第二部 第三話 王。再び
「どうした?早く席に着け」
蒼い髪。蒼い髭。
190はあろうかという体から、良く透るであろう低く。しかし美しい声。
遊戯版一つ載る程度。
小さな白い丸テーブル。
用意された二つの席の内一つに腰かけ、悠々と。泰然とする美丈夫は、彼はこの国の王。
ガリア王国国王。ジョセフ一世。
そして唖然としながら彼の問い掛けに答え、黒髪の青年。和磨は、ゆっくりと。歩み寄り、用意されているもう一つの席に。
その主であるイザベラも、後ろに控えるようにして立った。
本来、彼らの立ち位置は逆。
姫君の位置に和磨が。騎士の位置にイザベラが。
しかし、今はこれが正しい。
主従二人。位置についた事を確認し、王。
ニッコリと。しかし、感情を感じさせない笑顔で微笑み
「さぁ。ゲームを始めよう」
その日。
和磨がこの世界に来て、半年と少しが過ぎた日。
ケンの月。彼の故郷では今頃鈴虫の音色と、美しい月が見られるだろうか。
「チェック」
「げ・・・・・・待った」
「待ったは無し。何度言えば分かるんだい?」
二人は今。執務室で遊戯版を挟み対峙する。
「いや・・・ん~・・・」
和磨はそのまま腕を組み、眉間に皺寄せ黙考。何か無いか。何か見落としは。遊戯版。チェスの板を穴が開く程凝視しながら。
「ほら、早くしろ。後三十秒」
姫君の方はというと、優雅に紅茶を啜りながら澄まし顔で。
「・・・・・・・・・・・・参りました」
たっぷり三十秒考えた所で、和磨が投了。頭を下げて負けを認めた。
「ん。よろしい♪」
未だ詰んでいないのだが、今まで何度か戦ったイザベラの実力を理解する和磨は。無駄な抵抗はせず潔く。だから姫君も上機嫌。
「あ~ぁ・・・これで倍くらい差がついたなぁ・・・」
すっかり温くなった茶をすすり、溜息。
「ま、せいぜい精進する事だね」
事実。彼女の勝ち星は今回ので丁度和磨の倍。少し得意げに胸を張る少女に、はいはいと。適当な返事をしながらも、ダラダラと。平和な日常を満喫する主従。
最近、こんな日が多い。
和磨の任務頻度は変わっていないが、三ヶ月もすると慣れる物なのか。怪我の回復速度が遥かに早くなってきた今日この頃。
最近。彼はどんな大怪我をしても、丸一日昏睡するだけで次の日はケロっとしている。もちろん、その前に最高級の水の秘薬を惜しげも無く使用し、スクウェアクラスの水メイジによる必死の治療があっての事だが。
最近では彼。水のスクウェアであるクロさん事、Mrクロヴァーズとはスッカリ顔なじみになり、既に彼は和磨の主治医と言った様子だ。
和磨への命令と同時に、イザベラは彼にも依頼を出すとか。
そして和磨だけで無く姫君もまた、最近は時間が空くようになってきていた。
理由は簡単。やる事が無いからである。
彼女が推進する改革案も、草案は殆ど出来上がり、現在は彼女の派閥。イザベラ派の若手貴族達が細部を煮詰め、協議。問題点を洗い出し、意見を出す。そして定期的に開かれる会合でそれらを纏め、イザベラに提出。
すると彼女は、次の日の午前中にそれらを処理し、再び彼らへと渡し、そこでまた協議。
その繰り返しなので、派閥関連の執務は僅か半日。
他にも、国政やら何やらを参考文献を読み、講師を呼びと、色々と学んでいた彼女だが、それももう無い。
メリハリの利いたというか、短期集中というか、ともかく。その集中力と、熱意によりあっと言う間にそれらを吸収。もう、書物や口頭で学ぶ事が無くなってしまったのだ。だからと言ってこれで終わりでは無い。これでようやく、始まりである。
ここから先は、権謀術数渦巻く宮廷で直に学ばなければならないのだから。
しかし、今の彼女が宮廷に顔を出しても相手にされない。なので、現在彼女のやる事は無いのである。
そんな平穏な日常。だから和磨は、何の気なしに考えてしまった。
それがきっかけ。
元の世界ならこの時間。学校か。丁度昼休みだなぁ・・・
そして、何事かを思い出す様な。懐かしむ様な顔を見て、思わず。イザベラが声をかけてしまった。
それがきっかけ。
「・・・どうした?」
和磨は何気無く。特に知られて困る事では無いので、考えていた事を口に。
「いや。今頃は学校。昼休みだな~と。思ってな」
それが、新たな物語の始まり。
「学校?あぁ、そういえばお前の世界では、平民も皆通ってるんだったね」
「そ。こっちは貴族様だけでしょ?リュティス魔法学院だっけ?」
「あぁ。後はトリステインにも、うちと同じくらい伝統がある学院があるよ。アルビオンにもね。ゲルマニアにも、まだ歴史が無いけどきちんと存在してるし」
「ふむ。あ、そういえばさ」
彼の一言はいつも。
「リザ、学校行かないの?」
周囲を大きく変動させる。
・・・・・・・・・・・・
「へ?」
さしもの姫君も、思わず口をポカンと開けて呆然と。
「いや、だからさ。リザも学校行かないのかって」
「いや・・・・・・だって、私はこれでも一応姫。王女だぞ?」
自分で「これでも」とか「一応」とか、そういう事を言うのがまた、なんとも涙を誘うが
「え、王族って学校行っちゃいけないの?」
それが和磨の認識。
彼の国の王族―――――王では無く、皇だが―――――は、普通に学校に行く。それは、もちろんそこいらの学校に適当にでは無く、決められた場所ではあるが。
だから、和磨にとって「王族だから学校に行かない」というのは、首を傾げたくなる様な理由になる。
その話を聞き、未だ衝撃から立ち直れて居ない姫君は、それでも。疑問に思った事を聞いてみた。
「何で王族が。皇だっけ?まぁともかく。学校に行くのさ?」
「さぁ?そこまで詳しく知らないけどさ。逆に聞くけど。何で王族は学校に行っちゃ行けないんだ?」
何故?
