とんでもないものを見つけてしまった。最強の怪獣王と南極で一線交え、大破しつつも封印に成功した方の万能戦艦が目の前にある。ドリルは男の浪漫というが、ここまで分かり易くドリルってる戦艦はそうはない。『こんなもん・・・って、相棒、こいつを知ってんのかい?またお前さんの世界の代物か?』「厳密には違う。正しく言うなら俺の世界で生まれた架空の兵器だ」『架空の兵器?』「水陸空、果ては地中まで進める万能戦艦、それがこの轟天号なんだけど・・・」『どうした?』「デルフ、俺はこの世界がもしかしたら何処かで俺の世界と繋がっているんじゃないかと思ってた」『・・・続けな』「紫電改や新型戦車・・・どれも俺の世界に実在した、あるいはしている武器だ。そんなのがあるんだ。もしかしたらこの世界は実は俺のとこの世界と案外近しい世界なんじゃないか?・・・そう思っていたんだ」『思っていた・・・?おいおい・・・』「お前の想像は正しいよデルフ。この世界は実は・・・俺の知っている地球とは本来繋がっていないという仮説を俺は立ててしまった」今まで元の世界に一時的に戻ったこともあり、てっきりこの世界と俺の世界は案外繋がってるんじゃないのかと思っていたが、俺の世界からしても異世界の兵器が現れたことでこの疑念が出てきてしまった。「これは想像なんだけどさ」『言ってみな』「真琴がこの世界に来てしまったときは、まだ俺の世界とこの世界は繋がりはあったはずなんだ」『おう』「それがルイズの力であるならば、俺が火の精霊との戦闘で一度死んだとき、世界同士の繋がりは切れてしまったのではないか?と思うんだが」『あくまで仮説だよな』「ああ、最悪の仮説だけどさ」とはいえこれは可能性は低いと俺は思っている。確かに一度死んだ時点でルイズとの契約は終わってしまったのだろう。使い魔契約とはそういうものだと俺は認識している。が、この改造人間として蘇生した力は間違いなくルイズではなくルーン自体のトンでも能力なのだろう。頭が痛くなる幻聴曰く、愛の力は無敵らしいが、あのルーン自体が意思を持っており、その力で一時的とはいえ元の世界に戻る力を行使したと考えれば、まだ元の世界へ帰れる可能性は大いにあるはずなのだ。希望を捨て去るにはまだ早い。ルイズとの主従契約は破棄されたが、まだまだあのルーンには振り回されるということだ。それより驚くべきなのは怪獣王がいる世界の兵器がこの世界に流出しているということなのだ。このままこの世界から地球に帰っても怪獣王がいる世界につながってしまう可能性もあるのだ。俺のいた世界は魔法も怪獣もない世界なはずなのだ。何かのはずみで元の世界に戻った時も怪獣などが出た形跡などなにもなかった。・・・じゃあこの戦艦は一体何なのだろうか?どう考えてもこの大きさはミニチュアの類ではない。それにこの型の轟天号は大破したはずなのに、なぜ綺麗な状態で保存されているのか?海底なのだから多少の腐食はあると思うんだが・・・まあ魔法の世界だし?精霊とか普通にいる世界だし?どっかの酔狂な魔法使いが保存したのかもしれない。あるいはこれを持て余したエルフとかか?気になることは多々あるが、現状言えることはこれだ。「間違いなくこの世界は別の世界と繋がりを持っている。それも俺の世界だけじゃない。ほかの幾つかの異なる世界にもだ」『それは相棒にとっては朗報なのかい?』「悲報寄りだなぁ。もしも偶然この世界から脱出できたとしても違う世界に行ってしまう可能性ができたからな」『そりゃ難儀だね。で、だ』「どうした?」『動かせるの?これ?』・・・えーと、どうなんだろう?超兵器なのは知っているが、起動するかどうかは別問題である。『相棒、ちょっくら俺をこいつにひっつけてくれ。そうしたら大体わかる』デルフリンガーの言うとおりに達也は海底に眠る轟天号に剣をくっつけた。『ほうほう・・・なるほどね。こりゃあ確かにトンでもねえ。まともに動きゃあエルフたちも苦心したろうぜ』「と、いうことは?」『ああ、残念だがこれは『俺の力じゃ』動かねえよ。せいぜい海の魚たちの住処として機能するだけさ』その言葉に正直落胆する。これだけの規模の戦艦だったら逃亡難度も低くなったろうに・・・しかし、それでいいのかもしれない。この戦艦はこの世界のパワーバランスを破壊しかねない。