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No.18329の一覧
[0] とある『海』の旅路(オリ主によるFate主体の多重クロス)【リリカル編As開始】[よよよ](2018/03/19 20:52)
[1] 00[よよよ](2011/11/28 16:59)
[2] Fate編 01[よよよ](2011/11/28 17:00)
[3] Fate編 02[よよよ](2011/11/28 17:03)
[4] Fate編 03[よよよ](2011/11/28 17:06)
[5] Fate編 04[よよよ](2011/11/28 17:16)
[6] Fate編 05[よよよ](2011/11/28 17:23)
[7] Fate編 06[よよよ](2011/11/28 17:26)
[8] Fate編 07[よよよ](2011/11/28 17:30)
[9] Fate編 08[よよよ](2011/11/28 17:34)
[10] Fate編 09[よよよ](2011/11/28 17:43)
[11] Fate編 10[よよよ](2011/11/28 17:49)
[12] Fate編 11[よよよ](2011/11/28 17:54)
[13] Fate編 12[よよよ](2011/11/28 18:00)
[14] Fate編 13[よよよ](2011/11/28 18:07)
[15] Fate編 14[よよよ](2011/11/28 18:11)
[16] Fate編 15[よよよ](2011/11/28 18:22)
[17] Fate編 16[よよよ](2011/11/28 18:35)
[18] Fate編 17[よよよ](2011/11/28 18:37)
[19] ウィザーズクライマー編[よよよ](2012/08/25 00:07)
[20] アヴァター編01[よよよ](2013/11/16 00:26)
[21] アヴァター編02[よよよ](2013/11/16 00:33)
[22] アヴァター編03[よよよ](2013/11/16 00:38)
[23] アヴァター編04[よよよ](2013/11/16 00:42)
[24] アヴァター編05[よよよ](2013/11/16 00:47)
[25] アヴァター編06[よよよ](2013/11/16 00:52)
[26] アヴァター編07[よよよ](2013/11/16 01:01)
[27] アヴァター編08[よよよ](2013/11/16 01:08)
[28] アヴァター編09[よよよ](2011/05/23 20:19)
[29] アヴァター編10[よよよ](2011/05/23 20:38)
[30] アヴァター編11[よよよ](2011/05/23 22:57)
[31] アヴァター編12[よよよ](2011/05/23 23:32)
[32] アヴァター編13[よよよ](2011/05/24 00:31)
[33] アヴァター編14[よよよ](2011/05/24 00:56)
[34] アヴァター編15[よよよ](2011/05/24 01:21)
[35] アヴァター編16[よよよ](2011/05/24 01:50)
[36] アヴァター編17[よよよ](2011/05/24 02:10)
[37] リリカル編01[よよよ](2012/01/23 20:27)
[38] リリカル編02[よよよ](2012/01/23 22:29)
[39] リリカル編03[よよよ](2012/01/23 23:19)
[40] リリカル編04[よよよ](2012/01/24 00:02)
[41] リリカル編05[よよよ](2012/02/27 19:14)
[42] リリカル編06[よよよ](2012/02/27 19:22)
[43] リリカル編07[よよよ](2012/02/27 19:44)
[44] リリカル編08[よよよ](2012/02/27 19:57)
[45] リリカル編09[よよよ](2012/02/27 20:07)
[46] リリカル編10[よよよ](2012/02/27 20:16)
[47] リリカル編11[よよよ](2013/09/27 19:26)
[48] リリカル編12[よよよ](2013/09/27 19:28)
[49] リリカル編13[よよよ](2013/09/27 19:30)
[50] リリカル編14[よよよ](2013/09/27 19:32)
[51] リリカル編15[よよよ](2013/09/27 19:33)
[52] リリカル編16[よよよ](2013/09/27 19:38)
[53] リリカル編17[よよよ](2013/09/27 19:40)
[54] リリカル編18[よよよ](2013/09/27 19:41)
[55] リリカル編19[よよよ](2013/09/27 19:56)
[56] リリカル編20[よよよ](2013/09/27 20:02)
[57] リリカル編21[よよよ](2013/09/27 20:09)
[58] リリカル編22[よよよ](2013/09/27 20:22)
[59] リリカル編23[よよよ](2014/09/23 00:33)
[60] リリカル編24[よよよ](2014/09/23 00:48)
[61] リリカル編25[よよよ](2014/09/27 01:25)
[62] リリカル編26[よよよ](2015/01/30 01:40)
[63] リリカル編27[よよよ](2015/01/30 02:18)
[64] リリカル編28[よよよ](2016/01/12 02:29)
[65] リリカル編29[よよよ](2016/01/12 02:37)
[66] リリカル編30[よよよ](2016/01/12 03:14)
[67] リリカル編31[よよよ](2018/03/19 20:50)
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[18329] Fate編 07
Name: よよよ◆fa770ebd ID:41a6a9cc 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/28 17:30
見たことも無い景色だった。
頭上には炎の空。
足元には無数の鋼。
戦火の跡なのか、世界は限りなく無機質で、生きているモノは誰もいない。
灰を含んだ風が、鋼の森を駆け抜ける。
剣は樹木のように乱立し、その数は異様だった。
剣による無限の樹木、それら幾つもの武具は大地に突き刺り使い手不在のまま錆びていく。
―――それを。
まるで、墓場のようだと思った。

