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No.18378の一覧
[0] 機動戦艦ナデシコ 劇場版前 ~忘れられない『記憶』~[佐久野伴樹](2010/06/02 10:30)
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[18378] 機動戦艦ナデシコ 劇場版前 ~忘れられない『記憶』~
Name: 佐久野伴樹◆c86e3130 ID:535b14cb
Date: 2010/06/02 10:30
ベッドから体を起して、エリナは乱れた髪をまとめている
アキトも起き上がりベッドサイドに置いたビールの缶に手を伸ばす

缶の底にたまってぬるくなったビールの残りを
アキトは飲み切った

もう空だ…
アキトは思った

横にいたエリナがアキトを見つめていた
「最近ずいぶん強引ね」

少しあきれたように
そして、悲しげに言うエリナ

アキトはエリナの体を抱き寄せ、その唇に口づけをした
「エリナのせいだよ…」

そう囁いてみる
「嘘。あなたは忘れようとしてるんでしょ…」

核心を付かれた思いがした

いくら快楽を求めても
心の渇きは満たされない
じりじりとした焦燥感だけが胸に残った

アキトは、エリナの言葉に応えられなかった


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第××話 忘れられない『記憶』

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目の前に広がる宇宙空間
そこにはターミナルコロニー“タカマガ”が浮かんでいた
だが今そのコロニーは戦場と化していた
急襲され対応ができない駐留艦隊の悲痛な通信が飛び交う

『アンノウンがセントラルユニットに接近!』
『まずい!あそこには居住区画が…!民間人の避難は完了しているのか!?』

『それが…指揮系統が分断されており現在確認ができません!』
司令官は愕然とした

その時通信が入る
『駆逐艦サルビアより入電。“わが艦が楯となる”と…』
『まさか…!特攻する気か!』


アキトはボソンジャンプで急襲すると駐留艦隊の指揮系統を破壊
指揮系統を失った艦隊を次々と蹂躙
そしてある場所を目指していた

「あと少し、あと少しで…」

突如として敵機接近の警報がコクピットに鳴り響く
駆逐艦級の戦艦1隻と艦載人型機動兵器、ステルンクーゲルの2個小隊が強襲してきた

「くそ!まだいたか!」

駆逐艦級の戦艦はSAM艦対空ミサイルを一斉射しながらアキトに接近する
黒い機動兵器のコクピットにミサイル警報が鳴り響く

「しつこい!」

黒い機動兵器はミサイルをブースト全開で回避しようとする
だがそのとき側方からステルンクーゲルに急襲された
ステルンクーゲルの2個小隊に囲まれ、更にミサイルの猛攻を受ければいくらこの機動兵器のディストーションフィールドと言えども持たない

