「飛んで火にいるなんとやら。何も知らずにわざわざ自分から罠にかかりに来てくれるなんて、ね。」
見える範囲に亀裂が無くなったためか、ようやくこちらのコントロールを受け付けるようになったヴィヴィオに内心で胸をなでおろしながらも、こちらの誘導に従って王の間に移動するなのはを見てあざ笑う。名状しがたいものが絡んだ一連の出来事については、流石にクアットロもかなり焦った。だが、管理局の連中がわざわざ危険を冒して、いちいち亀裂をふさいで回ってくれたおかげで、最初に考えた通り勝手に対応して勝手に疲弊したところを叩く、と言うやり方ができた事で、クアットロの機嫌もずいぶん良くなっていた。
「陛下。もうすぐ、あなたのご両親を奪った身の程知らずの愚かな女が参ります。そろそろご準備を。」
『パパとママを奪った……?』
「ええ。それはもう卑劣な手段で陛下のご両親を騙し、陥れ、その命を奪った極悪人です。」
機嫌良くヴィヴィオに嘘八百を並べ立てるクアットロ。「あれ」が出てきたときにゆりかご全体のコントロールを奪った、聖王オリヴィエの物と思われる人格は、目視でき、射線が通る範囲にいる「あれ」と亀裂がすべて消えた時点で引っ込んだ。つまり、クアットロを邪魔するものは何もないのである。
先ほどは、外部からの強制コントロールも効かなかったのだが、今はそちらの機能も復活している模様だ。つまり、何か間違いがあって、ヴィヴィオが正しい記憶を取り戻したところで、強制的に戦闘を継続させる事が出来る、と言う事である。あの甘い高町なのはの事だ。一時期とはいえ、自分達が保護して母親として接した子供を、本気で倒すことなどできはしないだろう。後は、そのまま消耗して自滅してくれるはずだ。
(あの時の屈辱、忘れた訳ではないのよ。)
ヴィヴィオが広報部に保護されるきっかけとなった、先日の事件。あの時撃ちこまれた、よく分からない原理のあれで何な砲撃。それによって晒した醜態についても、その結果受けたダメージについても、クアットロは片時も忘れた事は無い。しかも、妙な大男によって、彼らには毛ほどのダメージも与えられぬまま終わってしまい、姉のウーノに使えないものを見る目で蔑まれる羽目になったのだ。心身ともにボロボロにされた屈辱は、最低でも三倍にして返さねば気が済まない。
クアットロは気が付いていない。この期に及んで、高町なのはを甘く見ているという事実に。洗脳されたとはいえ、自分の意思で動いている今のヴィヴィオならまだしも、外部から強制コントロールされたヴィヴィオなど、なのはにとっては相手にもならない、と言う事に。
そして、スバルにできた洗脳解除方法を、なのはが出来ない道理が無い、という事実に。もっと高度な手段で解除する可能性すらある、と言う事に、クアットロは最後まで気がつかなかった。
「どうやら、待ち人が来たようだね。」
「はい。……あの。」
「何かな?」
「やはり、逃げるつもりは無いのですね?」
「ああ。一度彼女とは直接話をしたかったし、それに娘達を見捨てる気もない。」
スカリエッティの言葉に、彼の変化をしみじみと感じるウーノ。昔ならば、どれほど愛情を注いだ対象であったとしても、自身が危ないとなれば容赦なく切り捨てていたであろう。
「それで、フェイトお嬢様とお話ししたい事、とは?」
「大したことではないよ。」
大体のところはなんとなく分かっているが、それでもやはりドクターの口から聞きたかったウーノ。だが、返ってきた返事ははぐらかすものであった。
「少しだけ、待ちたまえ。彼女が来れば、すぐに分かる事だ。」
「……そうですね。」
ウーノの表情で何かを察したらしく、スカリエッティがそう言葉を継ぐ。スカリエッティの言葉に納得してはいないが、とりあえずどうしても今聞きたい、と言うほどの事でも無いため、とりあえずこの件については終わりにするウーノ。
「それと、おそらくお嬢様以外にもネズミが入り込んでいるようですが、いかがいたします?」
「好きにさせればいいさ。本当に重要なデータは私の頭の中にしかないし、それに、漁らせるために用意したものもあるしね。」
「分かりました。」
「もっとも、何もしないのも不審がらせるから、最低限の嫌がらせはしておいてくれたまえ。何人入ったとか、そう言った事は分かるかい?」
「残念ながら不明です。相当高度なステルス能力を持っているようでして。」
「まあ、ここに乗り込もうと言う人間が、そう簡単に尻尾をつかませるとは思っていなかったがね。それに、彼らの背後には、いまだに能力の全貌が不明なミスターXがついているからね。こちらが取れる対応策など、最初から無意味だと思っていいだろう。」
