「いよいよ、だね。」
「うん。……大丈夫かな……?」
時空管理局嘱託魔導師採用試験。ペーパーテストおよび儀式魔法四種の実技を終え、なのはとフェイトはいよいよ午後の部の戦闘試験を受ける時間が迫っていた。嘱託魔導師採用試験を難関たらしめているテストだ。
「艦長やエイミィは、私達の実力ならまず間違いなく合格する、とは言ってたけど……。」
「……ちゃんと攻撃、出来るかな……。」
だが、なのはとフェイトの懸念はむしろ、試験官に対して、躊躇い無く攻撃魔法のトリガーを引けるかどうかだ。最近なのはは、ようやく優喜が相手の時には躊躇い無く魔法を放てるようにはなったが、知らない相手に対して同じことができるかと言われると、今一歩自信がない。
フェイトにしても、アルフやリニスのような、フォトンランサーが一発直撃したぐらいではどうこうならないとお墨付きをもらった相手に対しては、どうにか躊躇い無く魔法を撃てるのだが、それが他の普通の人間だとどうなのか、というのはやってみないと分からない。
「……やるしかないんだよね。」
「……うん、そうだね。どう転んでも、しばらくは管理局にお世話になるし、管理局の仕事をする以上、必ず人に対して魔法を撃つ必要が出てくるはずだから、非殺傷設定を信じて、そろそろ割り切らないと駄目だと思うの。」
優喜や恭也に魔法を撃つ時、どうしても例のハンターの事が頭をよぎり、非殺傷設定そのものを信じきれないなのは。他人に魔法を撃とうとする自分に、どうしても嫌悪感を抱いてしまうフェイト。自分達の攻撃力を理解しているが故の、ある意味健全な反応ではあるが、本当にいい加減そろそろ割り切らないと、それが命取りになる。二人とも、そういう立場に立っているのだ。
「なのはちゃん、フェイトちゃん、そろそろ準備できた?」
「あ、エイミィ。」
「準備オッケーです、エイミィさん。」
エイミィの呼びかけに、デバイスを起動させて立ち上がる。まずは個人戦技。フェイトが先で、二番目はなのはだ。
「フェイトちゃん、がんばって。」
「うん、がんばる。なのはも、負けちゃダメだよ。」
「うん!」
いろいろ不安を抱えつつも、試験フィールドに入っていくフェイトであった。
「……クロノ執務官が試験官なんだ。」
「ああ。AAAランク以上の試験が出来る人間となると、なかなか手が空いてなくてね。」
そう言いながら、カードを何枚かとりだす。すでにデバイスは起動している。
「さて、一応説明しておくけど、ここに入る前に、エイミィから機材を受け取っているだろう?」
「うん。」
「それは競技用のダメージカウンターだ。そこに設定された数値がゼロになれば負けだ。今回は公平を期すために、ダメージ許容値はお互い二千五百に設定してある。一定以上のダメージをカットしてくれるから、安心して攻撃してくれればいい。」
「うん、分かった。」
クロノの説明が終わり、開始位置に立つ。エイミィから開始の合図が送られると同時に、たがいに初手の一撃を発動する。一定以上のダメージをカットしてくれると聞いて、安心して最初の一手を発動するフェイト。
「ランサー、ファイア!」
「スティンガースナイプ!」
互いに放った一撃をすり抜け、大きく距離を取る。さらに牽制に二発ばかりフォトンランサーを撃ちこみ、一気にトップスピードに加速するフェイト。少しでも速度を殺そうと射撃魔法・スティンガーレイと誘導弾・スティンガースナイプを混ぜてばらまくクロノ。
「ガトリングランサー、セット!」
スティンガーレイを切れ味鋭いインメルマンターンでいなし、スティンガースナイプをローリングとヨーヨーを駆使してすり抜け、今回主力となるフォトンランサーのバリエーションを起動する。
フェイトの左右に四つずつ、計八つのフォトンスフィアが生成される。このスフィアが回転して入れ替わり、順番にフォトンランサーを発射する、高機動空中戦でのメインウェポンとして作り上げたバリエーションだ。再びフェイトを落とそうと迫ってきたスティンガースナイプを、左右で三発づつ、六発のランサーが迎撃する。
「ホーミングランサー、アークセイバー、セット!」
ランダムに軌道を変えつつ、クロノとの距離を詰めながら、次の一手を準備する。飛んでくるスティンガースナイプをガトリングランサーで迎撃しながら、クロノを軸線上にとらえ、バレルロールのモーションに入る。
「ファイア!」
バレルロール開始と同時に、アークセイバーと八発のホーミングランサーを発射する。自己誘導機能が付いた光の刃と光の槍が、それぞれ緩やかな放物線を描きながら、クロノに一斉に殺到する。
(バルディッシュ、バインドブレイクの準備お願い。)
(了解。)
あえて大きめの旋回径でバレルロールを行いながら、クロノの小細工を警戒して準備をする。ついでにノーマルのフォトンランサーを準備、あわよくばたたき込めないかと機会をうかがう。
