この作品は、習作です。ネギまです。
最近の原作のインフレっぷりに当てられてちょっと書きたくなった。
で、他の最強を考えてみた。
でも、多分強いけど最強ではないと思う。
以下の方は回れ右。
・オリ主なんて嫌い。
・厨二なんて嫌い。
・最強モノなんて(ry
・独自設定なんて(ry
・オリキャラなんて(ry
まあ、作者は原作好きですよ?
作者はチキンハートなので苛めないでください。
プロローグ
ある種、それは誕生に似ていた。
生まれてから培った全ては失われ、支えもなく全てがゼロになった。あるのは命だけ。
響く声。
それはまるで産声のように、だが篭められる思いは喜びでも存在の証でもなく、怨嗟であった。
それは突然であった。
遠く魔法学校から一ヶ月ごとに行われる帰郷。まだ幼い少年にとって両親からはなれて学ぶ魔法学校は時折寂しく感じてしまう。
だから、久しぶりの帰郷に心躍らせ、父と母に会えるのを楽しみにしていた。
しかし、それは適わなかった。
目についたのは燃え盛る建物、突き出された杖とともに灰色に固まるオブジェ。
夜の闇は大地の炎に照らされて、いっそ幻想的ですらある。
魔法使いの家に生まれ、自身も魔法使いになるべく学んでいるというのに尚非現実的な光景。
それらを前に少年の心は追いつかず、足を止めてしまった。
人としては当たり前な反応。しかしそれは、現状で最もとってはいけない反応であった。
『“召喚魔法”』
知識はあった。されど自身扱うことは無く、見たこともなかった。
地響きとそれに伴なう揺れ。地から溢れる様に姿を現す異形の群れ。
頭部から生える角、背に負う鉤爪のついた翼、大木ほどもある太い腕、あるいは口蓋からはみ出る牙。
目に付く限り人とは異なる存在。
『“悪魔”』
少年が自身を取り戻したときにはすでに手遅れだった。
周囲は大小様々な悪魔。少年を取り囲むように固め、家々は崩れ燃え盛り逃げも隠れも適わない。
震える体を自ら抱きしめて、大声を上げ助けを求める。
しかし、それに応えたのは取り囲む悪魔たちの下卑た薄笑いだけだった。
悪魔たちにとって召喚者は仮にも主である。
周囲のオブジェと化した大人たちのように、律儀に石化していることから殺戮が命令ではない。
とは言え所詮悪魔は悪魔。
目的に影響を及ぼさない程度なら簡単に命令を破る。
そしてたかだか子供一人のために石化できる上位悪魔を呼ぶような律儀さなど持っていない。
そう、簡単に言うのなら子供一人の生死など誤差なのだった。
少年は悪魔たちに嬲りものにされた。
悪魔たちの隙間を抜けて逃げようとする少年。
それを軽く小突き転ばす。
しかし、圧倒的に違う体格と膂力で行われたならば、それは容易く少年を破壊していく。
まるで出来の悪いピンボールの様に悪魔たちの間を弾かれ壊れていく少年。
腕を吊り上げられ、片足を喰い千切られた。
響く絶叫。
哂う悪魔たち。
しかし、少年に気を失うことは許されない。
少年の狂態を眺めるために悪魔が魔法をかけたから。
引き千切られる片腕。それでも終わりは来ない。
失血死できぬよう悪魔が傷を焼き塞ぐから。
抉られる目。両目は塞がない。
より恐怖を与えるために。
千々に乱れる意識のなかで、少年は見た。
それは破滅の閃光か、終わりを告げる福音か。余興を楽しむ悪魔たちの背後から、強大な魔法が放たれ悪魔たちを蹂躙していく。
その威力は凄まじく、山を抉り空を貫く。
その余波を浴び木の葉のように舞った。悪魔たちもまた焼かれ吹き飛ばされ消えていった。
少年は生きていた。
数々の偶然が少年を繋ぎとめた。
森の木々が落下から身を守ってくれた。意識は魔法によって失っていなかった。失血をとめられていた。片目は光を失っていなかった。
なにより本能が生を選択した。
人間は死に瀕すると本能が生きるための行動をとる。それは種族維持本能による性欲だったり、五感の鋭敏化だったりする。
少年の本能は生きるために食べることを選択した。
少年の前には弱った生き物。魔法の余波を受け瀕死の生き物。弱小なれど高エネルギーを内包する悪魔。
少年は齧り付いた。
あれから数日。
痛みと苦しみ、そして渇きから幾度もの失神と覚醒を繰り返し山を彷徨った。
それでも生を繋ぎ留めたのは沸き上がる憎悪。
苦痛、恐怖、絶望、悲哀、憤怒、虚無。あらゆる負の感情で焼き尽くされた精神。
それでも残ったものは憎悪だった。
その憎悪を糧に生にしがみ付く。死ねば何も果たせぬと。
少年はいつしか立ち上がり、それは帰巣本能ゆえか廃墟と化した村に辿り着いた。