別に俺はエルフを殲滅する気はないのだ。可能であれば穏便に帰りたい。ほかにもいろいろ探しては見たものの、結局は収穫はほぼなく、洞窟に戻ってきた。このまま洞窟に籠っていればいずれエルフたちは自分たちを見つけるだろう。戦えるのか?エルフは次は複数名、最悪艦隊で来るだろう。対してこちらは・・・達也は自分以外の連れの顔を眺める。真琴、ティファニア、そしてルクシャナ。今はガールズトークに花を咲かせている。それを自分は遠巻きに眺めているわけだ。まあ怪しい男である。彼女たちに万一のことがあってはいけない。そんなことは達也は重々承知である。『相棒、あんまり気負うんじゃねえぜ?』「デルフよぅ」『なんだよ』「俺はさ、戦う前はいつも怖くて怖くて仕方なかった」『おう、だろうな。お前さんはいつだってそうさね』どこかで腹をくくって戦った。心を奮い立たせ戦った。ギーシュやワルド。7万の軍勢やガリア王との戦いも。精霊やらエルフとの戦いだって―――虚勢で自分を鼓舞し、虚を突き生き延びた。だが、その運もこの洞窟内で一度尽きた。確かにあの時、火の精霊に焼かれ俺は死んだ。死んだのに生きている。機械の身体を手に入れて。「デルフ。一度死んだからって、死ぬ恐怖がなくなるわけじゃないんだな」『それはお前さんがまだ、生きたいって思ってるからさ』「女々しい人間と笑うかい?」『笑っていいのかい?』「笑ったら海の藻屑にしてやる」『なんて横暴な奴なんだい、この野郎は。センチメンタリズムに浸っていると思えばよ』「女性陣が平静を保っているんだ。男の子の俺がメソメソしてるわけにはいかねえだろ」『情けねえもんな』「俺はもう腹をくくったよ。怖がっている場合じゃない。真琴を、テファを、ついでにルクシャナを無事に脱出させる。その道を俺が切り開いてやる。協力頼むぜ、相棒」『当然だ相棒。俺はそのためにお前の剣となってるんだからよ』そのような決意を洞窟の隅っこで行なう男(改造人間)一人と喋る剣。ガールトークをしている女性陣はその姿を少し引き気味に見ていた。「ちょっと・・・大丈夫なのアレ?隅っこで剣片手にブツブツ言ってるんだけど・・・」「タ、タツヤ・・・何も見つけられなかったから落ち込んでるのかな・・・?」「お兄ちゃん・・・そっとしておいたほうがいいのかな・・・」男の決意が空回りとはこのことである。エルフの国ネフテスの首都アディール。評議会本部の最上階にある、評議会議会室。議会席の上座の演台の席に座る議長は困ったような表情を浮かべて左右の議員席を見つめていた。議長から向かって右の議員席に座るエルフが、糾弾の言葉を吐き出した。「さて、ビダーシャル殿。此度の失態について、どう弁明されるのだ?」勝ち誇ったような顔で言うのは評議会議員のエスマイールである。糾弾されているビダーシャルより若い彼は、短い前髪の下の吊りあがった目をギラギラと輝かせながら、政敵の失態をことさらに強調した。「悪魔どもを逃がしたのは、あなたの姪という話ではないか」「あの蛮人かぶれめ!」そんなヤジもどこ吹く風と言ったように左側の議員席に腰かけたビダーシャルは水を啜っていた。その表情は「だから何やねん?」と言っているような呆れが見えていた。「これは由々しき事態です!悪魔の管理はビダーシャル殿にあり、その上逃がしたのがその姪とあっては、我々は陰謀を疑わざるを得ない!」「我々とは具体的に誰を指すのだね?」「ここにおられる議員の方々だ」「ここには50人ほど議員がいるが君の意見に頷いているのはたかが4,5人程度ではないかね。それもすべてあなたのお友達ばかり。議員の方々と言って多数派を装うのは見ていて滑稽としか言いようがないんだが?なぁ少数派のエスマイール殿」ここの議員たちは自分の任期が無事に終わることしか考えていない。したがって戦争などの波風立てまくりの行動はやりたくないのだ。エスマイールたちのような者たちはエルフ内でも少数派なのだ。もし戦争でも起こして自分の行動で失点でも起こせば、部族の不利益となる。その不利益の責任を取らされるのを議員の多数は嫌っているのだ。まあ、単に戦争したくないという者もいるにはいるが。現状としては蛮人と蔑む人間を笑えない状況である。