「ちっ!」
ランサーの半分をスティンガースナイプで落とし、残りをすり抜けるように回避するものの、アークセイバーを取りこぼしてしまうクロノ。直撃を避けるためにバリアを張るものの、アークセイバーの刃が回転するという性質ゆえ、バリアに完全に噛みこんでしまい、クロノの動きが止まってしまう。
その機を逃さず、しっかり準備してあった正規のフォトンランサーを叩きこむフェイト。ガトリングランサーもホーミングランサーも、付加機能をつけつつ消費を絞った分、威力はどうしても一つランクが落ちており、やはりまともなダメージとなるとノーマルのフォトンランサーに頼ることになるのだ。
四発のフォトンランサーにバリアを抜かれ、十二発のガトリングランサーの直撃を受けたクロノは、トータルで千ポイント程度一気に削られる。
「先制点は、フェイトさんね。」
仕事の合間に試験の様子を見に来たレティが、一分程度の攻防戦の結果をぽつりとコメントする。
「さすがに、ここまで見事にマニューバをこなされると、ちょっと分が悪いかな?」
「だけど、クロノも伊達に執務官を名乗っているわけではないわよ?」
「そうね。そろそろフェイトさんの癖を見切ったみたいだしね。」
高速で飛び去ったフェイトを見送り、体勢を立て直すクロノ。ターンと同時にガトリングスフィアの再生成を行い、再度違うパターンで切りこもうとした瞬間、死角からスティンガースナイプが襲いかかる。ターンのほんのわずかなもたつきとスフィア生成の隙を、見事に突かれる形になった。
「っ!? ディフェンサー!」
避けられないと判断し、バリアでスティンガースナイプを防ぐ。一瞬衝撃で動きが止まり、その一瞬をクロノに突かれる。
「バインド!」
「あっ!?」
こうなっては、いかなフェイトといえど身動きは取れない。勝負は決したかに見えたが……。
「ブレイズキャノン!!」
ほかにも隠してあったスナイプでバリアを削り、チャージを終えた砲撃で追撃をかけるクロノ。だが、本来なら十分間に合うはずのその一撃は、かすめるだけにとどまってしまう。
「バインドブレイク!?」
「早い!」
砲撃で巻き起こった煙が消えた跡には、フェイトの姿はどこにもなかった。
(スナイプ三発の直撃と砲撃がかすったダメージで千五百ポイント、か。我ながら当たると本当に脆い……。)
ダメージ状況を確認し、苦笑を洩らすフェイト。バインドブレイク自体はすぐに終わったのだが、スナイプをいなす余裕がなく、誘導弾とはいえ直撃を受けた衝撃で動きが遅れたところに砲撃が来たのだ。完璧にかわす余裕はなく、左の腰アーマーは完全に持っていかれている。
「バルディッシュ、どう逆転をかける?」
『フォトンランサー以下の攻撃では、直撃させても執務官のポイントを削りきれません。バリアを抜いた後、砲撃で仕留めるしかないでしょう。もしくは、ファランクスシフトを。』
「ファランクスシフトは準備に時間がかかりすぎるし、コストパフォーマンスが悪すぎる。後にまだ連携戦闘の試験もあるし、サンダースマッシャーを当てることを考えた方がいいかな?」
『同意します。』
「じゃあ、チャージをごまかす必要があるね。」
バリアジャケットを修復しながら、方針と覚悟を決めるフェイト。今までうまくいった記憶がない、飛行しながらの三種同時起動を試すことになるが、大技をチャージしているとばれたら一発で終わる。出来るだけ派手に目くらましをしないと、本命をガードされて詰みだ。
そもそも、もともと並列起動はそれほど得意ではない。高速戦闘を突き詰めると、どうしても高速飛行をしながら最低でも二種の並列起動が必要になるため、優喜に徹底的に仕込まれたのだ。
「よし、行くよ、バルディッシュ!」
『Yes sir。』
とにもかくにも、まずはトップスピードまで加速だ。どうせ隠密性など今回は無意味、ならせいぜい派手に加速しよう。
「さて、もうひと勝負、ってところかしら。」
「ですね。これで仕留め切れなければ、クロノ君の勝ちです。」
トップスピードまで加速したフェイトが、馬鹿正直に真正面から突っ込んでくる。罠を警戒しながらスナイプを飛ばすと、まだ距離があると言うのにバレルロールをかけてすり抜ける。
「ホーミングランサー、ダブルファイア!」
バレルロールの最中、ガトリングランサーをばらまきながら、先ほどの倍、十六発のホーミングランサーを飛ばす。さらにやけくそのようにノーマルのフォトンランサーを飛ばし、アークセイバーを放ち、とどめにもう一度ホーミングランサーを十六発撃ちだす。一瞬にして、視界内を様々なランサーが埋め尽くし、さすがのクロノも、どれがどの軌道を描くのかを完全に見切れなかった。
「くっ!」
「ホーミングランサー、ダブルファイア!」
