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No.18472の一覧
[0] ―― EDGE ―― ネギま(オリ主) [紅月](2010/07/10 18:15)
[1] 第1話[紅月](2010/04/30 00:17)
[2] 第2話[紅月](2010/04/30 11:48)
[3] 第3話[紅月](2010/05/05 21:33)
[4] 第4話[紅月](2010/05/08 01:49)
[5] 第5話[紅月](2010/06/22 17:38)
[6] 第5.5話[紅月](2010/05/15 11:52)
[7] 第6話[紅月](2010/05/21 10:41)
[8] 第7話[紅月](2010/05/22 18:29)
[9] 第8話[紅月](2010/05/28 17:16)
[10] 第9話[紅月](2010/06/07 15:28)
[11] 第10話[紅月](2010/06/21 15:57)
[12] 第11話[紅月](2010/06/21 16:00)
[13] 第12話[紅月](2010/06/28 09:51)
[14] 第13話[紅月](2010/07/05 17:07)
[15] 第14話[紅月](2010/07/10 18:15)
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[18472] 第11話
Name: 紅月◆a3e744a8 ID:3903c47e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/06/21 16:00

第11話   『修学旅行―――宴の夜・体当たりの女』






「あーー!! こんなとこにいたのね!?」


明日菜は、思わず声を上げた。

後ろで、刹那が何か言っているが、聞いちゃいない。

なんだか、見つからない探し物がすぐ側にあった的な悔しさで、ついつい声を荒げてしまったのだ。

無論、エッジには何の責もない。


「・・・何か用か?」

「あんたに訊きたいことがあったのよ。で、部屋に行ったのにいなかったから、お風呂に来たの・・に・・? お風呂?」


自身の言葉でピタリと止まる明日菜。

そして、それは驚愕か恥辱かあるいは憤怒か、エッジが思わず「大丈夫か?」と声を掛けてしまうほどブルブルと震えだし、


「キャァーーーーーーーー!!!」


絶叫を上げるのだった。



うるさい奴だと、エッジは耳を塞ぎながら思った。

自分で風呂へ入ってきておきながら、今更悲鳴を上げるとは、意味がわからない。

咄嗟に、刹那が遮音結界を張らなければ、旅館全てに響き渡ったであろう。

その点は、ナイス刹那である。

尤も、そんな状況でも風呂から出ないあたり、エッジである。

それに眼福でもあった。

風呂場の蒸気に当てられ、僅かに水滴を浮かべる素肌は、引き締った腰と女性的な膨らみを持つ胸と相まって、若々しい色香を持っている。

慣れているとは云っても、年頃の男である。

瑞々しく、美しさを持った女性は嬉しいものである。




「ちょっと!? 後ろ向いててよ!」


今更ながらに、明日菜は手で体を隠し、タオルを巻き始める。

顔は言うに及ばず、全身足先から耳まで真っ赤である。

明日菜は、自身の迂闊さを呪っていた。

まったくもって油断しすぎであった。

つい、エッジの発見に我を忘れてしまった。

お蔭で、全裸を曝してしまった。

反省しきりの明日菜だったが、ここで風呂から一端出ると云う案が出ないあたり、間抜けである。



一頻りの混乱から立ち直り、エッジを見やる。

そして気付いた。

風呂中ほどの岩に腰かけ、外を見るエッジの背中。

いや、背中と言わず全身あっちこっちにある傷跡。

素人目にも判る、銃創・刀傷・火傷跡に、抉れたような跡に、腕と太腿にある一周する傷跡。

そして、描かれている模様?絵だろうか、がある。

それらを目にし、息を呑む。

それらは経験。

戦い、傷付き、傷つけた証。

自分と然程かわらぬ歳の少年が、遠い存在に見える。



また、明日菜に遅れて入ってきた刹那も、それらを見た。


傷自体は見慣れたものである。

自身も戦ってきた身だ。

それなりに傷を負ってきた。

しかし、問題はその種類と深さである。

いくつかは、致命傷に至ったのではないか、という深さである。

また、詳しくは判らないが、腕と太腿の傷はもしかして、と思う。

そうではないと思いたいが、もしそうならば、想像を絶するものだっただろう。

背中に見える刺青にしてもそうだ。

自身、聞きかじりに過ぎないが、あの手の所謂呪紋だとすれば、刺れるも激痛、使うも激痛の筈だ。

その覚悟が何処からくるのだろうか。

自身の持とうとするモノとは違うが、それでも自らが傷付き苦しむ覚悟。

未だに覚悟を決められない自身からすれば、信じられない思いである。



流れる水音に、我を取り戻す。

解らないことはいい。

遠いことも構わない。

元より、それが聞きたくて探していたのだ。


「・・・ねえ」

「何だ?」


素っ気ない返事に身が竦む。

僅かに詰まる息を無理やり吐き出し、意を決して訊いた。


「・・・どうして、簡単に傷付け合うことができるの?」

