これまでのあらすじ【空中編】ロイヤルホワイト・・・じゃなかった、アンリエッタ女王を救出する為についに魔王ジョゼフの飛行船に辿りついた我らが聖女戦隊ハルケレンジャー!だが、狡猾にもジョゼフは自分の力で戦おうとせず命無き配下を使いハルケレンジャーと愉快な仲間たちを苦しめる!そこに薔薇と共に現れたのは謎の変態仮面・・・じゃなかった謎の仮面の貴公子(笑)ナルシスト仮面!果たしてナルシスト仮面の登場によってハルケレンジャー達は勝利の鍵を掴む事が出来るのか!そして囚われのアンリエッタとアニエスの運命は!?あ、ジュリオさん、茶番とか言わないでもう少し付き合ってください。ガーゴイルとの空中戦を展開する聖堂騎士達と水精霊騎士達は斬っても撃っても再生するガーゴイルに手を焼いていた。「なんだコイツは!?気持ち悪いぞ!」「どうやら水属性の魔法で動いてるようだ。この再生能力は尋常じゃない」「いや、それはなんとなく分かるんだがな、そのだね」聖堂騎士が炎の魔法でガーゴイルの上半身を吹き飛ばすと、ボゴッボゴッと音を立てながら下半身から新たな上半身が出てくる。再生能力を持っているのだ、それは当たり前の光景なのだが再生した上半身は何故かテッカテカであり、更に粘液のような液体も付着していた。「・・・ご覧の通り気持ちが悪い」そう言いながら今度はガーゴイルの下半身の一部を消し飛ばす聖堂騎士は嫌そうな表情を浮かべている。「全身もろとも消し飛ばせば良いんじゃないか?」そう言いつつ水精霊騎士隊員は風の魔法で粉微塵になるまでガーゴイルを切り裂いていく。ガーゴイルたちの動きは妙に単調な為か戦いやすいのだが・・・・・・。「む・・・再生の方が速いか」しかしながらガーゴイルの再生がべらぼうに速い為中々押し切る事が出来ない。あれだ、普通の生物が細胞を分裂させる時一個が二個になるのに対してこいつ等は一個が二百五十六個になってるんじゃないの?と疑問に思えるほどの再生能力だ。いや、生物じゃないんだけどね。しかもべらぼうな再生能力は脅威だけどかなり弱いし。まるで戦う為の脳が用意されていないか、ただの突撃脳と思えるほどの弱さである。「広範囲を攻撃する魔法を唱える暇がないのがもどかしいな」「全くだな、正にこのような敵を蝿のような存在と言うんだろうね」滅茶苦茶弱いが不死身のガーゴイルを相手にする野郎どもを囮にして、ルイズ・・・じゃなかったトリステインピンクはアンリエッタ奪還の機を窺っていた。勢い勇んでトリステインに戻って何か策を練っていたらしいという事は知っていたが、あのお方は一体何をやろうとしていたのだろうか?囚われの姫なんて彼女には似合いそうに無い役割である。「まあ、陛下を出し抜き拘束するほどの使い手というわけね・・・だけど!」トリステインピンクは風竜の背の上に立ち、杖をジョゼフに向けていた。彼女の動きに呼応して、タバサ・・・じゃない、ガリアブルーも冷たいながらも熱い怒りを胸にして、杖をゆっくりとジョゼフに向ける。その動きを見てジョゼフは鼻を鳴らす。「その杖で果たすか?父の復讐を。せいぜいよく狙うのだな。おれの胸はここだ。おそらくお前の父が生きていれば一発でおれの胸を穿つだろうな。アイツは憎らしいほど優秀だったが、貴様は如何かな?」「その口で父を語らないで。実に不愉快」「そうか?おれは愉快だよ!地獄を見る前にこのような見世物を見ることが出来たのだからな!娘の道化のような姿にさぞ父も嘆くだろうな。いや、アイツは逆に大笑いするかもなァ!?」「語るなと・・・言った!!」