<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.19123の一覧
[0] RedEYE (DRAG-ON DRAGOON) [短編・一話完結][F-Taka](2010/06/12 17:02)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[19123] RedEYE (DRAG-ON DRAGOON) [短編・一話完結]
Name: F-Taka◆d0d24445 ID:5438362e
Date: 2010/06/12 17:02
※ネタばれ(モロ)、グロ(少々)注意。



 ここは何処なのか? 男の思考によぎった当たり前の疑問は、全身の苦痛と共に焼却された。
 自分は誰だったか? 胸の疼きが答えを既に出して、頭が拒絶した。
 何をしているのか? 走っている。息はとっくにきれて勝手に出はじめた嗚咽が五月蠅い。おそらくは逃げていた。
 誰から? 何から? やめろ知りたくないそれだけはいやだ。──違うことを考えることにした。
 体の状態はどうだ? 傷だらけで傷の無いところを探す方が難しい。正直、今にも死ねそうだ。
 ここは何処なのか? よぎった疑問が今回は消えなかった。


DRAG-ON DRAGOON E end after † RedEYE


 足元には水、真っ暗な闇はどこか地下洞窟に酷似していたが男の頭が似て非なると断じた。
 壁が、平らすぎる。明らかに人の手が入ったその壁を見て、ここが自分の知っている場所だと思える楽観的な頭を男は持っていなかった。地下洞窟というよりは人為的な構造は城の抜け道にも近かった。だがそれも違う、抜け道であるなら足元に流れる水は逃げるのに邪魔でしかない。そも抜け道であるなら基本は一本道であるべきだ。出口が押さえられてる可能性を考えた予備を含め二、三分かれる程度。
 迷路のようにいたるところに分かれ道があれば、今何処にいるのかなど男に解るはずも無かった。
 なにより決定的にオカシイのは、この広さ。連隊規模だろうと敵軍に悟られることもなく進軍させることも可能だろう広さ。そんな馬鹿げたものの存在など聞いた事も無い。兎にも角にも抜け道の案も破棄する、いや破棄して良いと『感じ』た。

 じくじくと苛み痛む頭痛が取れない。余計な思考だけが脳髄を掻き乱し、胡乱な視界から靄が晴れる事を忘れた。
 それでもこんな状況でも意識は掻き消されようと言うのに、冷静さを失わない一点が男の中に未だある。
 この事実に愕然とし、けれど何も感じない。消える一方で鋭さを増しナイフのように尖っていく“it(それ)”が在るのを感じながら、何も出来ることが無い。いっそこの壁に頭を叩きつけて、頭蓋を割ってしまったほうが話が早いか。
 まず足元の水が飲み水かどうか確認しよう、飲み水であるならその有用性から言って多少の疑問は消えてくれる。
 その一方で解っていた、自分ではなく“it(それ)”が。壁に頭を叩きつけたところで、自分の頭蓋より先に壁の方が先に壊れると──。

 男の身体が水分を欲していた。目的も解らないまま走り続けていた足を休め、倒れるように屈み。
 そこに、見たくない可能性、想像もしたくない最悪を見る。汚すぎるのだ、まるで家畜小屋の水を連想させる穢れ。
 なにより水の上に浮遊した水のようでいて全く違う七色に光る物体が男を絶望に浸らせる。
 ──知らナいシラなイっ、こンなモノは……知らないッ! こコは・ドこ・だ?
 錯乱した思考の中、実際に頭を振り廻すことで眼にかかった前髪をどかすと同時に、弱気な逡巡を拭い祓う。
 ゆらと目線を下に落とす。これでは飲めな、くもないが飲みたいと思えない。仕方なしに比較的汚れの少ないところを指で掬い、乾いた唇を濡らすだけに留めた。飲めないわけではないのだ、これより酷いものなど幾らでも見てきた幾らでも啜って生きてきた。

 頭痛が激化する。締めつけられるような痛みに視界が眩む。
 四肢の力が抜け、崩れ落ちそうになる体を右腕が支えた。ふとした疑問が提示される『何で体を支えた?』右腕だけでは足りないと騒ぐ無意識が頭痛に似た痛みを伴っていく。ゆっくりと開いた瞳が捉えたのは赤黒く染まった肉厚な大剣だった。
〝それ〟を認識した瞬間どうしようもない喪失感に気付いた、気付いてしまった──。
 男の眼から涙が流れる。どうしようもなくて何故出ているのか解らないから、止めようもない。
 声にならない悲鳴が喉のもっと奥、肺すらもこえた心の臓腑から零れ出る。

『………あ…あ……』

 その行為のせいで男自らが最も否定したい事実に確証を与えてしまったこと。
 契約。代償。孤独。絶望。今だけは今だけでもそんな事は忘れ、只ただひたすらに。

「アアァ、アアアアアああああぁああ嗚呼アアアアァァ─────ッ!」

〝声〟をあげ、愛しき者がいなくなってしまったことを悲しみたかった。


       †


it(それ)”は何処からともなく現れて、ただ唄を詠い去って行く。
 それで終わりならこの物語もそこで終わり、一人の男が戦い続けた末にその手に残ったモノは何も無かった。
 それで終わり、それで終われるのだ。
 曰く、見てはならない。曰く、聞いてはならない。曰く、知ってはならない。
 人の世で無知でいれば毟り取られるだけの猿だが、“it(それ)”に関しては無知でいる事だけが唯一啓いた賢者への道。

 男は見てしまった。畢わる世界、紅き終焉、そして“it(それ)”を。
 男は聞いてしまった。赤目の少女の嘆き、そして“it(それ)”を。
 男は知ってしまった。“it(それ)”の正体を。