スカリエッティの言葉は、こちらの世界にいる人間すべてが頷かざるを得ないものだ。ミスターXこと竜岡優喜が直接関わっている管理局広報部は、スカリエッティですら理解できない技能を使いこなして暴れ回っている。優喜本人にしても、こちらの転移すら妨害してのける原理不明の技に加え、構造が分からない数々の驚異的な性能のアイテムを作り出すと言う、何重にも厄介な能力を持っている。
「もし、ここで管理局に投降したら、彼の作る特殊な道具類を、私の手で研究させてもらえないかな?」
「残念ながら、私達は広域指定犯罪者ですので、そこまで虫のいい展開は厳しいと思います。」
「本当に残念だよ。まあ、どう転んでも手に取ることすら難しいものである以上、縁がなかったとあきらめるしかないんだろうね。」
「無理なものを求めるより、他の方法で相手を上回る事を考えた方が、建設的ではありますね。」
「ああ。さて、そろそろ無駄話を終わりにした方がよさそうだ。」
モニターの中では、逃げも隠れもしないと言う風情のフェイトが、正面から堂々とラボに侵入していた。ステルスもなにも無しという、人によっては男らしいと表現してもいい態度だ。
(さて。君の意見、君の覚悟について聞かせてもらうよ、フェイト・テスタロッサ。)
さまざまな思惑を含みながらも、スカリエッティのラボに関しては、着々とラストシーンの幕開けが近付いていた。
「こっちから、気配がするね。」
もはや何十機破壊したかカウントするのも面倒なほどガジェットを仕留め、ようやく人の気配を拾い上げる。気配を感じた方向を見ると、相も変わらず無尽蔵とも思える数のガジェットが。体力も魔力もさほど消耗してはいないが、正直、いい加減面倒になってきた。こんな時は、この程度の事では擦り減らない己の心身が妙に恨めしい。
「全く、一体どこから資材を仕入れてるんだか……。」
RPGじゃあるまいし、機械兵器がこんなにわらわらわくのは勘弁してほしい。一体どんな生産システムを持っているのか、外にあれだけばら撒いてなお、内部にこれほどの数がいるのだから、ロストロギアと言うのは大したものだ。これがネットゲーム、それもドロップアイテムを自動的に回収するタイプの物なら、とっくの昔にアイテムの所持量が上限を超えているのではないか。思わずそんな益体も無い事を考えてしまうほど、今まで相手をしてきた数が多い。
これがまだゲームであるなら、仕留めた機械兵器のスクラップはこちらの行動を阻害しないし、わずかなりとも経験値は入るだろうし、アイテム類もそれなりにはたまるであろうから、全くの無駄と言う事は無い。だが、現実ではそうはいかない。破壊したガジェットの残骸は普通に道をふさぐし、相手が雑魚すぎて、なのは自身にとっては、何の経験にもならない。残骸には回収して役に立つようなものは無いし、あったとして漁る時間も惜しい。
ぶっちゃけた話、こいつらは出てくるだけ無駄なのだ。出現してすぐに蹴散らされ、しかもなのはの持つリソースは、時間以外は何一つ削られる事は無い。その時間と言ったところで、砲撃一発分と残骸で多少動きにくくなる分の、時間を稼がれたと言うにはあまりにもささやかな結果しかないのだ。ちりも積もれば、と言う程度には足止めを食らっているが、むしろ戦闘よりも探索に取られた時間の方が長い。
そして、なのはの不屈の精神は、この程度の中途半端な嫌がらせで嫌気がさすほど弱くは無い。ヴィヴィオの事を考えると気がせかないでもないが、何かされているのであればもう手遅れだろうし、そうでないのであれば、今から何かをされる可能性は低い。そもそも、ヴィヴィオの体には、詳細は不明ながら、最初からいろいろと細工が施されていた。その細工を足掛かりにすれば、この程度の時間があれば、大抵の事は出来てしまうだろう。
何しろ、いくら他にいろいろ手を取られる案件があったといえど、プレシアですら妙な細工が施されている、と言う以上の事ははっきりとは分からなかったのだ。さらわれた時点で、最悪の想定をもとに動くしかない。その事が分かっているが故に、気持ちとしてははらわたが煮えくりかえりそうになってはいるが、頭は非常にクールなままだ。傍から見ていれば不自然に見えるほど落ち着いている。
「それにしても、なんか嫌な気配が充満してるよ。」
『センサーには、これと言って特殊な反応はありませんが?』
「だと思うよ。この感じは、どちらかと言うと夜天の書の闇とか、ここに突入する前に仕留めた『あれ』とか、あの系統に近いから。」
『確かに、霊的な反応は、現状デバイスで検出するのは極めて難しいと言わざるをえません。』
「魔法とはシステムが違うし、ね。」