「まあ、とは言っても、確かに悪魔の管理責任は対策委員長であるわたしにあるし、姪のルクシャナの監督責任もわたしにある。そのうえ、彼女の教育は私がやった。罪を問うならわたしだけにしていただきたい」エスマイールは、意地の悪そうな笑みを浮かべて言った。「そういうわけには参らぬ。どう考えてもこれは重大な民族反逆罪だ」「それを決めるのは貴方ではなく、司法局ではないのかな」「いやいや、貴方の姪御の逃げた先はご存じだろう?これはどう見ても、単なる民族反逆罪では収まらない。世が世なら、一族郎党すべてが首をはねられていたところだ。議員諸君。水軍からはこのような報告が届いている」エスマイールは、鞄から書類を取り出した。隣の議員がそれを読み、目を丸くした。「竜の巣だと!?」議会室は騒然となった。軍を派遣しろという者。悪魔を殺せばまた湧いてくるから捕まえろという者。しかし竜の巣にいられるのは非常に不味いと狼狽える者・・・それでもなお、ビダーシャルは涼しい顔であった。「これで彼の姪が犯した罪が、尋常ではないことが分かっただろう。さて、これほどのこととなると、この件、単なる頭のおかしい少女の暴走とも考えにくいのだ。ビダーシャル殿はすべてを知ったうえで、彼女の手引きをしたのではないか?」「聞き捨てなりませんな。どういうことですかな?」エスマイールの言葉に呼応するようにアジャールという議員も言う。議会の面々は『また始まったよ』という空気になった。「つまり、ビダーシャル殿は蛮人どもと手を組み、このエルフ世界を我が物にしようとしているということだ」「そういえば彼は、蛮人の王の臣下となったこともありましたな!」ここまでくると議会の面々はため息をつく者、頭を押さえる者が多数であった。そして多数派のだれもが思った。―――だから、貴様らは少数派なのだ。と。「とにかく彼の一族は危険だ!わたしはここに、かの一族の追放を提案する!」「異議なし!」エスマイール派が同調する。もうここまでくると失笑が漏れていた。ビダーシャルからすれば自分で判断、行動しているエスマイールに見込みはあれど、思想はお話にならないので議論も疲れる。「では、わたしとその一族が職を辞せば、あなたは満足されるのか?辞めていいの?」ビダーシャルはあえてエスマイールの提案に乗った。「!?わ、わたしが満足すればいいというものではない。ここにおられる議員たちが・・・」しかし議会の議員たちの4分の3以上が首を横に振っている。彼らは訴えている。『ここぞとばかりに逃げるな』と。ビダーシャルはえーと言いたげな表情を浮かべている。自分を辞めさせるならば自分がこれまで負っていた責任をすべて負う覚悟がエスマイールには見られない。ビダーシャルはそれではエスマイールを認めるわけにはいかない。それでも追放という手を取って権力を持ちたいなら持ってみろ。経験上、大抵碌なことにはならない。そのとき、一人の老エルフが議会室に現れた。完全な遅刻である。これまで黙っていた議長が遅刻を咎めると、老エルフはぺろっと舌を出すと頭を掻いてみせた。「蛮人の仕草ではありませんか」「ビダーシャル殿の姪御に教わった。あの子は蛮人の作法や慣習をよく知っておるでな。さて、議員諸君。話は全て聞かせてもらった。しかしわしとしては、議会の諸君がビダーシャル殿の罷免決議をしようが、これを拒否する」「「横暴ですぞ!」」エスマイールとそして何故かビダーシャルも叫ぶ。「これは法に基づいた統領権限じゃ。」現ネフテス統領テュリュークは言い放った。「さて、聡明なる議員諸君。ビダーシャル殿を罷免すると騒いでおるが、蛮人世界に彼より精通している議員の方はおられるのかな?彼より蛮人の扱いに長けた方がおられるならどうぞ名乗り出るがよい」その言葉で議員たちは皆、黙り込んでしまう。そう、彼より人間世界を知っているエルフなど居はしないのだ。そもそもが人間世界を知るために派遣されたのがビダーシャルなのだから当たり前である。「そういうわけでビダーシャル殿にはまだまだ、苦労してもらわねばならぬ」多分その苦労は血尿が出る以上の苦労は確定であろう。エスマイールは黙っていたが、ゆっくりと立ち上がる。「いいでしょう。ですが、竜の巣の管轄は我が水軍にあります」「で?」「ビダーシャル殿は、引き続き蛮人の対策をなさればよろしいでしょう。