さすがに動きが止まったクロノの頭上を飛び越える際、駄目押しとばかりにさらに十六発ばらまき、そしてとどめの一言を放つ。
「ブレイク!」
フェイトの掛け声に合わせ、アークセイバーと全てのホーミングランサーが四つに分裂する。もちろん威力は四分の一になるが、これだけの数だ。クロノのバリアジャケット程度では、二割も直撃を食らえばなかなかのダメージになる。第一、アークセイバーは多段ヒットするから、意外とダメージが大きい。それらがどうあがいても回避できない密度で、しかも自分を狙うように飛んでくるのだ。バリアを張る以外の選択肢はない。
「なのはもえぐかったが、君も大概だな!!」
バリアを張って全てを弾きながら、ぼやきとも苦情ともつかぬ言葉を漏らすクロノ。プチファランクスシフトとでもいうべきその攻撃はしかし、一撃の軽さと当たる数の少なさから、バリアを抜く程度の効果しかない。だが、クロノは気が付いていなかった。単にこの弾幕は、目くらましを兼ねたバインドとバリアブレイクの代わりでしかなかったことを。
「サンダースマッシャー!!」
いつの間にやらクロノの真下をくぐりぬけようとしていたフェイトが、すれ違いざまに、空戦と言うフィールドではゼロ距離と言っても過言ではない位置から砲撃を叩きこむ。
「なっ!?」
バリアを張ろうにも、今現在ちょうど張ったバリアを抜かれたところで、クロノにその一撃をかわすすべはない。しかも、大したダメージではないにしても、分裂したホーミングランサーがバリア崩壊後に何発か着弾し、完全に動きを止められてしまっている。悪あがきの余地もなく、全身を洒落にならない威力の電撃が駆け抜けていく。
「勝者、フェイト・テスタロッサ!」
エイミィが結果を告げる。システムのおかげで互いに大したダメージはないが、九歳の少女の最後の賭けをいなしきれなかった不甲斐なさは、クロノ的には中々精神的に堪える。
「フェイトさん、最後の派手な弾幕、あれもしかして?」
「うん。サンダースマッシャーのチャージを誤魔化すために、わざと消費の軽い魔法を大量にばらまいたんだ。それに、まだ私の技量じゃ、速度に緩急をつけて的を絞らせないとか、そういうのは無理だから……。」
派手さに誤魔化されがちだが、実はホーミングランサーの消費は、威力に比べて非常に軽い。なにしろ、ホーミングランサー四発でフォトンランサー一発分なのだ。どうせ高速戦闘中の射撃なんてそうそう当たらないと割り切って、手数と発動の早さに的を絞り、威力を落として自己誘導の精度をアークセイバーより甘くすることで、大幅に消費を絞ったのである。
「……そもそも、君の年で高速飛行中に砲撃魔法をチャージしながら弾幕を張るなんて真似が出来る方が異常だ。」
「そこはあれだよ。優喜にしごかれてるから。」
その台詞を聞いて、思わず納得する管理局員。そう考えると、クロノの性質的に、むしろなのはの方が厄介かもしれない。しかも、フェイトは薄くて速い典型的な高速型だが、なのはは火力と堅牢さが売りの移動砲台だ。当たれば状況がひっくり返るフェイトとは逆に、自分が一瞬で状況をひっくり返されてしまう。
「さて、休憩したら、次はなのはさんね。」
「なのはちゃん、クロノ君をあんまりいじめないでね。」
「あ、あはははは……。」
再び試験フィールド。今回は全部同じ設定のフィールドを使うらしく、先ほどと同じく部分的に森林のある平原だ。先ほどと違い、今回はクロノにとってかなり不利な条件である。
「さて、なのははどう出るのか……。」
クロノが知っているなのはの情報と言えば、重装甲でやや機動戦が苦手である事、ブレイズキャノンを上回る威力の砲撃を三点バースト出来る事、他人の使用済み魔力を回収して、恐ろしい威力の集束砲を撃ってくることぐらいだ。書類データには、単純魔力弾と誘導弾、バインド一種、後はそれなりのバリエーションの防御魔法を持っていることが記されているが、それをどの程度の練度で使ってくるかははっきりしない。
もっとも、試験と言うのはそういうものだ。相手がどんな能力を持っているか、どの程度使いこなしているか、そういったものを実地で見るのが目的だし、それ以上に実戦ではデータがないことも珍しくない。さらに今回のように、相手にある程度以上自分の情報が漏れているケースだって、それほど少ないわけでもない。
そういった不利を覆してこその執務官だ。気合を入れなおし、三つほどの手札をいつでも切れるように準備しながら、油断なくなのはを観察する。基本的に後の先を取る戦闘スタイル上、先に攻撃を入れるのはうまくない。攻撃するとどうしても隙が出来る。
「ディバインバレット!」
様子を見ていたクロノの周りを、恐ろしい数の魔力弾が取り囲む。嫌な予感がして発動直前に大きく動いたため、どうにか完全に囲まれることは避けたが、ほとんど詠唱なしでこの弾幕と言うのはなかなかひどい。