そう言いながら、周囲の気配を再確認する。嫌な感じ、とは言っても恨みつらみとは違う種類の物だ。言うなれば、後悔と不信。負の感情ではあるが、良くある悪霊のそれとはまた、別の物である。
「進行方向で、どんどん気配が濃くなっていく。」
『エネルギー反応、魔力反応ともに、進行方向で増大しています。』
「了解。とりあえず、この気配の正体を探るのは後回しにして、ちょっとたどって行ってみるよ。」
『了解しました。ご注意を。』
レイジングハートの言葉に頷き、出てくるガジェットを排除しながら、慎重に進んで行く。さらにそれなりの時間道なりに進み、嫌な気配の濃度がかなり高くなったあたりで、向こうに人の気配がある扉を発見した。
「見つけた。あの扉の向こうだね。」
『熱源反応を確認。サイズから言って、十代半ばから後半程度の女性の物だと考えられます。』
「気の大きさも、そんな感じ。気配の種類から、ほぼヴィヴィオに確定なのに、出てる気がいろいろとおかしいよ。明らかに、ヴィヴィオに何かしてる。」
『相手はプレシア殿と同等レベルのマッドサイエンティスト、その一味です。注意してください。』
「分かってる。頭はクールに、ハートは熱く、だよ。」
レイジングハートとざっと意見交換を終え、意を決して扉を開く。気の流れから言って、身体を痛めつけられていると言う雰囲気ではないが、逆になのはを敵と認識して襲いかかってきてもおかしくない。それぐらいの覚悟はできているし、クアットロのやり口から言って、そういう手段を好んで使ってきそうだ。
扉の向こうには、カリーナと同年代かやや上ぐらいに見える、左右の瞳の色が違う可憐な容姿の少女が、怒りと憎しみに満ちた表情で立っていた。
「ちょっと変だよね、バルディッシュ。」
『同意します。』
あまりにおかしな状況に、険しい顔で歩く速度を緩めるフェイト。あれだけ派手に正面から突入したのに、大した警備が無い。正面からの突入、という選択を選んだ時点で、自分から罠にかかりに行ったも同然なのだが、それなのに全く反応が無いのは腑に落ちない。何かおかしい。
「もしかして、ロッサとシャッハの方に行ってる?」
『可能性は否定できませんが、そうであれば多分連絡が入るかと思われます。』
「通信妨害は?」
『現状、お二人のデバイスで突き抜けることが可能な範囲です。』
バルディッシュの返答に、少しばかり考え込む。仮に通信が可能であったとしても、二人が修羅場中であれば連絡など取れはしないだろう。
「こっちから通信を入れるのって、明らかに藪蛇だよね?」
『同意します。』
つまるところ、フェイトにできる事は、ヴェロッサとシャッハの実力を信用する事だけである。とは言え、ヴェロッサは潜入調査のプロフェッショナルで、このジャンルに置いてはフェイトよりはるかに上だ。シャッハはさすがにそう言う技能の持ち合わせは無いが、剣術ならばフェイトを超える。二人もと、伊達に聖王教会幹部の腹心ではない。心配しなくても、どうとでもするだろう。
「バルディッシュ、施設のデータはどう?」
『通路の配置程度しかダウンロードできませんでした。流石に、私のツールでハッキングが出来るほど甘いセキュリティでは無いようです。』
「そっか。予想はしてたけど、そこまで甘くは無いか。」
『ですが、夜天の書ほど厳しい様子はありませんので、仮にブレイブソウルがいれば、全てのデータを丸裸にしてくれたと思われます。』
「あれは、いろんな意味で規格外だからね。」
『あれも、サーには言われたくないでしょう。』
などと、余裕だなとしか言いようがない会話をしながら、一見警戒などしていないようにずかずかと進んで行く。ある程度置くまで進んだところで、ぴたりと足を止め、思案顔で周りを見渡す。
『どうかなさいましたか?』
「かなり巧妙に隠されてるけど、多分罠が仕掛けられてる。」
『チェックします。……確認しました。テレポーターとバインドの複合トラップと推定されます。』
「そんなところだね。まあ、それ自体はいいとして。」
もう一度周囲を見渡す。この先は一本道。罠を回避する手段は無い。
「戻って他の道を探すか、罠をどうにかするか、いっそわざと引っかかるか。」
組み合わせ的にも配置的にも、あまりに目的があからさまなその罠に、返って対処に迷ってしまうフェイト。もうちょっと突っ込んで確認してみないと、トリガーが何かが分からないため、解除できるかどうかの判断も出来ない。
「バルディッシュ、トリガーとか調べられる?」
『解析します。……一定以上のサイズの物体が通過すると、生物、無生物問わず発動する模様です。かなり大きな動力からエネルギーを得ているため、条件を満たせば何度でも発動すると考えられます。』
「そっか。解除は?」
