デバイスをどうしよう、と思い考える俺だった。
第四十三話
そういえば今までデバイスを使って来なかったな。
今までバリアジャケットを張る必要なかったからか(仕事中はドラゴンフォームが多く)、
デバイスを必要としていなかったからな。
だから俺としてはデバイスを新調したいものだ。
俺が長年共に戦ってきたストレージデバイス、グングニールは既にエミヤ風の転生者ことアークとの戦いの時に壊れている。
まあ俺がドラゴンになった衝撃で踏んづけてしまい、壊れてしまったからなのだが。
だから俺としてはドラゴンの体重にも耐えられるような頑丈なデバイスが欲しいな、とは思っている。
だが俺の給料ではそんなものはとてもとても。
「なら私が買うよ」
あ、そうだった。
ファナム、Sランク魔導師だから給料高いんだった。
嫁にたかる夫。
あれ? なんだか涙が出てくるよ。
給料の差があまりにも大きいことに嘆く俺だった。
魔導師ランクの差こそが地位の差、つまりは給料の差か!
そう思える三等陸士の俺だった。
実は俺三等陸士、つまりは一番の下っ端だったりしたわけではある。
因みにキャロも三等陸士。
まあ娘のキャロと同僚でもある俺であった。
まあそんな下っ端だからこそそんな大した給料なんて出るわけがない。
オージン一家の家計を支えているのはまさにファナムだった。
そしてオージン一家の家事を支えているのはキャロ。
……俺、情けな!!
俺もさ、俺もさ、一生懸命頑張って仕事はしてるんだよ!
俺の一吼えですぐにでも集まって保護しやすくはなるんだよ!
だから俺にとってここは天職といってもいいくらい、やりやすい仕事なのだ。
ただそれでもファナムと比べると情けないことに違いはないわけで。
本当にどうするんだろうか? 俺。
ともかくデバイスは持っていた方がいいだろうとは思う。
なにかあった時のための備えに。
俺は膨大な魔力を持っている。
だがそれをデバイスに注入して使う戦い方はできない。
なぜなら俺の召喚する魔力量はあまりにも膨大すぎて、微妙な出力調整ができないから。
俺にしてはちょっとと感じてもその差はあまりにも絶望的なまでに巨大すぎるのだから。
なにせスターライトブレイカーを666発作り出してもまだまだ余裕があるのだ。
ジュエルシードが21個集まったところで、それ以上の魔力を引き出すことなど朝飯前と思えるくらい膨大なのだから。
だからデバイスに魔力を注いで戦えば、すぐにでも壊れる。
だからデバイスに頼った攻撃方法はできないといってもいい。
だからラウンドシールドの防御魔法、アクセルシュータ―などの攻撃魔法は基本的に方式形成頼りだ。
だから俺がデバイスを使う魔法となれば、基本的に自分に対する魔法、または魔力オーバーさせてはいけないような魔法のようなものだ。
簡単にいえばバリアジャケット。
バリアジャケットに注ぐ魔力が大きすぎると、魔力に耐えきれなくなって自分自身の体自体が押し潰される。
たとえフェンリール・ドラゴンの体という圧倒的な肉体を持っていても、神域の魔力には耐えられない。
だからこそバリアジャケットを張る時はデバイス頼りなのだ。
デバイスなくても普通の魔導師ならできるのだが、俺の魔力制御の低さを見縊らないでくれ。
んなことできるか。
他にも変身魔法の精度を上げたりなど。
これはデバイスなしでもできるが、まあ精度を上げたい場合はデバイスを使わないと。
まあデバイスなしに慣れたので、今ではデバイスがなくともすっかりちゃんとした変身魔法ができるのだが。
回復魔法も拙いが、デバイスでやらないと不可能だ。
