寝起きドッキリはあくまでドッキリであってそれ以上の危害をターゲットに与えてはならない。そもそもドッキリ自体がその人の人となりやら本性らを知るための一種の心理テスト的な外面もあるらしい。だが、ドッキリもやりすぎれば罪であり、バラしどころが肝心でもある。その分寝起きドッキリは解り易い為怒るものなどあまり居ない。ドッキリが終わればそのターゲットは二度寝してもいいし起きて別のターゲットのドッキリに参加してもいいのだ。キュルケは二度寝を選択し、ギーシュは同行を選んだ。この参加自由の娯楽は丁度中間点にさしかかるのだが・・・正直先ほどから妙な事になっている。【ドッキリ3:真琴の場合】今回のターゲットは真琴である。我が愛する妹の寝起きドッキリは過激なものにはしない予定なのだが、しないと言っているのにコイツはどうやら人の話を聞いていないようだ。そう、ルイズである。彼女は先ほどから落ち着く事をせず、屈伸運動、シャドーボクシング、深呼吸にヒンズースクワット、果ては腹筋に腕立て、廊下を軽くダッシュしたりしていた。・・・・・・・・・うん、俺も疑問に思ってるんだが、何でこの女は身体を温めてるんだろうね。というか廊下走るな。それはマリコルヌも思ったのか、彼はその疑問を口に出した。「ねぇ、ルイズは一体どうしてあのような運動をしているんだい?」「ふむ・・・」ギーシュが少し考え、彼なりの意見を言いはじめた。「僕が思うに彼女は自らから溢れ出る情欲が暴走しないようにああいうそこそこ激しい運動をして悶々とした気を発散しているのではないか?」「もしそうだとしたら、なんと健気な!」「いや、マリコルヌ。健気もクソもない。同姓の幼女相手にああまでしなければ情欲を抑えきれないと言うか自制を普通に出来ない時点でおかしいだろう」着ている服が汗でじっとりと湿り、額には汗が光り、爽やかなそれでいて欲望が滲み出ているような荒い息を吐き出していたルイズの意気込みは並大抵のものではない。正直並大抵未満で十分なのにそこまで真琴が好きか。そのご好意には大変感謝だが貴様の毒牙から護るのが俺の仕事だ。あの妙な夢・・・自分が主人公の筈だったとほざく野郎が現れた夢を見てから考えることがある。ルイズは俺を宝と言ってくれた。正直その時は感動を覚えたのだが現状のこのザマでは敬意は払いたくない。もし・・・もしだ。俺のような既に誰かにゾッコンの男を召喚せず、愛の就職活動中の同年代の若者を召喚してたらルイズはどうなっていたんだろうか。ルイズは顔は文句なしに美少女、それは俺だって認めてやる。女を誰とも決めずにフラフラしてる思春期男子なら顔だけで惹かれるだろうな。そうなると好感を持ってルイズに接する事になるんだろうな。問題の性格は横に置いとくが。俺が体験した事をそいつも経験するとは限らないが、恐らくルイズに異性として好感を持っている奴ならば普通に男女の関係になってるんじゃないか?で、アルビオンで七万相手に突撃、戦死でご苦労さんと。ジュリオとか前教皇、ジョゼフの死んだ使い魔の様子からすればルイズは虚無の担い手として『ガンダールヴ』なるものを召喚する予定ではなかったんだろうか?だが残念、ご覧の有様だよHAHAHAHA!呼ばれた当人としては全く持って笑えない。前教皇の露骨なガッカリした顔やその後俺を殺そうとしたあの行動から、『ガンダールヴ』って相当凄い使い魔なのね。お、だったらアルビオンでの七万人との戦いやガリアとの戦争もスマートに終わらせられたんじゃないの?ひょっとしたら教皇サマも死なずに済んだのかもしれないしなぁ。でもあの人死んだのって総大将で押されてもないのに前線近くに出てきて目立ちすぎたからなあ。ジョゼフでさえ一応安全そうな場所にいたのにな。死人の悪手を責める気は全く無かったのだが、一応命を狙われたんでこのくらいの悪態はいいだろう。悪いなぁルイズ。お前の使い魔は伝説の使い魔じゃなくてさ。悪いなぁルイズ。フラフラしてなくて。でもこれも人生の試練と思うがいいさ。呼ばれた俺も迷惑してんだからお前も迷惑しろ。だが試練の中にも休息は必要と俺は考えているためこのようなドッキリ企画を進行している。ルイズの様子は兎も角、この扉を開けぬことには進行はしない。それでは愛する妹よ、お前の貞操は兄ちゃんが守ってやるからな。俺はそう決意して真琴の部屋の扉を開けた。