某日
アニエスはとある人物について調査をしていた。
証言 平民A
「信じられない光景でした。何故って……。そりゃ、平民が貴族様相手に勝ってしまうんだもの。衝撃的でしたよ。ほんと。彼、あの少年がトリステインの英雄、サイトさんだって知ったときは、納得しましたね」
証言 貴族A
「私は幸運だった。ただ友人は……。ええ、彼に喧嘩を売ったのは私の友人でした。相手は平民ですから。こちらは貴族二人。なんら問題のないはずでした。ええ、単に私の友人は丁度彼女と喧嘩別れしたばかりで気が立っていたんです。その憂さ晴らしに街に出てたまたま彼とぶつかって喧嘩になってしまったんです」
証言 貴族B
「続きは私が話そう。喧嘩、アレが喧嘩といえるものか。私がいなければケガを負った貴族はどうなっていたものか。ああ、喧嘩の詳細だったか。そうだな。決着は一瞬だったよ。私が助けた貴族が杖を抜いて少年相手に『私を貴族と知っての行動か』と言い放ったのが間違いだったな。初めから問答無用で魔法を使ってしまえばよかったのだ」
証言 王宮貴族A
「彼には困ったものだ。最近平民の間で彼を支持する者が増えていると聞く。うん?ああ、平民が団結して貴族に歯向かう危険因子だと心配しているのかね。"それはない"なぜなら"彼が規格外だと全人類が認識"しているからな。君も感じただろ?動物的本能というか細胞が反応するあの感覚を」
証言 スクエアクラス貴族A
「……」
「喋ってもらわねばこちらが困る」
「……」
「はあ、タバサ殿。サイト殿をどう見ますか?」
「強くなっている。私たち貴族がクラスを上げるように彼もまた、強さが上がっている」
「実に興味深いお話になりそうです。失礼続きを」
「……、成長している。初めてルイズに呼び出された時よりもずっと強くなっている。そして、その成長は続いている。もし、もし彼がその気になれば一国の王を正面から堂々と攻めこんで殺害できるだろう」
「ちょ、ちょっとそれは言い過ぎかと」
「だけど、貴族は平民相手に油断している。成功する可能性は高い」
「つまり……」
「つまり、彼は、サイトは人間一人が振るう武力で国家を脅かせる程の力を持ちつつある」
サイト・ヒラガを調査する日々。
「平民の賢者」「トリステインの英雄」などの数々の称号を持つ。
軍隊の一つや二つを単身で壊滅する戦闘能力を持つ平民。
最も幸運なことは、我が国トリステインが彼を保有しているという事実。
そして、私の……
「あっるぇ~。アニエスさんじゃないっすか?」
「サイト殿。ここは王室ですが何故ここに?」
サイトに関わる資料をまとめ女王陛下に報告を。と思っていた矢先。
最も資料を見られたくない相手に出会ってしまった。
「何故ここにって、貴族を街で小突いたのを怒られちった。テヘ☆」
テヘ☆ではない。
小突いたというレベルじゃない。
死なないギリギリまで痛めつけておいてよく言う。
「貴族相手に相変わらずなようですな」
「基本貴族嫌いなんで。特に威張り散らしている男の貴族とかな~」
タバサ殿の言っていたこと。
それが私に、サイトの印象を変える。
隙だらけのようで隙がない。
気がする。
例えば、今私がサイトに斬りかかってもあっさりと私が殺される。
ゾクリと背筋に悪寒が走る。
「なぁに考えてるんすか~?アニエスさん?」
まるでこちらの考えを見透かしたかのような言葉。
心でも読めるかのような言動。
「い、いや、何も」
頬に生暖かい感触。
「な、何をする!」
「こいつぁ、嘘をついている味だ!」
頬を舐められた。
それは、いい。いや、良くないが。
いつの間に私に近づいたかわからなかった。
嘘を付いている味?
わけがわからない。
「な~んてね。いや、一度やってみたかっただけですよ。じゃ俺は学院に帰ります」
「……」
呆然と立ち尽くす私をおいてサイトは去っていった。
サイトに舐められた頬にそっと手を添える。
「サイトのバカ……」
サイトの行動はよくわからなかったが、ただやりたいことをやられたということだけわかった。
私は頬を触った手を唇に、そして、サイトの唾液がついた手を舐め取る。
「チュ、チュパ、しょっぱいな」
こ、これでは私が変態みたいではないか。
う、嘘の味がどうゆうものか知りたかっただけだ。
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最近バキを読み返しました。
短めです。すいません。
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