感情的な声でガリアブルーは自らの仮面を剥ぎ取った。「アハハハハハハ!!滑稽だなシャルロット!お友達とのお遊びはもう終わりかな?俺が言うのもなんだが友人付き合いは考えるべきだな!」「ジョゼフ・・・・・・ッ!!!」ガリアブルー・・・もといタバサの瞳には怒りの炎が上がっていた。そして怒りに身を任せ、彼女は氷の矢を複数ジョゼフに向けて発射した。全てジョゼフの急所目掛けての攻撃だったが、その攻撃は全て当たらなかった。何故ならその場所にはジョゼフはいなかったからである。何故だ?自分はちゃんとジョゼフの姿を見ながら魔法を発射した筈だ。あの男に魔法が命中する直前まで、私ははっきりと見ていたはずじゃないか。なのに何故あの男は悠然と余裕たっぷりに此方を眺めているんだ?「欠伸が出るほどの遅さだな、シャルロット」あの男はそう言って自分を嘲笑する。いつもは冷静なタバサの頭が熱くなりかけたその時だった。「恥ずかしいほど見え透いた挑発に引っかかるんじゃないわよ、タバサ」親友の声が、自分の熱を冷ましてくれた。「私からすれば親戚付き合いも考えた方が良いと思うから!」「そう、血の繋がりよりも強い絆は確かにある」飛竜の上で薔薇を掲げながら言うのはギ・・・じゃなくてナルシスト仮面である。恥も外聞も捨てたかのような開き直りぶりが実に痛々しい。実際彼の傍らにいるジュリオの氷のような視線が痛すぎる。だが、謎のナルシスト仮面は気にしない。気にすると泣くから。「それは愛で結ばれし絆!彼女や彼らは血のみでは得がたい宝を既に得ている。その絆がある限りタバサは何度でも立ち上がることが出来る!僕たちも誰かのためにと言うお前からすれば反吐が出るような理由で戦える!青臭いが尊い宝、貴様にはあるまいガリア王!」「知った風な口をきくな小僧。ああ、確かに反吐が出るほど青臭いよ貴様らの安い友情劇は。愛だと?絆だと?そんなことで燃え上がれるのは貴様らのような現実を知らぬ小僧どもだ。王にしてもそこにいる全ての人民から祝福を受けた温室育ちの姫君とは違う。おれは蔑まれ比較され疎まれてもなお此処までやって来たのだ。王とはどす黒いまでの孤独に耐えうる器ではないと勤まらんのよ。そこに愛など絆など入る余地は無いのだ。シャルロット、貴様の父をおれが殺したのはそう言う理由もあるからだ。やつは優秀だったが最悪なまでに甘かった。人を信じすぎた。どのみち奴が王になっても騙されいいように使われ流れに簡単に踊らされる民衆に性格が良いともてはやされながら王としては何も出来ぬまま腐っていったのさ。祝福を万人から受ける王など所詮そのようなものよ!さて、シャルロット。愚痴のようになってしまったが俺はこのガリアを強い国にした。ロマリアなどに屈さぬ強い国にな。だが貴様はどうなのだ?おれを殺した後、貴様に待つのは祝福であろうが、所詮ロマリアの操り人形でしかない貴様に王が務まるか?務まらんよなァ?お前が玉座に座るという事はこの国をロマリアに売るという事と同義だからなァ?おお、なんということだろう。貴様の父も愛したガリアがロマリアの腐れ坊主たちの傘下になるのだ。ガリア史に残る愚行だよこれは。おれなんぞよりよっぽど愚行ではないかね?」「何を言っているのですか!貴方はこの世界を地獄にすると言っていたではないですか!」「そう、俺はこの世界を等しく地獄にするのだ。皆好きだろう?平等というやつは。貴族も神官も平民も男も女も地上のありとあらゆるものも全て地獄に叩き落す。誰もが泣き叫ぶ世界を俺は作るのだ」「それこそ反吐が出る思想と知りなさい!」