「ちっ! スティンガーレイ!」
普段より多めにスティンガーレイを撃ち、弾幕を払う。視界の隅から、こっそり迫ってきた誘導弾を紙一重でかわし、邪魔をさせないようにスティンガースナイプで撃ち落とす。この流れで次に来る攻撃と言えば……。
「ディバインバスター!」
予想通りの砲撃だ。射線上から少し動き、準備しておいた反撃のブレイザーキャノンを撃ち出す。ヒットを確認し、位置を変えながら追撃を入れようとすると……。
「ターン!」
なのはの掛け声と同時に、先ほど回避した砲撃がかくんとあり得ない曲がり方をし、背後からクロノに直撃する。バリアジャケットなど意味をなさないとんでもない一撃は、あり得ない曲がり方をしたためか辛うじてクロノのポイントを削り切れずに終わる。
「くっ。五百のダメージと引き換えに、二千以上持っていかれたか……。」
しかも、受けて分かったことだが、ディバインバスターのバリア貫通性能は、まっとうな普通の砲撃の数倍のレベルだ。ユーノクラスのラウンドシールドならともかく、万能と器用貧乏の境界線上であるクロノの防御魔法など、防御のうちに入らない。
(砲撃を撃たせるのはまずい。あれを三点バーストなんてされた日には、よけきれるイメージが全く湧かない。)
砲撃を撃たせない方法は単純。フェイト同様ひたすら動き回って的を絞らせず、誘導弾と通常射撃を混ぜて撃つことで大技を撃ちにくい状況に追い込むことだ。
「スティンガースナイプ!」
姿を発見したなのはに、誘導弾を撃ちこむ。クロノの流儀ではないが、手数で押しながら距離を詰め、ブレイクインパルスあたりの近接戦用の高威力技で仕留めるのが一番安全だろう。動きを制限してバインドで固定すれば普通は安全なのだが、どうにもそういうやり方では無力化出来る気がしない。なにしろ、優喜が鍛えている。バインドを受けたら砲撃出来ないと言う保証がないのだ。
「ディバインバレット!」
再び山盛りの魔力弾が視界を埋め尽くす。が、最初からそう来る前提で動いていたため、今度は包囲されずに弾幕を引き剥がせる。
「ブレイクインパルス!」
「キャスリング!」
数発被弾し、動きが止まったなのはに肉薄する。フェイトほどでは無いがちょろちょろと器用に逃げ回るなのはをようやく追いつめ、クロスレンジでの高威力技を入れようとした瞬間、目の前からなのはが消える。空振りしたS2Uに、小石がこつんと当たる。
「なっ!?」
いきなりの異常事態に混乱しそうになるが、空振りした以上反撃が来る。大慌てで離脱した瞬間に、ディバインバスターがクロノの居た後を焼き払う。
ちなみになのはが行った入れ替わりだが、これは彼女の魔法ではなく優喜からもらった指輪の機能だ。視界内の入れ替われる空間がある場所に、百キロ以下のフリーの物体がないと発動できず、練習しなければ転移酔いに加え、自身の位置や向きを見失うため意外と使い勝手が悪いが、なのはの弱点を補うには十分な代物だ。
「ターン!」
「何度も同じ手が!!」
予想通り曲がってきたバスターを、分裂させたり破裂させたりする可能性も考えて大きくよける。どうやら現時点では、一度曲げたら二度目は無理らしく、地面に着弾して消滅するディバインバスター。
「スティンガースナイプ!」
再び同じようになのはを追いつめようと、本日何度目かのスティンガースナイプを放つ。馬鹿の一つ覚えのようにみえるが、元々攻撃魔法をそれほどたくさん身につけている魔導師は多くない。大体射撃、誘導弾、砲撃、あとはせいぜい人によっては広範囲攻撃もしくは切り札、あるいはその両方を各一つ、というところだ。
そもそも、フェイトのように特定の戦術のためのバリエーションを増やすならまだしも、普通の思念誘導型の誘導弾は、そう何種類も習得する意味がない。せいぜい、コントロールしやすい低速のものと、コントロールは難しいが避けにくい高速のものを覚えていれば十分だ。
クロノもその例にもれず、誘導弾は高速・高威力でコントロールしやすい、ある意味理想的な性能のスティンガースナイプしか覚えていない。そもそも、一人の相手にこれだけ何発も誘導弾を撃つ機会も、これだけ撃って仕留め切れないケースもほとんど無いのだ。
「ディバインバレット!」
なのはも馬鹿の一つ覚えのように弾幕を張る。だが、同じ馬鹿の一つ覚えでも、一つだけ状況が違った。なのはのばらまいた弾幕は、全て射出前の状態で空中を漂っているのだ。別にクロノも忘れていたわけではない。単純に、今回の分を合わせて総数三百に上る魔力弾を全部掃除するような、そんな手間のかかる真似をする余裕がある相手ではないのだ。
毎回毎回発動の度に百を超える魔力弾が生み出される以上、直撃しなければそのまま放置するのは普通である。が、この魔力弾、一発一発は直撃しても大したダメージではないが、無視できるほど弱くもない。なにしろフェイトのホーミングランサー、あれの分割版と互角か、やや上回るぐらいの威力はあるのだ。
