真っ白の空間。俺は今までこの空間に何度来たことだろう。少なくとも目の前にいる奴に出会うのは2回目なわけで。平賀才人と名乗る謎の青年は前回とは違い敵意を発することもなく、ただ白の空間にある椅子に腰かけ俺を見ていた。「さっきからじーっと見つめやがって。何か喋れ。それとも何だお前?見つめあうと素直にお喋りできないのか」『お前の辿っている物語と俺が辿る筈だった物語は似て非なるモノだ』「そりゃ主役さんよ。別の人物が全く同じ人生を歩むと思ったら大間違いも良い所だぜ」『お前の辿る物語は誰の記憶にも戻らない紛い物。俺こそが真なる世界の物語の主人公・・・と俺はかつて言った』「大変失礼にあたる発言だが確かに言ったな。それがどうした?」『・・・なあ教えてくれ。もし・・・物語が未完で終わる場合、その物語の主人公や人物たちはどうなるんだ?』「知るか。そりゃ確かに続き物の小説や漫画の作者が途中で亡くなって作品が終わるという事はあるが、その作品の人物がその後どうなるかなんて読み手の俺達が知るわけないだろうよ。結末を書いてない限り、その作品の時間はそこで止まったままだ。永遠にな」『・・・・・・』「そんな事を聞いてどうする自称主人公?」自称『真世界の主人公様』は黙ったままである。何やら深刻そうな雰囲気だが、そうまで深刻になる理由なんてあるのか?『これまで積み上げてきた物語だ・・・俺は終結させる』「一人で何を言っているのか知らんがただ独白を聞かせるために会いにきたなら帰れ」俺がそう言うと主人公様は俺を指差して言った。『お前の物語は未だ進行中だな』「死なない限り、人の物語は終わらないだろ」まあ世の中には死んだ後も個としての物語を展開させる人生の人間もいるが、俺自身はそうは思えない。自称主人公は俺を感情のこもらない目で見つめている。そのような趣味はないのだが?『今お前が辿っている物語はお前の真なる物語じゃない』「いきなり何を意味不明な事を言ってやがる」『お前はこの世界・・・ハルケギニアで何かを成して帰ることが物語の終わりになると思っているのだろう?』正直魔法中心の世界なんてとんでもなく危険なのだから俺としてはさっさと元の世界に帰りたい。そのためにいろいろ模索してはいるのだが・・・この世界の友人たちには悪い気もしないことは無いがこの世界はやはり俺の世界ではないし、元の世界に待たせてるやつもいるから俺は帰らなきゃ・・・『お前の物語はここで何かを成してからも続く』「そんなの当り前じゃないかよ」『人生的に・・・なんていう意味じゃねえぜ?』「・・・何が言いたいんだよ」『ここで意味ありげに沈黙するのもアリだけど――』自称主人公は一瞬目を伏せて、その後俺を憐れむような目で見つめてきた。『帰れば魔法に関わらず生きていけると考えてるんだろう?』「俺の世界には魔法なんて――」『それでもお前はこの先長い期間、魔法に関わっていく人生を送るハメになっていくぜ』「はぁ?」『予言してやるよ因幡達也。異世界に本来の『主人公』を差し置いて来てしまい新たに『主人公』になり替わってしまったお前の人生にその辺のその他一般人の様な平凡な人生が待っていると思うな。元の世界に戻ろうとお前に待っているのは『波乱』しかない。それが世間一般的に、或いはメタ的に言えば『主人公補正』を背負ってしまった者の運命なのさ』「嫌な予言をしてくれるじゃねえかよ」『何、ちょっとした親切心と嫌がらせさ。俺の忠告と言う名の甘言に屈さずにこの物語の主人公であることを選んだお前に正直俺は感心と嫉妬をしているんだ』自称主人公は更に話を進める。『因幡達也。お前には解決しなければいけない問題がある』「・・・どうやったら元の世界に戻れるか、か?」『そうだな。まずそれが一つ。もう一つは精霊石収集もあるな』「四つ集めればハルケギニアの危機が救えるかもしれないとかって頼まれたけど・・・」『そうだな。