その疑問に、彼女は答えを持たない。
王族だから。
だから何故?
決められているから。
否。「王族は学校に行ってはいけません」とは明文化されていない。
うんうん唸りながら悩む姫君に、和磨は助け舟を。
彼にとって、学校とはただ物事を学ぶ場所ではなかった。
おはよう。
朝、そう挨拶すると、そこかしこから返事が。もちろん、全員では無い。友達同士。グループで。話し込み、見向きもしな人も居る。漫画や雑誌を読みながらも、顔をあげずに返事を返してくれる人も居る。イヤホンを付け、そもそも挨拶すら聞いていない人も居る。机に突っ伏して眠っている人も。
だが、そんな多種多様な人と。級友と。共に話し、接する場所。それが学校。
授業で物事を学ぶのも大事だろう。
しかしそれだけなら家でも出来る。
大事なのは人との触れ合い。人との会話。
学校とは、人間関係を学ぶ場所だと。
それが和磨の学校に対するイメージ。
そんな考えを話すと、姫君は納得した様子。そこでふと。思い出した。
「そういえばね。トリステインの魔法学院には面白い仕来りがあってさ」
「へぇ、どんな?」
「普通、貴族ってのは親や家が結婚相手を決めるんだけど、そこの学院で恋仲になれば、それはどんなに家柄が違っても合法になるんだとさ」
「ほ~。そりゃまたなんとも。でも、それトリステインだろ?」
「ん?そうだね。リュティスじゃ聞かない」
「そういう訳なら、トリステインの王族がそこに通わないのは分かるんだけど」
それこそ、何処の馬の骨が王家に入るか分からない。
「リュティスは関係ないだろ。それで話を戻すけど、リザは学校行かないの?」
「・・・・・・・・・そりゃ、行ってみたいけど・・・」
それは紛れも無く彼女の本音。
以前も何度か和磨から聞いたが、学校というのは実に楽しそうな場所で。なにより、彼女には今。友人と呼べる者が・・・一人しか居ない。ガルムを入れれば二人だが、アレは狼であって、それをカウントするのもどうかと。そんなちょっとした意地。しかしそれに不満がある訳でもは無い。無い、が、それでも。やはり。もっと欲しいと。そう思ってしまうのも無理からぬ事ではないだろうか?
「んじゃ、行こうぜ?つか。俺も行ってみたい」
これも本音。
魔法の世界の魔法の学院。
それは、とても魅力的な響きである。それに学校で友人を作り、馬鹿をやるのも良い。騒いで遊んで。溜め込んでいる物を少しでも吐き出せればと。
自分にしても、そして彼女にしても。同姓の友達なども必要なのでは?と。
しかし、姫君の顔は晴れない。
「でも、許可が・・・王政府。お父様の・・・」
その一言で、和磨の笑みが消えた。
あの国王か。
学校に行きたいから許可を下さい。
彼の王に言って素直に許可がでるかどうか・・・別に無断で行っても問題はないかもしれない。しかし、何かあった場合、やはり許可を取ってからでなければ色々問題がある。もっとも、案外どうでも良いと。好きにしろと。それくらい言いそうだが、彼が何を考えているか欠片も理解できない主従は、どうしようかと頭を抱え
「・・・・・・っよし!行こう」
どこへ?