「シュート!」
なのはの掛け声と共に、そのすべての魔力弾がクロノに殺到する。
「ちょっ!? 待て!」
三百発と口で言うのは簡単だが、いろんな方向から飛んでくるのだ。単純に一方向に逃げればかわせるというものではない。大慌てで引き離すように飛び、正面から来る分を必死に避けて焦点位置からその身をずらす。一発二発当たったところでダメージにはならないが、その隙に誘導弾か砲撃が飛んできたらそれでアウトだ。いや、そもそも残りポイントが乏しい。下手に魔力弾を食らった日には、ガードの上から削りきられかねない。
「ターン!」
半分ぐらいやり過ごしたところで、なのはの一言でやり過ごした魔力弾が反転する。半分ほどは単純魔力弾の癖に、生意気にもまっすぐに飛ばずに妙な軌跡を描く。ランダムなくせに妙な鋭さでクロノを狙う軌跡に苦労しつつ、再び半分以上を回避したところで……。
「なっ!」
紙一重で避けた魔力弾が分裂し、やけにシャープな動きでクロノのわき腹を捕らえる。
「ゆ、誘導弾を仕込んでいた、か……。」
どうやら、ターンの際に妙な軌跡を描かせたのは、誘導弾を混ぜても識別できないようにしたらしい。直接混ぜるのではなく、普通の魔力弾、それも直進してくるものと重ねて飛ばし、クロノを騙したのだ。さすがは竜岡優喜の直弟子。力押しで十分なくせに、やることがいちいち黒い。
「勝ちっ!」
クロノのポイントを削りきったことを確認し、勝ち鬨を上げるなのは。何気に半分以上は削られているのだが、勝ちは勝ちなので気にしないらしい。
「……ねえ、リンディ。」
「何かしら、レティ?」
「資料によると、なのはさんって魔法に触れて二ヶ月程度だという話だけど、本当なのかしら?」
「間違いなく事実らしいわよ?」
たかが二ヶ月であれとか、優喜にいったいどんなやり方でしごかれるのだろうか?
「なのは、お疲れ様。」
「フェイトちゃんも。」
手を打ち合わせて互いの健闘をたたえる仲良しさんたち。まだ連携戦闘試験が残っているから、ハイタッチはしないらしい。ここだけ見ていると、普通の少女だ。この後の試験に一抹の不安を感じながら、その光景を強引にほほえましいと思い込んで見守る一同であった。
「……なあ、ハラオウン執務官。」
「何ですか、ヴェルファイア一尉。」
「あれ、本当にランクAAAか?」
「今受けている試験はそうですね。」
トーマス・ヴェルファイア一尉のげんなりした様子での質問に、疲れたように笑いながら答える。少なくとも、最初に接触したときは最低はAAAでも、Sランクにはまず届いていない見積もりだったのだ。なので、AAAで試験をしたのだが……。
「ヴェルファイア、別にかまわないだろう?」
「とは言うがなあ、ブリット。試験管が負けたら話にならないぞ?」
「負けるつもりなのか?」
「……言うねえ。まあ、そうだな。」
同僚のエスティマ・ヘンリー・ブリット一尉の挑発するような言葉に、どこか納得するヴェルファイア。そもそも、負けるつもりで戦闘に望む馬鹿はいない。
「それで、ハラオウン執務官、連戦の上、さっき結構いいのもらってたが、大丈夫か?」
「それについては問題ない。不甲斐なさにへこんだ程度で、ダメージ自体はほとんど受けていない。」
クロノの言葉に、参ったなという感じで視線を交わすヴェルファイアとブリット。
「先ほどの試験結果から分かると思いますが、油断すると我々でもあっさり制圧されかねません。しかも、今回はフェイト・テスタロッサの使い魔も参加します。正直、何をしてきても驚かないつもりでないと。」
ある種の達観をこめて二人に忠告するクロノ。先ほどの戦闘では、二人とも切り札を切っていない。フェイトは新技を色々見せたが、結局戦鎌による攻撃は一回もしなかったし、なのはに至っては砲撃の三点バーストは温存しきった。
「なるほどな。まあ何にしてもとりあえず、戦い方からあの年としては異常と言っていいレベルの経験か訓練を積んでいるのは間違いないぜ。」
ヴェルファイアが、もう一度試験のデータを見ながら言い切る。フェイトのラストの攻撃は、高速飛行でマニューバを維持しながらの三種並行発動だ。試験時の魔力パターンから安定しているとはいいがたいが、フェイトの年でとか以前に、そもそもここまで出来る魔導師自体が意外と少ない。
なのはにしても、曲がる砲撃と圧倒的な物量の魔力弾に目を奪われがちだが、旋回性能に欠ける機動特性で一分以上、被弾なしでクロノの攻撃を凌いだのだ。才能に胡坐をかいた幼女に出来る真似ではない。
「しかも、砲撃主体と高速戦闘主体と来てる。うまくかみ合うと手がつけられん。」
