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No.18472の一覧
[0] ―― EDGE ―― ネギま(オリ主) [紅月](2010/07/10 18:15)
[1] 第1話[紅月](2010/04/30 00:17)
[2] 第2話[紅月](2010/04/30 11:48)
[3] 第3話[紅月](2010/05/05 21:33)
[4] 第4話[紅月](2010/05/08 01:49)
[5] 第5話[紅月](2010/06/22 17:38)
[6] 第5.5話[紅月](2010/05/15 11:52)
[7] 第6話[紅月](2010/05/21 10:41)
[8] 第7話[紅月](2010/05/22 18:29)
[9] 第8話[紅月](2010/05/28 17:16)
[10] 第9話[紅月](2010/06/07 15:28)
[11] 第10話[紅月](2010/06/21 15:57)
[12] 第11話[紅月](2010/06/21 16:00)
[13] 第12話[紅月](2010/06/28 09:51)
[14] 第13話[紅月](2010/07/05 17:07)
[15] 第14話[紅月](2010/07/10 18:15)
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[18472] 第12話
Name: 紅月◆a3e744a8 ID:3903c47e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/28 09:51


第12話    『修学旅行―――宴の夜・覚悟』







明日菜はショックを受けていた。


エッジが話したのは、6年前以降のこと。

あの“雪の日”に触れずとも、エッジの人生は過酷であった。


10歳の少年の戦う日々。

“力が欲しい”という願いのもと、只管に戦場に立つ。

全ての教えは、戦場で実地をもって教えられる。

最初の人斬りは、月子と出会って3日後のことだった。


「人を斬るのは一瞬だった。10歳の小僧、魔力を使えず、気も扱えない。それでも、10歳の子供が振り下ろした刃は、容易く肉を裂いた」


それからも、続く戦いの日々。

より効率的に振るわれるようになる刀。

気を覚え、威力を増す剣技。

自身のミスと、その代償。

油断、その対価。

貫かれる腹。

抉られる肉。

削られていく命。

生き残る度に、増えていく傷、失われていく何か。

それでも、より力を求める。


「この腹と背の刺青もそうだ。力を求めて、自身に刻んだ。代償など、如何ほどでもない。より多くの手札を欲した」


エッジは明日菜を見る。

明日菜は青褪めていた。

だが、エッジは構わず続ける。


「俺は『エッジ』だ。(いくさ)にくべ、叩いて鍛え、研ぎ澄まされ、そして切り裂く。
 それが俺だ。俺が望んでそうなった」


明日菜を見つめる。

その表情は複雑だ。

怒りを覚えているようで、悲しんでいるようで、哀れんでいるようで、まるで痛みを耐えるかのような顔である。


「お前は言った。どうして殺すなんてことが出来るのか、と。答えはこうだ。
 俺が、殺すことが出来るようになることを望み、それが出来る環境で、そうして過ごしてきた。それが日常だった。
 だから、俺は、殺すことが出来る」

「――――――ッ!?」




それが日常だと、彼は言い切った。

それが日常だと。

もちろん、世界には紛争をしている国、子供が戦う国、戦禍の残る国があることは知っている。

ニュースや新聞、インターネットで簡単に知ることができる。

しかし、それらは壁一枚隔てた向こう側で、自分にとっては別世界の出来事だった。

だが、それが急激に現実味を帯びた。

それは、魔法という裏の世界に関わったことで、今や触れ得るところまで来ているのである。

そのことに、背筋が凍る。

しかし、腹に力を入れて耐える。

自分で望んで訊き出したのだ。

最後まで聞かなくてはならない。


「・・・なんで、力を求めたの?」

「それを語る気はない」


きっぱりと拒絶された。

きっと、それこそが彼の根幹なのだろう。

今の私には、それを訊く権利も資格もない。

だから、最後に一つだけ。


「最後に一つ、いい?」

「・・・ああ」


これだけは訊かなくてはならない。


「罪の意識はあるの?」

「・・・・・・あるさ。依頼で、あるいは不可抗力で、あるいは力の糧に望んで、命を奪ってきた。
 そこに過ちがあるとするならば、いずれ贖う時がこよう。それが、贖罪の日々なのか、この血肉なのかは分からない。だが、かまわない。俺は―――」


彼は言った。


                 「『罪を選んだ』」




話はお仕舞いだというように、風呂から上がる彼。

ショックを受け、考え込む私達を一瞥し、去っていく。

思考が焦りに捕らわれていく。

ここで行かせてはならない。

私の覚悟を見せねばならない。

明日菜は、何かに突き動かされるように口を切った。


「待って!」


エッジは、立ち止まり視線を向ける。

気圧されする必要はない。


「あんたの覚悟は分かったわ。でもね、今回の事は、あんただけのことじゃない。私達だって当事者よ。だから―」


一端切り、息を込める。


「――だから、あんただけの罪じゃないわ。それにね、私は殺すも殺されるも嫌なの。でも、何もしない訳じゃない。木乃香を狙ってるんだから。
 だから、打っ叩く! あんたが殺しちゃうより先に、打っ叩いて、とっ捕まえてやるわ! それなら文句ないでしょ!?」