「少なくとも愛や絆などというもので飾り立てている貴様らよりはおれの方がわかりやすいと思うがね」ジョゼフは吐き捨てるように言ったあと、誰に向けるわけでもないように言った。「おれでもな、昔はシャルルと共により良い国を作っていければと童心ながら思っていたよ。だがその考えはあまりに若すぎた。人間というのはどちらか白黒付けんと気が済まぬらしい。二人で共になど誰も許しはしてくれなかった。シャルロット、貴様は知らんであろう。王座継承の際の醜い派閥争いを。ガリアではよくあることらしいが、あの争いで何人、何十人の人間が死ぬことになった。それを諌める為に我が父が王位をおれに継承しても鎮圧はすぐ訪れなかった。理想はシャルルと共にガリアを強大で豊かな国にすることだったが、現実はシャルルを取り巻く蝿どもと争う羽目になっていた。シャルロット、お前は知るまい。ぬくぬくと庇護下で幸せに暮らしていたのだからな。お前は知るまい。あのイザベラでさえシャルルが死ぬ前は命を普通に狙われて、幾度も誘拐紛いの行為をされた事を。奴の侍女が幾度も奴の目の前で殺されていた事も貴様は知るまい。知らぬが故に貴様はそうやって自らが一番不幸のような顔をしているのだろう?おれは長いこと泣いていない。このような環境に身をおいていれば泣く事も叶わぬと諦めかけたこともあった。しかしおれは涙を流したいのだ。人間として涙を流したいのだ。だが、泣けぬ。心が当に死んでいるからだとよ。この火石を投じればウン十万の命が塵芥になると思っても最早何も感じぬ。だが、その地獄の光景を見れば何か思うこともあるかも知れぬだろう?」タバサ達はジョゼフの言葉に耳を疑った。この男は自分が泣きたいが為に今までこのような真似をやっていたのか?それが行動原理としたら・・・なんて自分勝手なんだ!そんな考えの為に・・・!!そんな考えの為に・・・!「そんな貴方の感情的理由で父も母もあのような目にあったと言うの・・・?」「そんな理由で私はアンタに命を狙われていた訳?」「そんな単純な理由で私はエルフとかに酷い目にあわされた訳?」「そんな理由でこの男は世界を焼こうと言うのですよ・・・」「至極単純な理由さ。面白そうだから、感情が震えそうだから・・・それがおれの行動理念だ」「「「「納得できるか!!」」」」「納得せずとも良い。おれを理解する事など貴様らには不可能だからな」ジョゼフはもう笑っていなかった。これまでのあらすじ【地上編】たつや は こんらん している!おめでとう! まことは まほうつかい に なっていたぞ!シエスタは ひさびさの でばん に ワクワク している!とにかく落ち着こう。何事も落ち着いて状況を整理すれば事態は好転するのだ。「落ち着くには釣りが一番だと思わんか?」「戦場の空で釣りをしないでくださいよ、達也君」喋る刀が冷静に俺に突っ込む。「お兄ちゃん、釣れますか?」可愛らしく小首をかしげて俺に尋ねる真琴は実に空気の読める優秀な妹である。色々あったあとにこいつを見ると俺のガラスの十代的なハートは防弾ガラスに進化しそうな勢いで癒される。彼女が持つ喋る杖・・・オルエニール通称『オルちゃん』という杖は真琴の魔法の指南役を自称している。それを聞いた時俺は、俺の戦いの指南役であった喋る剣の事を思い出し、しんみりしそうになったが、真琴の前でそんな空気は出す訳には行かない。滲み出しそうな感情を抑えて、俺はシエスタに聞いた。「ウチの妹は何か魔法でも使えるのかよ?」「は、はい・・・一応、一つ覚えたみたいです。見ますか?」「見ますかって・・・危険だろうよ」「甘く見ないで下さい兄様。