このド・オルエニールにおける真琴の部屋は俺やシエスタ、あるいは領内の有志の方々、果てはルイズが仕立て屋に頼んで作った人形などが陳列されていた。俺が作った人形は流石に他に比べて不恰好だな。ウサギがクマに見える。蚯蚓のぬいぐるみは最早抱き枕状態だし。だがあり難いことに真琴は俺の作ったぬいぐるみは自分に一番近い枕元に置いてくれている。まさしく兄冥利に尽きる妹の愛で目頭が熱くなる勢いであるが、そんな彼女の寝顔はこれまた天使のごとき安らかな寝顔だった。彼女のベッドの側の机ではハピネスもすやすや眠っており、警戒心の欠片も無い。正直ハーピーらしく起きて騒ぐかと思えば、俺たちは完全に味方と認識しているようだ。愛い奴である。「これはまた可愛らしい部屋だな」「そうだねぇ、こう、女の子~って感じだよね。分かるかな?女性じゃなくて女の子」ギーシュとマリコルヌが微笑ましそうに真琴の部屋の感想を言っている。そうだな、色気は感じられないが少女特有の神聖さというのだろうか、そんな空気がこの部屋からは出ている。穢れなき純真無垢な少女の寝室に穢れまくった俺たち四名というのも無粋である。いや、そういう意味で穢れてるのはギーシュだけと思うのだが、ルイズとマリコルヌは思想が穢れており、俺はお世辞にも綺麗な奴とは言えない。いずれ俺もギーシュと同じ理由で穢れたいのであるがまあいいだろう。気を取り直し俺はすやすや眠る妹の頭を撫でてみた。「ふみゅ・・・?」すると真琴は可愛らしい声をあげた後、「えへへ・・・」と、眠りながら微笑むという素晴らしい芸当をやってのけた。その様子を食い入るように見つめていたルイズは俺にでかしたという表情を見せていた。その右手のガッツポーズは一体なんですかルイズさん。・・・分かってるとも。ルイズよ、お前も触れ合いたいのだろう?だが待て。寝ている幼い妹を撫でるのは兄貴の特権だと思うよ。この神聖な行為を貴様は蹂躙しようとでも言うのかね?違うだろう?見たまえこの寝顔。動いても寝ていてもこの娘は天使だ。・・・だが、次第にルイズの鼻息が荒くなっているのに気付いた俺は暴走する前にルイズを呼んだ。「いいか、おさわりは顔のみ。しかも触れるだけ。極度に撫でたら起きちゃうからな」「努力するわ」「いや、努力じゃなくてそこは約束じゃないの君」ルイズは眠っている真琴にゆっくりと手を伸ばした。そしてその赤子のような手触りの肌に手で触れると、陶酔したかのような顔になり、身体を僅かに震わせた。待ちに待ったこの瞬間がやってきたのだ。兄公認で彼女に触れるこの瞬間、自分の身体の感覚を全て指先にこめていた。そして触れた瞬間、彼女は多大なる幸福感とともに下品な意味で絶頂を迎えるという最悪な反応をした。禁断症状に苦しむ毎日は正に雌伏の時であった。待ちに待っていたのだ。恥を忍びながらもこの瞬間を待っていたのだ。愛情というものは実に尊きものだがある側面では醜くもある。だが愛情はその醜ささえ超越することもある。彼女の口元からは光るものが見える。ぶっちゃけてしまえば涎だ。だが自分の口元を拭おうとせずルイズは真琴の柔らかそうな桃色の唇に嫌な息を吐きつつも触れた。そしてその瞬間だった。はむっ。ルイズの指が真琴の口内に侵入した瞬間だった。ルイズは瞬間、背筋を伸ばし、白目を剥いて震え始めた。その間にも彼女の指は真琴の口や舌に蹂躙されており、先ほどから擬音で表現したらまんま成人指定のような卑猥な音がしていた。そんな中、野郎どもはこのような話をしていた。「ちょ、ちょっといいのかい?この光景・・・」「・・・色々こみ上げるものはあるが、指はセーフだ。ギリギリな」「そうだねぇ・・・こうして情景を見てなければ明らかに・・・」「俺はルイズを吊るし上げ、釜茹でにしてたな」「目が笑ってないよタツヤ・・・」この光景に対して協議中であった。そりゃ情景見てなきゃただのアレである。音がね、アレだしね。『ぴちゃ』とか『ぐちゅ』とか『ぷはっ』とかやば過ぎだけど指だから何の問題も無い。実際そういうプレイはあるらしいがメジャーは足だし、何の問題もない。そう自分に言い聞かせて俺は惚けた様子のルイズの咥えられたほうの手を取ろうとした。だが、その時、ルイズの咥えられてないほうの腕がゆっくりとあげられた。・・・あれ?この体勢は?そしてルイズは小さな声で確かにこう言った。