元々土地勘など皆無の上に砂漠のど真ん中とあっては例え逃げられそうな状況でも現実は逃げれない。空でも飛べたりすれば話は別だが、それも人間たちの住む場所の方向が解ればの話だ。外に出た時は案外涼しかったのでもしかしたら逃げれるかと思ったらこの涼しさはエルフの魔法によるものらしい。魔法の効力の範囲外は灼熱地獄であり、半日も持たないというのは嘘ではないようだ。「ここにいる限り砂漠の熱気にやられることは無いがそれでもどうにかしねえとな」現在は夜中。俺たちは桟橋がある泉で水浴びをしていた。ついでに俺は洗濯もやっているため現在俺はタオル一枚の姿である。真琴は泉の浅瀬で遊んでいる。こういう時の真琴の無邪気さが救いだと思う。なお、喋る鞘と杖は真琴の玩具と化しており、特に喋る鞘は悲痛な様子で叫んでいた。『うおおお!?鞘の中に水を入れるなぁ!?ひいいい!?気持ち悪っ!?』『私は杖ですから別に水中でも平気ですが金属の貴方は大変ですね』『うおお!?塩水じゃなくても錆びるんだぞ!?やめてくれーーー!』「アハハハハハハ!」幸いにも我が妹には悲壮感たるものが皆無である。喋る無機物たちと戯れる姿は非常に和む風景だ。「砂漠のど真ん中のオアシスか・・・観光で来るなら美しい所だって言う余裕があるんだろうなぁ」実際人間がこの地に観光に来ることはまず有り得ないのだが、結構大きな泉で遊んでいる真琴を見るとそんな願望にも似た言葉が出てしまう。やはり短い人生なのだから彼女みたいにポジティブに生きてみるというのも必要である。そうだポジティブだ!ポジティブになれ達也!誘拐なんて忌まわしい事だがこんなリゾート的な人質生活なんて普通の人生ではありえないことだ。どうせ逃げることが出来ないのなら最大限楽しもうではないか!「エルフの魔法って凄いのね・・・わたし達もうこのまま帰れないのかな」人間より長い時を生きれるティファニアは俺の横に腰掛け体育座りで先ほどからネガティブ発言を繰り返している。美少女というのは目が死んでいようと美しいものだが、当人はたまったものではない。母親が生まれた国に来れたのはいいが方法がよりにもよって拉致とか心の準備どころの話ではない。「ねえタツヤ」「うん?」目が死んだままの美少女はタオル一枚の俺の方を向いて尋ねてきた。「わたしの力・・・虚無の力ってその力を使える人がいなくなったら別の誰かに宿るんでしょ?」「そうらしいな。死んじまった教皇様の虚無は誰に受け継がれたかは知らんがな」「・・・エルフ達からすればこの力は悪魔の力と呼ばれて忌避されてるみたいね」「そうだな」俺がテファの意見に肯定するとテファは泉を見つめてうんと頷いて言った。「ねえタツヤ。お願いがあるんだ」「何だよ改まって」「わたしを・・・殺してほしいの」目に涙を溜め、今にも零れ落ちそうな様子で彼女は言った。「な、なな、何で?」「だってそうでしょ?何もできないで捕まっちゃうし、皆に迷惑をかけることになるし・・・このままここにいたら皆が大変なことになってもなにもできないし・・・」「そんなの俺たちだって同じだろーよ。捕まってるしよ」「・・・タツヤとマコトは大丈夫だよ。マコトは元々関係のない子だし、タツヤは今まで凄い事いっぱいやってきたじゃない。でも私は無理だよ・・・きっと足手まといになっちゃうから」「このまま生きてても皆の迷惑になるからいっそ殺せというのかい?」テファは真剣な表情で頷く。死を覚悟するときは誰だって並大抵の決意ではない。自殺だろうが何だろうが死ぬという行為は替えが聞かない行為だからホイホイやれるわけがないと俺は考えている。テファは今、死を決意するぐらい追い詰められている。