『この場からの解除は困難です。動力そのものを破壊するのが、最も確実な解除方法となります。サーが優喜殿と同じように、中和術か消去術を使えるのであれば、話は別ですが。』
「術自体は使えるけど、さすがにこんな大掛かりな術式を消す力量は無いよ。で、その動力は?」
『エネルギーラインの進行方向は、この奥となっている模様です。』
「まあ、当然と言えば当然だね。」
バルディッシュの予想された通りの回答に苦笑し、罠を解除する、と言う選択肢を切り捨てる。結論は決まったようなものではあるが、とりあえず他の選択肢もちゃんと検討しておくべきだろう。そう考え、迂回路についても確認する。
「バルディッシュ。さっきハッキングした通路のデータを見せて。」
『了解しました。』
バルディッシュが展開した地図を見て、さらに考え込むフェイト。地下につながっている道が、この一本しかないのだ。他の道は、それぞれ別々の大部屋につながっており、途中の分岐以降は交差する場所が一切ない。
「二人の気配が残って無いから、多分こっちには来てないと思う。バルディッシュ、想定されるロッサ達のルートは?」
『侵入経路から推測されるのは、この二本のルートです。』
「なるほど……。」
バルディッシュの示したルートを見て、自身がどう動くべきかをシミュレートする。結果としては、ここにトラップの情報を残しておき、どうにかしてここを突破するのが最適だと言う結論に至る。
「……OK、この罠がどういう挙動をするか、ちょっとチェックしてみよう。バルディッシュ。」
『了解しました。』
フェイトの呼びかけに応え、さまざまなサイズの実体弾を発射するバルディッシュ。大は竜司サイズから小は子猫ぐらいまで、さまざまなものが飛び出してはバインドに絡め取られどこかに運ばれて行く。タイムラグをいろいろ設定したが、タイミングに関係なく範囲内に入ったものを拘束して転移させる、という、正面突破を許してくれそうもない設定となっていた。
「……うん、結局そういう話にしかならないよね。」
『サー?』
「罠に引っ掛かろう。」
『危険です!』
「今更の話だよ。それに、バインドの強度を見た感じ、魔法なしでも破れそうだし。」
『ですが……。』
あまりに無鉄砲に見えるフェイトの言葉に、主の身の安全を最優先にする男前のデバイスはとことんまで渋ってみせる。
「虎穴に入らずんば、虎児を得ず。思い付く限りの準備をして、飛びこむしかないよ。」
『分かりました。ですが、向こうはかなり高濃度のAMFが展開されていると考えられます。かなりのリスクがあると考えられますが……。』
「承知のうえ。最悪、気功で無理やり引きちぎるよ。」
『了解しました。』
他に方法が無い、と言う事はバルディッシュも理解している。これ以上渋っても無意味だ。何しろ、他の部屋がエネルギー的に明らかにフェイクなのである。スカリエッティは、この先にいるとしか思えない。腹を決めたフェイトがあれこれ気休め的に準備をしている間、バルディッシュもひそかにいろいろと用意をしておく。出来る限りの事を済ませて飛び込んだ瞬間、なかなかにきわどい感じでバインドがフェイトの体に絡みつき、どこかに転送される。
『ようこそ。随分と慎重だったね。』
「分かってる罠に無鉄砲に飛びこむようじゃ、執務官失格だからね。」
『さすが敏腕執務官だね。』
モニター越しにかけられたスカリエッティの言葉をスルーし、周囲の状況を確認する。どうやら、どこかのラボらしい。専門外のフェイトには分からない機材が、規則正しく配置されている。
『さて、こんな迂遠なやり方でここに来てもらったのは、他でもない。ぜひとも、君に聞いてみたい事があってね。』
スカリエッティが、本題を切り出す。その言葉に、さすがにスカリエッティに意識を向けるフェイト。敵の首魁との対決も、そろそろ大詰めを迎える事になりそうだ。そう、気合を入れ直すフェイトであった。
「ヴィヴィオ、助けに来たよ。」
ある種の諦めとともに、それでも一縷の望みを託して声をかける。そのなのはの言葉に反応し、彼女を射殺さんばかりの視線で睨みつける少女。妙な気配に絡め取られている感じが、嫌な予感を増幅する。
その少女は、背丈だけで言うならなのはより上であった。全体的に華奢な身体つきながら、出るべきところはなのは達と変わらぬレベルで出ており、髪型の違いも相まって、ぱっと見た目には瞳と髪の色以外には、ヴィヴィオとの共通点はまるで無い。あどけなさが残るその顔立ちに、やや面影が残っているぐらいだろう。
だが、そんな共通点など無くても、なのはには一目で彼女がヴィヴィオだと分かった。気の流れを読むまでもない。一月に満たない親子関係だが、その分フェイトとともに、目一杯の愛情を注いできたのだ。間違える訳がない。たとえ、ヴィヴィオが悪い魔女によって、カエルや小鳥に変えられたとしても、なのは達なら見抜くだろう。