ブリットの台詞に、嫌な予感がひしひしとする。事前データには、この二人はとある事件解決の功労者と書かれている。それなりに連携戦闘は出来ると思ったほうがいいだろう。
「手を抜いて勝てるほどやわな相手じゃねえ。気を引き締めていくぞ。」
「ああ。」
「はい。」
作戦会議も兼ねた休憩をはさみ、嘱託魔導師採用試験最後の科目、連携戦闘試験が始まる。
(なのは、アルフ、まずは私が切りこむから、援護をお願い。)
(分かってる。)
(任せておきな。)
バルディッシュをサイズフォームにし、切り込み隊長としての準備を整えながら、なのはとアルフに声をかける。二人の返事と同時に、開始の合図が入る。合図の直後、ガトリングランサーを起動し、一気にトップスピードに加速して突っ込むフェイト。
「ディバインバスター!」
三人いるから、という理由で、三点バーストで主砲を撃つなのは。今回のルールだと、直撃すればフェイトは即アウトと言う威力のそれが、彼女をかすめてものすごいスピードで敵に迫る。
「ちっ!」
直進してきた砲撃をかわし、曲がってきた分をやり過ごし、まっすぐ突っ込んでくるフェイトに反撃の射撃魔法を撃ちこむブリット。
「ホーミングランサー、ダブルファイア!」
反撃をすり抜けて肉薄するかと思われたフェイトが、なにを思ったかホーミングランサーを大量にばらまき、まだそこそこ距離があると言うのに、インメルマンターンで離脱する。
「っ!? やばい!」
ホーミングランサーを全て撃ち落としたブリットは、フェイトとランサーの陰に隠れた、細く絞りこまれたディバインバスターの存在に気が付き顔をゆがめる。とっさにラウンドシールドを展開するが、防御魔法はクロノと大差ない身の上だ。下手をすると減衰なしで抜かれかねない。
「ちぃ!!」
ヴェルファイアがブリットの前に割り込み、ラウンドシールドを軽く当てて砲撃をそらす。曲がってくる前提で砲撃から目を離さず、反転してきたディバインバスターを散開してかわすと……。
「バースト!」
可愛らしい掛け声とともに、ちょうど彼ら二人の真ん中で砲撃が破裂する。とっさにラウンドシールドを展開しなおして弾くが、それでも三百ポイント程度持っていかれる。
(……二人とも、いい度胸してやがるなあ……。)
(味方をブラインドにこんな砲撃をぶっ放す方も大概だが、当たれば自分が落ちるような攻撃を、我が身で隠す方も大概だな。)
とにもかくにも、先制ポイントは受験生側だ。この三百ポイントは結構痛い。比較的防御に優れるヴェルファイアはともかく、ブリットはバスターの直撃を食らえば退場になりかねない。
一方、クロノはと言うと……。
「くっ! アルフか!」
離脱したフェイトのサンダースマッシャーで足を止められ、アルフの接近を許してしまっていた。
「クロスレンジでのパワーじゃ、さすがのアンタもアタシにはかなわないだろう!?」
いかにクロノが体術に優れると言ったところで、せいぜい格闘技の初段二段と言ったレベルだ。使い魔を相手に格闘戦が出来る技量ではない。こちらもとっさにラウンドシールドを展開してパンチを止めるが……。
「バリアブレイク!」
何気に搦め手からの手段をたくさん抱えているアルフは、あっという間にクロノのラウンドシールドを食い破る。バリアジャケット越しとはいえ、鳩尾に拳がめり込み、一瞬息が止まるクロノ。そのまま追撃が来るかと思いきや、アルフはさっさと離脱する。
「ディバインバスター!」
アルフが離脱したタイミングで、クロノにディバインバスターが迫ってきた。回避しきれずに左腕にかすり、アルフの攻撃と合わせて八百程度持っていかれる。
「ブレイズキャノン!」
なのはが位置を動いていないと踏んで、反撃に一発砲撃を入れるが……。
「キャスリング!」
何と、あろうことかなのはは、直撃ぎりぎりで、ヴェルファイアと入れ替わると言う荒業をやってのけた。唐突に入れ替わられたヴェルファイアは、とっさに状況を把握できず、背中からブレイズキャノンをもろに食らってしまう。もちろん、こんな真似をすれば、無防備な状態でブリットの前に姿をさらすことになるが、当然それも織り込み済みだ。
「バスターシュート!」
「ディバインシューター!」
入れ替わってきたなのはに即座に反応し、出の早い砲撃を叩きこむブリット。きっちりラウンドシールドでガードされたが、それでも五百は削る。もっとも、反撃のディバインシューターで三百程度持っていかれているので、収支ではマイナスかもしれない。
「キャスリング!」
その後、数発のやり合いののち、フェイトからの援護を受けてヴェルファイアと再び入れ替わるなのは。さすがに至近に近い距離ではブリットの方に分があり、少なくないダメージを受けてしまう。フェイトもアルフも、なのはのカバーに入るまでに結構削られており、総ダメージでは分が悪い展開になっている。
(ちっ。アルフを削り切れなかった!)