それは、この場合必要ない。
「・・・・・・本気か?」
「あぁ。大丈夫。あの人、俺に興味があったっぽいし。話くらいは聞いてくれるハズだ。それに、一度ちゃんと話したい」
「・・・・・・・・・・・・わかった。行くよ。支度しな」
了解と。和磨はそのまま自分の部屋に戻る。
彼女は聞かなかった。「大丈夫か?」と。前回あんな事があったのだ。今回もまた・・・しかし、そんな事は和磨も理解している。だから彼女は信じた。彼なら。和磨なら大丈夫だと。
やがて、主従は再び。
王城。グラン・トロワ。
二度目となる謁見の間へ。
謁見の許可はあっけないほど簡単に出た。
和磨の推察した通り、それはジョセフ王の一言で。
そして再び。その扉を潜る。
玉座に座り、肩肘をつき。
しかし、今はどこか面白そうな。楽しそうな空気を纏う王。
そこへ、二人揃って頭を下げ。
本来無礼に当たるのだが、気にせずに。
イザベラは口上を述べず、いきなり和磨が。
無表情の仮面を被り、話し出す。
「国王陛下。お久しぶりでございます」
「うむ。久しいな。カズマ、であったな?」
「はっ。先頃国王陛下の恩情により、騎士に任命されましたカズマ・シュヴァ」
「前置きは良い。で?今日は何の用だ?また余を殴りに来たのか?」
言葉を遮り、何やらニヤリと笑いながら。実に楽しそうに見える。
「・・・はっ。その件もありまして。陛下」
言いながら、和磨はイザベラの前に出て
いきなり
その場で膝を付き。
地に頭を擦りつけた。
それは、彼の国で土下座と。そう呼ばれる。
「その節は、大変申し訳ありませんでしたっ!!」
部屋に響く声。
あまりに予想外の行動である。
だから珍しく。親子揃って唖然。
しかし、和磨は一切気にしない。
そのまま。
身じろぎ一つせずに、土下座を続ける。
謝れば済む問題では無い。
そもそも、もうその処分は下っているのだから。もちろん、正式にでは無いが。
だが、だからと言って謝らなくて良い訳では無い。そう和磨は考える。
何せ相手が国王である前に、向こうは口しか出してなかったのに対し、こちらはいきなり手を。殴るという愚行に出たのだから。
明らかに、その部分だけ見ても悪いのは和磨である。
だから謝る。
自身に。いや、姫君に。人を殺せと、命令”させた”相手だろうと。
下げたくも無い頭を下げる。
それで、少しでも相手の気が晴れるなら。
それで、少しでも任務が減るなら。
それで、少しでも自らが殺める人が減るのなら。
土下座など、産まれて18年間。いや、もう19か。した事など無かった。
当然と言えば当然かもしれないが、彼はまだ学生。成人していない子供で、そんな子供が土下座など、余程の事をしない限り、またはおふざけ以外ではありえないだろう。そして余程の事もおふざけも無い和磨は、した事は無く。
だからどうした
頭一つ。意地一つ。
それがどうした
それだけでも。少しでも変わるなら。
いくらでも!
自分は良い。我慢すれば。だけど彼女は。
下げてやるさ!
少しでも。彼女の負担が減るのなら。
土下座。
その風習が、この世界にあるのかは分からない。
しかしその姿を見れば誰もが思うだろう。
それは当に、謝意の極み。
一辺倒の躊躇も無く、恥じらいも捨て、犯意を消し、ただただ。ひれ伏す。
呆然と。その光景を見つめる親子は。
その胸のうちは正反対。
娘は想う。
謝っていると。
当たり前だ。この姿を。全身全霊をかけるように、ただ只管にひれ伏す姿を見て、それ以外の感想など無い。だが、それが痛いほど伝わる。
思わず、彼女も涙を流しそうになるほどに。
彼の謝罪は、自分の為。
自身が人を殺したく無いと。それを少しでも減らそうと。そういう思いもあるだろうと。それも理解している。
しかし、それ以上に。
和磨は彼女に。イザベラにその命令をさせたくないから。
だから今頭を下げているのだと。
だから、彼女は涙を堪える。
正直、あまり気にして居ないのに。彼女はただ、和磨に命じる事が辛いだけ。民が死のうと、あまり興味は無い。責任を持つ。責任を持って、その犠牲の分、国を豊かにする。
しかしその想いは。彼の自分を想う気持ちは、はっきりと。確かに伝わるから。
だから、ここで自らが醜態を晒す訳にはいかない。
父は想う。
なんだ?
なんだこれは?
謝っているのか?なぜ?俺はもう許した。というより、そもそも怒った訳では無い。なのになぜ?理解できない。なぜ?
人を殺したく無い?任務がきつい?
だから、少しでも減らしてもらおうと?
在り得ない。
調べた限りではそんな惰弱な男ではない。
そもそも、そんな奴なら真っ先に謝りに来て、見苦しく言い訳を並べ立てているはずだ。
奴は俺を殴った事を間違っているとは思っていないはずだ。なのになぜ?