「私の人生、もう一片の悔いはないわ・・・っ!!」「悔いが無ければ死ぬがいい!!」「嫌よ!この幸福を永遠のものとするにはやはりタツヤ!貴方が邪魔なのよ!」「ルイズ、幸福はたまに来るから幸福なのだ!」「今の私はとても充実して最高に仕上がった状態よ。今なら!」ルイズがそう言って杖を出そうとしたその時、俺は冷めたように言った。「そうかそうか、時にルイズ」「・・・命乞い?」「いや、聞きたいんだが、そのスカートの奥から出てるその液体はなんですか?」「・・・え?」その瞬間、何故かギーシュが青ざめて引いた。恐怖で漏らしたあの液体とは違うのは明らかだった。やがてルイズもそれが何なのかに気付き、ガタガタと震え始めた。そして真琴の口から指をとりだし、その場に寝転がってこう喚いた。「私を殺せ!!殺してくれえええええ!!!」「・・・どういうことだいギーシュ。あの液体は・・・」「・・・汗ダヨ汗」「人の妹に欲望丸出しの汗を垂らすなど貴様は全シスコンの敵である!よって後でカリーヌさんに告げ口します」「お仕置きの内容はともかく、聞いた感じでは凄まじく低レベルだ」ギーシュは頭を押さえて言う。・・・まあ、近くでこんだけ騒いでれば当然なのだが気付くとベッドの上のターゲットが不思議そうな様子で起き上がっていた。「うにゅ・・・?おにいちゃんにルイズおねえちゃんに・・・ギーシュおにいちゃんとマリコルヌおにいちゃん?どうしたの?」「うおっ!?起きてるよタツヤ!?」マリコルヌが驚いて俺に言うが、俺は至極冷静に真琴に言った。「ハイ、真琴。お兄ちゃんと歌の時間です。『わたしのわったしの彼は~♪』」「『アデ●ンス~♪』」ニコニコ笑顔でコルベール先生にはキビしい歌を歌う真琴にルイズは恍惚の表情と共に鼻血を出す。ハイ、寝起きで一芸できるかどうかのドッキリ大成功。次行くよ次。とりあえずルイズは履き変えろ。そして切り替えろ。俺は真琴にかつてルイズに歌った子守唄と同じ歌を歌い寝かしつけ、次のターゲットの部屋に向かった。【ドッキリ4:ティファニアの場合】むしろ野郎どもにとっては、特にマリコルヌのような奴にとってはテファがメインイベントであろう。テファも心優しい女の子なので酷い事はしたくない。「この先には正に女神がいるんだな」妙に気合が入るマリコルヌの気持ちは分からんでもない。いや、別にそういう事をするわけじゃないんでそこまで身だしなみを気にしなくてもいいぞ?キュルケとは違う神秘的な魅力を持つテファの寝室に入るのだ、まあ、下品はだめだよな。「あまり下品な事はやるなよ?絶対やるなよ?いいか絶対だぞ?」俺はそう言って念を押すが、これはつまり何かやれという暗黙の依頼である。マリコルヌはサムズアップした後頷いた。「・・・テファに妙な真似をしたら爆破するから」ルイズも念を押すが、お前が言うなと言いたい。さあ、そろそろ行くぞ。奇乳が俺たちを待ち構えているんだからな!妙な精神の高揚と共に俺は扉を開けた。ティファニア・ウエストウッドは魅力的な少女である。そのような魅力的な少女もここ最近の戦争で大層心を痛めてしまった。・・・あのままアルビオンで静かに暮らしていれば戦争に巻き込まれる事も無かったのかもと思うと、彼女には悪い事をしたのかもしれない。ルイズたちの話ではこの領地に来てのテファは孤児の子ども達と遊んだり世話をしたりして笑顔だった日が多かったらしい。それは大変いい事なのだが、そうなると余計に外の世界に連れ出してよかったのかと考える。・・・馬鹿馬鹿しい。よかったかどうかは本人が決める事だ。今の彼女には同年代の友人がたくさんいる。それを彼女がどう思うかじゃないのか。彼女の幸せは俺が決める事じゃないし俺にはそんな資格はない。・・・彼女の真の幸福など俺が知るわけもないのだ。幸福は人それぞれだ。表面上の幸福は大体人類共通で美味い物食べたり収入があったりとかだが個人の幸福など他人が知ることもない。ルイズやギーシュ、テファやキュルケ、タバサに姫様や姫さん、マリコルヌにレイナールにモンモン、ジュリオやゴンドラン爺さん、ラ・ヴァリエールの人達やこの領内の人達、学院襲撃の際に出会った少女やジョゼフや死んだその使い魔の幸せも千差万別。その全てを完全に幸せにしようだなんて不可能に等しい。人生が幸福だったかどうかなんて結末の時にしか解らない。