彼が、目を丸くして驚いている。

なんだか、してやったりという感じだ。


「ああ、そうだな。やってみるがいい」


口許に笑みが浮かんでるのが見えた。

つられて、口角が吊りあがる。


「それと、もうひとつ」


色々あって忘れていた。

けれど、きっと一番に言わなくてはならないことだった。

随分と遅れてしまったけれど、私、神楽坂明日菜は、親友を助けてもらったのだ。

だから。


「木乃香を、親友を助けてくれて、どうもありがとう」


なんだか、清々しい気分だった。





エッジは、風呂場を出ようとしたところで、ピタリと止まった。

話し込んでいて、すっかりと忘れていたのだ。

振り返り、問いかける。


「ああ、そういえば、旅館の周りに敷かれている魔法陣はなんだ? どうも結界の類ではない様なんだが」


エッジは、攻撃魔法以外の西洋魔法については、あまり詳しくない。

それは、自身が使えないということが大きいが、そもそも、それ以外の知識がそう必要ではなかったことに起因する。

兎に角、結界ではないとしか解らなかったので、訊く事にしたのだ。


「・・・え?」

「いや、「え?」ってなんだ」


明日菜としては、意表を突かれた感じだ。


てっきり、旅館を守るための何かを書いているのだと、そう思っていたのだ。

しかし、エッジが言うには結界ではない、という。

そうなると、明日菜に思い付くものは一つだけである。

あのエロオコジョが、事ある毎に成立させようとする“仮契約”。

そして、3-Aの生徒達が騒いでいたとい状況が、可能性を煽る。


こんな状況で、さらに足を引っ張る真似をするアホオコジョ。

明日菜は、沸点に達した怒りが溢れ、突撃せんと駆け出し始めた瞬間。


‘つるん’という擬音さえ聞こえそうな鮮やかさで、明日菜は、宙を舞った。






「よおしゃーー! 宮崎のどか仮契約カード、ゲットだぜーー!!」


カモミールの前に、光が収束し、カードが現れる。

宮崎のどかの姿が描かれたそのカードは、仮契約成立の証である。

カモミールの前のモニターには、仰け反るネギとそれに支えられるのどかの姿が映しだされている。

二人の唇は重なっている。

ネギ・スプリングフィールドと宮崎のどかの、従者契約成立の瞬間であった。


しかし、それだけでは終わらなかった。

再び、カモミールの前に光が溢れる。


「よっしゃー! ・・・あれ? でも、誰だ?」


その光は、徐々に収束し、ひとつのカードを形作る。

しかしモニター画面には、ネギ以外の成立は映っていない。

疑問をよそに、カードは完成に至った。

カモミールは、カードを手に取る。

そこには、『神楽坂明日菜』が描かれていた。






風呂場は、異常なほど静まり返っていた。


すっかり空気と化していた、現状おろおろしている、バスタオル一枚の刹那。

床に散乱する、シャンプーやリンスの小瓶。

湯船に沈んでいくバスタオル。

転がる石鹸。

裸で仰向けに倒れている少年と、裸でその少年に跨る少女。

少年の腕は、少女を支えるように腰元へ伸ばされ、頭は床へぶつけないように浮かされている。

少女の腕は、少年の顔の両側で床に着き、頭は慣性に投げ出され、前のめりになっている。

二人の目は驚愕に見開き、思考は停止し、互いの目を凝視したまま動くことはない。

二人の唇は合わさり、唇の隙間からは僅かなの血の雫が流れ、互いの唇を赤く染め上げている。


彼らは、互いに口付けを交わしたまま、固まったように停止していた。






side:千草




「あの男の素性が判ったよ」


腕の治癒も完了し、明日のための準備をしていたところへの報告だった。

待ちに待った情報だ。

敵を知らねば、屈辱を晴らすなど夢のまた夢だ。


「ほんまか、フェイトはん。早う教えなはれ」

「落ち着いて欲しいな・・・。まあいい。判ったといっても、今回の仕事に就く前のことだけでね。生まれや本名は不明のままだ」

「いいから話さんかい」


フェイトは、その様子に小さく溜め息を零す。

この女、目的を忘れてなければいいが。


「・・・わかったよ。名前は『エッジ』、性はないね。明らかに偽名だけど、調べた限りでは出てこなかったよ。傭兵団『MOON CHILD』に所属、6年前からだね。
 彼は神鳴流を扱うけど、神鳴流は名乗っていない。『神炎流』と呼ばれているよ」

「しんえん流?」

「そう。彼の扱う神鳴流は、雷の代わりに炎を使うんだ。だから神の炎で、『神炎流』。そして、そう呼ばれるだけの実力はある。実際、彼の戦果は凄いよ。
 傭兵団の後期になるけど、単独での組織壊滅や紛争介入があり、それらを成功させている。これが資料だよ」

「・・・・・・くっ」


唇を噛む。

あの男の戦力がこの資料の通りならば、自分では決して勝てないだろう。

その事実に気付き、口惜しげに唸った。

単独で制圧できそうなのは、月詠かフェイトくらいだろう。

いや、あるいは月詠でも危険かもしれない。

それ以前に、月詠なら興が乗ったとか言って、自分で殺してしまうかもしれない。

ならば、やはりフェイトしかない。

彼ならば、殺さずに捕らえることも出来るだろう。

止めを自分で刺せばいいのだ。


「フェイトはん。頼まれてくれるか?」


そして、自分は、戦力が減っているところを襲って、木乃香お嬢様を手に入れる。










第12話    了




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