あぁ、もしや。アレのためか?
あぁ、そうか。そうなのか。なるほど。なるほどなるほどなるほどなるほど。それならば辻褄が合う。あぁ。そうか。それは。それは・・・・・・・・・・・・
「ふ・・・ふふふふふふふふふふふふふふははははははははあっはははははははははははははははははははははははははははははは!!」
王は笑った。
それはもう、心の底から。
久しぶりに笑った。
和磨は動かない。
ようやく、彼の国王が感情らしい感情をむき出しにして笑っても、微動だにせず。頭を下げたまま。
そのまましばらく。王の笑い声のみが、部屋を包む。
「あっははははははーーーっはーーーっはーーーーおい、おいおいカズマよ。いつまでそうしているっく。いるつもりだ?お前はアレか?くっくっくくううくくくく余を。俺を笑い死にさせる心算なのか?」
「いえ、決して。ただ、陛下に謝罪を」
「あぁ、良い良い。もういい。やめろ。これっ。これ以上は余が持たん。頭を上げろ」
笑いを堪えながらの言葉を聞き、カズマはゆっくりと上体を起す。しかし立ち上がらず、両膝はつけたまま正座。
「時に陛下。本日は陛下に、お願いがあって参りました」
「ふ~・・・ほぉ?お前が、余に願いだと?面白い。何だ?言って見ろ」
それは、彼の王の本心。
一体今度は何を言うのか?万が一にも、任務を減らしてくれではあるまい。では何か?
逸る気持ちを抑え、聞き返すと。
「はい。実は、我が主。イザベラ姫殿下の、リュティスにある魔法学院への通学を許可して頂きたいのです」
それはまた、欠片も予想していない答え。
だから、彼は当然の様に
「・・・・・・・・・ふ。ふ。ふふふふふふふふふはーっはっはっはっはっはっはっはっはははははははあっはっはっはっはっはっはっはお、おまえは!お前は、本当に!ほんとうに、俺をっ!俺を!笑い殺すつもりだったのかあーっはっはっはっはっはっはっはっは!」
一言で理由を推察し、再び。今度も笑う。
友達だなんだ。そんな理由だろうと。そしてその推察は間違っていないだろう。彼の王にはそれを確信するだけの情報と、洞察力があった。
「陛下。この通り、お願い申し上げます」
笑う王を無視し、再び頭を。
だから王は笑い続け。
時が経ち、ようやくその笑いが治まって来て
「はーっ。はぁーっ。あー。はー。とりあえず。頭を上げろ。また笑いが・・・」
「はっ。陛下。それで」
「あぁ、通学の許可だったな?よいよい。勝手にしろ。面白い物を見せてもらったのでな」
何が面白かったのか。和磨には理解できなかったが、それでも。目的は果たせた。なら、長居は無用と。そう思い、立ち上がった所で
「と。まぁそう言いたいのだが。一つ。条件がある」
「・・・・・・何でしょうか?」
「うむ。実はな。何を隠そう、余は暇なのだ。なので」
ニヤリと。笑い
「時にカズマよ。チェスは出来るか?」
「・・・?はぁ。出来ますが」
「では、相手をしろ」
言うや否や。
パチン
指を鳴らすと、何処からとも無く。
次々とガーゴイルが現れ、よく見れば彼らは手に手に、机やら椅子やらチェスの板やらを持参。
そのままテキパキと。手際よく。
床にテーブル。椅子。
その上にチェス板。また駒を並べる。
ガタゴタゴトガタ
あっという間に準備が整い
場面は冒頭に
「さぁ、ゲームを始めよう」
言われるがまま、席に。
最初、和磨は。いや、イザベラも。何故そうなるのか全く理解できなかった。それは今も同じ。しかし、一つだけ確かな事がある。
それは、この誘いを断る事は出来ない。
王は言った。条件があると。つまり、チェスの相手をする事こそが条件で。
だから主従は黙って従い、位置に。
「さて。それでは肝心の条件だがな」
お互い。顔を見ていないが目を見開いているだろうと。
ただ相手をする事では無かったのか?
そして、その顔が見たかったと。言わんばかりに、王は笑顔で。
「余に負けたら許可は出さん。ただし、余に勝ったら褒美をやろう」
「・・・・・・・・・それは?」
何故その条件か?