(こちらも、フェイトにそれほどダメージを入れられなかった。)
(高町を半分近くまで削れたのが収穫と言ったところか。)
総ダメージはずいぶん稼いだが、喜べる戦況ではない。なにしろ、こちらは大技の直撃で確実に落とせる相手がフェイト一人なのに対し、向こうは誰かに砲撃を一発当てれば、それだけで状況をひっくり返せるのだ。
(とにかく、高町かテスタロッサを落とさないと、話にならないな。)
(ああ。出来れば全部の攻撃がやたらと重い高町を落としたいが、あの硬さと入れ替わりが厄介だ。焦って攻撃すると碌な事にならねえ。)
(その入れ替わりだが、特性がそろそろ見切れそうだ。)
(なら、僕が大技で揺さぶってみます。それまで援護をお願いします)
((了解!))
クロノの言葉に返事を返し、誘導弾と射撃魔法で三人を牽制する試験管二人。クロノが大技の詠唱に入ったことに気がつき、妨害に動こうとするフェイトを見事に牽制する。
(フェイト、クロノの大技っていったら!)
(うん、分かってる! あれしかない!)
(こっちからも妨害は難しそうだから、やり過ごして一気に蹴りをつけよう!)
(分かった!)
方針が決まったあたりで、クロノの詠唱が終わる。
「スティンガーブレイド・エクスキューションシフト!」
クロノの切り札でもある広域攻撃魔法。なのはの弾幕と勝負行く数のスティンガーブレイドを作り出し、一斉に飛ばす大技である。が、もう少し狭い空間ならともかく、だだっ広く地上に意外と遮蔽物の多い今回の試験フィールドでは、隙間が結構大きくて命中率が激減する。
しかも悪いことに、牽制しきれずに三人が広域に分散してしまい、しかもなのはから弾幕だの砲撃だのの妨害が入ったため、一箇所にまとめて一気に制圧という手段は取れなかった。こんなところでも彼女達の手ごわさが垣間見える。
(フェイトちゃん、アルフさん、大丈夫?)
(何とか致命傷は避けたよ。)
(こっちもだ。なのはは?)
(問題無しだよ。いい具合に魔力もたまったし、チャージを始めようかな?)
なのはの言葉通り、ここまでの戦闘で、試験フィールドにはずいぶん使用済みの魔力がたまっている。聴頸の訓練により、そういった魔力の感知と回収の技量も上がっているのは、教えた側にとっても予想外だったらしい。
(了解。私が撹乱するから、一か所に集まるように誘導するの手伝って。)
(うん。やってみるよフェイトちゃん。)
(任せな、フェイト!)
もうひと勝負。これをミスれば次はない。後はじり貧になって押し切られるだけだろう。なのはは、切り札の準備に入りながら、並行でディバインバスターの三点バーストと弾幕を発動させる。
「ちっ! まだまだ元気ってか!?」
「しぶといちびっ子たちだ。」
連続で飛んでくる攻撃に舌打ちしつつ、それらをかいくぐりながら反撃する。何にせよ、大技の消耗で、クロノは少しの間使い物にならない。どうにか彼をカバーしながら、ここを凌がなければならない。
「フォトンランサー!」
逃げた方向にフェイトのランサーが突然現れ、大慌てですり抜ける。それを予測していたかのようにフェイト本人が肉薄し、ヴェルファイアに鎌を一撃入れて離脱する。辛うじて防ぎきって反対側を見ると、アルフの体当たりで吹っ飛ばされたブリットがぎょっとするほど近くまで追い込まれている。
「やばい! 追い込まれてるぞ!」
警告を発するも時すでに遅し。気がつけば三人とも、ほぼひと固まりと言っていい距離に集められてしまっている。
「フォトンランサー!」
「ディバインバレット!」
散開しようとするのを防ぐために、なのはとフェイトから射撃が飛ぶ。散開のタイミングとフェイトの姿を見失いながら、どうにか逃げ道を確保した次の瞬間、頭上から金の髪の黒い影が、重力加速度を味方につけた、当人のトップスピードを大幅に超える速度で急降下してくる。
「くっ!」
よけきれぬと見て、とっさに頭上にラウンドシールドを展開すると、予想に反してなにもせずに三人の真ん中をすり抜け、墜落寸前でターンして、地面すれすれを飛んで離脱するフェイト。数秒遅れて、フェイトがばら撒いてあったホーミングランサーの雨が三人を叩く。
だが、フェイトの真の目的は、そんな低威力のちゃちな攻撃ではなかった。
「バインド!?」
「これが目的か!!」
「そーいう事さ。」