かつての面影はなく、未だ僅かに燻っている。
村人の石像は運び出されたのか、残ってはいなかった。
暫らく眺めてはいたものの、かつての自宅へ足を向けた。
焼け爛れたドアにかつての名残が見える。だが何も残ってはいなかった。
屋根は焼け落ち、壁は煤で以前の白い壁は見えない。
家屋の内側も延焼したのか残骸があるばかり。
ガラスは割れ砕かれていた。
割れ、あるいは溶けたガラス片。
微かに反射する光が赤色を放っていた。
そこで初めて気付いた。
割れたガラスに映る人影。自身とは違う容姿。
なのに影は自分と対称的な動作をする。
今まで気付いていなかった。落ち着いたようで未だに前後不覚だった。
何時から歩いていたのか、何時から目が見えるようになっていたのか。
慌ててガラスに付いた煤を拭った。
ふとその手見てみる。その腕は失ったはずだった。
少年はじっと手をみる。
自身の手であれど、どこか鋭さをもっている。
ガラスの欠片の中の自身を見る。
造形に面影はある。しかし、金に輝いていた髪は、血を浴びて乾いたように黒ずんで、失った筈の右目は爛々と暗い光と灯していた。
笑いが起こる。
嗤うしかないというように溢れ出す。
それは零れるように、そしていつしか狂ったように。
嘲りか悲しみか、あるいは怒りか。しだいにそれは涙が混じり、ただただ主張するように哭き上げた。
それは産声にも似て。
しかし、誕生の喜びではなく怨嗟を湛えていた。
幕間1
side:メルディアナ魔法学校・校長室
地球。いわゆる魔法世界における呼称“旧世界”。その拠点のひとつたるメルディアナは混乱からようやく醒めつつあった。
魔法使いの村への悪魔による襲撃。軍隊一個大隊に匹敵する戦力を保有する村が壊滅した大事件。
救助できたのはたった二人。それ以外のほとんどの村人は石化されてしまった。
しかし、英雄の一人息子が救出されたのは僥倖か。
その事実を噛み締め、校長は溜め息を漏らした。
「しかし、これだけの戦力を壊滅とは・・・。並の手の者ではあるまい」
調査から挙がった資料に目を通しながら、今後について考える。
まずは石化された村人たち。魔法界の術者ですら解呪できなかった石化の魔法。
おそらくは爵位級以上の上級悪魔の仕業であろう。そして多数召喚された下級悪魔のレベルも並ではなかったようだ。
もしかすると想像以上に上の人間が関わっている可能性がある。それも多数。
藪を突いて大蛇を出しかねない状況に眉を顰めた。
「・・・まずはネギを守る状況を作らねばならぬか」
十中八九が怨恨。あの村の戦略的価値は低い。
それにネギが言うには「お父さんが助けてくれた」とのこと。
ならば目的はネギ・スプリングフィールドということになる。
世界を救った英雄ナギ・スプリングフィールド。
英雄には多くの味方とともに多くの敵がいる。
自身の息子を巻き込んだナギに心の中で馬鹿めと罵りながらも、あの状況からネギを救ってくれたことに感謝した。
自身の手の内にあるうちは自身で守れば良いと見切りをつけ、資料に目を通していく。
『“被害者一覧”』
苦々しい思いでそれらを眺めていく。
そこには氏名とともに状況が書かれている。
石化の破損状況。あるいは死亡といったもの。
多くは石化されていたと云っても、全ての村人が石化されていた訳ではない。
なぜなら石化の能力を持つ悪魔はそう多い訳ではないからだ。
特にこれだけ強力ならば爵位級悪魔。そこまでいくと召喚すら困難になる。
そんな爵位持ちが、律儀に一人ひとり石化していく訳があるまい。
多くを一薙ぎにしながら下級悪魔に残党を当たらせた。そんなところだろう。
その中に一人だけ違う記入があった。
『“行方不明:レイ・ティアーズ:10歳:男性”』
むうっと短く唸りを上げ詳細を読む。
学校からの月一の定期帰宅。その最中の襲撃。
村の状況から鑑みるに、生存は絶望的でさえある。
初歩の魔法しか知らぬ僅か十歳の少年が、果たしてどうしてあの地獄から生き延びられようか。
石像も遺体も見つかっていないということだが、建物の下敷きになったかあるいは燃え尽きたか。
幼い命を諦めることに罪悪感を感じながらも、現状では捜索隊すら組めない。
校長は書類に二重線を引き修正を入れた。
『“死亡確認:レイ・ティアーズ:10歳:男性”』
そして、ネギ・スプリングフィールドを守るための情報操作を始めた。
この瞬間、少年“レイ・ティアーズ”は自身の姿形を失い、そして公的に死亡した。
世界にひとつ闇が生まれた瞬間であった。
プロローグ了