「遅くなって、ごめんね。」
「……なるほど、そういうやり方か……。」
なのはの呼びかけに、憎しみのこもった声で返事を返すヴィヴィオ。その言葉に、予想していたとはいえ、覚悟していた以上のショックを受ける。洗脳されているから仕方がないとはいえ、たった一カ月程度の絆では意味がないのか、などと思ってしまう。
洗脳と言うのは、言ってしまえば思考を誘導する技術だ。一般に思われている事とは違い、意志の強さや絆の強さ、頭の良し悪しなど、洗脳されないように抵抗するのには一切関係ない。知性による不信感や精神力すらも逆手にとって、自身の言う事を信じ込ませるのである。洗脳を防ぎたいのであれば、やり方を知ると言う以上の防衛策は無い。
ましてや今回の場合、元々聖王の記憶を移植するための素体として、クローニングの段階からいろいろと細工が施されている上、スカリエッティ一派はそういうやり方のスペシャリストでもある。直接記憶をいじるような設備もある以上、単なる未就学児童に、洗脳から身を守ることなど不可能だ。
しかも、ヴィヴィオは先ほど表に出てきた歴代聖王の記憶と人格の影響が残っており、彼女本来の記憶は非常にあいまいなままだ。クアットロに植えつけられた、なのはに両親を奪われた、と言う偽の記憶が整合性が取れているかどうか、いや、そもそも両親が居たのかどうか、どんな顔だったのか、そう言ったことすべてが分からなくなっている。そのため、高い技術を持って意識を誘導されてしまうと、矛盾点があっても疑うことすらできないのである。
「そっか。予想はしてたけど、やっぱり……。」
「何が言いたい!?」
「あなたは、なぜそんなに私が憎いの?」
「お前が、パパとママを騙して殺したから!」
そう言う設定か。ヴィヴィオの返事を聞いた瞬間、おおよその事を理解して内心でつぶやくなのは。とりあえず、方針は決まった。寂しそうな、悲しそうな表情を取り繕おうともせず、心の赴くままに問いかけをぶつける。その演技では無いなのはの表情に、なぜかとてつもなく心が痛むヴィヴィオ。
「その人は、どんな人だったの?」
「自分が殺した相手も、覚えてないの!?」
「言っても信じないだろうけど、私は少なくとも直接人を殺した事は無いし、ヴィヴィオのご両親の話も、一度も聞いた事は無いから。」
なのはの予想通り、この返答はヴィヴィオの怒りの炎に、大量の油を注ぎこむ事になった。もっとも、最初から、どう対応したところで、怒らせずに済む事は無かっただろうが。
『まったく、人をたくさん殺しておいて、助けに来たとは盗人猛々しい事。そう思いませんか、陛下?』
嫌らしい口調で口を挟んでくるクアットロの言葉に、無言で頷くヴィヴィオ。それを見て、実に悲しそうな顔をするなのは。
「この一月の事、本当に全部忘れちゃったんだね……。」
「知らない! 最初から、お前の事なんか知らない!」
「でも、それならそれでいいよ。もう一度、ヴィヴィオにママって呼んでもらえるように、頑張るだけだから。」
そう言って、レイジングハートを手放してバリアジャケットを解除する。その様子に、初めて怒り以外の表情を浮かべるヴィヴィオ。
「どういうつもり?」
「お話を聞かせてもらうのに、武装してちゃ駄目でしょう?」
『あらあら。魔法しか取り柄が無いくせに、自分からそれを捨てるなんて馬鹿ね。』
「そうだよ。私は馬鹿だから、これ以外の方法が思い付かない。」
クアットロにそう答え、敵意も闘志も何もない穏やかな表情でヴィヴィオを見つめる。そのなのはを見て、クアットロが攻撃するように言ってくるが、流石に戦意の無い非武装の相手を殴るのは、ヴィヴィオの良心がとがめる。仮になのはを殴るにしても、自分も武装解除をし、魔法なしで殴るのが礼儀と言うものだろう。
「ヴィヴィオ、あなたのパパとママの事、教えて。」
もう一度向けられたその言葉に、怒りとともに答えを返そうとして、自分が両親の事を何も思い出せない事に気がつく。
「どうして……。」
「えっ?」
「どうして思い出せないの!? あんなに大好きだったのに、あんなに一緒にいたのに!」
ヴィヴィオの様子を、悲しそうに見つめるなのは。思い出せなくて当然なのだ。クローンであるヴィヴィオには、元々両親なんてものは存在しない。強いて親を上げるなら、スカリエッティかなのは達だろう。そして、そのどちらも存命である以上、殺されたなんて事はあり得ない。
『当然ですわ、陛下。だって、あなたの記憶はその女に消されているのですから。』
「精神系の魔法適性ゼロなのに、どうやればそんな真似できるのかな?」
