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No.18858の一覧
[0] ルイズさんが109回目にして(以下略 (オリ主) 101話から[しゃき](2011/02/28 21:46)
[1] 第101話 君は俺のメイドなんだからな[しゃき](2010/05/15 21:53)
[2] 第102話 今の君を見ることは出来ない[しゃき](2010/05/16 20:28)
[3] 第103話 飛んで火に入る夏のルイズ[しゃき](2010/05/25 14:27)
[4] 第104話 出版禁止の物語[しゃき](2010/05/25 14:28)
[5] 第105話 孤独が好きなんて中二病でしょう?[しゃき](2010/05/25 23:49)
[6] 第106話 学生旅行ご一行様[しゃき](2010/05/29 18:35)
[7] 第107話 主人公(笑)状態!![しゃき](2010/05/30 15:10)
[8] 第108話 煩悩まみれの幼女[しゃき](2010/05/30 15:05)
[9] 第109話 5000年前の家族[しゃき](2010/05/31 21:04)
[10] 第110話 屋敷地下の出会い[しゃき](2010/06/02 16:13)
[11] 第111話 だったら鼻毛を抜いてみろ[しゃき](2010/06/05 16:02)
[12] 第112話 つまりはお前が一番危険なんだよ。[しゃき](2010/06/09 13:55)
[13] 第113話 人間には欲がある。しかも際限がない。[しゃき](2010/06/10 22:19)
[14] 第114話 そろそろ怒るべきなのかしら?[しゃき](2010/06/11 11:09)
[15] 第115話 感動の再会・・・あれ?[しゃき](2010/06/14 14:30)
[16] 第116話 続・文化の違いは恐ろしい [しゃき](2010/06/18 22:00)
[17] 第117話 ご先祖様の贈り物[しゃき](2010/06/21 15:55)
[18] 第118話 4人集まろうが馬鹿は馬鹿のまま[しゃき](2010/06/23 17:23)
[19] 第119話 とろけるチーズは●印[しゃき](2010/07/01 00:57)
[20] 第120話 悪魔と呼ばれる男、悪魔と呼ばれていた女[しゃき](2010/07/02 02:11)
[21] 第121話 折角出て来たのに悪いが何故出て来た[しゃき](2010/07/09 17:20)
[22] 第122話 難しい夢の後は踊りの時間[しゃき](2010/07/12 16:17)
[23] 第123話 ロイヤル的な家庭内暴力[しゃき](2010/07/15 12:03)
[24] 第124話 5000年越しの恨み[しゃき](2010/07/26 00:07)
[25] 第125話 傷まみれの桃から[しゃき](2010/09/26 21:14)
[26] 第126話 俺の中の永遠[しゃき](2010/07/30 02:08)
[27] 第127話 罪人の末路、ハルケギニアの未来(笑)[しゃき](2011/10/16 17:45)
[28] 第128話 称号:魔法少女見習い[しゃき](2010/08/05 18:44)
[29] 第129話 まるで今まで腹心だったような存在感[しゃき](2010/08/09 17:59)
[30] 第130話 彼の子を産んだ女[しゃき](2010/08/16 23:32)
[31] 第131話 更に闘いたい者[しゃき](2010/08/22 23:57)
[32] 第132話 自国の事は極力自国で何とかしろ[しゃき](2010/08/31 22:12)
[33] 第133話 嫁が出来る!娘が出来た!?[しゃき](2010/09/01 23:58)
[34] 第134話 幸運の害獣[しゃき](2010/09/02 23:48)
[35] 第135話 ガリア旅行ご一行様と言う名目[しゃき](2010/09/03 23:13)
[36] 第136話 お前の属性には色がない[しゃき](2010/09/11 15:43)
[37] 第137話 初めての友人候補[しゃき](2010/09/22 14:29)
[38] 第138話 不相応な称号など重荷になって邪魔なだけ[しゃき](2010/09/27 22:09)
[39] 第139話 ド・オルエニールの美味しい水[しゃき](2010/10/04 11:20)
[40] 第140話 幼女相手に長い自論を展開する男、スパイダ【以下略】[しゃき](2010/10/09 10:14)
[41] 第141話 火を使う時は回りの安全を考慮した上で使え[しゃき](2010/10/16 21:50)