それも気になるが、それよりも。褒美が何かが
「うむ。それはな、お前を騎士団長にしてやろう。東。西。南。なんなら北でも良いがな。好きな騎士団の団長にしてやる。あぁ、別に騎士団長でなくても、平の騎士が良いというならそれでも良い。どちらにせよ、北花壇騎士を辞めて良いぞ」
それは・・・・・・つまり。勝てば・・・・・・
思わず。主従が目を見合わせ、それを見て尚。笑う王。
別に、騎士団長になりたい訳では無い。が、しかし。北花壇騎士を止められると・・・
ゴクリ。
それはどちらか。生唾を飲み込む。
視線で会話。
―――どうする?―――
―――いいさ。受けてやれ。ダメでも私が我慢すればいいだけだ―――
うなずく。
「・・・陛下。本当に、宜しいのですか?」
「あぁ。余はやると言ったらやるのだ。それでは、始めようか」
こうして、ゲームが始まった。
カタ
コト
カタン
コン
部屋は静寂と緊張に包まれ、ただ駒を進める音だけが響く。
先手、白。ジョセフ王。
何を考えているのか。笑顔。
後手、黒。和磨。
無表情。僅かに額に汗。
一定のリズムで、お互いが駒を動かす。
他の雑音は一切無し。
まるで音楽の演奏の様-―――
が、すぐにそのリズムは崩れた。
「・・・・・・・・・」
コン
カン
「・・・・・・・・・」
コッ
カツ
「・・・・・・・・・」
未だ序盤なのにもかかわらず、和磨は。一手一手に僅かに。十と少し。時間をかけて打つ。
これに対しジョセフ王は即断。一切の迷い無く、ほぼノータイムで打ち返す。
やがて
お互いの形勢がようやく整って来た所で。
「・・・・・・・・・陛下。質問が」
「ん?何だ?」
「制限時間などはありますか?」
「いや、ないぞ。好きなだけ考えれば良い」
許可を得て。和磨は腕を組み、長考に入った。
それを見て尚、笑みを絶やさぬ王。
そんな父と使い魔の勝負を見ながら、イザベラは首を傾げる。
まだ序盤。未だどちらが有利不利は無い。そして、何度か和磨と勝負しているイザベラは、こんなタイミングで長考する彼を見た事は無い。
やはり緊張しているのだろうか?
勝てば。勝てば北花壇騎士を辞められる。
それは、彼にとってどれほど魅力的か。
別に近衛を辞める必要は無い。というか、辞めさせるつもりもないが、北花壇騎士は・・・・・・・・・だから。
だから彼女は願った。勝てと。
ゆっくりと。時が流れ。
そのまま一時間近く悩んだ和磨は、ようやく。
コト
「ほう、もう良いのか?もっと考えてもいいのだぞ?」
カ
「えぇ・・・・・・」
カタ
やはり、一手に十秒程時間をかけるが、ようやく打ち始めた。
対する王は、相変わらずの淀みなく。
「時にカズマよ」
カタ
「はっ」
カン
「実はな。余の従者にも東方出身という者がいてな」
コン
「・・・・・・・・・それで」
カツ
「うむ。その者に聞くところによると、ニホンなる国は知らないそうなのだが」
コツ
「・・・・・・我が国は、長らく鎖国を。国境を封鎖しており、それ故かと。しかも海に囲まれた島国。情報が行き届かないのではないかと」
コト
「ふむ、何だ。そうなのか」
コン
「えぇ。それに、東方と言っても広いですし」
カ
以降、お互い無言。
しかし、王は笑み。和磨は無表情。
お互いの手が動く度、盤上で激しく。駒が争う。
効果音はそれだけ。
しばらく。
イザベラは見た。
それは。
不利。
序盤こそ互角だったのだが現在。
和磨がかなり押されている。
しかし、ここから逆転する手は―――――――
彼女が胸の内で考えるのを他所に。向かい合う二人は手を止めず。争いを、盤上で駒を進め続ける。
和磨もいまだ諦めず。
一進一退の攻防が続く。
だが、何事にも終わりはある。
それは、いつ訪れるかの違いでしか無く。
「おいおい。まだ諦めないのか?」
カツ
「・・・・・・・・・えぇ」
コン
完全に形勢は定まった。
もはや、逆転は不可能。
見るからに、和磨の陣営。黒の駒は少ない。
「諦めなければどうにかなると。まさか、本気でそう思っている訳ではあるまい?」
カン
そう思っているはずはない。
それは、そう言ったジョセフ王本人が良く分かっている。
ここまで戦った和磨の実力を。
悪くない。中々良い。
それが、彼の和磨に対する評価。
そしてそんな和磨なら、もうどうやってもここから自分に勝つことは出来ないと。分かっているはずであると。
「そりゃ、何事も。やってみなきゃわかんないですよ」
カン!
対して、未だに諦めず。往生際が悪い。そう言われても仕方の無い足掻きを、しかし、だからこそ駒を強く。盤上に叩き付けた。
勢い良く叩きつけられた駒。
それは、全てを賭けた最後の大攻勢。
「ふむ。無駄だ」
一方。王は全く取り乱すことが無い。
最初から全く変わらぬノータイム。もはや機械的に駒を動かすのみ。
やはり俺に勝てるのはシャルルだけか・・・
あわよくば。もしかしたら。万が一。
和磨なら、自分に勝てるかもしれないと。だから本気にさせる為、鼻先にニンジンをぶらさげてみた。
そんな事を思っていたのだろうか?