確かに水・地・風・火の精霊の力の塊の精霊石はこの世界のハルケギニアの危機を救う鍵だ。だがそれはお前の世界に戻る力としては足りないんだ』「はあ!?世界救うレベルの力でも無理なのかよ!?」『落ち着け。その四つでは難しいと俺は言ってるんだ。この世界の四大精霊はお前が集める火・水・風・地とゲームやらファンタジーでもお馴染みの精霊だが、その他で思い当たる精霊とかいるんじゃないか?』そう言われるとゲームとかはもっと精霊がいたりする。例えば闇とか光とか、雷とか氷とか・・・。『この世界で認知されている精霊はその四体で間違いない。しかし人間はどんなに科学が発達しようとも世界のあらゆる面を知ったわけではない。科学が発達しておらず、ブリミル教という宗教に観念を固定されかけてるこの世界では尚更だ。・・・いや、或いは気づいていた奴は歴史上にはいたのだろうが異端扱いされたんだろーな。・・・その異端の知り合いがお前にいる訳なんだがな』「どういう事だよ?」『お前は不思議に思わなかったのか?お前の刀が喋ることが出来るのかなんて』「そりゃ昔の人がそういう魔法で・・・」『デルフもか?』「ああ」『デルフが生まれたのは人間の魔法が確立する前だぞ?』「虚無ってのは便利な魔法だな」『その虚無だが・・・何でその始祖のブリミルは『いきなり』その魔法を使えたんだ?それも水魔法や火魔法やら人間が使えないその時に』「俺にはさっぱりわからん」『だろうよ。だが簡単な話さ。ブリミルはその四つの精霊とは別に他の精霊との協力を取り付けていたのさ』「他の精霊・・・?」『いるんだよ。世界には他にも精霊が。お前が思い浮かべたであろう光と闇の精霊も存在している。この世界には18の精霊の力で成り立っている。まあ、中には人間の技術の進歩で生まれた精霊もいるがな。それはともかくブリミルが四大精霊の他の精霊を『その他』と分類してしまったことで残りの精霊の力は全て『虚無』として扱われたり『コモン・マジック』などとして分類されて日の目を見る事はそんなになかった。エルフ達ですら主に使用するのは四大精霊の力でそこに付与する『何か』は己の工夫によるものと思っているんだからな』「18の精霊ってお前・・・頭痛くなるんだが」『ブリミルが協力を取り付けた精霊は17。ブリミルはその時点でこの世界には17の精霊の力が宿ると思ってたんだろうな。始祖と呼ばれるだけあってブリミルの魔力はハルケギニア人類史以上トップクラスだった。17の精霊のうち四体を資質を持った人間にも使えるように改良したりしたのはまさにチートだな。残りの13の精霊の力を後継者に譲渡したりしたから以降も13の精霊は資質を持った後継者の一族に力を貸してきた・・・これがブリミルの系譜を持つトリステイン、ガリア、アルビオン、ロマリアに虚無使いが現れる理由ってわけだ。だがその系譜が始まった1000年後に異変が起きた。18番目を見つけた奴が現れたんだ。そいつこそお前の知り合いであるニュングってわけだ。ハルケギニアの有史以来18番目と13の虚無と分類された精霊を意識して使役してきたのはニュングだけ。18番目の精霊を使役できてたのはその系譜を持つ者だけってわけだな。まあ二人ともチートと言えばチートだな。人間やめてるよホント』どう考えても人間には思えない自称主人公には言われたくないであろう。だがそんな話をなぜ俺にする必要があるのだ?『お前は今、四大精霊の力を集めている。それはこの世界を救うのに必須だから何も言わない。しかしこの世界からおさらばするつもりならば四つめを得て力を行使するときには必ずルイズを連れて行け』「なんでだよ?ルイズが何か鍵にでもなんのか?虚無使いだから?テファでもよくない?」『現在この世界で14の虚無と分類された精霊の力を行使できるのはルイズしかいないからだよ』「―――え?」『始祖ブリミルと根無しニュング・・・両方の系譜を持ち尚且つ資質を持った者は歴史上二人のみ。一人は無論ニュング本人。