プロローグ
ハルケギニアの大国、ガリア王国。
その首都であるリュティスには、ヴェルサルテイルと呼ばれる壮麗な宮殿がある。
大理石と、ガリアの王族の髪と同じ青いレンガ造りの壮麗な宮殿。
巨費を投じて建造された宮殿は、なるほど。細部まで見事に作りこまれていて、見るものを圧倒する程だ。
その一角に、一回り小さい宮殿がある。
通称プチ・トロワ。
その主、ガリア王国第一王女イザベラの執務室に、黒い髪の青年と青い髪の少女が居た。
「で?結局任務は失敗って事かい?」
椅子に腰掛け、眉間にしわを寄せ頬杖を着きながらトントンとリズムよく、人差し指で机を叩くす少女。
腰まで伸ばした長い青い髪。
プチ・トロワの主であるイザベラは、はたから見ても不機嫌そのものである。
「いや、だからさ。失敗と言えば失敗とも言えるし、成功と言えばまた成功とも」
「お黙り!見苦しい言い訳するんじゃないよ!」
「言い訳じゃねーっつーのに・・・ったく、人の話聞けよな」
怒鳴られた黒髪の青年は、ポリポリと頬を掻きながら直も何やらブツブツと呟いている。
イザベラはそんな青年を「ギロリ」という擬音が付きそうなほど鋭い眼で睨み付ける事で黙らせた。
「ふん、まぁいいさ。それよりもコレ、あんたにだよ」
言いながら、机の上に置いてあった羊皮紙をヒラヒラと靡かせ、青年に受け取るように促す。
「げ・・・またあの青髭からかよ・・・」
渡された羊皮紙の内容を確認した青年の、第一声がそれだった。
「あぁ。一応、私もお父様にもう少し任務を減らすよう言ってみたんだけどね。取り付く島もなかったよ」
少し申し訳なさそうに微笑みながら返事をしたイザベラを見て、青年は苦笑しながら盛大に嘆息した。
「まぁ、仕方ないさ。あの青髭は言って聞くような奴じゃない」
「いつものように水の秘薬を大量に用意しとくから、安心しな」
「大怪我前提っていうののどこに安心しろと?」
「怪我するのが趣味じゃなかったのかい?いつもボロボロで帰ってくるカズマさん?」
「好きで怪我する程特殊な趣味はしてないつもりですよ。机に突っ伏して寝ていたイザベラさん」
二人してしばし、笑顔で睨み合っていたが、少しして同時にフッと笑みをこぼした。
「ま、何にしてもとっとと行ってさっさと帰ってきな」
「あいよ。んじゃ、行ってくるぜ。『リザ』」
「あぁ、お土産よろしくね」
「アイ・マム」
軽く敬礼の真似事をして、執務室から足早に退室する青年の背中を見ながら、少女は誰にも聞こえない程小さな声で呟いた。
「死ぬんじゃないよ」
それは偽らざる少女の本音であり、純真な願いだった。
いつからだったか。
彼女がそんな事を願い、口に出すようになったのは。
いつからだったか。
魔法が使えないという理由で冷遇され、周囲に当り散らしていた彼女が、そんな態度を取らなくなったのは。
いつからだったか。
そんな彼女の周りに、少しずつ人が集まって来たのは。
いつからだったか。
ただ一人「ガリア王国第一王女である自分」を「リザ」と呼ぶ平民が現れたのは。
いつから
「そうか・・・もう半年か」
呟き、少女は窓の外。
澄み渡る青空を見上げる。
物語の始まりは、半年程時を遡る。
季節は春。
まだ少し、寒さが残る朝の出来事。
と言う訳でプロローグです。
本作品はライトノベル「ゼロの使い魔」の二次創作です。
主人公はイザベラと、イザベラに召喚されたオリキャラです。
侍従長最強物です。
時系列は原作開始一年前からです。
以前感想の部分にも書きましたが、改めて。
本作品は、原作「ゼロの使い魔」1~18巻と、外伝「タバサの冒険1~3巻。烈風の騎士姫1~2巻。私がコレらを読んだ時点の設定で書いております。なので、今後新刊が出ても魔法などの細かい設定は使うかもしれませんが、大筋の変更はありません。
設定などがアニメ版と小説版ごっちゃになっている部分があるかと思います。(その場合、最後のあとがきに記載します)
以上、とりあえずこんな物でも良ろしければ、読んで下さい。
m(_ _)m
一言。
全てはイザベラ様のために。
2010/07/07修正
2010/07/26修正