[42] 第142話 酔っ払いに水を与える優しい男[しゃき](2010/11/04 00:45)
[43] 第143話 賞味期限というよりラベルの偽装[しゃき](2010/11/08 10:29)
[44] 第144話 ごーじゃすなマイステージ[しゃき](2010/11/10 17:06)
[45] 第145話 恥ずかしい主従関係[しゃき](2010/11/19 12:19)
[46] 第146話 ルイズに対しては3話でやってる[しゃき](2010/11/25 14:55)
[47] 第147話 芸人が本来やるべき仕事をしないでください[しゃき](2010/11/30 14:56)
[48] 第148話 愛の真実を映すは鏡[しゃき](2010/12/03 16:10)
[49] 第149話 毛根死滅の何が悪いんですか学院長!?[しゃき](2010/12/09 13:48)
[50] 第150話 激しい励ましで怪我ないですか?[しゃき](2010/12/28 20:26)
[51] 第151話 『かつて存在した』は『今はいない』という意味ではない[しゃき](2011/01/23 15:10)
[52] 第152話 『ゆうれい』を思い浮かべたら負け[しゃき](2011/02/08 20:26)
[53] 第153話 あんなものは飾りですが飾っておきたい[しゃき](2011/02/20 22:40)
[54] 第154話 希望の破壊者[しゃき](2011/02/27 16:14)
[55] 第155話 間違いなく『碌でもない』こと[しゃき](2011/03/06 01:20)
[56] 第156話 好敵手の『魔法』でポポポポ~ン[しゃき](2011/04/08 22:27)
[57] 第157話 使い魔だが夢と希望と正義と愛の塊を掴んでしまった[しゃき](2011/05/04 10:50)
[58] 第158話 砂漠の中心で童貞宣言[しゃき](2011/05/23 16:59)
[59] 第159話 誠意をもって利用する外道[しゃき](2011/06/27 23:17)
[60] 第160話 男に比べて女の準備は長くても許してやってください[しゃき](2011/07/05 12:29)
[61] 第161話 互いを知るためには一方的な質問はしないこと[しゃき](2011/08/16 19:59)
[62] 第162話 『消失』していなかった『(笑)』[しゃき](2011/09/01 18:28)
[63] 第163話 結果を言わず過程を伝えて真実は闇になり[しゃき](2011/10/16 21:20)
[64] 第164話 今は悪魔が微笑む時代なのよ![しゃき](2011/11/16 13:00)
[65] 第165話 そして そのとき ふしぎなことが おこった![しゃき](2011/12/31 14:47)
[66] 第166話 一人で護れる範囲は限度がある[しゃき](2012/02/21 13:11)
[67] 第167話 やられるたびに学習し、また挑戦する[しゃき](2012/02/24 00:52)
[68] 第168話 人間を続けたいなら僕らと契約してよ![しゃき](2012/05/11 15:41)
[69] 第169話 貴様のような童貞などもげろ!いっそ●ね![しゃき](2012/09/02 11:49)
[70] 第170話 朽ち果てぬ想い、少し届く[しゃき](2012/12/28 17:04)
[71] 第171話 人間の使い魔の最期[しゃき](2013/12/30 02:44)
[72] 第172話 怒れる幼女と爆発デビュー[しゃき](2013/12/31 16:09)
[73] 第173話 はじめてのひっさつわざ A指定[しゃき](2014/06/24 17:35)
[74] 第174話 笑う石の冒険[しゃき](2016/02/25 18:13)
[75] 第175話 ファンタジー世界の海に眠るファンタジー〈ドリル)[しゃき](2016/02/28 01:35)
[76] 第176話 やってみたら案外やれることもある[しゃき](2016/10/19 00:20)
[77] 第X話 真心喫茶の二人と常連客の才人君[しゃき](2010/07/13 00:31)
[78] 第X話 真心喫茶109は年中無休だったらいいな[しゃき](2010/09/26 11:37)
[79] はじめての109 簡易人物紹介 (人物追加)[しゃき](2014/06/24 17:30)
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[18858] 第133話 嫁が出来る!娘が出来た!?
Name: しゃき◆d1ebbc20 ID:1ddacfd7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/01 23:58