そしてもう一人はルイズだ。残りの虚無使いは皆13の精霊の力しか得れない。だがルイズは14の虚無に分類される力を行使できる。偶然だなおい。そんなルイズは何の因果か世界では『聖女』扱いだ。まさに元の世界に戻りたいと願うお前にとってはルイズは聖女以外の何物でもないぜ。現に彼女は―――おっと口が滑りそうになっちまった』「何だよ滑らせろよ」俺が不満を込めて言うと、自称主人公から預言者(笑)にクラスチェンジした青年はなら言ってやるとばかりに言った。『別の世界ではルイズは既にお前をハルケギニアから脱出させているからな』「成程、つまりこちらのルイズは無能であると」『どうしてそんな結論に達するんだお前は!?それに遅かれ早かれお前もルイズの力有りきでこのハルケギニア世界から脱出する時が来るんだ。その事には希望を持っていいだろ?』「別世界の俺と同じくこの世界から出れる希望はあるのか・・・真琴は?」『安心しろ。ルイズはあの娘を本当に愛しく思っているから彼女が生きて家に帰りたいと言えば帰してやれるさ』何だろうか、この嫌な違和感は。何か見落としている、或いは聞きそびれている気がする。「質問していいか?」『何だ?』「別の世界の俺は本当にハルケギニアから生きて出れているのか?」『ああ。傍目から見れば羨ましい状況にいるぜ』一度俺はあったかもしれない未来の世界とやらに行った記憶がある。あの時は俺が杏里と一緒に喫茶店を経営している俺から見れば希望に満ちた羨ましい世界だった。元の世界に戻って俺は杏里とああいう未来を目指すはずだった。しかしこの青年は断言するように言った。平凡な生活はないと。魔法に関わる生活が待っていると。『お前もいずれそこに『行ける』からな。今は精々この世界のゴールを目指して足掻けよ』何だこのコイツの言葉の違和感は!?コイツの口ぶりから俺がハルケギニアから脱出するのは確定している事のように思える。確定した未来を俺に言ったとしてコイツに何の得があるんだ?「質問を変えよう。ぶっちゃけ俺はハルケギニアから出れるの?」『出れるとも』あっさり断言されてしまった。未来はよく変わりまくるというがこうも断言されては―――『頑張らなくても帰れるならいいや―――とでも思っているのかよ、お前?』「!」『勘違いするなよ?確かにお前がこの世界から出れることは既にお前が二つ精霊石を所持していることからほぼ確定ルートだがそんなのはただのメインルートでしかない。例えば今でいえばその真琴ちゃんやテファが死亡で帰還ルートとか可能性はあるしな。要するにお前に伝えたかったのはその期間までの過程をどの様な結果にする事なんだ。お前がもう少し頑張っていればフィオは生存した状態で戦争を終えてたんだ。お前が切り捨てていたらワルドたちは敵のままで前教皇も生きてたままでお前を謀殺しかねないドロドロルートの可能性もあったんだ。結果はすべてに優先されるという意見もあるだろうが、過程も大事に決まってるだろうが。俺はお前がハルケギニアから脱出できるという事は知ってるだけでどういう経緯でどの様な状態で脱出するのなんざ知らねえんだよ。この世界から脱出するのがお前の一つのエンディングならそれも良いが状況云々でハッピーにもなるしバッドにもなるんだよ。その辺を考慮したうえで頑張らなくていいと思うならどうぞテファと真琴を見殺しにして世界から脱出するんだな』「ある程度の結果は確定しても努力と苦労はしなきゃ良い状態にはならないって事かよ」『そんなの当り前だろうが。それをせずに勝利をしてきた奴なんて人間として生物として終わってるからな。いや、生物の敵として定義すべきだろうな。だから因幡達也。お前はこの先更に努力すべきで更に苦労して生きるべきなんだ。何も不幸になっちまえとは俺は言わねえがな』人間に欲がある限り、常に今よりも良い状態でありたいという欲望は続く。確かにフィオは死んでしまったし、この世界の親友とも言えたウェールズも亡き者である。