『魔法しか取り柄が無いくせに、出来ないなんて嘘をつくなんて、本当に恥知らずな女です事。』
嘲るように言うクアットロに、小さくため息をつくなのは。実際のところ、なのはが精神系の適性を持っていないことなど、基本誰でも知っている話だ。辛うじて治癒系からの派生で、痛みや毒素が原因の精神障害を緩和できる程度で、パニックを魔法で治めたり、忘れた方がいい事を忘れさせたりなどと言う高度な真似は出来ない。もっとも、パニックがらみは歌で何とかした経験はあるが。
『そうですね、陛下。その女のプロフィールを教えますわ。そいつが、いかに魔法に依存した、魔法しか取りえの無い、自身の魔法で何でもできると思いあがった愚かな女か、それで理解できるはずですわ。』
そう言って、幼少期からの詳細なプロフィールを語り始めるクアットロ。父士郎が仕事で大けがを負い、高町家全体がなの派に構う余裕を失った事。その時何もできず、自分が要らない子だと思い込んだ事。ずっとくすぶっていた想いがジュエルシード事件で魔法を身に付けた事で噴出し、自分しか使えない魔法と言う技能にどんどんのめり込んで行った事。闇の書事件によりその想いがさらに強くなり、魔法の力を磨き、力で敵を制圧する事を何よりも優先し始めた事。
クアットロの説明を聞き、思わず感心してしまったなのは。実態は全然違うが、確かに自身のプロフィールは、表面上はそう解釈もできるのだ。多分、優喜と言う要素が無く、フェイトが歌に触れるきっかけが無ければ、きっとクアットロの言葉通りの自分になっていただろう。
「出来事自体は、大体間違ってないかな。」
あっさり認めるなのはに、どこか拍子抜けした表情を浮かべてしまうヴィヴィオ。今までの流れから、なのはがここまで素直に認めるとは思わなかったのだ。
「ただ、一つだけ訂正すると、別に魔法に依存したから力を磨いた訳じゃないんだ。力をつけないと、身を守る事も出来ない状況だったから、頑張って鍛えただけ。管理局に入ったのも、妙な組織に目をつけられて、他に選択肢が無くなったからなんだ。それに、私の魔法って、出来ない事の方が多いし」
「えっ?」
「嫌になるほど攻撃と自己防御に特化しちゃってるから、大きな怪我だとものすごい力技で治療する事になるし、威力が大きすぎて、非殺傷設定で無いと事実上手加減出来ないし。日常生活で役に立つのって、フローターフィールドと飛行魔法、後はデバイスの格納機能ぐらいなんだよね、実際。」
しみじみと変な事を言い出したなのはを、呆然とした表情で見上げるヴィヴィオ。魔法しか取り柄が無い、魔法に傾倒した女が言うとは思えない言葉を、やたら実感の伴った口調で言ってのけるのが不思議だ。しかも、言われてみれば、全くもってそのとおりであり、日常生活となるとなのはが上げた以外の物でも、せいぜい探知魔法と治療魔法を使う事がある程度だろう。防御魔法は事故でもなければ使う事は無いし、結界魔法に至っては、一般人が使うようなものではない。便利そうに見える転移系は許可制の上、意外と時差や座標のずれがあるためホイホイ使えるようなものではなく、攻撃魔法に至っては論外だ。
「そもそも、私は今年度いっぱいで、管理局をやめるつもりだしね。」
なのはの衝撃的な一言に、思わずそろって間抜け面を晒すヴィヴィオとクアットロ。金銭面に問題は無いのかもしれないが、この女に他に出来る仕事があるとも思えない。少なくとも、クアットロの目にはそう映る。芸能活動は、管理局の魔導師二人組と言う特殊性とフェイトの歌唱力で持っているようなものだし(と思っているのは、クアットロとなのは自身ぐらいではあるが)、家事ができる、などと言うのはそれほど金につながる特技ではない。
アイドルで荒稼ぎをしているのだから、金は持っているだろう。時の庭園があれば、少なくとも食うところと寝るところには困るまい。だが、それでも、ここまで鍛えた戦闘能力を、あっさりと無駄にすると言うのは理解できない話だ。なにしろ、今彼女と並ぶ実力の持ち主は、フェイトとせいぜいはやてぐらい、局員以外を見ても優喜と竜司しかいないのだ。かなりの熱意を持って鍛えなければ、これほどまでの高みに達する事は出来なかろう。
はっきり言って、意図が見えない。
「私ね、翠屋みたいな喫茶店をやりたくなっちゃったんだ。」
「翠屋?」
「私のお父さんとお母さんがやってるお店。」
ここまで鍛えておいて、今更子供の頃の夢、などと言い出すのか。その滑稽さに思わずあざ笑うかのような表情を浮かべ、罵倒の言葉を口にするクアットロ。
『あらあらぁ。陛下の両親を騙して殺すような女が、お菓子屋さんなんて子供っぽい夢を語るとはねえ。その薄汚れた手で作ったまずいお菓子なんて、誰も食べないんじゃないかしらぁ。』