現在俺たちはジュリオの恋人を迎えに行く為に空を移動中である。
テンマちゃんには俺、真琴、シエスタの3人、ジュリオの竜にはルイズとテファが乗っている。
ところで疑問に思ったのだが、ジュリオを連れて行くのは決定として、この男は何故未だにヴィンダールヴとしてのルーンが残っているのか。
使い魔のルーンは使い魔が死んだら消えるらしいが、その主たる者が死んでも消えるのではないのだろうか?
そのことについて座学優秀なルイズに聞いてみた。

「ああ、アンタの疑問は当然よね。使い魔のルーンは使い魔が死ぬと基本的には消えるわ。このシステムは召喚者が次の使い魔をすぐに呼び出せるように出来る此方としては大変ありがたい呪文なんだけど、その反面、主が先に死んでもだからと言ってルーンは消えないわよ。そういう呪いなんだから」

そういえば、フィオは一応の主のニュングが死んでもルーンはそのまま残っていた。
主が死んでもずっと忠誠を誓うって使い魔はどこぞのハチ公か。

「まあ、文句を言いたいのは分かるけど、この呪文は始祖ブリミルが作ったものだからね・・・歴史上改良に挑戦した人はいるらしいけど私の知る限り成功者はいないわ。にしてもブリミルってよほどいい使い魔に恵まれたんでしょうね」

基本的に使い魔は主を守るのが義務だから多くの使い魔は主より先に死ぬことが多いらしいので、今回のようなケースはあまりないらしいが、珍しいと言うほどではないらしい。全く持って使い魔には迷惑な話だ。

「まあ、かつての主の墓を守っていた使い魔の話はザラにあるし、美談の元になりやすい呪いという事は覚えておきなさいな」

「使い魔は一生、主に縛られて生きていくのか」

「主と使い魔は一心同体。主が死んでもその使い魔が生きてる限り、主の思いは引き継がれていくのよ」

「さっさと解呪魔法を作ってやれよ・・・」

「基本的に解呪する必要性がなかったからねぇ・・・その辺の研究はあまり進んでないのよ」

そもそも人間の使い魔自体が貴重な存在であるし、彼らの今後を考える事などなかったのだろう。
あったとしても肉壁としての役割しかないだろう人間の使い魔の未来などほぼ絶望的なのだ。
そう思えば俺やジュリオは特殊な能力を持っているだけ幸運なのかもしれない。

「まあ、当然主とのコンタクトが遮断された状態なんだから主の見ている風景なんて見えなくなるし、主への忠誠も次第に薄れていくと言う話もあるけどね」

「ふむ、要するにだ。このルーンは契約の証であると共に、『こいつはお手つき済』という証なのか」

「非常に分かりやすい使い魔童貞及び処女判別が出来る画期的なものよ」

「すまん、非常に気持ち悪いんだが」

俺たちの話を聞いていたジュリオが冷や汗を流しながら言った。
シエスタは一応真琴の耳を塞いでいた。優秀なメイドである。
一方、ティファニアはというと、小首をかしげて俺に尋ねてきた。

「タツヤ、どうていって、何?」

その時、耳を塞がれている真琴以外に電流走る。
こ、この奇乳少女は童貞の意味を知らんとね!?
あまりの衝撃に若干九州訛りになってしまったが、どうする?説明すべきか?
悩んでいたらルイズが俺を指差して言った。

「コイツのような男を言うのよ」

「捨てれなかった原因を作った貴様が何を言うか」

「捨てる?どうていというのはいらないものなの?」

「え」

ルイズも言葉に詰まってしまった。
仕方ない、できるだけソフトに説明するか。

『童帝(どう・てい):あらゆる欲望を破棄し、男として至高の域に達した者だけが与えられる名誉ある英雄の称号。その称号を付けしものは例えどのような境遇に陥ろうとも誘惑に惑わされず、己が信念を貫き世界を救う働きも時にはするほどの傑物となるであろう。【民明●房『世界の称号大辞典』より抜粋】』

「な、何だか凄い存在なんだね、どうていって」

「うむ」

「うむ、じゃないわよあんた。何そのトンでも称号!?●明書房って何よ!?」

「俺の世界じゃ有名な出版社だぞ?」

「知らんわ!?」

「さて、到着したぞ」

ジュリオが自分の竜を降下させる。
どうやらこの男は俺たちに対するスルー能力が高いようで寂しい。
自分だけ綺麗なままでいようという魂胆だろうがそうは行きません。
地味に俺は殺されそうになったことを根に持ってるんで。誰も許したとか言ってないんで。
眼下に迫るのは小さな修道院である。
ガリア北西部に突き出た幅二リーグ、長さ三十リーグほどの細長い半島の先端にぽつんとその建物はあった。
こんな島のほとんどが岩山で占められた孤島に修道院とか明らかに隔離施設じゃん。