わたしは目の前の危機に対処すべく、現実の力を行使させていただく。では失礼」会議が終わり、議会室を出たビダーシャルの元に、戦支度に身を包んだアリィーが駆け寄ってくる。「どうなりました!?」「引き続き、蛮人対策委員長を務める」「そうですか・・・それで・・・その」「君の婚約者でありわたしの姪の民族反逆罪はもう、確定だな」民族反逆罪は死罪である。アリィーは無念そうな表情を浮かべ、そして消した。「どうにもなりませんか」「逃げた場所が不味かった」「よりにもよって竜の巣だなんて・・・」「知らぬ存ぜぬでは誤魔化せん場所だ。水軍が彼らをマークしてなお捕えなかったのは、背後関係を調べるためだろう」「なんですかそれ」「ルクシャナの単独犯行とは思えなかった、そうだ」「で、貴方を吊し上げですか?馬鹿馬鹿しい!大災厄が起こるかもしれないって時に部族間の争いだなんて」「我々も蛮人を笑えぬということだよ。そしてこれが現実でもある」「・・・水軍はどうするんですか?エスマイールの忠実な番犬たちは?」水軍は、エスマイールを長とする一派、『鉄血団結党』の私兵集団となっていることは公然の秘密である。「無論、彼らは民族の誇りをかけて、竜の巣に隠れているであろう悪魔と裏切り者をひっ捕らえに向かうだろう」「ひっ捕らえる?」「議会の命令はそうだ。だが、彼らは拡大解釈を行うだろう」「ああ、お得意の」「その通り」「悪魔を捕え、生かしておく。これは統領やわたしのような所謂穏健派。そしてエスマイール率いる鉄血団結党はとにかく悪魔は皆殺しの強弁派だ。復活しようがそのたびに殺す。いくらでも殺す。裏切り者も何もかも。エルフの敵はとにかく殺す。そしてその勢いで悪魔どもを皆殺し・・・竜の巣はその理屈で行くと血で染まるな」アリィーはルクシャナを想い歯噛みした。「・・・ぼくはどうすればよろしいのでしょうか?」「アリィー。君はルクシャナを愛しているかね」アリィーは目を閉じる。言いたいことは山ほどある。頭にくることも無数にある。だがそれを言わずに彼女に死なれたら自分はおかしくなってしまうだろう。欠点は無数にある彼女だが、それでも彼女の愛すべきところはそれ以上にあると感じている。だからアリィーは迷いなく言った。「勿論です」「よく言った」ビダーシャルは笑った。「そんなナイトな君にプレゼントだ」懐からビダーシャルは一通の封筒を取り出した。「これは?」「紹介状だ。蛮人の国・・・ガリアで仕事をしていた時に、知り合った人物だ」「・・・貴方は僕たちに亡命しろと?それも蛮人の国に」「この件が片付くまでだ」「いつになるんですか!?」「さあ?とにかく姪を頼んだよ。アリィー」そう頼まれては拒否できない。アリィーは一礼して走り去った。その姿を見送り、ビダーシャルはテュリュークの執務室へ向かっていった。アディールの水軍司令部。白壁の建物の上に参画の旗がいくつも翻っており、一番上には青と黄色のものはここが水軍司令部であることを示すものである。青は海、黄色は砂漠を示している。桟橋には水軍の軍艦となる巨大な鯨のような姿をした鯨竜がおとなしく繋がれている。その桟橋では一人のエルフの少女が厳しい目つきで『燃料補給』の作業を監督していた。美しい金髪に、澄んだたれ気味の碧眼。もうとんでもない美少女だが、澄んだ瞳は冷たい。身体にフィットする水軍士官服に身を包んだその姿は『鉄血団結党』の理想像であった。水兵たちはそんな彼女を恐ろしげに見つめ、鯨竜に餌をあげている。あの少女、美人だけどすごい怖い。それが水兵たちの共通認識である。ただしそれは若手の水兵たちの認識である。ベテランの水兵たちからすればあの少女・・・ファーティマ・ハッタード少校は実戦を知らない厄介者という認識であった。以前そのことでからかってみたら大真面目に「わたしにはエルフの誇りがある。それに基づいた訓練も行ってきた。その二つには実戦の経験を超える価値があるのだ」などと言った。大真面目にそれを信じていた。ベテランの水兵たちは蛮人の海賊相手に海戦を幾度となく行っている。それゆえはっきり言えるのだ。この娘は危なっかしいと。ファーティマは伝令に呼ばれ桟橋を離れる。この瞬間、少し水兵は緊張を解く。こういう精神状態のほうがいい仕事ができるのになと水兵たちは思った。