かれ、その場所が指定の場所だったのでついでにと。気まぐれで寄っただけらしい。
話から推測すると、今のカステルモールは地下水と名乗るメイジが操っているのだろう。恐らく、あの見慣れぬナイフを媒介にして。カステルモール程の歴戦の騎士を操る地下水の実力に驚嘆しながらも、とりあえず。一人でも良いと、ビールモドキを振る舞い、色々と話してみた。

話してみると、まぁ意外と良い奴で。ビールの評価にしても、色々こうした方が良いとアドバイスをくれたり、何より
「結構良い家じゃねぇか。それにお前さんの提案ってのも面白い。俺も今度、他の団員に会う機会があったら言っといてやるよ。ま、最初はこんなモンだって。お前さんが心配するほど、柔な奴は北花壇騎士に居ないって事さ。定期的に同じような提案を続けてりゃ、その内興味を引かれて来る奴も居るだろうさ」
バシバシと、中々強く背中を叩きながらもそう言ってくる地下水。何だかんだで、やはり良い人らしい。
そんな彼(?)の心遣いに感謝しながら、その日はそれでお開きとなった。


それから一週間。
ここはいつの間にか子供達の遊び場になり、ジャンヌが剣を、ジルとイザベラが字を教えるという、何故かそんな状況になっていた。

「・・・ま、平和が良いだってのは同感だな」

大きな欠伸。
子供達の声と、友人や主の声を聞きながら。
いつの間にか、和磨は縁側に腰掛けたままの姿で、こっくりこっくりと。
船を漕いでいた。






「ん・・・・・・っくしゅ!」

体が冷えたので目が覚めたのか。
いつの間にか時刻は夕方に。元の世界で言えば十一月半ば。さすがに、そろそろ寒くなってきた。
ブルっと体を震わせて、すっかり冷めてしまったお茶を飲み干す。

「ふ~・・・やっぱお茶は熱いのに限るな」

「カズマ?起きたのか?」

後ろからの声に首だけで振り返ると、毛布を一枚持ってきていたイザベラと目が合った。

「ん。丁度今。ガキ共は?帰ったかな」

「あぁ。ジャンヌとジルが、帰るついでに送って行くって」

「あいつらも、結構子供好きだよなぁ」

「そうだね。ん?”も”って、私も入ってるのか?」

揃って笑っていた所で気付いたイザベラの問い掛けに、和磨は意外そうな顔で、違うのか?と。

「ん~・・・どうなんだろう?」

「どうなんだろうって・・・お前、子供好きだから字教えてたんじゃないのか?」

「いや、それは違う」

予想外に。キッパリと否定され、和磨が首を傾げる。

「んじゃ何でさ?」

「いや、ホラ。その内、平民に字を教える時の為にさ。どういう感じで教えれば良いのかってのの実験として。子供だと字なんて全く知らないから、丁度良いかと思ってね」

照れ隠しでも何でもない、それが彼女の本音だった。実際に組織だって平民に字を教えようとすれば、貴族達から何らかの反発があるだろうが、彼女個人。しかも、偽名を名乗っての事なので、万が一何か言われてもせいぜい「人気取りです」とでも言えばそれで良い。だからコレ幸いと、黒板やチョークを購入して運び込み、字を教えているわけだ。ジルやジャンヌは、多分単純に子供が好きだからだろうが、彼女は違う。だから

「だから、私は別に子供が好きな訳じゃないよ」

「ふ~ん。でも、何だかんだで結構楽しそうな顔してるぞ?」

「・・・そうなのかな?自分じゃわかんないけど・・・」

「まぁ、ソレが子供が好きだからなのか、実験が出来るからなのかは、俺じゃ分かんないけどな。少なくとも、嫌いって訳じゃ無いだろ?」

「まぁ、そりゃねぇ」

「んじゃいいじゃん。ま、それならそれで、ワザワザこの家を建てた意味もあったって事だ」

そのまま笑いながら、オレンジ色の空を見上げた。

「カズマは・・・」

「ん?」

いつの間にか毛布を置き、イザベラは和磨の隣に腰掛けている。

「カズマは、その・・・どうなんだ?この家を建てて、目的とか・・・良かったのか?」

一週間前。暇な北花壇騎士をこの場所に集めるように指令を出して欲しいと、頭を下げながら頼んだ和磨を見て、彼女は彼がこの家を建てた理由を察した。そして当日に地下水一人しか来なかった事も。

「ん、まぁ地下さんにも言われたけど、気長にやるさ。また定期的にあぁいう指令を出せば、その内、少しずつでも良い。その内・・・」

珍しく、少し気落ちしながら語る和磨は、突如。その頭に手がかけられ、そのまま引きずり倒された。

「いつつ・・・リザ?何を」

急に頭を引かれ、倒された事による痛みで抗議。床に頭をぶつけた感触は無く、むしろ何か柔らかいモノに乗せられている様な。
何事かと確認しようとした所、顔をひんやりとした柔らかいモノで覆われ、視界が閉ざされた。

