人は自分自身というものをなくしたらどうなると思う？

ぬけがら？

廃人？

それとも死んでしまうのだろうか？

私は、ただなんにもしないで生きていくのだと思ってる。

なんにも変わらず、いままでと同じように。

友達と遊んだり、勉強してどこかの大学に入ったり、もしくは誰かと結婚してるかもしれない。

そう、普通の人と同じように。

『自分自身はそういうものだった。』と錯覚しながら、なくしたモノを悲しみながら今までと同じように生きていくんだろう。

と私は思う。

・・・しかし。

もちろん仮定の話だが、最初から自分自身というものがなかったとしたらどういう人間になるんだろうね？











私はそれに非常に興味がある。
僕は自分自身というものについて考えている。

ちょっと前に姉の通う大学に忘れ物を届けに行ったときの事。
姉の教室が分からなくて誰かに聞こうと思い、前にいた髪の長い女の人に声をかけた。

「　　　の教室を知りませんか？」

その人はこう答えた。

「教えるのはいいが君の名前はなんだね？」

と。

僕は名前を聞かれたから答えようと思って口を開いた瞬間「いやいや、君のことは　　　 からよく聞いている。　　　の教室は三階の右端だよ。成り損ない君。」

悪意のあるような、それでいてからかっているような声色に遮られた。

彼女の言っている事に間違いはないので御礼を言って、とっとと校舎の中に入っていった。

後ろで「だから成り損ないなんだ」と小さくつぶやいている事には気づかないことにした。

三階に行く途中、珍しいのか何人かに声をかけられたが最小限の挨拶だけを交わして階段を上っていく。

ようやく姉の通う教室に着いた。

ドアを開こうとして前を向くとガラガラという音を立ててドアを開けて姉が出てきた。

「忘れ物です。」

特に驚くことなく僕がそう言う。

「ありがとう。じゃあもう用が済んだのだから帰ってくれる？」

疑問系で言ってるけれどハッキリと帰れといわれているんだと分かっていた。

だから僕は

「分かりました。」

そういうしかない。

後ろでまた「だから成り損ないなのよ」と小さくつぶやいていることには気づかないでいた。

そうして校舎から出て家に帰った。

どうして僕が成り損ないなのか考えながら・・・。
そうして今も考えている。

どうして僕が成り損ないなんだろう？

僕の名前は　　　　姉の一つ下で16歳。　　　　学校に通っている。男の子・・・のはずだ。少なくとも自分自身はそう認識している。

なのに僕を知っている人は成り損ないとしか言わない。

僕のどこが成り損ないなんだろうと父さんに聞いてみた。

「君はね、　　　の脳をもっていながら　　　にも機械にも成れなかったから成り損ないなんだよ」

と吐き捨てるかのように言うのは印象的だった。

僕はそういう意味では確かに成り損ないなんだろう、と思った。

だから、僕は「しょうがないじゃないか僕は　　　じゃないんだから。」と言った。

そういったら父さんは　　　
「そうだね、でももう君に耐えられないだ。許してくれ　　　　」

と言って僕に向けて側に在ったナタを振り上げて・・・振り下ろした。

ガン！という金属同士がぶつかるような音がして体から黒い液体が流れていき、だんだんと体が動かなくなっていった。

僕はなにになればよかったんだろう？と疑問を覚えながら
　　　　僕は　　　　
　　　　
　　　　　　　　　　逝った。










私はこの奇妙な存在に興味を持った。

不運の果てに死に、望まれて復活させられて、望んだモノじゃないから殺される。

結果自体は珍しいものではないけれど。

自分自身であろうと望まれたモノではないモノの様に振舞おうとする奇妙な存在に。

私が、そう、私が興味を持った。

だからこそ、もっとこの存在に踊ってもらおう。

私の世界で。