「それは、医者に『どうして手術ができるの?』と訊くようなものだな。俺は傭兵だ。それが“仕事”だからだ」


的確な喩えに「うっ」と詰まるも、更に重ねる。

訊きたいことは、そんなことじゃない。


「そうじゃなくて! えぇと・・・、貴方の仕事は護衛でしょう? 傷付けなくたって、取り返せればいいんでしょう?」

「最大効率の選択だ。今回の事は、あの女が原因だ。ならば、取り除けば終わる」

「最大効率って・・・。取り除けば終わるって、それって殺すってことでしょう!?」

「そうだ」


あまりにアッサリと肯定され、絶句する。

その方が都合が良いと、それを理由に殺すと、エッジはそう言ったのだ。

到底信じられることではない。


「・・・どうして? どうしてそんなに簡単に、命を奪うことを選べるの? 仕事だとか都合がいいとか、そんなことが聞きたいんじゃない。
 人を殺すことができると云う、あんたの頭の中を訊いてるのよ」

「それを知る意味はあるのか? お前のやるべきことに、影響はしないだろう。ならば、知ることに意味はない」


あんまりな言い草に、カチンと来る。

落ち着いてと自身に言い聞かせるも、次第にヒートアップしていく。


「意味がないって何よ! 私達、仲間でしょ!? 信頼しなきゃ、一緒に戦えないじゃない!」

「・・・少し違う。仲間ではなく、協力者といった方が正しいな。そして、信頼は必要ない。信用だけでいい」


取り付く島もない。

拒絶なのか、線を引いてるのか、踏み込ませないようにいている。

それでも、知りたい。

このモヤモヤは不快なのだ。

信頼だとか信用だとか、そんな難しいことは、この際はどうでもいい。

そう、初めから理由なんて簡単だった。


「・・・それに意味ならあるわ」

「なんだ?」


明日菜は、顔に満面の自信を浮かべ、宣言した。


「私が! 私のために! 知りたいのよ!!」







「―――――!」


その傍若っぷりに、エッジは呆気とられた。

理由にすらなっていない理由。

自己満足の極致。

しかし、呆気にとられると同時に感嘆もする。

自分本位。

どこまでいっても自身が中心に据えてある。

現代社会においては、ある種厄介な在り方ではあるが、生物として人間としてどこまでも正しい。

それも陰性のものじゃない。

そうしたいからと云う、明るく陽性なものだ。


「くっ! くくく・・・、あはっ」


笑いが零れる。

陰湿なものなどなく、ただ面白いから笑う。

想えば、ここまで真っ直ぐ問われることなど今までなかった。

裏社会というのは、大概が暗い陰をもつ。

だから、誰もが深く触れられることを嫌い、それが不文律となっていた。

それだからこそ、なのだろう。

こんなにも明るく触れてくる。

それが驚きと、何か分からない面白さを生んだようだ。

エッジは、“あの時”以来、恐らく初めて負の感情なく笑った。

清々しく笑い声を上げた。




「あ゛~、笑わせてもらった。面白いな、お前」


目端に浮かんだ涙をぬぐいながら、声をかける。

文句を言っているが、そんなことはどうでもいい。


「明日菜とかいったか」

「・・・そうよ」

「いいだろう。答えてやるよ。――で? 何が訊きたい?」


明日菜が困惑した顔でこちらを見ている。

まあ、それも仕方がないだろう。


「・・・なんで急に?」

「・・・笑わせてもらった礼だ。他に理由などない」


そう、他に理由などない。

ただ、真っ直ぐな姿が気に入って、今は機嫌がいい。

それだけである。


「そう。なら、遠慮なく訊かせてもらうわ。じゃあ、まずは―――――」







一方、旅館内部では惨憺たる光景が広がっていた。


たちこめる煙。

複数のネギ・スプリングフィールド。

倒れている、見回りの新田教諭。

目を回す女生徒。

それを正座で眺めている者。

そして、さらにネギを追いかける者達。

まさに、混沌と化していた。


原因は、“身代わりの紙型”と呼ばれる魔法具(マジックアイテム)である。

これは、人型に切られ特殊な術式が込められた紙に、自身の名を書き願い奉ることで、自分とそっくりな分身を作り出す物である。

誰でも扱える簡単な術具である反面、複雑な命令ができないという欠点がある。

そして、これを使用したネギは、書き損じた紙型をキチンと処理せず、その結果、“書き損じ達”は独自の行動を始めた訳である。

書き損じ達の行動原理は、ゲームに影響されたのか“キスをする”というものになっている。

尤も、目的達成と同時に爆発してしまうが。


兎にも角にも、人前に複数のネギ・スプリングフィールドという、神秘の秘匿を無視しまくった現象が起きているのである。

幸い能天気な生徒が多いのか、大部分の生徒はゲームの仕掛けだと判断し、その異常に気付いていない。

そしてその影で、ゲームを仕掛けたオコジョのカモミール・アルベールは、仮契約に励んでいる。

尤も、現時点ではスカカードしか成立していない。



一般人を裏へ巻き込む所業。

その許されざる行いが、如何なる結果を生み出すのか、今はまだ誰も知らない。







第11話    了




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