他人からすれば恋人と添い遂げることなく死んだ我が親友ウェールズ、再会の時が生きていた時から考えれば一瞬しかなかった親愛なるダークエルフのフィオ、目的も遂げられず殺された前教皇ヴィットーリオ・・・他人からみたら悔いが残りまくる人生じゃないのかと思われるのだが。・・・まあ、少なくともワルドは幸せと思うんだが。理不尽じゃね?「何気にきちんと整頓されているな」「一応他人の屋敷の部屋をあっという間に汚くするような女性に見えるか?」「違いない」ギーシュの感想にマリコルヌが突っ込むというある意味珍しい光景である。だが、マリコルヌは机に置かれていたハンカチに注目していた。まあ流石と言うべきかこの部屋に飲みかけや食べかけのものは一切置いておらず、マリコルヌも大変不満ながらも感心していた。「食べ物を大事にする性格みたいね」「むしろ一般的な貴族が当然のように飯を残してるんだがな」「嘆かわしいわね」何かこのハルケギニアにおいては食事を飲みかけ食べかけで席を立つ貴族は少なくない。これに関しては魔法学院のマルトーもご立腹だった。ルイズはそもそも食堂で飯を食べる事が少ないし、ギーシュも厨房で食べるようになって食事は残さない。タバサとマリコルヌはそもそも残すどころかおかわりまでしてる。その他は大体残してる。キュルケも例外ではない。まあ、食いきれる量以上の量が出てるのも確かなのだが。そう貴族の食事事情を考えるとマリコルヌはテファのものと思われるハンカチを手に取った。「一般的な何の変哲も無いハンカチだな」ギーシュのいうとおりマリコルヌの持つのは一般的な緑の無地のハンカチである。「いや、変哲はある」「何?」「若干湿っている」そもそもハンカチが湿っていても何の疑問も無いのだが、その後のマリコルヌの行動は疑問全開だった。マリコルヌはおもむろにそのハンカチを口に入れ咀嚼しはじめたのだ!「何をやっているのアンタ!?」「それは食べ物ではないぞマリコルヌ!?」お前この企画理解しすぎだろマリコルヌ!?そのハンカチはまず間違いなくテファのものでありテファが触って何かしら手を拭いたなりした事は明白。ならばそのテファの乙女の肌から分泌された僅かな汗、若干の垢もあるかもしれない。それを水で薄めたとはいえそのハンカチに付着するはテファのエキス!!その微量な体液が付着したその布を噛み締めるように租借する漢、マリコルヌに拍手を送りたいが賛辞は送れない。「基本無味無臭だけどほのかに甘い香りがしたよ。優しい味だ」何が優しい味だ。お前は優しくもない最高の変態紳士だ。それでは儀式も終わった所で肝心のテファの寝顔チェックです。「正に芸術作品として残したい美しさだね。キュルケとは違った魅力もある」「何だろうねこの気持ち。キュルケの時は全裸で突撃したいって感じだったけど、ティファニアはその・・・侵してはいけない聖域のような・・・」キュルケはなぁ。流石に男性経験が多いだけあって寝てる姿も男を誘惑できるのは流石だ。でもテファはなぁ・・・。真琴と同じく無垢な面が押し出されてるな。確かに真琴と違って色っぽいんだよ?マリコルヌは胸部をガン見してるし。「・・・寝顔も色っぽいって女性としていいなぁとは思うわ」ルイズがそうテファを見ながら呟く。「ルイズ、まぁそう言いなさんな。お前も寝顔は可愛いんだよ?寝顔だけ」「誉められていると思ったら貶されていたわ。どうしましょう?」「ほう、お前も言葉の真意を読み取るまでに成長したか。お兄ちゃんは嬉しいぞ義妹よ」「わーい、誉められたわとでも言うと思ったか!?」「ルイズはノリツッコミを覚えた!やったねルイズちゃん!」「むきーっ!馬鹿にしてー!!」「貴様ら・・・僕の目の前でイチャイチャするんじゃないよ・・・」「マリコルヌ、これは使い魔による主の調教です」「おのれタツヤ!私は今アンタの本性を見たわ!私を調教して自分色に染め上げようという魂胆ね!でもそうはさせないわ!この私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは誇り高きラ・ヴァリエール家の公女!例えこの身は蹂躙されようとこの心までは犯せないものと知りなさい!!」「さて、テファの寝巻き姿を確認しよう」「そうだね」「いささか抵抗感はあるのだが、いいだろう」「決死の口上を華麗にスルーして進行するなぁ!?」