王の顔には落胆の色が。
しかし和磨は、言葉通り最後まで諦めず。
残った軍勢で総攻撃を。
だが
所詮それは悪あがき。
その程度で、王の軍勢は崩れず。
終に
「チェック」
最後の一手。
黒のナイトが、白のキングの下へ。
数多の軍勢を掻き分け、ついにその牙を
「それで?」
しかし
黒の騎士は一騎だけ。
すぐに。王を守る軍勢によって
ジョセフ王は、その手に白いポーンの駒を持ち。
コツン
黒のナイトを、駒の底で弾く。
コーン・・・コン・・・コン・・・コンコン・・・
盤上から弾き出された駒は、空しく床を転がるだけ。
もし。
これが実戦なら。
もし。
黒の騎士が、凄腕なら。
王。ジョセフの首を取れたかもしれない。
数多多くの軍勢を掻き分け。
それこそ、英雄の様に。
しかし、これは遊戯。
ゲームである。
ゲームにはルールがあり。
その定められたルールに従い、騎士は歩兵に敗れる。
だからこれは必然。
そして。
和磨にはもう。
動かせる駒は居ない。
だから。
ニヤリ
此処に来て。
初めて、和磨が笑った。
そう。
和磨にはもう”動かせる駒が無い”。
そう。
今は和磨のターン。
しかし、”動かせる駒が無い”。
チェスでは、敵の駒の移動範囲に、王自らは動くことが出来ない。
それはルールで定められている。
自殺禁止と。
そして未だ、和磨の王はそこに在る。
殆どの駒が打ち倒され、裸同然。
しかし、その姿は健在。
僅かに残った駒は、全て動けず。
されど、王は未だ倒れず。
だから。
「ステールメイト」
笑いながら宣言した。
和磨は、イザベラより弱い。
無論、チェスの勝負でだ。
何せ、十回やればイザベラが四勝。和磨が二勝。姫君は騎士の倍の勝率。
だから和磨はイザベラより弱い。
残りの四回は全て引き分け。
和磨のチェスの腕は、ジョセフが証した通り、悪く無い。まぁそこそこと言った所。
そんな彼はどこでチェスを覚えたのか。
それは、ゲームで。コンピューターが相手で。
最初、和磨は負けた。それはもう盛大に。将棋ならそこそこ強かったのだが、駒の動きなど似ている部分が在るとは言え、如何せんルール自体が違うのだから、まぁ当然。
その後、流石に初級には勝てるようになったが、最上級には何度挑んでも勝てないと。それが悔しくて。だが、そこで彼はまた妙な発想をした。
勝てないなら、負けなければいいんじゃないか
つまり、引き分ければ良いと。
そして、どうすれば引き分け。ステールメイトに出来るかを研究した。
カステルモールをして才と言われるソレを遺憾なく発揮して。コンピューターのパターンを覚えた。引き分けになるパターンを。他にもいくつか、手順を。
世界最高レベルのコンピューターは、人間の世界チャンピオンに無敗で勝利し続けるなど、もはや人間が勝てない領域になっているが、和磨の相手はそんな上等な物では無い。もっとお手軽な。家庭用のゲーム機の相手である。
それくらいならと。
そうしていくつかパターンを覚えた結果。和磨のコンピューターに対する勝率は一割。
しかし、残り五割が引き分けと。引き分けも勝ちと判定すれば、勝率を六割にまで引き上げた。
”だから”和磨は今回。引き分けた。
唖然と。
しばらく、静寂。部屋の音が消え去る。
そんな中、和磨一人笑顔で。
「陛下。お約束は、陛下が勝てば、姫殿下の通学を認めず。自分が勝てば、騎士団長に。でしたよね?」
そうだ。
それは間違いでなく、ジョセフも改めて了承した。
「ですが、今回は引き分けです。なので、自分への褒賞は残念ながら無しになりますが」
チラリと。背後に居る主を見て
「ですが陛下も自分に勝てなかった。なので、ご許可を。何せ、自分は陛下に負けていませんので」
引き分けの場合など、想定していない。
そして条件は”ジョセフに負ければ”不許可。引き分けは負けで無い。なので
「ふ・・・・・・ふふふふふふふふふふはーっはっはっはっはははははははははははは!!」
再び。
今度は嗤った。
今回、二人が此処を訪れた目的は一つ。
イザベラの通学許可を貰うため。
途中で王が北花壇騎士を辞めて良いと。そんな条件を出してきたが、ソレは本命では無い。
だから和磨は、最悪引き分けでも良かった。
そして王は。
彼の頭の中には「勝ち」か「負け」しか無い。だから気付かなかった。
和磨は。
彼の頭の中には、途中から「勝ち」は無くなっていた。あの長考で。だから「引き分け」を選んだ。
何故なら――――――――――
「それでは陛下。自分たちはもう、失礼して宜しいですか?」
未だ腹を抱えて嗤う王に一礼。
「はーっははははぁーっ。あぁーっ好きにしろ。ふははははははーはー、許可も出してやろうっ!はーッはははははははははっっはっはっはっはっは!!」
言質を取ったので、それ以上余計な事は言わず、二人は退室。
残されたのは、嗤い続ける王と――――――――
ズズン
重苦しい音を発て、扉が閉まる。
主従揃って肺の中の空気を一気に吐き出した。
「はぁ・・・一時はどうなる事かと・・・」
主の少女は、安堵の吐息。
その顔は晴れやか。無事許可も貰えたので、一安心と言った所か。
二人並んで王宮を歩く。
「あぁ。そうだな・・・」
一方の和磨は未だ険しい顔。
何やら上の空。
どうかしたのか?