教皇も代わって世界は若干混乱は続いているしエルフの動向も不穏すぎる。テファや真琴の命も本当に危険なのかもしれない。俺一人の力はこの世界にとってどれ程の力になるのかは知らない。そもそも俺はこの世界と心中する気は更々ない。更々ないはずなのだがポイ捨てもできない。ふむ、将来片付けが出来なさそうな思考だな。『で、質問は終わりか?こちらとしてもまだお前に言いたい事があるんだが』「いや、今お前の発言の中に違和感を感じたから質問だ」『答えるさ。答えれる範囲でな』「ルイズの助けで俺はハルケギニア世界から『脱出』できると言ったな」『ああ。真琴ちゃんは生きてりゃルイズによって家に帰れると答えたのはついさっきだ。それが?』「お前はこうも言ったな。別世界の俺が脱出した先に俺も『行く』と」『そうだな』「お前は俺が帰るとは表現せず行くと表現した。これはつまり――」『そうさ因幡達也。お前がハルケギニアを脱出したところで『苦労』は続くのさ。数多の『主人公』が経験しそれ以上の人間達が経験しなければ成長出来ない行いをお前はハルケギニアを脱出してやらなきゃいけないのさ!ま、どんな世界でと言うのは言わないけどな』これが幻聴とかそういうのであってほしいが、これがもしかして真実の事とすれば俺はまだ家に帰れないんですか?嫌じゃーっ!?何かさっきはルイズは無能じゃなくてチート的な血筋で世界の壁なんか取っ払えるような凄い女なんだよ的なフォローをこの預言者(笑)はやってたが本人の希望と全然違う場所に送るとか凄いけど肝心なところでドジを踏む奴みたいじゃないですかー!?っていうかそれってルイズそのまんまじゃないですか嫌だー!?ドジっ娘が萌属性の方には悪いが人生掛かってる場面でそんなかわいさ余って憎さ百倍的ドジを踏まれても萌えんわ!寧ろ怒りの炎で全焼するわ!?俺が未来の主の致命的なドジぶりに改めて怒りの炎を燃やしているのを見ながら青年は静かに俺に言った。『・・・例え魔法に関わらなくても、お前は苦労する事になるんだよ?因幡達也』「へ?何で?」『お前は忘れている・・・何、違う?聞かされていないのか?』青年は少し驚いたように言う。俺には何の事だかさっぱりわからない。『何だって?それは直接言う?・・・いいのかい?』青年は何者かを気遣う様に言う。その何者かの姿は俺には見えない。青年は俺の方に向き直り溜息を一つつくと口を開いた。『因幡達也。お前の今の恋人・・・三国杏里に双子の姉がいた事は覚えているな?』「10年以上前に事故で死んだよ」『事故・・・ね。名前は覚えているか?』「愛里。三国愛里だ。どこの北●の拳のキャラの名前だと思うけどな」『そうか。どんな娘だった?』「妹想いの明るさが飛びぬけた娘だったよ」『・・・確認しようか。その愛里ちゃんは事故で死んだと』「・・・ああ、下校途中にな。一緒に帰ってて巻き込まれた。俺は打ち所が悪くなかったんで生きてたけど1週間は気絶してたって聞いてる。俺は右腕を折って入院したけど愛里は即死だったとか聞いてる。退院した1か月後には遺影と御対面で死んだって気がしなかった。まあ三国家はショックがでかかったみたいだがな。特に杏里は1年以上は塞ぎこんでいたな」『遺体は見れてないのか』「気絶中だしな。今思えば、可哀想だったかもしれない」『因幡・・・いや、達也』謎の青年は少し考えるような素振りをした後にやや震える声で言った。『お前は知っておかなきゃならないことがある。自分のためにもお前の恋人の為にも何より』その時青年が座る椅子の右隣に新しく突如として椅子が現れる。椅子が微かに動き、キィ・・・と音を立てた直後薄い緑のワンピースを着た幼い娘の姿が現れ―――!!?『お前達をそばで見守り激励し続けてきたこの娘のためにも』「お前は・・・・・・!!」『たーくん・・・あいたかった・・・』三国愛里。三国杏里の双子の姉。