「・・・此処は身寄りのない女性たちが修道女として生活してるんだ」

ジュリオは静かに呟いた。

「俗世から切り離された場所だな此処は。物理的に禁欲生活を強いられてるな」

「それが此処の女性たちは逞しくてね。僅かな変化でも小さな子どものように喜び、楽しむんだ。街の女性にはない感覚だよ」

人の幸せの定義なんぞ人それぞれなので隔離されていてもその人がそれで幸せならば構わない。
変に手を貸せばややこしい事になるからな。こういう退屈そうな環境でもここに住む人々にとっては楽しいものなのだろう。
自分の価値観を規準にして他者を不幸な人物として認定するのは極めて迷惑な考えだと思う。

「さて、その俗世から切り離された女性の園に行く訳なのだが・・・」

ジュリオが申し訳なさそうに俺を見る。
あーはいはい、あれだろう?男の俺は入っちゃ駄目なんだろう?
ルイズやテファは一応ロマリア公認聖女だし、真琴は明らかに汚れない乙女だ。
シエスタは・・・分からん。この子は果たして修道院に入ってもいいのであろうか?
ジュリオは此処に何度か来ている以上特別なんだろう。

「まあ、少しの間だから待っててくれよ。それじゃあ、行こうルイズ、ティファニア。君らが来てくれれば彼女達は喜ぶだろう」

「え、あ、うん・・・」

「じゃあ、タツヤ。私は行って来るわ」

「お兄ちゃん、行ってきます!」

「タツヤさん、ミス・ヴァリエールは私が見張っておきます」

「頼むよシエスタ・・・」

こういうときのシエスタは本当に頼りになる。
ルイズを止めれるのは現状このメイドしかいないのだ。
さて、俺は愛天馬ことテンマちゃんと取り残されたわけだ。

「岩山に囲まれた孤島の修道院か。セント・マルガリタ修道院ねぇ・・・」

「残念でしたねェ?『ドキッ★シスターだらけの花園』に入れなくて」

喋る刀が愉快そうに喋りかけてきた。何そのB級エロゲ臭プンプンのタイトル。

『相棒、今こそ滾る情熱を訓練に向けるときだぜ。とりあえずそこら辺の岩山を素手で登れ』

喋る鞘は相変わらず修行の鬼である。っていうか素手だと!?
ちょっと待て、何故既に俺の足は岩山に向かっているのだ!?

『言ってなかったか?俺は吸い込んだ魔力の分だけ持ち主の身体を動かす事が出来るんだぜ』

「出来るんだぜじゃねぇよ!?勝手に人の身体を動かすなっ!?」

『この試練を乗り越えたその時、相棒、お前は更なる高みにいけるぞ』

「行かんでいいから足を止めろこの呪いアイテム!!」

だが抵抗空しく俺はそびえ立つ岩山を素手のみで登るはめになったのだ。


達也が最早一般人がやるべきではない訓練を始めたその頃、ジュリオ達は修道院の中庭にいた。
修道院の様子はいきなり多人数で来たので随分と騒がしいとルイズは感じた。
中庭は流石に狭く、ジュリオが乗っていた風竜一匹でいっぱいになりそうな大きさだった。
宿舎と思われる建物から、年老いた修道院長がやって来て、客を迎えた。

「お久しぶりです、シスター」

ジュリオは笑みを浮かべてぺこりと頭を下げた。
修道院長もジュリオに頭を下げて、困惑したような顔でルイズたちを見た。

「助祭枢機卿どの・・・おいでになって早々、こう申し上げるのはなんですが、当院は外国の客人を歓迎するようなつくりではありませんが?」

ロマリア宗教庁でのジュリオの肩書きは助祭枢機卿だが、ヴィットーリオがいなくなった以上どうなるかは分からなかった。
ジュリオを良く思わない宗教庁の者も少なくない。それなりの仕事はしてきたつもりなのだが。

「ロマリアの神官として立ち寄らせていただきました。それに彼女達にこの施設の紹介もしておきたいと思いましたので・・・。先の戦争の『二人の聖女』のルイズ嬢とティファニア嬢と彼女らの従者です」