ルイズは俺の足をローキックしながら言った。痛いから。さて、テファの寝巻きだが・・・ネグリジェとか着てるのかな。ありえないけどバスローブとかだったらたまりませんなぁ、はっはっはっは!そんな馬鹿なことを思いつつ俺はドキドキして毛布をめくった。そうか、テファは白の下着なのか。一瞬そのようなことを思った。そりゃそうだ。彼女は下着姿で寝ていた。バ、馬鹿な!?下着だと!?しかも胸当て・・・ブラのような下着は今にもはちきれそうであり寝返りなぞしようものなら・・・と思って俺は視線をやや下に向けた。・・・あの零れ落ちそうな胸元に見えるはもしかして乳の輪と書いてるアレではないだろうか。そうかピンクかーってヤバイヤバイ!!俺は即座に毛布を掛けなおし、期待に胸膨らませるマリコルヌとギーシュの方を見て言った。「アクシデントの発生だ諸君」「・・・どうしたの?」ルイズが何だか心配そうに尋ねてくる。「テファの寝巻きは下着だった」「・・・世の中には裸で眠る者もいるんだ、下着姿で寝るくらいは・・・」「・・・まさかタツヤ」マリコルヌはどうやら気付いたようだ。アレほど豊満な胸を持った少女が下着姿で寝ている。眠っている時、そのままの体勢で眠り続ける事は難しい。テファほどのボリュームの胸にあった下着は中々ない。それほど規格外の胸が寝ている際動いたらもしかしたら弾みで・・・?「突起物の周りにあるピンク色が見えてる状態である!」「ぬわんだとォォォォォォォォ!!!??」あくまで小声で叫ぶマリコルヌの衝撃は計り知れない。これはドッキリの筈がドッキリを仕掛けられたに等しい事件である。マリコルヌは溢れ出る欲望が鼻から出そうになったのか鼻を押さえながらよろめいた。見えてしまったのは事故として処理するとして、これ以上はテファの身体をさらけ出す訳にはいかない。今回はドッキリという名の娯楽なのだからテファを傷付けてはいけないのだ。「拝むだけでもいいから見せてくれ!」「アホか!テファはこれでも身持ちが固いから意図的にそのようなことをすれば信頼度がガタ落ちになるぞ?」「ぐぬぬ・・・欲望を取るか理性を取るか・・・欲望に決まってるだろうがぁぁぁぁぁ!!!」そう意気込んで邪魔者の俺に襲いかかるマリコルヌだったが、ギーシュとルイズによってその身を拘束されてしまう。娯楽とは常に理性的ではなくてはならない。そう、加減が出来る者こそが娯楽を楽しむ資格があるのだ。欲望を抑えきれないものが娯楽に興じれば待っているのは破滅だからな。ルイズも物凄く頑張ったのにマリコルヌは何という体たらくだろうか。徐々に彼の顔が悔しさに歪んでいくのが分かる。「マリコルヌ、ここまで来てお預けは嫌だと言う様な顔はよせ」「しかし!」「不幸な事故によってお前の視覚を楽しませる事は出来なかった。だが人間の感覚はまだ他にある」俺はあくまでテファの身体が見えない程度に毛布を持ち上げて、マリコルヌに手招きした。「だからせめて嗅覚だけはその記憶に留めな」制限時間実にたったの10秒の嗅覚による至福の時を俺はマリコルヌに用意したのだ。歓喜のあまり涙目になるマリコルヌは10秒間毛布と布団の間から香るテファらしき臭いを堪能した。堪能というより深呼吸を三回やって終了だが。マリコルヌはその後深々と頭を下げていた。・・・ご馳走様でしたとでも言いたいのだろうか?「僕は今日と言う一時をけして忘れない。有難うタツヤ。君と友人で良かった」非常に爽やかな顔で嬉しい事を言ってくれる小太りの友人だが、やった事がやった事なので評価が下がってる気がする。テファへのドッキリをもってマリコルヌの出番は終了だ。彼女へのドッキリがこのような状態で終わってしまうのが主催側としても大変残念だが仕方ない。それでも彼は満足そうに自分の部屋に一人戻って行った。・・・後に残るは飛び入りのギーシュと、元からいたルイズである。「・・・これで終わりかしら?」「まあ、良い余興だったのではないかな?それにしてもルイズはもっと自分を押さえた方がいいね」「う、うるさいわね。マコトの愛らしさの前では理性なんてないわよ」「・・・それはとんでもなく危険な発言じゃないか?」疑問形でいうところがギーシュの優しさだろうが危険そのものである。というかお前らなんで終わったと思ってるんだ?部屋から出るまではドッキリは終わってないんだぞ?