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No.18472の一覧
[0] ―― EDGE ―― ネギま(オリ主) [紅月](2010/07/10 18:15)
[1] 第1話[紅月](2010/04/30 00:17)
[2] 第2話[紅月](2010/04/30 11:48)
[3] 第3話[紅月](2010/05/05 21:33)
[4] 第4話[紅月](2010/05/08 01:49)
[5] 第5話[紅月](2010/06/22 17:38)
[6] 第5.5話[紅月](2010/05/15 11:52)
[7] 第6話[紅月](2010/05/21 10:41)
[8] 第7話[紅月](2010/05/22 18:29)
[9] 第8話[紅月](2010/05/28 17:16)
[10] 第9話[紅月](2010/06/07 15:28)
[11] 第10話[紅月](2010/06/21 15:57)
[12] 第11話[紅月](2010/06/21 16:00)
[13] 第12話[紅月](2010/06/28 09:51)
[14] 第13話[紅月](2010/07/05 17:07)
[15] 第14話[紅月](2010/07/10 18:15)
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[18472] 第8話
Name: 紅月◆a3e744a8 ID:3903c47e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/28 17:16


第8話     『修学旅行―――初夜終了』








(・・・確かに甘いな)

エッジは千草の言い分に同意した。


そもそも、ネギの放った“魔法の射手”は“束縛用”である。

物理的攻撃力は低く、対象の捕縛目的で使用される。

そんな魔法の射手が当たった程度では、木乃香が怪我を負うということはあるまい。

精々が、打撲程度であろう。

容易く治癒できるものだ。

ならば、あの場はまとめて捕縛するのが最善。

その後、改めて捕らえ直せば良かったのだ。


それをせず、咄嗟に楯に取った千草に「卑怯」と泣き付く始末。

人質の有用性を教えるだけである。


ネギ本人にも言い分は有るだろうが、今重要なのは優先順位である。



まあ、過ぎ去ったことに固執してもしかたあるまいと、気を引き締める。

千草とやらは、木乃香を“操り人形”にすると宣言した。

ならば、絶対に此処から連れて行かせる訳にはいかなくなった。



スッと戦闘態勢をとる。

見ると、挑発しようと云うのだろう。

隙だらけだ。

ならば、一撃で終わらせよう。

面倒は嫌いなのだ。


“転移魔法”


エッジは跳んだ。

場所は千草の背後頭上。

狙いは頭部。

落下の勢いを用い、唐竹割りに振り下ろした。







「ああ嗚呼亜阿嗚嗚嗚アアアア嗚アアああ亜ア嗚呼アアッ―――――――!!!!!!!」



夜の駅に絶叫が響く。

肩からは盛大に血が噴出し、痛みに喘ぐ千草。


それを背後に聞きながら、エッジは舌を打った。

一撃で終わらせるつもりであった。

それが、殺気が漏れたか転移の気配に気付かれたか。

月詠の声によって千草が動いたため、肩を切り落とすにとどまった。


この時間が千草にとって今日最大のミスならば、この瞬間こそが最大の幸運であろう。

一撃決殺で振るわれた刃。

偶然であろうと月詠の声によって、確実に命を奪うであろう一撃から、生き延びたのだから。


しかし、エッジはそこで終わるつもりはない。

左脇に木乃香を抱え、そのまま振り向き様、首へ斬撃を行う。


月詠はまだ刹那の側にいる。

小猿の式は動けずにいる。

薙ぐように振るわれたその刃は、吸い込まれるように首へと疾走り、



しかして、首を飛ばすには到らなかった。

刃と首の間を遮るように、石が存在していたからである。


その事実に驚愕する。

と同時に、背中を駆け巡るレッドシグナル。

感じる悪寒に身を任せ、反射でもって回避を行った。


視界に映る、飛来する石の杭。

(――コイツは“石の槍”か――!)