「ラピス!」
アキトは咄嗟に少女の名前を叫んでいた

「デフコン1だ!」
『わかった』


通信越しに少女の返答がありしばらくして、駆逐艦サルビアの後方にボース粒子増大反応が発生する

『本艦後方にボソン反応!』
『何!?』

『質量推定…、戦艦クラスです!』
そこに現れたのは流線形に白亜の船体だった

『敵未確認艦に重力波増大!グラビティーブラスト、来ます!!』
『緊急回避!』

『ダメです!我が艦が避ければ射線軸上には居住ブロックが…!』
絶望的な表情をしてオペレータが叫ぶ

駆逐艦サルビアの艦長は決死の覚悟で叫んでいた
『対空防御!!』


流線形の船体基部に設けられた4門の多連装グラビティーブラストが火を吹いた
そして重力波の奔流は、駆逐艦サルビアをそのディストーションフィールドごと飲み込んだ

さらに重力波はその勢いを弱めずコロニーのセントラルユニットに迫る
アキトはそのとき状況を察知した
「まずい!」

そう叫んだときには遅かった
重力波がコロニーの壁面に到達し、セントラルユニットを飲み込む

灼熱化したコロニーの外壁がめくれ上がる
スパーク光とともにセントラルユニットが爆発した

アキトは呆然として見ていた
飛来した破片がアキトの乗る機動兵器のディストーションフィールドを叩く

アキトはそこにいたであろう人たちのことを考えた
嫌な汗が噴き出した

『アキト!後ろに敵!』
通信越しの少女の声

アキトははっとして我に返る
残ったステルンクーゲル1個小隊が接近していた

アキトは転身してブースト最大で目的の場所に向かった

アキトにはそうまでしても向かわなければならない所があった
このコロニーには極秘裏に“火星の後継者”の拠点が存在している

憎しみだけが今のアキトを突き動かしていた

自分から全てを奪った“火星の後継者”を殲滅するために
そして彼らに攫われた妻を救い出すために
そのためにこのコロニーの彼らの拠点を破壊する

それが彼の任務であり使命だった


ステルンクーゲルを振り切るとアキトは先ほど破壊されたセントラルユニットに向かった

その時アキトは驚愕した
破壊されたセントラルユニットから沢山の人が宇宙空間へ放り出されていた

兵士、
サラリーマン風の男性、
職員らしき女性
アキトは思わず目を覆いたくなった

ふと何かが目にとびこんできた
親子だった
白いブラウスを着た母親がまだ小さな娘を抱きしめていた

「あぁ」
アキトは口の中が渇いてゆくのを感じた

脳裏に過去の記憶がフラッシュバックした

火星ユートピアコロニー
木星蜥蜴に襲われ避難した地下シェルター
そこで出会った親子
アイちゃんと呼ばれていた小さな少女とその母親

「アイちゃん…」

口の中はもう乾ききっていた
手のひらは汗でまみれていた
頭が朦朧とする

そのとき耳元で声が聞こえた


「お兄ちゃん…」


はっとして振り返える
しかしだれもいない

「お兄ちゃんが殺したの?」
「え!」

また、聞こえるはずのない声が確かに聞こえた
ふと見ると目の前の宇宙に浮かぶ少女に、アイちゃんの顔がだぶって見えた

「お兄ちゃんがあたしたちを殺したの?」
「ち、違う…」

「みんな死んだよ…」
「わ、わざとじゃないんだ!」

「みんな殺されたよ…」
「違うんだ!俺は、俺は…」

「お兄ちゃんが殺したんだよ?」

アキトは眼を見開いていた
鼓動が張り裂けるほど高鳴っていた

「うわああああああああああああああ!」




自分の叫び声で目を覚ました
気がつけばそこはいつもの自分の部屋だった
もう朝らしい

部屋のスクリーンからは疑似日光が差し込んでいた
口の中はからからに乾いていた

「また、いつもの夢か…」

アキトは重い体を引きずるようにベッドから起きる
床には昨夜飲んだビールの空き缶がつぶれて転がっていた

横でエリナが寝息を立てて眠っている
その瞳には微かに涙の跡があった

荒んだ心が、また少しヒリヒリと痛んだ
「俺は、何をやってんだろう」

罪を忘れようとして
こうして、また誰かを傷つけている

「忘れられるはずなんて、ないのにな…」

そのことは自分でもわかっていた
痛いほどに

きっと彼女とも、もう長くは続かないだろうと確信に満ちて思った

アキトは彼女の涙をそっと拭うと
起さないように、静かに部屋を出た


END




追記
大変お見苦しいものをお見せしてしまいました(汗)

ナデシコDVDをレンタルショップで借りて全巻見ました
この年齢になってみても
やっぱりナデシコは面白いですね
でもきっと昔とはまた違った見方をしているのではないかと思いますが…

たしか劇場版ナデシコのパンフレットか何かに、
アキトとエリナが『男と女の関係』にあった、と書かれていて
小学生の当時の私はショックを受けました(笑)

末筆ながら、私の稚拙な文章に目を通していただいた方に感謝いたします。


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