「・・・タツヤ達は逃げて・・・お願いだから」「お前に言われなくたって逃げるさ」「ありがとう」「だけどその時はお前も一緒だよ、テファ」「でも・・・」「でもじゃねぇよ。見ろよ真琴を」俺達は無機物をとうとう水底に沈める真琴を見つめた。その表情は曇りなき笑顔であった。「アイツは自分がここから帰れないなんて微塵も思っちゃいねえ。そりゃ少々不安もあるかもしれないけど、それでも今能天気に遊べるのはそれ以上に安心してるからだと思うぜ」「安心・・・?」「ああ。真琴の今の希望は俺たちだ。俺たちがいる限りは自分も諦めないと思ってるんだろうよ」実際は如何だかは知らないが俺が単身ハルケギニアにいる間、真琴は塞ぎこんでいたらしい。明るい表情ばっかりの真琴だが俺が消息不明になると泣きそうになっていたのだ。瑞希がいなければどうなっていたのか・・・そう言えば瑞希はついに一人になっちまったが大丈夫なんだろうか?杏里が何とか相手してくれてるとは思ってるが杏里もどうなってるのか分からない。クソ、何か猛烈に不安になってきたぞ!?「逃げれない・・・と言ったなテファ」「うん・・・。エルフの魔法はすごいし・・・」「凄かろうと何だろうとそれは諦めに足る理由になり得ねえ。そりゃ俺ももうだめだと思った事は多々あるし諦めも早い方だがよ、今回は諦めることはするわけにはいかねえのよ」そう、ここで俺が逃げるのを諦めれば杏里たちとの再会が無くなってしまう。俺はそんな大層な人間ではないと自覚はしているが、誰かの希望になっている事も知っている。それが余計な積荷だろうと希望になっているのならば俺はその希望としての責務を果たそうじゃないか。テファが諦めかけてるって事は俺はテファの希望なんかじゃないって事だろう。それはいいんだ。だが真琴の希望である限り俺は諦めない。杏里や瑞希が俺の帰りを待っているのならば俺はそれに応えるしかない。死亡フラグ?んなもん知るか。例え戦場で「俺この戦いが終わったら結婚するんだ」と言っても、俺はその言葉を現実にしてやる。「それにエルフ達はお前が虚無使いってのは知らないはずだし、迂闊にも杖や刀はそのままだ。これじゃ逃げて良いぜ!と言ってるもんだ」「・・・・・・」「何事も綻びってのはあるさ。一見完璧に見えても物事には抜け穴ってのはあるもんさ」「でもそんなのがあってもエルフ達から逃げれるとは・・・」「それに何で諦め気味なんだよ。テファ、今のお前は一人なんかじゃないだろ」「そうなればタツヤに迷惑がかかるじゃない!」「迷惑なんざかけちまえ!!」既に他人から凄まじき迷惑をかけられ、他人に物凄い迷惑をかけている俺からすれば今更迷惑を被ろうとどうでもいいような感じなのだ。その分誰かに迷惑を与えればいいのだ。主にルイズととかに。「生きてる限り迷惑かけてもそれを返す機会はあるんだ。今、俺に迷惑をかけても後で返せばいいだけの話だろうが。だが死んじまったら返せないじゃないか。お前を殺せ?それこそ大迷惑だっつーの。俺にお前を殺した罪を背負って生きろってのか?そうなればお前の事を一生忘れない、お前は俺の中に生きてるから十分だってか?そんなの嫌だね。俺はお前を殺したくないから」『何かごちゃごちゃ言ってますが結局一番最後だけが主な理由でしょう』喋る刀の言うとおり俺はテファを殺したくはないし殺すつもりもない。足手まといを切り捨ててまで助かりたくないという殊勝な心は俺は投げ捨てているが生憎真琴もテファも足手まといなんかじゃない。二人とも俺の心を支えてくれてる大事な柱なんだ。切り捨てなんかできるかよ。「でも私は・・・私には皆に・・・タツヤに護ってもらうほどの価値ある存在には思えないよ」「価値のない人生を送ってると自覚してるやつはごまんといるだろうし、他人から見てもコイツ生ける屍だなと思われる人生を送ってるやつなんてその辺にごろごろいるよ。