聞こうとすると。
「なぁ、リザ」
和磨から話しかけて来た。
「あの人。国王陛下って、何?」
「え?」
質問の意味が分からない。何って、国王で、父で、だが、それは分かっているはず。ならば何を聞きたいの?
「いや。それは良いや。つか、あの人無能じゃないよ」
それはどういう?
「他は知らないけど、少なくとも。チェスに限って言えば、人間じゃない」
人間じゃない。
強いとか。弱いとか。そんな評価では無く。
それが、和磨のジョセフ王に対する評価。
人間なら。人が相手ならば、感情が出る。それはチェスに限った事では無いが。
チェスで言えば、表情。駒の動かし方。置く際にそっと置くか、強く叩き付けるか。その他様々な意味で感情が在る。無論、それらを上手く隠し、またはあえて出す事によりフェイントをかける等、様々だが。
しかし、彼の王は。
それらが一切無かった。
最初、和磨は不思議に思ったものだ。
何せ彼とチェスをするのは当然ながら初めて。なのに、何処かで。何度も戦った感覚がある。そう。画面越しに。
それはまるで、コンピューターの様に無機質で、正確無比。
そうだ。アレはコンピューター。
最初少し打って、ソレに気が付き、長考。ここまでの動きは型通り。チェスや将棋等、ある程度最初の動かし方は決まっている。
しかし、ソレを考慮しても。何故か。やはり目の前に居る男が、自分が相手にしている物が、人間とは思えなかった。
何故かと。説明しろと言われても、それは無理。もはや本能に近い物でそう感じたのだ。
だから長考。
どう対応するかと。もう、相手が人間だろうが何だろうが置いといて。では、だから自分はどうするか?と。人間相手なら、和磨はあまり経験が無い。それこそ、数える程しか。
だからイザベラに勝てない。半ば強引に引き分けに持っていこうとしても、途中で無理が出てそのまま押し負けるのだ。何せ、彼女は人間なのだから。ミスもするし、思考も独特の物が在る。決められたパターンも存在しない。それでも、四割を引き分けに持ち込んだのは、ある意味賞賛に値するだろうが。それはともかく。
目の前のはコンピューターだ。もう、そう判断した。そして自身が相手にして来たコンピューター相手の勝率は一割。ソレと彼を同じと仮定して・・・だから、決めた。引き分けに持ち込むと。それなら、五割。
そしてソレは、見事に功を奏した。
途中からはもう、機械的にを準えるだけ。
決められたパターン。決められた手順で。
もし、彼の王が人間らしい思考をしていたなら。和磨の戦略は途中で瓦解していただろう。
しかし、彼の王は最後まで人間では無く。そして、その頭には引き分けの文字が無かった。
だから、どうにか引き分けた。
それはもう、思わず笑ってしまうほど嬉しかった。
自分の感が正しかったと。決断が正しかったと。もう、騎士がどうこうは頭の隅へ。
ただ、負けない事に全力を尽くしたのだ。
だが、ここでふと嫌な考えが。
以前カステルモールに聞かされたたとえ話。アレがこの国の事情である事は、もう理解した。そして。先代の王は気付いていたのだろうか?彼の王の素質に。チェスだけでなく、他もあんな感じなのだろうか?感情では無く、ただただ効率を優先。最小の労力で、最大の効果を。そんな思考を。それを周囲が理解できないから、無能王と。理解されないと判っているから、自身もそう名乗るのかと。
頭を振って、やめた。
そんな事、今考えても仕方が無い。
どちらにせよ、自分には関係ない。
彼は、ただ自分に命令を下すだけの存在なのだから。
無能だろうが有能だろうが、彼はただの国王。自分の主では無いと。
それよりも。今はもっと大事な事がある。
先程から不安そうな顔で此方を見上げる姫君へと小さく笑い
「まぁ要するに。メッチャ強いよね、って事。もう二度とやりたくない」
「確かに凄かったとは思うけどね・・・でも、カズマ。お前、相変わらず引き分けるのが上手いな」
「前も言ったけど、コレが特技ですので」
少々おどけた様子で苦笑。釣られて笑う姫君を見て、先程の思考を遠くへ。
確証の無い無駄な考えより、コレからを考えよう。
そう思いながら。
そのまま二人。王城を後に。
一方。いまだ王は嗤い続ける。
「くふふふふふっふふふふはーっはっはっはっはっはっは!引き分けだ!引き分けだぞ!シャルル!!俺は引き分けたんだ!!初めてだよシャルル!お前とは何度も勝負をしたが、それでも、必ず勝ち負けが!決着が付いていたのに!あははははははははは!それが、この俺が引き分けだぞ!!ふはははははははは!!」
「ジョセフ様・・・・・・」
長いストレートの髪を、黒いローブで隠した女性。
彼女はいままで何処に居たのだろうか?