私が初めから危険な魔法を教えるとでも思いましたか?まずは段階を踏んでから攻撃魔法やらは覚えさせます。特に真琴はこの世界の人間ではない為、術式が特殊で特に慎重にならなければなりません。さあ、真琴ちゃん、お兄さんに貴女の覚えた魔法を見せてあげましょう」「はーい!」そう言って杖を掲げる我が妹。うーむ、術式が特殊って何なんだろう?「テルミー・テルミー・テルテルミー・ズッコシ・バッコシ・イエスアイドゥ!つらいのつらいのとんでけー!」そう言って俺に杖を向ける妹。杖の先から緑色の光が現れ、俺を包んでいく。気のせいだろうか、そこはかとなく意欲が沸いてきた気がする。「どう?お兄ちゃん?」「どうと言われてもな」おかしいな?といった感じに首を捻る俺の妹。「兄様。なんだか妙に意欲が沸いてはいませんか?」「ん?おお、そうだな。やる気が少し上がったような気がする」「ふむ、それではとりあえず成功のようですね」「何今の魔法?なんか意味あるの?」「今の魔法は『意欲向上』の魔法です。まだ真琴ちゃんはこの魔法を覚えたてなので効果は薄めですが、それでも若干の気力は向上しているはずなのです。もう少し錬度を上げれば、無気力な人間が途端にエネルギッシュな人間に変貌できるほどの魔法となります。メイジに分かりやすく言えば魔力を回復する魔法ですね」つまりこの杖は何故かHP回復より先に、MP回復の魔法を真琴に覚えさせたと言うのだ。カウンセリングいらずの魔法だが、何かずれている。というかさっきの呪文は何だ。「魔法を発動する為の始動呪文ですよ。真琴ちゃんは特殊な存在なので、ハルケギニアのメイジが通常使う魔法の使い方では魔法を発動させるのが難しいんです。なのでスムーズに魔法を使うため、真琴ちゃんは魔法発動の前に特殊な始動呪文を唱えなければいけないんですよ」「凄いんですよ、この魔法。何せエレオノール様の眉間の皺が無くなったんですから」「彼女の妹のカトレア嬢の苛々も解消できました」「・・・エレオノールさんはともかく、カトレアさんの名前が何故出てくるんだ?」「タツヤさんたちがお出かけになった後にあの・・・ミス・ヴァリエールの母君とカトレア様がいらっしゃいまして・・・」「・・・え?」ちょっと待て。来たのかあの人たちが!?ワルドー!逃げてー!超逃げてー!!俺の考えを読んだのか、シエスタが一枚の手紙を取り出した。・・・何故か赤く染まっている気がするのは気のせいだろうか?俺はそれを無言で受け取り、中身を見た。『雇い主の領主様へ。げんきですか。わたしはいまストレスをためています。はたけでやさいをしゅうかくしました。かえったらたべてみてください。さいきんモグラやミミズが出てくる頻度が下がった気がするのは良いが、私の危機は現在物凄い勢いで上昇している。そう、見つかったのだ。よりにもよってラ・ヴァリエール公爵夫人にだ。私は今領内を必死に駆け回っている。このような時に領内のコミュニティを築いていて良かった。領内の住民は私を無償の好意で匿ってくれるのだ。こんなに嬉しい事はないだろう。だが、彼女の魔の手は確実に私に(手紙は此処で途切れている・・・)』ワ、ワルドー!?なんだ、何があったんだ!?「私はこれをカリーヌ様から預かったんですけど・・・」「手紙書く暇あったら逃げろよ・・・!!」「ところでタツヤさん・・・何かとんでもない状況に見えるんですけどここ・・・」俺たちの周りではガーゴイルと騎士たちの戦いが繰り広げられていた。先程の大爆発で地上の軍は動けず、艦隊も後退していた。味方をも巻き込んだ爆発にガリア軍も迂闊に動けない。