俺はそんな奴らにも人生の価値があるんですなんて聖人君子か似非宗教家みたいなことは言わない。価値がない人生を送っているならば価値無い人生を全うすればいいんだからな。テファ、お前が自分を価値無き存在と言うのはお前の勝手だ。護るだけ無駄ということを遠回しにいう事もお前の勝手だ。だったらよ、その無駄な事をやることは俺の勝手だよな?」「タツヤ・・・」「だから俺はその無駄な事をやる。お前がいくら絶望しようがお前の勝手だ。俺は勝手にお前と真琴を護るよ」『自分勝手ですね』「まあ、マジで無駄と思ったら切り捨てるのもありかな」『上がった評価が一転奈落の底に行くような発言は慎んだ方がいいと思います』馬鹿者、貴様は知らんのか。評価というのは上がり過ぎても面倒くさいんだぞ?一日一歩、三日で三歩で二歩下がるぐらいが人生はちょうどいいのだ。「おにーちゃーん!おねーちゃーん!二人とも一緒にあそぼーよー!」真琴の元気な声が俺たちに向けられる。俺は真琴に手を振りながらテファに言った。「ま、沈んだ心は遊んで晴らすのが一番さ。今は遊んで気分を晴らそうぜ、テファ」そう言って俺は泉に飛び込んだ。「・・・わかった」直後にテファも立ち上がり、がばっと着ていたローブを脱ぎ下着姿になると、どぼんと飛び込んだ。だが俺と違いそのまま沈み込んでなかなか浮かび上がってこない。心配になったのか真琴も俺のところまでやってきた。「お、お姉ちゃん浮かんでこないよ・・・?」「ううむ・・・浮き袋は胸に二つあるように見えたんだが、アレはもしかして鉛なのか?」だが一分ほど経つとテファは浮かび上がってきた。「ぷはぁ!えへへ、前より長く潜っていられるようになったわ」「お姉ちゃんすごい!」真琴は純粋に長い間潜水していたテファに賞賛の言葉を送っている。月明かりに照らされたテファの濡れた下着は彼女の破壊的な胸の形を浮かび上がらせている。ん?ちょっと待て。そのうっすらと透けて見える桃色の突起は乳の首ではないですか?テファも俺の視線に気づき顔を赤らめた。「す、すまない」「い、いいの。いいんだよ・・・タツヤに見られても・・・その・・・いいの」それではガン見しようかとも思ったが真琴の手前なので止めた。・・・俺は残念ながら犯罪級の朴念仁じゃないし、自分が他人に好かれるはずがないという考えにいたる程に寂しい人生を送っているとは思わない。俺は好きな女がいる。好きな女に好かれるためには自らがその女に好かれるように行動しなきゃならない。考えを少し変えてみなければならない。その人の気持ちを考えねばならない。そう考えて行動してたら人がどういう行動を取ればどういう評価をするのか大体わかってくる。俺がしている行動は大多数の者には受け入れられないかもしれない。実際元の世界の女子からは気持ち悪いやら言われてたしな。自分を嫌う奴と仲良くする必要はない。俺に対してそう評価をする女は勝手にそういう評価をしていればいいのだ。どっかの恋愛ゲームの如く自分を心底嫌っている女と娘と結ばれる道を選ぶ予定は俺にはないからな。現実の恋愛なんて何故か男子が不利になってるような気もしないでもないが歳を重ねたら今度は女子の方の難易度が高まるからあまり選びすぎるのもヤバいって親父側の婆ちゃんが言ってた。自分を嫌う奴との交流なんて最低限で良いと思っていた。そんな態度が人によっては『馬鹿にしている』と見られていたのかもしれない。悪いな?こちとらそちらさんの嫌悪なんざ感じ取ってるんだよ。何でそんな奴に無理に敬意を払わなきゃいけないんだ?馬鹿にはしてないぜ?