 天使を語ってはならない。
 天使を描いてはならない。
 天使を書いてはならない。
 天使を彫ってはならない。
 天使を歌ってはならない。

 聞いてはならない唄が木霊する。見てはいけない姿が脳裏に映る。
 耳、眼、口、時には手から時には足からでもそれは侵入し人を人の理から外す。
 だから……、深く悲しみ堕ちた男に。

 ──天使の名を呼んではならない。

 抗う術など無かった。


       †


 男の始まりは深い眠りから醒めた感覚だった。残ったただ一つの壱。それに従い即座に行動する。
 自らの位置を再確認し、恐らくここが地下である事は間違いないと確信する。
 足元を覗く、水。行動の障害となるか? 瞬刻の思案──否。
 答えを出したのなら男の行動は速かった。時間的な意味ではなく、速度的な意味で男は常軌を逸していた。
 地面を踏む。それだけの行為が衝撃をおこし、周りの水が飛沫をあげ男を地に上げた。
 モーセの奇跡を実現させた事実は、男に何の変化も誘発しない。無表情で即座にもう一度地面を蹴り上げれば、見る見るうちに遠かった天井が近くなりあわや激突と言う瞬間、男が右手に持った大剣が火に染まる。掌大の火球が左手に出現し、男はそれをそのまま天井に叩きつけた。
 耳障りな何かをガリガリと削るノイズをたてながら火球が爆発する。

 見事に地下水道から脱出した男は、たまたま近くにあった四肢が削げ落ち胴体も炭化した不幸な死体を一瞥したのち、周りを見やり何が起きたのかも理解出来なかった通行人を複数見つけた。とりあえず近くいた女の首に目掛け大剣を一薙ぎし、ポトリと生首が地面に落ちた。
 噴水を象った不出来なオブジェを無視し、いち早く状況を理解しようとしたその隣の男へ頭上から片手で大剣を振り下ろす。
 力が足りなかったのか胸あたりで止まった。真っ二つにしそこなった死体を足で蹴り飛ばしながら剣を引き抜く。
 右手を軽く振るい、剣の血を混凝土の地面に飛び散らかす。その過程で男は次の標的を捜し、やめた。
 近くにいる奴から斬っていけばいい、そんな結論に達したが故に。地面を蹴り爆発現場に眼が釘付けだったペットを連れた女の背後に気付かせる事もなくまわり、胸に大剣を突き刺す。そして、上に切り上げ頭も破壊した。
 最初の爆発も含め、占めて四人。爆破による粉塵が視界を遮った事を含めてもその行動は遅すぎた。
 そも、グランギニョルの始まりはこれに決まっていた。
 大勢の悲鳴、と。

 その日起きた虐殺は世界を壊し変えていく。
 残ったのは悲しみでも憎しみでもなかった、男に残った唯一は怒り。
 大義名分に愛しき者を殺された復讐を掲げながら、結局残ったのは怒りでしかなかった。
 いや、復讐も残っていたのかもしれない。なぜなら男が通った道には血でも屍でもなく白塩がばら撒かれ跡形も残らなかった。
 人にとって一番惨い死に方は痕が残らないこと。死が無、ナッシングである事実を生者に刻み付けるのだから。


       †


 小高い丘に立ち眼前の町を見下ろす。あの災厄の後、人々は死を少しでも回避しようと躍起になり態と危険な場所に住むようになった。
 地面に突き立てた大剣の柄に両手をかぶせた状態で男は瞳を瞑る。
 そんな事情は関係ない。
 只、殺す。
 只々、殺す。
 只管、殺す。己が怒りが晴れぬ限り殺し続ける。

「この街はどういたしましょう」

 突然かかった声に男は無表情のままだった。部下であり手駒でしかない存在に驚きはしなかった。
 しかも、喋れるほど理性が残っている奴など一人しか知らない。

「殺せ」

 簡潔且つ的確に目的を告げる。“it(それ)”が用意した味方、命令したこと以上をしない兵は便利で効率のいい兵器だった。

「殺し終わったら」
「新しいのを探して殺せ」
「“敵”、全てを殺したら」
「“味方”を殺せ」
「殺し終わったら」
「“自分”を殺せ」

 会話が途切れ、相手の短い了解の言葉で完全に打ち切られた。
 そしてこれが、奴との最後の会話だと男は直感し……特に何も思うことは無かった。
 この後の戦いで奴が死のうと狂気に呑まれ理性を消失させようが興味は惹かれず、男を崩すには何もかもが足りない。
 無表情のまま先ほどから閉じていた眼を開き、戦場の空気を肌で感じとる。やることは一つ殺せ、それ以外には残っていない。

 地面に突き立てた剣を引き抜き、眼前に掲げ誓う。
 殺す。何に、でもなくただ祈り誓う。
 男の眼は血のように朱い真紅に染まって。

「我が名はカイム!」

 意味も無くなったその名を、何故か叫んでいた。


DRAG-ON DRAGOON → Next to NieR



✜ ✜ ✜ ✜ ✜
〖作者の妄想〗
明日発売、早ければ今日手に入れられるであろうNieRの攻略本。
どうにかしてその前にレッドアイの正体の妄想を書き上げたかった。(リハビリの意味合いもあり)
何となく正体はイウヴァルトかと思いつつ、死期を悟ったアンヘルに契約を破棄され生き残ったカイムがみたいな妄想垂れ流し。
この後カイムは殺される事が確定されてるんですが。まぁ、これでもきりが良いかなとそのシーンはカット。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

2010/05/27 contribution
2010/06/12 revise


感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.024061918258667