「・・・?あ・・・れ?タツヤ・・・と・・・あれ・・・?」あ、テファ起きた。ギーシュは青ざめ、ルイズはしまったという表情になる。何を慌てている。早朝ドッキリというのは向こうが悲鳴をあげる前に本題に入ってしまえば全く問題は無いのだ。「それでは聖女様も起きた事ですのでこれより第一回美少女と添い寝の権利とオ●ーナを買う権利争奪ジャンケン大会決勝戦を行ないます。赤コーナー、幼女を愛する変態公女ルイズー!」「変態は余計よ!?」「青コーナー、我らが隊長、良いのかこの大会に参加して?ギーシュー!」「ありがとう、ありがとう」本当はギーシュのところにマリコルヌがいた予定なのだがその辺はアドリブだ。そもそもジャンケンという概念がハルケギニアには無かった為説明に苦労するかなと思ったがすんなり受け入れられた。そう考えるとこのゲームを生み出した先人は偉大すぎる。あと最初にグーを広めた喜劇王もだな。「え、ええ?」テファが混乱している間にやる事やりましょう。「三回勝負ですよ!最初はグー!」「ジャン!」「ケン!」「ポン!!」第一回戦 ルイズ:チョキ ギーシュ:グー第二回戦 ルイズ:チョキ ギーシュ:パーとりあえず解説をしたい。まず一回戦はルイズが敗北した。この場合にチョキを出した理由については最初はグーから来ると俺は思っている。ルイズの思考は恐らく最初はグーから相手が次に出すのはグーに勝てるパーである可能性が高く、ならばチョキ出そうという思考だったんだろう。全く根拠がないので彼女は自分の策によって敗北したが、すぐに軌道修正し、前に相手が出した手に負ける手を出しやがった。その結果ギーシュはルイズの策に嵌ってしまい敗北した。連続でチョキ出したよこの女。「ギーシュ、次も私はチョキを出すわ」そして三回戦直前,ルイズは心理戦を仕掛けてきた。ギーシュはそれを聞いて少し考えたあと、俺に目配せをした。「それでは泣いても笑ってもこれに勝ったら優勝だ!行くぞ!」「ジャァァァァン」「ケェェェェン!」「ポンっ!」第三回戦 ルイズ:チョキ ギーシュ:チョキ 俺:グー俺の大勝利だった。「優勝者決定!優勝者は主催の俺!したがって添い寝権利も俺が頂く。無論行使する相手は真琴だからよろしく」「な、何ですって!?テファじゃないの!?」「俺は美少女と添い寝の権利と言っただけでテファと添い寝と明言した覚えは一度もない」「お、おのれ!謀ったわねタツヤ!!」「クククク・・・どうだ悔しかろう?悲しかろう恐ろしかろう?ギーシュに心理戦を仕掛けたは見事。だがその程度の知略では俺を出し抜くことは出来んわ!ぬわっはっはっはっは!!」「なんて卑劣な・・・!!碌な死に方はしないわよアンタ!!」「俺の希望する死に方は老衰及び腹上死です」「そりゃ僕もだ」「良かったわね、爆死させてあげるわ」「クックックック・・・いいのかルイズ?こんな場所で爆破などすればテファも巻き込みお前は恐らくカリーヌさんに折檻されてしまうぞ」「テ、テファを人質に取るつもり!?」「違うなルイズ!俺は彼女の友人として彼女の安全を優先しているだけだ。テファを傷付ける事も厭わないお前の暴挙を貴族として使い魔としてそしてテファの友人として許すわけにゃあいかねえ!」「お、おのれ!!これでは私が悪人みたいになってるじゃないの!」「正義を自称する者が、幼女に指を咥えられて絶頂を迎えるか」「それをここで言うな!?」ギーシュはやれやれといったように首を軽く振り言った。「ルイズ、どうやら君の旗色が悪くなってきたな」「いいえ、ギーシュ。例え旗色が悪くなろうが、こんな外道に対して逃走はないのよ!」ルイズはそう言って俺に殴りかかってきた。薄暗い部屋で危ないから俺はそれを避けた。避けた先は壁だった。「へぎょ!?」ルイズは壁に激突してフラフラになっていた。もう、あまりはしゃぐな。危ないから。そのような保護者同然の思考になるほどの余裕がある。涙目のルイズの額を擦ってやりながら俺は言う。「お前、笑いに身体張りすぎ」「誰のせいよ誰の!?」誰のせいだろうね?一旦治療の為ルイズはギーシュと共に部屋から出て行った。・・・あ、しまった。出て行くタイミング逃しちゃった。後ろにはいまだ事態を把握できてないテファがいるわけだが。「タ、タツヤ・・・」不安げに俺の名前を呼ぶテファ。いかん、このままでは泣かせてしまうやもしれん。