ジュリオがそう言うと老修道院長は恭しく頭を下げた。
ルイズ達は戸惑ったが、修道院長が頭を下げたのを見て真っ先に頭を下げた真琴に気付いて慌てて頭を下げた。
真琴としてはお辞儀されたのでし返しただけである。

「助祭枢機卿や聖女様のような始祖に近き尊き皆様を迎え入れるには、この場はいささか不如意に過ぎると存じます。ここは俗世から切り離された、身寄り無き少女達が神と始祖に近づくための修行場ですから・・・」

「別にそこまで恐縮されなくとも結構ですわ、シスター」

ルイズが声に恐怖の感情が混じる修道院長を宥めるように言った。
ジュリオは幾度と無くこの修道院に足を運んでいて更にこの度の戦争はガリアの住民として何かある訪問と思わせるには十分な条件が揃っているのだ。
だがその心配はおそらく杞憂であるとルイズは思った。

「亡き教皇聖下は、貴女の献身と信仰に対し、深い感謝と友情を感じていらっしゃいました。これは亡き教皇からのお気持ちでございます」

ジュリオは懐から皮袋を取り出し、修道院長に手渡した。
中身はキラキラ光る金貨がつまっていた。
修道院長は震えながら聖具の印を切り、それを受け取った。
彼女の目からは涙が零れ落ちていた。

「亡き聖下には本当に良くして頂きました。此度の戦争で命を落としたと聞いたときは耳を疑いました・・・」

「貴女の行為は本当に尊く賞賛されるべき行為であると思います。これは宗教庁の誰もが評価していることです。支援のほうはご心配なさらずに。この先もロマリアはあなた方の夢と未来を守る方針を堅持いたします」

そんな時、ジュリオを見つけた修道院に住む少女達が宿舎から飛び出してきた。
皆ジュリオにとって妹のような存在である。
ジュリオ自身も孤児院出身であり、同じような境遇の彼女達の様子は気になっていたのだ。

「竜のお兄さま!今日はどんなお話をしてくださるの?」

「その方々はだあれ?」

「まさかお兄さまの恋人?」

「違う違う。この人たちは僕の恋人じゃないよ。お話は後でしてあげるからね。それよりジョゼットはどこだい?」

どうやらジュリオの恋人はジョゼットというらしい。
好奇の視線を受け流しつつ、ルイズは少女達におされ気味になっているジュリオを見た。
少女達は顔を見合わせ、ニヤニヤ顔で言った。

「ご自分でお探しになられてはどうです?でも最近お兄さまが来ないから不機嫌でしたわ」

「それは怖い。彼女に謝らなくてはいけないな。それじゃ皆、女子同士の交流を楽しんでくれ。僕は修道院長とジョゼットと三人で話すことがあるから」

「え!?置いてきぼりなの!?」

「外で待ってる奴よりマシだろ?これも聖女の仕事と思って頑張ってくれ」

手をひらひらと振りながらジュリオは修道院長と共に礼拝堂の方へ向かっていく。
ほかに探す所などこんな小さな土地にはない。ジュリオはそれを知っていた。
置き去りにされたルイズは溜息を付き、目を輝かせる少女達と何を話すかを考えるのであった。


ジュリオは静かに礼拝堂の扉を開けた。
修道院長が気を利かせてくれたのか、彼女は外で待つと言ってくれた。
そのことに心の中で感謝をしつつ、ジュリオは始祖像の前で膝をつき祈りを捧げる銀髪の少女に視線を向けた。
少女はジュリオに気付いた様子もなく熱心に祈り続けている。フードの横からは少女の銀髪が零れ落ちている。
ジュリオは彼女の後姿を見ながら思う。
もし、あの戦争が計画通りになっていたら―――
それは即ち教皇は死なず、ガリアのジョゼフが死に、タバサが新たなガリアの王として即位するシナリオ。
聖地を奪還する為のシナリオ・・・・・・。
その計画通りに進めば自分は気軽に彼女に声を掛けることになり、彼女を利用する為に動いていたのだろう。
本心を殺し、演者として接すれば彼女との交流など簡単なものであった。
だが、今は違う、違うのだ。
この礼拝堂に『気持ち』をあげたときは助祭枢機卿の顔でいれたから簡単だった。
いつもの通りの顔であったし、苦ではなかった。
しかし、今、自分が彼女に伝えようとしているのは彼女を政治的に利用する謀略上の話ではなく、ましてやお堅い説法でもない。
掌に汗が滲んでいく。緊張しているのか、俺は?
全く、あの男め、此方の事情も考えず好き勝手言いやがって。
考えてみればこれは物凄く大変な事だろうが。掻っ攫えとかお前・・・。

「ジョゼット」

上ずりそうな声にならないようにジュリオは冷静に少女の名を呼んだ。
少女はそこでようやくジュリオの存在に気付いたように振り向いた。
あ、何か怒ってる。ここはとぼけよう!