「おぉ!ミューズ!余のミューズよ!見たか!?見ただろう!?余が!この俺が引き分けたぞ!!あっははははははははは!しかもあの小僧!途中から勝ちを捨ててやがった!!あっはっはっはっはっはっはっはははははは!」
先程の一戦を準えるように。
並べなおした駒を、一つずつ。手早く動かして行く。
「ここだ!ここで奴は考えたんだ!!そうか!ここでもう、勝てないと思ったのか!!こんな序盤で!!ふはははははははは!すごい!すごいぞシャルル!!こんな事は初めてだ!!こんな事!何故考え付くんだ!?わからん!わからんぞ!!シャルル!!」
「ジョセフ様・・・あの者の先程の言。奴の国について。私はやはり、聞いた事がありません。サコクなる政策をとっている島国など・・・」
「そうか!そうか!よし、よしよしよし!良いぞミューズ!なるほど!つまり、奴は東方の出身では無いのだな!!では何処だ!?シャルル!お前はどこだと思う!?あんな妙な服を着て、見慣れない剣を振って!こんな馬鹿な事を考えるなんて!どこでどんな育ち方をしてきたのだ!?シャルル!お前はどう思う!?」
狂った様に。
いや、実際狂っているのか。
只管に、シャルルと。もう居ない弟の名前を呼びながら笑い続ける王を見て。
女性はギリっと。
歯軋りを。
許さない。
許さない許さない許さない許さない許さない許さない!!あの男。あの男あの男あの男あの男あの男!!ジョセフ様のお心をここまでっ!絶対に!絶対に許さない!だたでさえ!ジョセフ様を殴った事ですら!最早万死に・・・いや、ただ殺すだけでは生ぬるい。それこそありとあらゆる苦痛を与えて苦しめなければならないのにっ!それなのに・・・それなのにっ!よりにもよってジョセフ様に引き分け?どういう事だ!身の程を知れっ!大人しく負けて地べたを這いずって居れば良かった物を!よりにもよって引き分けだと!!ジョセフ様と並び立ったつもりかっ!ありえない!あってはならない!!ジョセフ様の隣に立てるのはこの私!私だけだ!!あのような男など!!
「ミューズ!余の可愛いミューズよ!」
そこへ、愛しの主からの言葉で。彼女は一瞬で現実に引き戻された。
「良いか?余のミューズ。もっとだ。もっとあの男の事を、事細かに調べるのだ。どんな些細な事でも良い。それと、任務も今までどおり。常にギリギリで。だぞ?いいな?ミューズよ!」
「はい陛下。仰せのままに」
落ち着け。そうだ。落ち着くのだ。そう。あの男はジョセフ様のオモチャ。私が勝手に壊してはならない。そうだ。落ち着け。所詮奴はオモチャでしかない。だが私は違う。だから落ち着け。
「余の可愛いミューズよ。頼んだぞ」
「はい。ジョセフ様・・・」
先程までの狂気は也を顰め。その頬は桃色に染まる。
だがやはり。蒼の王が何を想うか。それは、誰にも・・・・・・・・・
方や、笑顔で。方や、こちらも笑顔。
どちらの主従も笑顔だが、その意味は別。
しかし、いまだ彼らは動かず。
いつ、動き出すのか。
あとがき
以上でした。普通にジョセフ王と対談する姿が想像できなかったので今回こんな感じに。これ以上カズマ君には「実は~を」みたいな設定はありません。
今回のもちょい無理があったかも・・・
そしてジョセフさんとミューズさんの心理描写を少し・・・心理・・・無理・・・でしたOrzコレが限界でした。いかがでしょうか?
今回次回予告無くてももう次の話が・・・
という訳で、また次回。
読んで下さる皆様へ。
いつも沢山のご意見。ご感想。ご指摘ありがとうございます。
2010/07/21 修正