「そうかもね。でも、十分なお金があって、必要な資格もほとんど揃ってる以上、チャレンジする事に文句を言われる筋合いは無いよ。それにね。」
言葉を切ってクアットロからヴィヴィオに視線を移し、穏やかな微笑みを絶やさずに、もう一つの意図を告げるなのは。
「お店なら、人を殺すかもしれないリスクを背負って、犯罪者相手に命がけの戦いなんてしなくていい。エリオやキャロ、トーマ、リリィ、ヴィヴィオとの時間も作りやすいし、個人のお店だったら自分の子供を店に置いても問題ないし。お店終わってから、みんなで一緒にお菓子作りとかも、やってやれない事は無いし。」
料理に目覚めて一生懸命練習していた小学生の頃、よくフェイトと一緒に営業時間後の翠屋で、桃子から料理やお菓子作りを教えてもらったものだ。料理の路線が変わってしまってから、特にお菓子作りに関してフェイトと一緒に練習する機会は減ったが、幼少時に得られなかった親子の時間として、今でも大切にしている時間だ。
そんな優しい時間を、トーマ達にも、もちろんヴィヴィオにもあげたい。紫苑かすずかに任せてもいいが、一緒にお菓子を作るのは、やっぱり自分の役目だと思う。だから、管理局をやめるのだ。
「だから、ヴィヴィオ。一緒に帰ろう。返って、またみんなで一緒に、お菓子作りしよう。」
そう言って、無防備にヴィヴィオに近寄っていく。混乱し、反射的に後ろに下がるヴィヴィオ。隙だらけなのに、どうしても攻撃が出来ない。つぎはぎだらけの記憶、その中から出てきた断片に、確かになのはと一緒にお菓子を作った時の物がある。その全く身に覚えのない記憶と、経験していないはずの喜びと楽しさが、ヴィヴィオの体を縛る。
実際のところ、人間の記憶力と言うものは、案外馬鹿に出来ない。基本的に人間は、一度経験した事はすべて記憶していると言われている。ただ単に、頻繁に使わない記憶を勝手に整理して、思い出せないようにしているだけなのだ。だから、きっかけさえ与えれば、結構簡単に大体の事を思い出すし、時間をおいて何度も思い出せば、次第に忘れなくなる。
ましてや、楽しかった事、印象が強かった事は何度も何度も思い出すのだから、そう簡単に忘れようがない。こういった記憶を消して、他の人格や記憶を上書きするのは、スカリエッティですら完璧に可能な訳ではない。アルハザード由来の技術で、全く何の経験もしていないクローンにきちっとバックアップを取ってあった記憶と人格を移植し、同じ人物をもう一人作ることは可能だが、その完璧なバックアップを用いても、ちゃんとした人格と経験を持っている他人を乗っ取る事は出来ない。
ましてや、現在ヴィヴィオに移植されている聖王の人格は、所詮はレリックやゆりかごに残っていた断片にすぎない。ラボで育てられていた時期を含めても半年に満たないとはいえ、独立した人格でいろいろな経験をし、深い愛情を注がれたヴィヴィオの記憶を、たかが不完全な聖王の記録ごときで、完全に上書きすることなどできはしないのだ。
「あなたは、あなたは誰なの……?」
「私は高町なのは。フェイトちゃんと一緒にアイドルをやってる、エリオとキャロの保護者でヴィヴィオのママのつもりの、ちょっとだけお菓子作りが得意な、中身は全然特別じゃない女、かな。」
「……なのは……、……ママ……、……ママみたいなパパ……、……フェイトママ……。」
一つのきっかけから、連鎖的に蘇る記憶。目の前の女性に、そしてその仲間に愛され、大切にされた、この一カ月ほどの確かな思い出。だが、複数の記憶と、そこに起因する感情が入り混じった状態では、その思い出を無条件に信用できない。ヴィヴィオ本来の気と、彼女を絡め取っている嫌な気配がせめぎ合う。
『陛下、騙されてはいけませんわ。』
「信じられないなら、それでもいいよ。やっぱり敵だって言うなら、攻撃してもいいから。」
そう言って、無抵抗なまま、ヴィヴィオが一番攻撃しやすいであろう位置で立ち止まるなのは。それを見て、心の中にわずかに残った怒りにまかせ、最高の一撃を叩き込もうとするヴィヴィオ。間違いなくなのはに直撃するはずだったその一撃は、当る直前にラインがそれ、微動だにしなかったなのはの頬をかすめるにとどまる。
結局、ヴィヴィオは最後の最後で、なのはを殴る事が出来なかったのだ。そもそも実際のところ、ヴィヴィオはそれほどクアットロを信用していない。断片とはいえ自分の記憶と、息をするように嘘をつく女の言う事とでは、どちらを信用するかなど考えるまでもない。ましてや、なのはとの記憶が無くても、クアットロの言葉の矛盾点に気がついてしまったとあれば、なおのことだ。
「……ママ、どうしてよけなかったの……? 当ったら、どうする気だったの……?」