その娘は7歳当時の『交通事故死』したあの当時の時のそのままの姿でそこに座っていた。そして絞り出すような声で謎の青年は言う。『―――窒息』「え?」俺はその時そいつが何を言い出すのか理解できなかった。『三国愛里の―――『直接の』死因だよ』そいつがその言葉を言っても理解できなかった。『・・・・・・・・・』身体を抱きかかえるようにして蹲り震える幼子の姿を見て俺は言葉が出なかった。青年は口を開く。止めろ。言うな。『達也。その娘は交通事故で死んではいない。その時の怪我はお前の方が重いからだ』喉が異常に乾くのは何でだ?耳を塞ぎたくなる気が強いのは何故だ?『交通事故死で半年ないしは一年以上も妹が塞ぎこみ、両親まで逃げるように家に近づかないのは何故だとか考えなかったのか?』嫌な予感がする。俺が思っている以上に嫌な予感が。『交通事故か成程、解釈しようとすればいくらでも解釈できるよな?』そうだ解釈しようによっては確かに愛里は『交通事故』が原因で死んだと―――『それはだが過程を結果として伝えたに過ぎない。本当の結果は――惨殺体で発見。死因は窒息。いわゆる幼女誘拐殺人の犠牲者となってしまったのさ』俺を空の向こうから、そして傍で見守っていた幼馴染の最期を突き付けられたその時俺は―――自称預言者(笑)を思い切りぶん殴っていた。そして震える幼女の肩に手を置いて口元を指で拭う元・自称主人公様に言った。「その話、胸糞悪すぎるから忘れるッ!!」『ええ!?わすれちゃうの!?』「忘れるとも!だけどお前が俺を見守ってくれたのは野郎としちゃあ情けないが・・・ありがとう。お前を忘れることは無いからこれからも見守ってくれ。挫け気味なガラスハートだからね、俺」何か使命感バリバリの奴なら復讐とかに走りそうなんだけどそんな事しないから。愛里は死んでしまった。過程は確かに悲惨でそれは三国家に暗い影を落としてるかもしれない。それを見て愛里も多分悲しんでるだろ多分。『たーくん・・・』「情けない事にお前の復讐に生きることはしないけど、杏里共々お前も幸せにするように俺、頑張るからさ。だからさ、十分心配して期待して見ててくれ。たった一人の女と恋愛するために苦労する幼馴染の進む道ってやつをさ」これが恋愛ゲームなら確実にクソゲーマゾゲーだがイベント自体は豊富な人生だ。それに若い時の苦労は買って出もしろっていうしな。バーゲンセール中らしいが。暗くウジウジすることも人間だが応援してくれてる死人どももいるんだ、ちょっぴり強がってみてもいいのではないか?『忠告してやるぜ因幡達也。お前はすでに虚無に分類された精霊の力を幾つか借りてる。あと愛里ちゃんを殺した野郎は生きてる。それどころか出所してやがるぜ』「ご忠告どうも。それと愛里ちゃんて馴れ馴れしいぜ誑し野郎」『余計な世話だよ。じゃ、これからの人生頑張れよ』「大きなお世話だ」『たーくん、あのね・・・わたしはしんじゃってもずっとたーくんが・・・』「『愛里ちゃん』」あの時の呼び方で俺は三国愛里を呼んだ。黒いショートボブの髪が揺れて生気のない黒い瞳が俺を見据える。「それ以上言わないでくれ。泣くから」『うん。見ないから。だいすき』視界が滲み白く染まっていく。声が聞こえる。俺を呼ぶ声が。その声に答えなければ。視界が暗転する。身体の力が抜けていく気がした。手に力がこもる。足に力が湧いてくる。心臓の鼓動が聞こえる。瞼を開くのがめんどくさいと感じながらも開いてみた。「タツヤ!」「お兄ちゃん!」ベッドに寝かされた俺が見たのは涙目の妹とテファであった。・・・状況的に涙目になってもおかしくないのでここはひとまず安心させよう。「おはよう二人とも。朝駆けは下腹部の生理現象的にやめてもらいたいぜ」そう言ったら二人が何時もの俺だとか何とか言って抱きついてきたため勢い余って後頭部を壁にぶつけてまた愛里に会いに行きそうになったことは言うまでもない。(続く)・恋姫無双の二次創作って三国志の三次創作だと思うんだ。