ふむ、まずは挨拶からだな。「お早うテファ。でもまだ寝てていいぞ。俺もすぐ戻るし」「・・・何で私の部屋に・・・?」「寝顔を見に来ました」「へぇッ!?」「と言う寝起きドッキリだよ。ちょっとした悪戯心さ、悪かったなゴメンよ」俺はしゃがんでテファと同じ目線の高さで謝った。テファは毛布で少し顔を隠すようにして照れているようだ。・・・まあ、寝顔見られたら恥ずかしいもんだしな。彼女の長い耳が少し動いているのが見える。人間とエルフが分かり合えた結果の存在である少女は世間の冷ややかな目には敏感である。だけど彼女の周りはそんな目ばかりじゃない。温かく彼女見守る目もある。中には熱い視線を送る野郎たちもいるが。「あのねタツヤ」「何だ?」「こういう事をしちゃ駄目なんだよ。びっくりするから」そういう目的でやってるから。「驚いてたのか?」「びっくりしたよ。起きたらタツヤ達が何かやってるんだもん」ならば今回のドッキリも成功したという訳か。主催側としてよかったと思うと同時にここは平謝りするべきかね。「でも・・・」テファはにっこりと微笑んで言った。「目が覚めてすぐにタツヤがいたからびっくりする前に安心しちゃった」「俺はお前の親じゃないぞテファ?」「うん、分かってるよ。でも何だか安心したんだ・・・。最近まで気を張ってなきゃいけないことが多かったから・・・」心優しき少女に襲い掛かる戦争の波は確実にテファの心を蝕んでいたのだ。彼女には確かに同年代の友人が多い。ルイズたちも彼女を気にかけていたと聞く。アルビオンの森の中で子どもたちと穏やかに暮らしていたテファの運命が変わる事になったのは恐らく俺と会ったせいなのかもしれない。恨まれそうな状況なのにこの娘は俺を見て安心したとか言ってます。「・・・テファ。俺は何時までもこの世界に留まる訳には行かない」「・・・そうだね」悲しそうな顔になるテファ。そう、彼女が『世界扉』の魔法を使いこなせないとは言え覚えてしまった以上、俺と真琴が元の世界に帰れる術が出来てしまったのだ。「いずれお別れのときもやってくる」「・・・・・・」何となく泣きそうな表情になっている。所詮俺はこの世界にとっては余所者でしかない。元の世界には俺を待つ者がいるから・・・俺は帰んなきゃいけないのだ。「だがよ、俺がこの世界にいる限りさ、君は安心してていいんだ」俺は今はルイズの使い魔。何だかんだでルイズは死なせん。兄として妹の真琴も全力で守る。この世界で出来た友人たちも出来る限り死なせたくはない。「頼りないかもしれないかも知れないけどな、俺は・・・この世界にいる限り、君を守れる人間になれるよう努力するよ」断じて断言はしない。努力するだけであり守るとは言ってない。中々へたれてる発言だと我ながら情けなく思える。だがテファはゆっくり首を振った。「頼りなくないわ。私にとってタツヤは世界で一番頼れる人よ」「俺より姫様やルイズの方が・・・」「私を外に連れ出してくれたのは貴方じゃない」・・・こりゃ参った。テファは微塵も外の世界に来た事を恨んだ事はなさそうだ。「そうか・・・」「タツヤは私の居場所を作ってくれた。子ども達の居場所も作ってくれた・・・マチルダ姐さんの事だって・・・」孤児院は村の若返りの計画の一環だし、マチルダはそんな中偶々やって来ただけだし・・・。まあそういう事情でも彼女にとっては感謝するに値するんだろう。「いや違うなテファ。子どもたちはともかく、君の居場所は君が作ったんだ」恐らくその居場所はこれからも広がっていくだろうと思う。結構な茨の道だがテファは負けないと信じよう。「だから礼なんて言わなくていいのさ。それでも言いたいなら俺はどう致しましてというだけだけどな」「タツヤはやさしいんだね・・・」「優しい時はマシュマロのように優しいが厳しい時は非情だぞ?二面性を持った悪い人だよ俺は」主にその非情な面は暴走したルイズに向けられるのだが。テファはこう言ってくれるが俺は自分が優しいと思った事はない。人生の難易度がハードな分、俺がイージーであるはずがない。優しさだけでは愛は奪いきれないと言う歌もあったがホントその通りで人間厳しさも必要である。まあ、自分に甘いような気がするのは仕方がないが。「テファ、近いうちに・・・別に今日でも構わんが、寝巻きを買いに行こう」正直これが言いたかった。