そのガリアの総大将がいると思われるフネに肉薄する聖堂騎士と水精霊騎士たち。戦いは大詰めである。だが、いまだ混乱の渦中にある。ロマリア教皇ヴィットーリオは毒矢を受け弱っている。そしてガリア王は最早絶体絶命である。この戦争、もしかして共倒れ・・・もしかしたらトリステインも含めて大ダメージを受けるんじゃないの?シエスタの言うとおりとんでもない状況の真っ只中というのに何でしょう、妹いるだけでこの癒し空間。今すぐ紅茶をシエスタに頼みそうな勢いだが、そうも行かない。現に俺が提案した作戦(笑)でルイズ達は戦っている。作戦を提示した以上、俺も戦わなきゃな。その時、俺が握る釣竿に反応があった。うお!?マジで釣れんの?引きはそんなに強くはないのですぐにそのアイテムは俺の手に渡った。掌サイズのそのアイテムを見たら、俺には使えそうにないものでがっかりした。その後それと同じアイテムがどんどん釣れたので、俺はそのアイテムに詳しそうな奴にこのアイテムの処遇を任せようと思った。「綺麗な石だねー・・・」真琴がそのアイテムを見て素直な感想を言っていた。「こんなのどうするんですか兄様」喋る杖が俺に尋ねてくるが、それは俺が決める事ではない。「また碌なことになりそうにないわ・・・」喋る刀がそう呟く。俺もそう思うが、彼女を信じるしかあるまい。「で・・・タツヤさん・・・この仮面はなんですか?」黒仮面を手にしたシエスタが俺に恐る恐る尋ねる。俺はシエスタを見て爽やかにサムズアップするのだった。唱える魔法を全てかわされ疲労感だけが残る、とタバサたちは感じていた。ジョゼフは此方の魔法を意に介した様子はなくむしろ楽しむように避けていた。その様子が女たちの苛々を加速させる。ただ一人、攻撃手段を持たないティファニア・・・じゃない、アルビオングリーンは始祖の祈祷書を抱きしめ、戦争の行方をその目で見守っていた。皆が頑張っているのに自分は役に立てないのが悲しく、悔しい。守られるだけで本当にいいのであろうか。私も、私も誰かの役に立ちたい・・・!!虚無の魔法というのは必要に応じて覚えることが出来る。誰かの役に立ちたいと願う虚無の担い手のティファニアに始祖の祈祷書は輝きを持って答えた。しかし、人一倍優しい彼女に始祖が与えた虚無は『爆発』ではなかった。おおよそ戦いには使えぬと思えるその虚無の名。それはヴィットーリオが二番目に覚えた虚無と同じものであった。「・・・これじゃあ・・・みんなの力になれない・・・」涙声で呟くアルビオングリーン。いや、実際仮面の下では涙を流しているのだろう。己の無力感に彼女は情けなくなった。いけない、泣いてはいけない。まだ絶望には早すぎる。自分達はその絶望と戦っているんだ。一人此処で押し潰されたらそれこそ皆に迷惑がかかる。私たちは絶望に打ち勝たなければあの悪魔のような男には勝てないのだから!・・・何だか急に前向きになれたな?そう思って彼女が顔をあげると、一本の杖が彼女に向けられていた。その杖を握っていたのは、この戦場にいるはずのない少女だった。「え・・・?マ、マコトちゃん???」「泣かないでテファお姉ちゃん!女の子は笑顔が一番だってお兄ちゃんが言ってた!」「そういう事だ、テファ、いや、アルビオングリーン。何も今泣く必要はないぜ」「タツヤ・・・な、何でマコトちゃんが・・・」「色々事情がございまして・・・」申し訳なさそうに項垂れるテンマちゃんが印象的だが、それ以上に真琴の後ろに座っているメイド服の仮面の少女が気になる。「あ、あの・・・貴女は・・・?」