宙で身を捻り、空を蹴り、回避しながらも、相手の魔法を見極める。

つるべ撃ちに襲い掛かるそれらを、回避と同時に右腕の刀を振るい、自身と木乃香に当たる軌道のみを最小限で弾いていく。


しかし、マズイ。

このままでは、自身はともかく抱えている木乃香がマズイ。


急激な旋回や急加速は、時に人体に致命的なダメージを与える。

それは、ブラックアウトやレッドアウトと呼ばれる血液の偏移による症状で、高Gによって発生する。

現在の回避行動の連続は危険であろう。


今の状況では転移はできない。

高速の3次元回避のせいで、移動先座標が安定しないのだ。

エッジの転移魔法には、目視か記憶または位置情報が必要であり、初めての土地であることが災いした。

何より荷物を抱えている。


既に体には無数の傷が出来ている。

攻撃は未だ止まず、いずれは致命傷を貰うだろう。

余裕はない。


一瞬の判断。

刀を口で銜え、空いた右手で符を取り出す。

それを、石の槍が飛来する方角へ向け、発動した。


――“閃光”


辺り一面に目も眩むほどの光が満ちる。

その光は、僅かに攻撃を遅滞させた。


その隙を逃さず転移を発動。

場所はネギの後。

しかし、まだ気を緩めない。

まだ次が来る。

刀を構え直しながら、ネギへ僅かな躊躇もさせないよう命じた。


「障壁全力展開!!」

「――ハッ!? “風花・風障壁”!!」


多数の“石の槍”が障壁へとぶち当たる。

石と石をぶつけ合うような硬い音が響く。

僅かの後、ガラスが割れるような音と共に障壁は破壊された。

追撃に備え、気を全身に張り巡らせる。


しかし、攻撃が来ない。

閃光が引いた後には、敵の姿は無く、焼け焦げた跡と壊れた階段、そして血痕だけが残されていた。


「・・・・・・引いた・・・か?」


気配を探り、安全を確認する。

どうやら完全に撤退したようだ。

切り落とした腕が落ちていないところをみると、治療を優先したか。


「ふう」


エッジは、漸く安堵の溜め息を吐いた。








考えることが増えた。

確認できた敵戦力が二人に、未確認が一人。

しかも、その未確認がヤバイ。

首と刃の間に“石の槍”を滑り込ませる技量。

無詠唱で飛来する無数の“石の槍”。

その一つひとつに籠められた魔力の錬度。

恐らくは、かなりの手練だ。


こうなると自身のミスが悔やまれる。

一撃目は仕方ない。

しかし、二撃目。

あれを只の斬撃ではなく、斬岩剣で放っていれば、今頃はこの事件は終わっていたかもしれない。

敵の三流具合に気が緩んだか慢心が出たか。

エッジは、引き締め直さねばと自戒した。


それに、この相手がいると単独での遂行は恐らく不可能。

否が応にも、ネギ達の協力が必要になる。

こうなると話し合いの場も、持たねばなるまい。



もう一つ、事後処理が面倒くさい。

どうしようかと悩んでいると、


「う・・う~~、んん」


どうやら近衛木乃香が目を覚ますようだ。

俺が抱えているのは、色々マズイだろう。

木乃香には、裏を知らせていないという話だし。


「おい、桜咲刹那」


呼ばれただけで察したようだ。

駆け寄ってくる。


「・・・お嬢様・・・」


何やら、それなりに複雑な事情があるようだ。

しかしエッジは、それを横目に見ながらも、事後処理を優先する。


他人の事情に深く関わる気はない。

大抵碌なことにはならないと、月子にも言われている(このあたり、エッジは人間関係が歪である傭兵出身であることが影響している)。


木乃香を心配して集まる3人を背後に、エッジは処理を開始した。








「・・・お嬢様・・・」


刹那はほっと安堵の吐息を漏らす。

お嬢様は特に怪我も無く、無事だった。


しかし、見通しが甘かったと言わざるを得ない。

敵がここまで強行手段を取るとは、想像だにしていなかった。

彼の手助けが無ければ、ひょっとして取り返しがつかないことになっていたやもしれない。

自分たちだけでは、救い出せなかったかもしれない。

その可能性に背筋が凍る。


だが、それでも彼は恐ろしい。