「おいおい、どうした?何を怒ってるんだ?」

「怒るだなんて。まあ、前は二週に一度はいらしてくださったのに先月は全然いらして下さらなかったからどうしたのかなーと心配はしていました」

「すまない、色々忙しくてね」

「わかっています。ですが今までの習慣を乱されると調子が狂うのです。そうなると面白くありませんわ」

そこで不機嫌だった顔は満面の笑みに変わり、ジョゼットはジュリオに抱きついた。

「竜のお兄さま!」

「お、怒っていたんじゃないのかい?」

「ええ、怒っていましたわ。でも今はそんなことどうでもよくなってしまったの。だってわたしは、お兄さまが大好きなんだもの!」

最初は計画の駒としてしか見ていなかった少女はいつしか自分の中で変わっていった。
情が移ってしまったのかもしれない。だが、それでも今はもういい。
自分は彼女を騙しながら生きてきた。達也は自分を裁く気など毛頭ないだろう。
ならば、彼女に今までの嘘を――

「今日はどんな話をしてくださるの?」

無邪気に微笑むジョゼットを見てジュリオは少し動揺した。
おかしいな。今までこんな事はなかったのに。
緊張じゃない、そうか、俺は怯えているんだ。
今まで誤魔化しで生きてきた分、想いを伝えるのが怖いのだ。

「ジョゼット。今日は君に・・・とても・・・とても大事な話をしに来たんだ」

自分は神官、彼女は修道女。
教義には反するが、世の神官達はこっそり恋愛を謳歌しているしそれで罰があたったという事も皆無だ。

「大事な話・・・ですか?」

今、自分はどんな顔をしているだろうか?
少なくとも冷静ではないだろう。皮肉めいた微笑など浮かべる余裕など今の自分にはない。

「うん。ジョゼット、聞いてくれ」

腹は括った。
既にヴィットーリオという信じるべき道標がいない以上、これから先は自分は手探りで道を模索しなければならない。
だから、だから・・・・・・!!
聖下、貴方の想いに甘えさせていただきます・・・っ!


ジュリオはジョゼットの右手を取って意を決したように言った。

「僕と一緒に暮らさないか、ジョゼット」

静かな礼拝堂の中でジュリオの声だけが響き渡る。
ジュリオの前には面食らった様子のジョゼットがいた。
そして程なく、彼女の瞳からは一筋の雫が零れるのであった。

礼拝堂の外では、修道院長が此処に来るまでにジュリオに渡された書状を眺めていた。
その書状にはこの修道院の修道女であるジョゼットの身柄をロマリア宗教庁助祭枢機卿、ジュリオ・チェザーレ預かりとする旨の内容が書かれており、亡き教皇、ヴィットーリオの直筆のサインと宗教庁の認可の印も刻まれていた。
その文面を見たとき修道院長は改めて亡き教皇に敬意を払った。

その書面はまさしくヴィットーリオの遺言のようなものであった。
自分亡き後、彼の使い魔であるジュリオには自由に生きてもらいたいと若き教皇は考えていた。
思ったよりそれは速く訪れてしまったが、召喚して以降、大変な仕事を任せてしまった事にヴィットーリオは負い目を感じていたのだ。
更に彼は使い魔であるジュリオが計画に必要な人物、ジョゼットに惹かれているのを感じていた。
使い魔と主は一心同体。使い魔の感情が時たま主に流れてくる事もあるのだ。
故にヴィットーリオは聖戦前にこの書状をしたため、己の万が一の際においての遺言とした。
本当は聖戦が終結した後にカッコよく渡すつもりであったが・・・。
現実は彼が死亡し、その後遺品整理の際に書状が見つかった。
当然このことはジュリオの耳にも入っていた。
本来、異国にいる修道女を個人預かりする事は憚られることなのだが、これは教皇の遺言として処理された為、認められることになった。
後はジュリオが口説いてその女性を連れて帰ることが出来るかどうかであった。
ジョゼットがジュリオに付いて行く選択をした場合、ロマリアも誤魔化す準備はある。