「おい、リザ?なんだ?ちょ、手どけ」

「なぁ、カズマ」

抗議を黙殺し、何やらまじめな様子で問われたので和磨は黙った。

「辛いか?」

どういう意味だ?・・・辛いって、目をふさがれてって意味じゃ

「お前、前言ったよな。人を斬りたくないって」

「それは・・・・・・・・・」

言った。そしてそれは今も、すでに多くの人を斬った後でもやっぱり変わらない。

「あぁ。斬りたくない。正直辛い、な」

堂々と問われてまで隠したいとは思わない。なんとなく、そう思う。
問われないように、今まではそれなりに気を使って来たが

「そう」

片手で視界を奪い、もう片方の手は、そっと。優しく黒い髪を撫でる。

「元の世界に、帰りたい、のか?」

「・・・前も言ったけどな。帰りたいさ。師匠や友達。あと、一応・・・親父にも、説明なり連絡なりしときたいし」

今、彼女はどんな顔をしているのだろうか?目をふさがれた和磨からでは、確認が出来ない。

「帰りたくは無い・・・の?」

その声からは、若干の不安の色が。口調も、少し変わってきている。

さっきも言った。一回戻って連絡したいと言う意味なら帰りたいが

「そういう意味なら、別に帰りたい訳じゃない。向こうで何かしなくちゃいけない事も無いし、こっちにも、居る理由ができたし」

それに、今更どの面下げて師や友に会えと。人を斬ったからと言って自分が何か変わったつもりは無いが、何か、こう。言葉に出来ない不安がある。それに何より、奪った命への責任も。今更放り出して逃げ帰るのは、無責任にすぎる。

「そう」

「そーさ」


虫の鳴き声。
鳥の鳴き声。
風が木の葉を揺らす。
道行く人々の話し声。

それらが良く聞こえる。


「ここは、落ち着くね」

「あぁ。自分達の手で作ったってのもあるのかもしれないけど」

「うん」

「俺のイメージ通りだ。何か、こう、暖かい。日本家屋ってさ、そんな感じがするんだよ」

「そうだね」

「日本人じゃなくても、わかってくれるかぁ」

「うん、それは、わかるよ」

クスクスと、優しい笑い声だけが聞える。
人を斬る事は辛い。けど、今は

「ねぇ、カズマ」

「ん?」

「辛かったら、言っても良い、んだよ?」


辛ければ、言えば良い。私にできる事は聞いてやるだけだけど。彼がこの家を建てたのは、何も騎士団の事だけじゃない。多分、どこかで安らげる場所が、暖かい場所が欲しかったから。口には出さないけど、だから。この家にそれが現れた。溜め込むよりも、言ってスッキリした方が良い。私は、貴方にそれを教えてもらったから。だから


「嫌だね」

ニヤリと、口元しか見えない顔で笑いながら。

「え?」

「お前に愚痴なんて言えるか。言うならジルに言うさ」

守ると誓った主に。何より、女の子にそんな事、とてもじゃ無いが言えっこない。ちっぽけな意地だけど、コレが結構大切。

「な、な、な、な、な」

見えないから確認できないが、多分。あんぐりと口を開けているのだろう。その姿を想像して、更に口元をゆがめた所で、頭を撫でていた手が離れたかと思えば、グイ!っと、口元が引っ張られた。

「な、何で私には言えないんだよ!!」

「ひでででで!ひろひろふぉひひょうははっへ」(色々と事情があって)

「はっきり言えぇ!」

「ふひゃひふはっへ!」(無茶言うなって)


心配してくれたのか。でも正直。コレだけで十分。いつもの様に接してくれるだけで良い。時たま、心配だと、そんな態度をしてくれるだけで十分すぎるさ。
それだけあれば、後は頑張れる。そうだな、今度本当にジルに愚痴ってみるのも良いかもしれない。あいつなら、こっちの事情も何となく分かってるだろうし、適当にぼかして話しても、無理に詮索しないだろうし。何より、やっぱりそういうのは同じ男に話したいもんだ。


「おい!コラ!!何とか言え!」

「ふぁんふぉふぁ」(なんとか)

「そうじゃないだろおおお!!」

「ひふぃふうふぃふぇふふぁへーふぁ!」(意味通じてるじゃねーか)




腰の辺りまでしか高さの無い低い垣根。
通行人からは、膝枕された黒髪の青年が、膝枕をしている蒼髪の少女に目を塞がれながら、口を引っ張られている様が良く見える。
しかし、誰も声をかけたり、止めたりと、そんな無粋な真似をする者は居ない。
皆一度立ち止まり、微笑ましい光景を見て笑いながら、立ち去るだけ。



お互い、言いたい事が言い合える。
相手を気遣い、また気遣われ。
それは、彼が。彼女が求めていた安らぎで。
以降も、二人の関係は変わらない。変わる必要が無いと、お互いが想っているのだから。

季節は、冬の入り口。
まもなく、年が変わる。
それから、およそ二月。

北方より、凶報が来るまでの間。彼らの平穏な日常は続く。






















あとがき

久々の投稿です。ちょいリアル忙しかったのと、なんというか、こう、筆が、じゃなくて、指が動かない?というのか、う~む、スランプと言う奴ですかね?もしくはただの夏ばて。そんな感じで第五話でした。
何かこう、お待たせした割りにはあまり大した物では無かった気がして申し訳ないです。




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