相手にしてないだけだからな。それを馬鹿にしていると感じとるならばそれは自意識過剰ってもんだ。そちらさんが思ってるほど俺は興味は持っていないからな。勝手に被害妄想に取り憑かれて勝手に嫌いになっとけ。こちらはそんな様子を見て初めてそっちを馬鹿だなあという目で見るんだから。ただ、自分に対して好意を示す人物にはこちらもそれなりの誠意をもって対応することにしている。好意を示す相手を邪険に扱うのは中二によくある症状だ。そういう相手を利用して自分の保身を図るのは小悪党のやる事だ。可笑しなことに俺は後者の側なのだ。この世界に来て特にそういう面があると思う。俺は皆がいなかったらどうなっていたか分からない。こういう言葉も俺が正義感溢れる熱血野郎ならば映える言葉なのかもしれないが、俺が言うと凄く胡散臭い。俺は子どもが憧れるヒーローにはなれる器ではないと胸を張って言える。しかしそんな野郎である俺も守らなきゃいけないものぐらいある。こんな言葉、杏里や妹たち以外にはまかり間違ってルイズ位にしか言わないと思う。思っていた。だが純粋すぎる眩しいほどの好意を頬を赤らめて言う妖精の様な容姿と聖母の如き慈愛の心を持つ少女に対して、俺は―――。「テファ」「・・・な、なにかな?」「俺は『絶対』君を護るよ」そんな言葉を言ってしまっていた。「タツヤ・・・ほんとう?」テファの瞳が月の光のせいか、何だかいつもより輝いている。ああ、綺麗だな畜生。本当に綺麗だよこの娘。こんな娘が何で俺に好意を向けてくれるかね?奇跡過ぎだよ。嗚呼、この娘を見てると益々自分が悪党だと思わされるよ。だけど・・・それは俺の正義なんだ。思わず、聞き返してしまった。ティファニアにとって今しがたの彼の言葉はもう一度耳にしたい甘美な言葉であった。護るという言葉は今まで彼は結構言っていたし、実際護ってくれたこともある。でもその時、彼が護ったのは自分だけじゃなかった。護った対象の先に自分を見ていなかった。しかし今、彼は自分を見て確かに言ったのだ。絶対護ると。頼りなさそうに言うわけでなく。軽いノリで言うわけでなく。静かに、しかし明確に。何で彼は自分を護るというのだろうか?こんな弱い自分は足手まといにしかならないのに・・・。自尊心の為?違う。彼は人一倍自分の命を大事にする。足手まといを護るなんて危険な事を請け負う事なんてしない。もしかして好意から?・・・違うかも。良くて友達だからだろう。自分が段々嫌になっていく気がティファニアはした。護ると言った彼の言葉に疑念を抱くなんて。彼の事は信じている。でも自分には彼の本心は見えない。だから少し不安なのだ。ねえタツヤ?どうしてそういう事を言ってくれたの?どうして?「タツヤ・・・ホントにホントなの?何で急にそういう事を」彼は一瞬困ったような表情になったように見えた。「目の保養代」「えう」にやりとして彼が言った言葉に少し引いてしまった。「女性が身体を張って鼓舞してくれたんだから野郎が出来るのはその位だぜ」「あうあう・・・」羞恥心で顔が熱くなるのを感じていた。彼の顔が見れない。「テファ」呼んだ彼の顔を見る。その時、月が雲で隠れて彼の姿が闇に染まっていった。「任せとけ」その言葉とともに月が再び顔を出す。月の光に再び照らされた彼はやっぱり自分を見ていて。「その保養は脱出してもお釣りが出るぐらいだからな」眩しい。ティファニアは達也を見てそう思った。笑顔が眩しいとかそういう事ではないが、彼は眩しい。でも、もっと見ていたい。いつの間にか此方の不安は和らいでいる。不思議な事もあるものだ。難しく考えるのは悪い事ではないが馬鹿馬鹿しいと思えるようになった。世の中は複雑な事も沢山ある。