なぜなら方式形成で回復魔法をしようとすれば、過剰回復で逆にダメージを与えてしまう結果になってしまう。
どこの世界の過剰回復魔法だ。
だからこそデバイスは必要になる時が来るのかもしれない。
できればそんな時はやってきてほしくはないのだが。
俺の不幸レベルを考えると備えておかないと危険かもしれない。
だから俺はデバイスをなんとかしようと思ったのだ。
ただどんなのを作るべきかは決めてないが。
とりあえず接近戦は勘弁したいので、アームドはなしの方向にしとこう。
インテリジェントも俺に会うのがないだろうし、
やっぱグングニールと同じストレージがいいかな、と思う。
「だったらドラゴンモードでも使えるデバイスにしようよ」
「ドラゴンモードで?」
まあ確かに竜形態でもデバイスが使えるようになれば、
強固な竜鱗に加えて、バリアジャケットという鉄壁が出来上がるわけだが。
あ、でも俺のラウンドシールドに比べるといささか脆いか。
なんせバカ魔力で組み上げたシールドだし。
しかしフェンリール・ドラゴン、強いなぁ。
まあ魔法無しでAAランクにまで上り詰めるくらい強いんだし。
フェンリール・ドラゴンの弱点といったら洗脳系魔法くらいだろうな。
理性と知恵がないから驚くほどに洗脳系魔法がかかる。
まあ俺の場合、理性と知恵があるからかかりにくいから、その弱点は消えたが。
代わりに恐怖心があるから弱くなってる気もする。
しかし竜形態でも使えるデバイスか。
うん、まず杖は無理だな。
フェンリール・ドラゴンは四足歩行だから手に持つことができない。
つまり武器系や杖系などの手に持つタイプのデバイスは駄目だということだ。
だったらどんな形態のデバイスにしようか、悩んでいると。
「あのね、オーちゃん」
「実はなんですけど……」
「キュクルー」
どんなデバイスにしようか悩んでいる時だった。
ふと3人が俺を見ている。
? なんだろうか?
なにか言いたそうなんでけど。
「えっとね、いろいろ言っちゃったんだけど」
「実はですね、もう既に用意してあるんです」
「キュック」
「……え?」
用意してある?
この会話の流れで出てくるものといったら、やはり『アレ』しかないだろう。
しかしタイミングがいいな、と思ってしまうのは仕方がないことなんだろうか。
「こ、これが、私とファナムさんと相談して作った」
「オーちゃん専用のデバイス」
そうやって差し出されたのは手甲型デバイス。
手を守ると同時に殴るのにも適してデバイス。
自分から殴りにいくつもりはないが、それでも防御用のデバイスといってもいい。
おお、しかもドラゴンモードでも使えるように設定してあるのだとか。
俺は2人のプレゼントに喜んだ。
「あ、ありがとう。ファナム、キャロ、フリード」
「えへへ。オーちゃ~ん」
「は、はい.お父さん」
「キュック~」
俺は3人とも褒めてやる。
ファナムもキャロも顔を赤くして、
しかし嬉しそうに笑っている。
ああ、俺も嬉しいよ。
今日はなんて良い日なんだろう。
これだけ良いことになるだなんて、この体になった時は思いもよらなかっただろう。
でも今は幸せだ。
それだけで、十分なのだから。
「そうです。それが手甲型デバイス、名前を『ラグナレク』」
「て、おい。それは八神二等陸佐の必殺技名じゃないか」
「え!? そうだったんですか!?」
「知らなかった」
おいおいおいおい!
有名だろ! 高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての三人娘は!!
そのお得意の必殺技である「ラグナロク」は強すぎるだろうに!!