「伝説のメイド、メイド・イン・ブラックです」「・・・・・・・」「・・・・・・・」「・・・・・・そ、そうなの・・・」「何ですか!?ようやく出た感想がそれですか!?いっそ笑ってもらえれば良かったのにこれで生殺しじゃないですか!」「シエスタお姉ちゃんカッコいいよ!」「痛い!純真な瞳が痛い!!うう・・・これも専用メイドの宿命・・・女シエスタ!タツヤさんのメイドとして精一杯メイドインブラックをさせていただきます!」「いや・・・もう嫌ならやらなくていいよ、無理しなくても・・・」「いいえ!こうなったら破れかぶれです!故郷のみんな、お姉ちゃんは元気ですよ!」「勧めといて何だが誰かこのメイドを止めて!?」その時、俺たちの耳に怒鳴り声が聞こえた。「「「「納得できるか!!!」」」」「いいえ!私は納得していますとも!せめて一縷の輝きでも輝きたいのです!」「落ち着けシエスタ!お前は戦争の混乱で精神が参ってるんだ!真琴、やりなさい」「はーい」「待ってください!私はいたって健康ですって!?」「お兄ちゃん、シエスタお姉ちゃんはこう言ってるけど?」「・・・分かったシエスタ。俺は君が輝くのを助けるよ」「・・・!有難う御座います、タツヤさん・・・!もう一生ついていきます!」「君は君の人生を歩むべき。さあ、主役は君だ!」「はい!」まあ、此処は特に危険はないし、大丈夫かな?それより・・・あれがガリアの総大将って訳か。威光があるかどうかなんぞ俺は知らんが、コイツが俺を狙っていたわけだな。後方にはアンリエッタとアニエスの姿が見える。迂闊にあのフネを攻撃したら彼女達にも危険があるのか。「・・・・・・あの・・・タツヤさん」「どうしたシエスタ?」「なんて言えばいいんでしょう?」「俺に聞くのかよ!?やっぱり君は主役にはなれない!」「一介の平民の私がこんな場所で演説とかどんだけ度胸がいると思ってるんですか!?」そう言うシエスタの身体は震えていた。俺はそれを見て彼女に言った。「シエスタ。ならば君に伝える事がある」「は、はい・・・?」「真琴を頼むよ」「・・・はい!」俺も大した人間じゃないのだ。彼女にそれ以上を望むのはやめにしよう。俺は出来る事しかやれないから出来ることをやるまで。風に乗ってあのジョゼフ王の声が聞こえる。「納得せずとも良い。おれを理解する事など貴様らには不可能だからな」当たり前だろそんなの。俺たちはお前じゃないんだから。そもそも自分が一番信用できない中でそんな自分を大好きといったダークエルフの女、そんな自分と馬鹿やってくれる友。自分を親友と認めた男、自分を家族と言った人たち。そして、異世界で俺を待つ人たち。その繋がりの中で俺は皆のことを信用し、知りたいと思うのだ。俺は一人ではどうしようも出来ない。この異世界でルイズとであったのを切欠に様々な人と出会うことになった。その中には悲しい別れもあったけど、それは仕方のないことだったんだ。孤独に耐えうる力は確かに必要なのかもしれないが、それは絆を否定する材料にはならないんじゃないの?俺たちの周りには聖堂騎士や水精霊騎士の護衛が飛び回っている。その中にはギムリの姿もあった。「タツヤ!いたのか・・・っておいそのお嬢さんたちは・・・!?」「ギムリ。護衛人数二人追加だ。いいな」「おい、タツヤお前は・・・」「お前が想像しているような華々しい事はしないぞ。死にたくないから」「ええー・・・正面突破しないのかよ」「するか阿呆!?」こっちは死ねんのにそんな馬鹿な突撃かますか!?俺はギムリに女勢を任せて、テンマちゃんを駆って空を疾走した。(続く)