この世界において服を買わなければいけないのはテファ、エルザ、真琴である。首都に繰り出してこの三人の服を買う。本当はマチルダ辺りが行きたいらしいのだが彼女は孤児院で忙しい。・・・領主なのに暇そうだから街行ってと言われる俺も俺だが。「え・・・?」「分かりやすく言えば真琴と他数名の同伴のデートで御座いますよ、お嬢さん」・・・初デートではないぞ、確認するが。妹同伴のデートならもう杏里とやってるもんね。大体行く筈だった杏里とのデートも誘ったのは俺だ。デートなどと言えば聞こえが悪い?なら買出しだ。自分の服は自分で見たいだろう。真琴も同伴するので保護者で俺も行く。というかテファを一人で街に出すか!?「・・・うん・・・行く」「そうか。なら決定だな。行くのはもっと後の時間だから寝てていいよ。んじゃおやすみ」俺はそう言って彼女の部屋を出ようと立ち上がるのだが、その時テファの白い手が俺の手を掴んだ。「どうした?」「眠れないの・・・タツヤ」縋るような視線、行って欲しくないという思いから彼女は達也の手を掴んだ。このままいなくなりそうで寂しかった。せめて自分が眠るまでは一緒にいて欲しかった。達也は自分の最初のともだち。そして大好きなともだちだったから。その感情を世界はなんと呼ぶのか、ティファニアがそれを知るには経験が足りない。だがその感情は嫌なものではない。むしろずっと持っていたら心が若返るらしかった。例えば達也やギーシュ、ルイズやキュルケなどは簡単にその感情の説明は出来るだろう。この四人はそういう対象がいた、もしくはいるのだから。だが、タバサや真琴及びイザベラやらは出来ません。何故なら経験がない。この感情の説明は未経験者は歓迎されない。でも分かる事がある。悪い気はしない・・・という事だった。少女たちがこの想いを誰に向けるのかは未来でしかわからない。この感情は彼女にはまだ説明できない。そう、分かりたい。でも分からない。どうして達也と会うとこんなにほっとするのか・・・。そんなの達也にも分かりませんがな。HAHAHAHA!縋りつくような視線を受けている達也は彼女にふっと微笑みかけて言った。「しょうがないな」と。ティファニアの心臓の鼓動が大きくなった気がした。ルイズの治療が終わり、ギーシュは彼女と共に達也の様子を見に来た。まだティファニアの部屋にいないか確かめる為だった。だがそんな心配は杞憂かのように達也は彼らを待ち構えるように立っていた。「って・・・テファ!?」「起きてしまったのか?」達也の横にはティファニアがどこかガッカリしたような表情で立っていた。「大丈夫かよルイズ」「・・・何とかね」「水を飲んだら落ち着いたみたいだ。ところでドッキリはもう終わりかね?」「この屋敷にはドッキリを仕掛ける奴はいないでしょ?」「・・・あと一人いるぞ」「・・・何ですって?」ルイズが訝しげに尋ねる。俺は三人に後について来いと手招きした。そして俺のまえには『地下』に続く扉があります。「この扉は?」「知らないようだから説明すると、地下室に続く階段部屋だな。この屋敷は地下の方が地上より広い」「へー」いずれこいつらと共に探検しようなと約束してそろそろ本題に入る事にした。階段部屋に入り、途中の酒蔵部屋を抜け、書庫内の隠し通路を抜け、豪華なベッドがある部屋に出る。「こんな場所がどうして地下にあるのよ!?」「妙な雰囲気だね・・・装飾品がやけに豪華だ」「ついて来てくれ」この部屋にある大きな鏡・・・これは『ある場所』に繋がっている。「・・・?鏡以外何もないじゃない」「・・・それにしても凄い体験をした気がするんだが・・・一体どういう原理なんだ?」「タツヤ・・・ここ、どこ?」「この先にいる人が次のターゲットだ。始めにいっておくけど大声は厳禁な」俺は正面の壁を押す。すると壁が回転していくではないか!その向こうの光景にルイズは特に声をあげそうになった。続いてギーシュが冷や汗を垂らし、テファはまだ分からないように首をかしげている。「ルイズ、質問だ。ここは何処かな?」実際来ておいてなんだが俺も緊張している。「こ、ここは・・・姫様の・・・アンリエッタ女王陛下の寝室よ・・・」ルイズは顔を引き攣らせ言うが、俺の右手にある魚肉ソーセージを見るとムンクの叫びのような顔になってしまった。【ドッキリ5:アンリエッタの場合】(続く)