ファーティマが向かった先は司令部室であった。そこではエスマイールが窓の外を眺めていた。「お待たせしました。エスマイール同志議員殿」ファーティマは腕を胸に当てる、党の敬礼をしてみせた。「きみに仕事を持ってきた。同志少校」「なんなりと」「竜の巣に向かった悪魔の末裔と、そやつらを逃した裏切り者を捕まえてほしいのだ」「きょ、恐悦至極であります!そのような大任をわたくしめにおまかせくださるとは!」「未だきみの忠誠に疑問を持つ輩もいるからね」ファーティマは悔しげな顔になった。「叔母は、我が部族の恥であります。しかしながら、わたしは叔母とは全く違います」「知っているよ。きみの才能と忠誠は党内でも随一のものだ。わたしとしてはそんなきみに部族の汚名を返上する機会を与えたいのだよ」「あ、ありがとうございます!」「さて、議会から水軍に与えられた命令は、『竜の巣に赴き、悪魔と裏切り者を捕えろ』というものだが…、わたしの言いたいことはわかるかな?」「はい」力強くファーティマは頷いた。「悪魔と裏切り者には死を」「そうとも。我ら鉄の団結を誇る砂漠の民は、悪魔を滅ぼし続けるのだ。復活するなら何度でも。それこそが大いなる意志の御心にそうことになるだろう」「ですが・・・わたしの指揮下の隊だけでは、戦力が心もとありません」「きみは切り込み隊だったね」「はい」「きみたちを運び、支援する艦隊を一つ預けよう」「しかし、わたしは少校にすぎませんが」「それでは昇進だ。きみは今日から上校だ。そして、この作戦の指揮をとるのはきみだ」「それでも艦隊司令は私の上官ですが」「忘れたのかね?水軍では、党の序列が軍の階級に優越するのだよ」エスマイールは不敵に笑った。悪魔が現れば殺す。何度現れようとも。裏切り者も殺す。エルフの敵はすべて殺す。たとえ敵対心はなくとも芽は摘み取るべきである。なるほどエスマイールの考えも民族保護の観点からすると理があるかもしれない。戦力も申し分なし。あとは殲滅するだけであった。エスマイールは自信満々であるが、誰も気づいていないのであろうか?エルフの現世代で『虚無』の力を持った者に接したことのある者はビダーシャルただ一人。そのビダーシャルは穏健派である。戦いを避けるべきと考えているものであった。確かに訓練もしているだろう。誇りも持っているだろう。だが、彼らには情報がない。不運かな、彼らは悪魔一行が戦っている場面を見ていない。逃がした者たちを糾弾するだけだった。嘲笑するだけだった。自分たちはもっとうまくやると信じて。彼らが悪魔と呼ぶ一行はその能力を持つのは悪魔に程遠い性格。魔法使い見習い少女はまだまだ優しい少女。裏切りのエルフは好奇心が異常にあるだけの前向き女。悪魔とは程遠い女性陣である。ではただ一人の男性はどうであろうか?言うに及ばずである。今更羅列するのも面倒である。その結果彼は人間サイドから「悪魔」の異名を頂いている。≪情報更新中・・・最新の情報に更新しています・・・≫≪H-NET 接続 最新情報を載せています≫体内から発せられる電子音声に男は耳を傾け眼を閉じる。≪速報 アディール司令部より 鯨竜艦出撃 数4 目的地は現在地と推定≫≪H-NET 接続解除。続いてリカバリソフトのインストール続行≫『今の自分でやれること』機械の身体に3つの精霊使役。考えうることを試し準備につなげる。「使えるものはフルで使わなきゃ後悔するだろうしな。というわけでもうそろそろ追手が来るぞ皆」「「「え?」」」「・・・ちゃんと考えてたのか?」「「「・・・・・・・・・」」」(どうしよう・・・もしかしてあの男は人生あきらめて縮こまっているって話してたから何も考えてなかった)(どう、どうすればタツヤが元気になるかなって思ってたとか言えない・・・)(お姉ちゃんたちとのおはなしがたのしかった)『相棒、嬢ちゃんたちは相棒を信じて任せるってよ』「そこのエルフの少女だけは信ぴょう性がありません」「それは失礼じゃないの?わたしは普段は信ぴょう性のあることしか言ってないわ。近所でもあの美しい娘は信ぴょう性のある子だと信じられているのよ」「その近所は架空の場所では?」「辛辣すぎる!?」ルクシャナの称号が『妄想癖および統合●調症疑惑?』になった!(つづく)