「私達は、ヴィヴィオを守ってあげられなかった。だから、その拳が当っても、それは我が子を守れなかった罰なんだ。それに、もともと無傷で助けだせる、なんていう虫のいい事は考えてなかったし、ね。」
「ヴィヴィオは、ママの本当の子供じゃないんだよ……?」
「そんな事、最初から分かってる事だよ?」
震えて立ちつくすヴィヴィオを、そっと抱き寄せる。何らかの方法で大人の姿になった彼女は、すでになのはの背丈を超えている。それでも、二人のその姿は、まぎれもなく若い母と少しばかり発育がいい子のそれであった。
「私、あなた達が強いから、私の事を守って、愛してくれるって分かってたから、勝手にママって呼んで懐いてたんだよ……?」
「それが何か問題なの?」
「だって、なのはママの事も、フェイトママの事も、利用しようとしてたんだよ?」
「子供が、自分を守ってくれる人に懐くのは、当然の事だよ。だって、そうしないと身を守れないんだから。私だって、今にして思えばそう言う理由で懐いていた人が、全くいなかった訳じゃないし。」
ヴィヴィオの懺悔を、何でもない事のように言ってのけるなのは。一つ話をするたびに、加速度的にヴィヴィオの気配が戻ってゆき、二人の関係が親子らしくなっていく。
「ヴィヴィオ、みんなのところに帰ろう。その体も、プレシアさんなら多分ちゃんと元に戻せるから。」
「プレシアおばあちゃん、ヴィヴィオを受け入れてくれるかな?」
「大丈夫。どんな姿になっても、プレシアさんは可愛がってくれるよ。だって、家族だもんん。」
どんどん話が進んで行く二人に、苛立ちがピークに達したクアットロが口を挟む。
『あら、無事にここから出ていけると思っているのかしら?』
「大丈夫。あなたがやりそうな事ぐらい、予想はついてるから。」
『それなのに親子ごっことは、余裕です事。』
「はじめはみんな、そんなものだよ。血縁は確かに大事だけど、最終的に、お互いに家族であろうとする意志があれば、ごっこ遊びみたいなものでもちゃんとした形になる。私の家が、そうだったしね。」
『そんなもの、ただの幻想だと教えて差し上げますわ!』
裏で何かの操作をしていたクアットロが、高らかに宣言しながら何かのスイッチを押す。次の瞬間、縋りついていたヴィヴィオの体がおかしな動きをし、体内で巨大な魔力を発生させる。不自然な動きを感じてとっさにヴィヴィオを離し、大きく距離を取るなのは。距離を取ると同時に、元居た場所を砲撃が襲う。
「……ディバインバスター!?」
「ママ、逃げて! 体が、体が勝手に!」
魔力光こそ違うが、飛んできた砲撃が明らかに自分の手法である事に、さすがに驚きを隠せないなのは。泣き顔になりながらも、そのなのはに向かって容赦なく次々と攻撃を繰り出すヴィヴィオ。徐々に嫌な気配がヴィヴィオの気を押し返し、削り取り浸食していく。
「ディバインシューターにフォトンランサーまで!?」
『それが聖王のゆりかごが、最強の兵器と言われていた理由の一つ、聖王の鎧ですわ。その機能を使えば、一度見た事がある魔法はすべてノーリスクで再現可能。さらには陛下の戦い方に合わせて、自動的にアレンジするシステムも組み込まれておりますの。』
良くあるチート格闘家的な仕様に、思わず呆れた表情を浮かべてしまうなのは。使える技の種類なんぞ、そんなにたくさんあっても意味が無い。戦闘において重要なのは、技の種類では無く使い方だ。実際、なのはもフェイトも結構な種類の攻撃魔法を持っているが、普段使うものと言えばなのはで三種類かそこらだ。フェイトは空戦と地上戦、高速戦闘とそれ以外、広い場所か狭い場所かで大分使う魔法も使い方も変わるが、なのはの場合はディバインバレットとディバインシューター、後はディバインバスターがあればほとんどの状況で事が足りる。
つまるところ、相手が使った魔法を再現できる、と言う機能の利点など、使ってきた魔法の対処方法を即座に知ることができる、と言うそれだけの物だ。それとて簡単に実行できるとは限らない上に、その魔法を主力で使っている人間が自身の技の欠点や対処方法を知らない訳が無い。それでも、達人が自分の実力によってコピーしたのであれば、自身の流派に組み込んで完璧に使いこなしたりするが、システムによってそれをやったところで、当の聖王自身の実力が足りなければ、何の意味もない。
結局のところ、クアットロが威張って言うほど役に立つ機能ではないのだ。
「ママ、逃げて!」
「大丈夫! ちゃんと助けてあげるから!」
連続で飛んでくるバスターをいなしながら、ヴィヴィオの呼びかけを無視するなのは。ヴィヴィオの救出作戦は、いよいよ大詰めを迎えるのであった。