あ、そうか。
あの2人と違って、八神二等陸佐はもっと他にも強力な魔法なんてたくさんある。
そもそも前線に滅多にいかないのだ。特に偉くなってからは。
それにそもそもラグナロクを使うような機会に、彼女は滅多に陥らない。
だから高町なのはといえばSLB、といったくらい有名ではない。
ならば知らないのも当然かもしれない。
それほど有名ではないのかもしれないから。
でもまあいいか。
「ラグナレク、か。まあ俺にはぴったりかもな」
俺のこの身はフェンリール・ドラゴン。
一度オージンは死んだ。
だがそれでもまだ生きている。
ならば生き延びてやる。
ファナムとキャロと一緒に。
たとえ世界が滅びようとも、世界に終焉が来ようとも。
この手甲型デバイス『ラグナレク』と共に。
その頃、部隊編成で悩んでいた八神二等陸佐殿。
私は頭を抱えて悩んでいた。
「はやて。どうしたんだ?」
「いやなー、ライトニング隊の最後の1人が決まらんのよ」
「ライトニング隊、て。主にフェイトかシグナムが面倒見る奴か。
……あのシグナムが面倒見れる奴か~」
そこら辺が悩みどころや。
ヴィータもよう分かっとるみたいやな。
あの『戦闘狂』が面倒見れる奴や。
エリオ君の場合やと、フェイトちゃんが守ってくれるから大丈夫なんや。
でもフェイトちゃんの守りがないと、シグナムが教導とはいえん教導でしごきまくるやろな。
『自分にはこんなことしかできません』とか言って。
基本的に教導はなのはちゃんかヴィータに任せるつもりなんやけど。
それでもやっぱライトニング隊に任せることやって多い。
特にコンビネーションでは自分とこの隊長陣と組む訓練やってあるからな。
「あたしの教え子から何人か引き抜いてこようか?」
うん、まあそれもええ考えやねんけども。
「大丈夫なんか? デフォではぁはぁいっとる奴はいらんで」
「いや、そんな気色悪い教え子は引き抜かねーよ、はやて」
いやいやでも。
私が知っとるヴィータの教え子ゆうたら小さい子を見てはぁはぁ言っとる奴くらいしか思い浮かばんねんけど。
ヴィータの容姿に惹かれて、弟子にしてください! とか言っとる奴しか見かけへんねんけど。
「あたしの教え子全部がそんなんじゃねーよ。
いることにもいるが、8割方まともだ」
「それ2割はまともやないのんおるん認めとるやん」
普通そこは最大でも1割やろ。
2割て。
自分でも2割おるて認めるほどに多いんかい。
そう突っ込んだけれども、ヴィータは口笛を吹いて逃げおった。
まあ今はそこに突っ込む必要はあらへんな。
「あー、でもさすがに隊長がシグナムかフェイトになるからな。
スターズ分隊にするんなら問題ないけど、ライトニング分隊にするメンバーにするには弱いか」
そや。
今、問題としとるのはライトニング分隊の空席1つや。
ヴィータの教え子から引き抜くにしても、まずヴィータの言うことやったら聞いてくれるかもしれへん。
けどもフェイトちゃんやシグナムと連携するのは難しいかもしれん。
なるべく癖のない新人の頃から育てたいんよな。
「せやなー。ただ決まらんのもあれや」
新人3人の中に古参1人てのもええかもしれんねけど。
なるべく新人4人で固めてみたい。
それにいくら教え子やからって今ではどこかの部隊の配下や。
ヴィータには悪いんやけど信用できるかどうかも分からん。
あの気色悪い奴やったら裏切る気はないんやろうけど、新人たちの悪影響になりそうやからあかんわ。
修吾君と同じ理由で、ヴィータの教え子のはぁはぁ言っとった奴は却下。
するとそこにフェイトちゃんが入ってきよった。
「あれ? どうしたの。はやて」
「お、フェイトじゃねーか。仕事はどうしたんだ?」
「うん。ジェイル・スカリエッティを捜査していたんだけど今回も外れ。
代わりにリンカーコアのなくなった次元犯罪者スパイラル・ラーメンを見つけて捕縛したの」
「リンカーコアないて、あれか? 例の」
「そう。あのリンカーコア連続奪略の」
最近リンカーコアのなくなったという事件が多い。
そんでその犠牲者は次元犯罪者やとか、後は汚職をしとった管理局員が多い。
基本的悪事をしとる魔導師がやられてリンカーコアを抜かれる。
あの修吾君でさえ退けられることから推定SSSランクであることは間違いないはずや。
それくらいの実力者、ちゅーことは分かっとる。
とにかくそれを本部へ送るための準備に、一度本部へと戻ってきたんやろ。
そのついでに私に会いに来たゆーところか。
未だにアーク・ハルシオンも見つからんし、頭の痛いこっちゃ。
まあ最近ではその殺戮魔導師も見かけへんゆーしな。
今頃どないなっとんのやろ。
そう思う私やった。
「それでなにに悩んでいたの、はやて」
するとフェイトちゃんは私に尋ねてきた。
まあ私もこれだけ悩んでいるんや。そりゃ分かりやすいことやろう。
フェイトちゃんもなんで頭を抱えているのか、尋ねたいんやろ。
「そやね。フェイトちゃんの部下になる枠が1個空いとるんよ。
そんでそこに誰入れるかや。
フェイトちゃんが保護した魔導師ん中でええ人おらへん?」
フェイトちゃんは基本的子供を保護して回っとる。
特に人造魔導師とか、そういう普通やない子供をや。
私もこういうのはあんまり好きやないんやけどな。
それでも新人が欲しい。
「あれ? 言ってなかった?