ジュリオはその地位のせいで敵も少なからずいるが、彼の働きを評価する味方もいるのだ。

「本当に・・・惜しい方を亡くしてしまいました・・・」

修道院長は目を閉じて静かに呟いた。
遠くから修道女達の笑い声が聞こえてくる。女性同士盛り上がっているのだろうか。
彼女達が幸せなら、それは自分の幸せである。
後は礼拝堂の中の二人の未来を待つだけである。


ジュリオが始祖像の前で一世一代の告白をしているその時、達也は既に生傷だらけだった。
岩山に取り付いたはいいが転げ落ちる事数回、転落しかける事数十回・・・。
デルフリンガーの虐めとしか思えない訓練は登りきるまで続く。
もう手はボロボロで感覚はなくなってきた。
実際右手の生爪はほとんど剥がれそうだ。
足場になりそうな所を必死で探し、ロッククライミングに勤しむ達也の限界は近い。

「おい、無機物よ・・・」

『何だね相棒』

「一応聞くけどよ・・・のぼった後はどうすんだよ・・・」

『馬鹿かお前。自力で降りるに決まってんだろ。登頂しても下山するまでが山登りなんだぜ?』

思ったとおりの返答だがそれは死刑宣告である。
しかし途中で戻ろうとしてもこの馬鹿無機物が俺の身体を操り戻らせようとしない。
結局上るしかないのだ。全く、何でこんなファイト一発な修行をしなければならんのだ!?
おのれ・・・!今頃ルイズ達は同姓集まる場で弁当でも食べながら談笑してるんだろうな畜生!
痛む身体に鞭打ちながら慎重に岩山を這い登っていく俺だが、やがて這い上がりの終わりの時が来た。

「おお・・・」

岩山の頂上から見えたのは見渡す限りの海。
日の光に照らされてキラキラ光る大海原に心奪われる安息の時は俺には無い。

『んじゃ、降りようか』

「生物には休息というものが必要だとは思わんか?」

テメエは俺に背負われてるだけじゃねえか!?

『そんじゃ五分休憩するか』

頂上の尖った岩にしがみ付いて俺はようやく休息の時を迎えた。
それにしてもこの辺は本当に岩山だらけで他は何も無い。
魔物がいるんじゃないかと思ったがそんな様子はあまり無いと喋る鞘は言った。
その時、俺が転落した場合助ける為に帯同しているテンマちゃんが、何かに気付き、俺の服を軽く引っ張った。

「何だよ・・・?ん?」

俺がしがみ付いている岩山の少し左下の足場にそれはあった。
灰色で大き目の球体はそこにぽつんと置かれていた。

「・・・タマゴ?」

俺は慎重にそのタマゴの方に近づいた。
魔物の気配は無い。

「なあ、無機物。このタマゴみたいなのは何のタマゴだ?」

『ん?こりゃあ・・・』

見たところ結構大きいタマゴだ。
ダチョウとまでは行かないが鶏のそれを凌駕している。
下手に触ると割るかもしれないので触れはしない。
だが、タマゴらしきものは俺が触れてもいないのに突然ヒビが入った。

「ぬおっ!?見ていただけなのにヒビが入った!?もしかして俺は超能力者かなにかかー!?」

『阿呆。普通に孵化が始まっただけだろうよ』

「言ってみただけだから恥ずかしくもなんとも無いけどな」

『それより相棒。早く離れた方がいいと思うぞ』

「どうして?」

『あ、すまん。もう遅いわ』

「は?」

パリンっと何かが割れる音がしたから振り向いた。

「・・・え?」

「・・・・・・・・・」

『あっちゃ~・・・遅かったか・・・相棒、その卵は『ハーピー』のタマゴだったんだよ』

俺をつぶらな大きな瞳で見つめる上半身は完全に裸だが、下半身は羽毛に包まれ、手があるべき場所は小さな翼が生えた幼女・・・。
種族名『ハーピー』の赤ん坊が一番初めに見たものは俺である。

「なあ、デルフよ」

『なんだね?』

「ハーピーに刷り込み現象は当てはまるのかい?」

『ばっちり当てはまるぜ。良かったな。『お父さん』』

「身に覚えが在りませぬ!!?」

因幡達也、18歳。
未だ童貞の少年の叫びは岩山の上で空しく響くのだった。



【続く】



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