問題だって沢山あるし複雑なのだ。しかしその解決策というのは意外と単純なのかもしれない。彼が自分を護ると言ったのもそんなに難しい理由じゃないのかな、とティファニアは一人思い微笑んだ。「タツヤ」「おう」「私、迷惑かけるかもしれないけど・・・頼っていいのよね?」「ああ。報酬は手料理でいいや」「うん、わかったわ」ダメだと思うのはまだ先にしよう。今は何とかなると思って生きていこう。諦めるにはまだ早い。タツヤもマコトも、諦めていないんだから。洗濯も終わり俺たちは目を覚ました時にいた部屋に戻っていた。俺は背伸びをし、真琴たちに言った。「さ、水浴びも楽しんだことだし、そろそろ寝るかね」「そうね」「俺は今日はソファで寝るから二人はベッドで寝な」「え~!?お兄ちゃんと一緒に寝たいのに・・・」『真琴ちゃん、その発言を五年後も言える?』「言えるもん!」「わ、私もタツヤとはおともだちだから一緒に寝てもいい・・・よ?」「俺は寝相が悪いからな。いつの間にか二人を抱き枕にしてる可能性が高いし。低確率でさば折りをするかもしれん」そう言って俺はソファに寝転び、女子二人に対して手でベッドに行けとジェスチャーをした。テファ達はすぐにベッドに横になり、しばらくして寝息を立て始めた。俺に対して好意を向けてくれるテファ・・・。思わず絶対護ると言っちまった。・・・杏里。お前にもこの言葉は昔言ったよな。お前も昔、早めの中二病で勝手に世界に絶望してたことがあったよな。アイツの『交通事故死』はお前の家庭を崩壊寸前にまで追いやったとお前は言ってた。おじさんとおばさんが未だに家にあまり帰らないのはその影響もあるってな。でも今はお前ら全員、ゆっくりとだが生きる道を選んでる。俺はここに来るまで幸い普通の人生を送れたけど、お前らはそうそうない経験してるもんな。杏里、君なんかは恋人が異世界行ってるもんな。・・・ま、早く帰って一般的な幸せを享受したいもんだな。それがアイツに対する最高の供養になると思うから。―――あたしのゆめは、たーくんのおよめさんです!いけないな。こういう状況での夜には懐かしい事を思い出しちまう。衆人環視の中そう宣言したあの幼女は思い出の中だけの存在になった・・・はずだった。でも、いるんだよな?まだ心配してんだよな?お前は優しい奴だったもんな?―――あたしたちはずーっとずーっといっしょだよ!心配すんなよ。俺も杏里もお前を忘れたりなんざしねえ。だから俺より妹を・・・杏里を見守ってやれよ。・・・さてさてそろそろ寝ようかな。俺は少し昔を思い出しつつ瞳を閉じた。達也が寝息を立て始めた時―――喋る鞘デルフリンガーは呆れたように呟いた。『やれやれ・・・寝相が悪いとか強がりやがって・・・おめーの寝相はすこぶる良いくせによ。紳士気取ったつもりかい?・・・ん?』無機物である自分だが何故か人間でいう視覚のようなものはある。デルフリンガーはその視覚が妙なものを捉えているのに気付いた。達也のソファの上には小さな女の子が優しい表情で達也の寝顔を覗いているようだった。その女の子は小さくか細い声で確かに言った。―――ずっといっしょだから・・・たーくん・・・。そう言った後彼女は此方を向いた。デルフリンガーは何か言いたかったが言葉が見つからない。よく見れば女の子は少々透けている。女の子はデルフリンガーにぺこりと頭を下げて言った。―――たーくんをこれからもおねがいします・・・。その言葉の後、女の子はすぅ・・・っと消えて行った。『・・・な、何なんだよ一体・・・?』月の光入る部屋に残ったのは三つの寝息と、喋る無機物たちだけだった。そして夜は静かに更けていくのである。(つづく)・ルイージマンション2・・・だと・・・?