二枚の手紙を見つめる。
ルイズの一撃のダメージは一日では抜けなかった。
アホどもが不可侵条約を破って戦火に入る。
その対策のための貴重な時間をルイズは奪ったのだ。
アンリエッタの結婚式予定日まで約十日間の猶予しか無い。
手紙の主は一方は骨。もう一方はロングビル。
内容を要約すると。
骨の方は力を貸してちょ。
ロングビルはお友達が見つかった。どうすればいいのか教えてちょ。
ウェールズは生きていたのだ。
ち、ちっとも嬉しくなんて無いんだからねっ!
ティファニアの初めてのお友達は俺なんだ。俺なんだ。大切な事なので二回言いました。
骨の方の返事は簡単だ。"知っている"ことをそれっぽく書いて返せばいい。
問題は生きていても死んでいても迷惑なプリンスの方だ。
不可侵条約は破られるから今の内に引き取る。
しかし、問題は居場所。
学院はまずい。
トリステインいるだけでアルビオンは大義名分とかいって条約破るだろうし。
やっぱり、噂を真実にしてしまうか。
きっとゲルマニアなら何とかしてくれる。
とうわけで可及的速やかに行動した。
SIDE:サイト・ヒラガ
気分はジャッ●・バ●アー。忙しい一日になりそうだ。
「キュルケ、俺だー、結婚してくれー」
「一体何?」
昼、キュルケを見つけた俺はズンズンと早歩きで近づいて叫んでいた。
「なんにもいわずに一人素性の知れないアホを引きとって隠居させてほしい」
タバサの母親をしたようにキュルケに匿ってもらうことにした。
「で? それをしてなんになるわけ?」
「君を幸せにするよ」
真摯な俺の願いを聞いて赤くなるキュルケ。
アレ? この手の口説き文句なんて聞き飽きてるんじゃ?
「本気?」
「俺が嫌なら匿う人を紹介してやる。かなりいい男だ」
嘘じゃない。ただそいつに想い人がいるが黙っておこう。
「私になんの得があるの?」
「俺の信頼度と好感度が大分上がります」
キュルケは金持ちなので金銭では交渉不可能だ。キュルケは考え込む。
「俺にできることならなんでもやってもいいよ?」
「『平民の賢者』に借りを作っておくのも悪くないわね」
悪魔の笑顔を見て、今、後悔しました。
えーい、次じゃ次。
「いた。おーい、タバサ」
「なに?」
図書館にタバサはいた。
こいつを動かすのは簡単だ。
うまいものだ。
「君にお願いがあります」
「なに?」
「キュルケと共にアルビオンに潜入してとある人物を回収して欲しい」
「わかった」
Σ(゚Д゚;エーッ!
すんなりと聞き入れてくれた。
「どうしてか聞かないのか?」
「必要ない」
「なんで?」
「あなたの言う事に無駄なことはなかった」
いい意味で勘違いしてる。
「んじゃ、任務ってことで、帰ってきたらうまいものを報酬として払うよ」
「期待している」
お手紙作成。
ロングビルにはキュルケとタバサがいくので仲良くするようにと書いた。
隠密行動の取れるロングビルとタバサがいるので大丈夫そうだ。
アルビオンからゲルマニアに逃げてキュルケの家で匿ってもらえと概略を書き終えて一息ついた。
「ふぅ」
「何書いてるの?」
ルイズである。当然、ルイズの部屋で手紙は書いていたので気になるか。
「骨、じゃなかった。マザリーニに手紙の返答。覗いちゃいやよ?」
「覗かないわよ。全くいつの間にマザリーニ枢機卿と手紙のやり取り始めたのよ?」
「姫様の給料に紛れ込んでた。返事したらいつの間にかペンフレンドになってた」
ふーんと言ってルイズは興味を失ったのかベッドに座った。
んで、骨への返答。
骨の手紙の内容は愚痴っぽいことが多かったがしらん。
とりあえず、不可侵条約を破ってせめてくることと、タルブの高原あたりに陣をおくと書いて最後に俺ならそうして攻めると書いてやった。
追伸としてもし戦場で得体の知れないものをみたら味方にうまく嘘をついて士気を上げろと書いて終えた。
俺はすっかり忘れていた。
ルイズが結婚式の言葉を思いついていなければ穴という穴を犯すという約束を。