私、この前新しく保護した子がいる、て言ったけど」
「いや、それ聞いたから。魔導師で、尚且つ管理局に入っとる子や」
まあおらへんからこない悩んどるんやけど。
「あれ? 私、その子が管理局で私と一緒に働きたい、て言って。魔導師ランクもBランクだから、空いてる枠に入れられる。
本当なら入れたくないんだけど、その子があまりにも強情だったから、はやてに相談してみる、て――
ああ、はやてに言っておくの忘れてた!」
ずごんっ!
古典的なボケに私はつい古典的なリアクションをとってもうた。
さすがフェイトちゃんや。
天然ボケのお姫様やー。て言いたくなってきた。
なんて可愛い子なんやろ。
どうやらどうしても機動六課に入りたいて言うとる子が、フェイトちゃんが保護しとる子供の中におるゆうことらしい。
しかも魔導師ランクもBランク。
しかもちゃんと訓練されているらしい、て。
しかも伸び代がまだまだある、というまさかしく理想的な子やんか。
まあもっと詳しいこと調べなあかんけれど、実質この子に決定したいほど理想的な新人や。
これで空枠問題はなくなったな。
いや、まだ安心したらあかんねんけど。
「安心したから疲れたわ。疲れ癒すために堪忍なー」
「え? ちょ、や、やめて! はやて! 助けて、ヴィータ!」
「ちょ、はやてぇ! この間、セクハラで訴えられただろぉ!
これ以上罪を重ねんなー!」
「大丈夫やー! フェイトちゃんやったら訴えへん!」
「大丈夫じゃねー!」
しっかりとフェイトちゃんの胸を堪能したけれど、無理やりヴィータに引き剥がされた。
うう、もっと揉みたかったのに。
ヴィータのあほー。
ヴィータは私の騎士やろー。
「はやての騎士だからこそ、主が間違った時はしっかり止めるんだよ」
そんなん詭弁やー。
こういう時こそ私を手伝ってくれてもええのに。
アイス作ってやるからもう一度揉ませてくれるの手伝ってくれへん?
「悪い、フェイト。あたしじゃあはやては止めらんねー。
せめてお前の逃げ道を失くすことぐらいしか!」
「買収されたら駄目だよ、ヴィータ! や、止めて、はやてぇぇぇ!」
その後なのはちゃんに見つかってキッチリ怒られました。
いやはやなのはちゃんのOHANASHIほんま怖いわー。
まあそのOHANASHIの最中にでもなのはちゃんの胸揉んでやったけどな!
揉んだらまた最強のSLBでやられてもーたんやけどな。
きっちりと反省はしとるけども後悔はしとらへんで!
「それを反省してねーと言う」
因みにヴィータもOHANASHIされたらしい。
まあ不機嫌やけど、約束通りアイス作ったればすぐに機嫌直るやろ。
とにかく確認してみたけど問題もなく、ライトニング隊最後の枠に入れる新人としては理想的な子やったから安心できたわ。
これでなんとか機動六課、設立できるな。
後はティアナちゃんとスバルちゃんの出来具合やな。
十中八九なのはちゃんの眼鏡に適うやろうけども。
今日でなんとか不安事の一つを解消できた私やった。