フェイトのバインドを、アルフがもう一つかけて補強する。
「なのは!」
「うん!」
チャージを終え、後は撃ち出すだけとなった必殺技が、レイジングハートの先端に鎮座している。なのはの持つ、温かみのある桜色の魔力光も、こうなるとただの暴力の象徴にしか見えない。
「大きいの行きます!」
「やばい!」
「とっととバインドを破って逃げるぞ!」
「これが私のとっておき! スターライト……ブレイカー!!」
試験フィールド全域に漂っていた使用済み魔力。それを根こそぎかき集めた豪快な一撃が、三人の試験官を襲う。着弾寸前にどうにかバインドを破り、大慌てで散開する彼らだが、なのはの一言で絶望を味わう事になる。
「ブレイク!」
なにしろ、この集束砲は、集束砲のくせに三つに分割され、瞬く間に彼らを飲み込んだのだから。
「大勝利!」
「やったね、なのは!」
最後の攻防戦で破損したジャケットを修復し、今度こそハイタッチをかわす少女達。ぶっちゃけた話、たとえ三分割したところでオーバーキルもいいところだったのだが、そもそもなのはは自身の砲撃の威力をあまり理解していない。落としきれるか不安である以上は、切れる最大の札を切るのが当然の戦術だ。
それに、終わってみれば一番被弾が少なかったフェイトですら、残り八百ポイント程度だったのだ。ギリギリの勝負だったのは間違いない。展開だけを見ると一方的になのは達が押していたように見えるが、要所要所でそれなりに削られているのだ。急増のチームとはいえ、精鋭部隊やエリートは伊達ではなかったのだ。
単に、なのは達の行動が彼らの予想を上回った、それだけなのだ。
「……一度、正規のランク認定試験を受けさせた方がいいんじゃないかしら?」
「……そうね。特になのはさんは、認定試験の後、一から徹底的に教育しなおした方がいいかもしれないわね。」
「あの、艦長、レティ部長……。」
「なに、エイミィ?」
「今のスターライトブレイカー、臨海公園の時と比べて、どうもバージョンアップしてるらしくて……。」
言いづらそうに、解析データを手にリンディ達に声をかけるエイミィ。
「バージョンアップ? 集束時間の高速化とか?」
「いえ、多分それと逆のことをやってます。」
「逆?」
「多分、チャージ時間を延ばして高威力化をしてると思うんですけど、おそらくですがその結果……。」
どう言っていいのやらと迷いつつ、あきらめて解析結果を単刀直入に話す。
「結界破壊の作用が確認されました。多分、あれを外してたら、試験フィールドの結界が完全に崩壊してたと思われます。」
「破壊? 貫通ではなくて?」
「はい。結界機能の完全破壊です。余波で、試験フィールドの結界が侵食されていました。」
「単純魔力砲で?」
「……信じたくはありませんが、間違いなく。」
何とも言えない沈黙が場を覆う。なのはの魔法は、全体的に無駄にバリア貫通能力が高い。だが、いくらなんでも結界機能の完全破壊というのは……。
「フィーリングで術式を組む子は怖いわね……。」
「リンディ、あの子達をどう扱うつもり? 正直、今の時点であれだと、どこの部隊に組み込むにもオーバースペックすぎるんじゃないかしら?」
「予想外の拾い物だと喜んでいいのか、戦力の調整が面倒になったと嘆けばいいのか……。」
予想以上過ぎた二人のルーキーの扱いに、派閥のトップクラスは頭を抱える事になるのであった。
なお、この試験の映像を見た優喜の感想は、と言うと……。
「まずまず、ってところかな。いろいろ問題点があるから、新しいメニューで、もっとがっつり鍛えようか。」
「あ、あれでまずまず、なんだ……。」
「や、だってさ。フェイトは高速戦闘のくせに被弾が多すぎるし、なのははいくら基本再利用だけでやってるって言っても、撃ち方に無駄が多すぎるし。」
「ええ!? あれ全部再利用だったの!?」
「最初の何発かから後は、基本的にそうだよ?」
どうやら、あまりお気に召さなかったらしい。おかげで、夜天の書の暴走周りの修復が終わるころには技量が上がりすぎて、デバイスの改修の成果もあってどこの部隊も敬遠するレベルに達してしまうのだが、それが当人達にとっていいことか悪いことかは永遠の謎である。
後書きと書いて愚か者の告白と読むコーナー
閑話とは思えない容量になったこの話
最初は本編に入れるつもりだったんだぜ?