彼が振るった刃。

一切の躊躇なく、命を狩り採りにいっていた。

そこに、余分な感情はなく、坦々と作業のように。

それが恐ろしい。

それは、自分がまだ人を殺したことがないからかもしれない。

でも、それでも、彼は恐ろしい。


いったい彼は、その心に何を抱えれば、そのように成れるのだろうか。







アスナは、木乃香の無事に漸く精神的安堵を得ていた。

それまでは、精神喪失の状態で立っていることすらままならなかった。


いまだに目に焼きつく、光景。

千草と呼ばれた女性が、血を噴出しながら崩れ落ちる姿。

真っ赤な真っ赤な血。

ハッキリと人の死を意識した瞬間でもあった。


もし、罷り間違ったら、自分がなっていたかも知れない姿。

それを想像し、身震いをする。

湧き出す感情。


“恐怖”


漸く、自分の立っている位置が見えた。

“魔法使いの従者”とは。

身を挺して、“主”を守るもの。

あの炎や刃に身をさらす者なのだ。

そして、自分が“それ”であるとハッキリと理解したのだった。


それでも、と思う。

それでも、自分の親友が狙われているのだ。

ならば恐怖くらいなんでもない。

恐怖くらい耐えられる。

そう思うのだ。



あるいは、この意志の強さこそが彼女の最大の武器なのかもしれない。







そんな葛藤するアスナの姿を見て、ネギは思う。


自分が強くなって、このかさんを、アスナさんを、皆を守る。

僕が強くなる。

それに、誰ひとり死なせない。


エッジという人は僕とは相容れない。

彼は人死に躊躇しない。

仕事を遂行するためには、容赦なく相手を殺してしまう。

彼は言った。


「・・・どうしてあんなことができるんですか!?」

「・・・・・・あんなこと?」

「あのお姉さんを斬ったことです!」

「優先順位と効率の問題だ。あれが一番手っ取り早い」

「なっ!?」

「それに俺は殺すつもりだった」

「――なっ!? 殺すなんて!?」

「誤るなよ、ネギ・スプリングフィールド。あれらは敵だ。敵への情けは自身の首を絞める。
 間違えるなよ、ネギ・スプリングフィールド。守るべきはなんだ? それを違えれば、全てを失うぞ」


それに対し、僕は何も言えなかった。

それに彼は「攫われたのは、お前の責任でもある」と言った。

確かに、思い出してみると、あのお姉さんを旅館を引き入れたのは僕だった。

でも、だからこそ僕が守らなければ。

そう、僕は“立派な魔法使い”を目指す身なのだ。

彼の言ったことは間違っていない。

でも、命を奪うことが正しい筈がない。

“立派な魔法使い”は皆を救う存在なのだ。

だから、僕が守る。







side:千草





「殺してやる。殺してやる。殺してやる。あの男! 地獄の苦痛を与えて殺してやる!!」


千草は怨嗟を吐き散らす。

斬られた腕は、治癒札と魔法の治療で取り合えずはくっ付いた。

それでも、直ぐ様完治とはいかない。

血は足りないし、接合面も馴染むまでは多少の時間がかかる。

今でも、ズキズキと滲むような痛みが襲ってくる。


「でも、あんな男の情報あらへんかったで、千草はん」


その千草の様子を楽しそうに眺めながら、月詠が問うてくる。

その姿に怒りを覚えるが、曲がりなりにも命の恩人である。

あの時の一言がなければ、今頃は墓穴に入っていたに違いない。


それはそうと、確かにあんな男の情報はなかった。


「そうやな、情報に穴があったちゅうこっちゃ。情報屋にも痛い目見せてやらなぁ。
 ・・・とりあえずは明日一杯、情報収集や。腕もまだ完治せぇへん。頼むで、フェイトはん」


無関心そうに佇んでいた少年に声を掛ける。

この白坊主は、気に喰わない西洋魔法使いだが、腕は確かだ。


「わかりました、千草」


しっかりと役に立ってもらおう。

そしてあの男を殺す。

命乞いさせて、そのうえで殺してやる。







それぞれの夜は明けていく。









第8話      了




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