視界が戻る。
日が昇って随分と時間が経つのだろう、確かな日差しが伝わってきた。

「今度は――――また、違った夢だな」

ぼんやりと目を開けて、見ていた夢を思い起こす。

……剣の丘。

前回は無限の世界が繁ってる巨木が生える白銀の大地、今度は無限に剣が樹立する墓場の様な丘か。

「―――その前が一振りの剣の夢、更に前は十年前の災害か………碌な夢見ないな俺」

いや、此処はうなされないだけましだと、前向きに考えてみるか。
昨日の事を整理してみる。
慎二に頼まれ弓道場の掃除と整理をした後、アーチャーとランサーが戦っていたところを目撃した俺はランサーに襲われ。
アリシアのペットであるポチが現れてなんとか助かったけど、学校は溶岩を纏ったポチにより火災になった。
ポチはもう家のペットだからな、ペットの不始末は飼い主の不始末だ、少しでも火の勢いを止めようと消火栓まで向かうところで遠坂に止められ。

「ああ、そうだアーチャーのマスターって遠坂だったんだよな」

遠坂がこの冬木の管理者で、不届きな無届魔術師である事がばれた俺は家に案内されたんだっけな。
家に着いたら遠坂がアリシアを魔術師の名門エーデルフェルトって見破り、無届の件の代わりにポチに柳洞寺から霊脈を使い、新都から魔力を吸い上げているキャスターの妨害を依頼してきたんだ。
サーヴァントを召還してない俺はアリシアと共に教会に保護してもらうため遠坂に案内されて。
言峰綺礼、あのエセ神父に出会った。
聖杯戦争という殺し合い。
勝者にのみ与えられる、あらゆる望みを叶える万能の願望機―――聖杯。
聖杯を手に入れる為には手段を選ばない、関係無い人達まで危害を加えるマスターを止める為に俺は聖杯戦争に参加したんだ。

―――喜べ衛宮士郎。

俺の戦う理由は聖杯を手に入れる事じゃなくて。

―――君の望みは、ようやく願う。

手段を選ばない奴を止める。
十年前のあの日の惨状、不当に命を奪われる理不尽、力の無い誰かを守る為に魔術を鍛えてきたんだから。
でも、教会から帰って来て土蔵でサーヴァント召喚しようとした時に気づいたんだ。
降霊術とかいう魔術を知らない俺は、サーヴァントを召喚する方法なんて知らないって事実に、まったく、遠坂にへっぽこって呼ばれるのも頷けるかもな。
凹んでても仕方ないので何時もの鍛錬してる内に寝てしまい、起きたら居間にランサーが寛いでいてテレビの通販番組なんか見てるわ、そのランサーのマスターが教会に預けたアリシアだっていうから驚きだ。
そのアリシアが聖杯戦争に参加する目的は確か聖杯を破壊す――そうだ、『この世全ての悪』で汚染され願いを叶える人がいれば、聖杯はそれ以外の人を犠牲にして叶えるだったな。

冗談じゃないぞ!
そんなふざけた事許せるか!
それこそ十年前と同じ事になる!!

「俺も聖杯がそうなら破壊する」

よし、サーヴァントを召還したらアリシアと共闘して聖杯を壊し最後にランサーと雌雄を決せば良いんだ。
自分のやるべき事を確認すると俺は居間へと向かう。
居間ではアリシアは既に起きていて、ワープロらしき物を弄り、その横でポチが構って欲しいのか転がっている。
「おはよう」と言いながら居間に入る、すると「おはよう」と言う声が二つと「既に陽もだいぶ上がって来てるだろうに、随分な余裕ぶりだな衛宮士郎」との声。
予想外の声に「えっ?」としていしまうものの、声の方を見ればそこにはエセ神父が両手にお茶を持ち座り、台所からはランサーがガチャガチャと音を立て何かしていた。

―――なんでさ。

「如何した、狐にでも抓まれたか、それとも悩みがあるなら言うがいい聞いてやるぞ」

驚いている俺が変だとでも言いたげに、言峰は神父らしく振舞っている―――何だか昨日の雰囲気とはえらい違いだな。

「……いや、そもそも何で監督役のお前が居るんだ言峰」

「聖杯戦争の監督役だからこそだ、が。
一人のマスターを贔屓するのは問題だと言いたいのだろう。
なに、確かにお前の言い分も解る。
だかな昨夜、お前と凛が帰った後に私も考えを改めてな、あの聖杯が危険極まりないモノであると判断した。
聖杯の中には『この世全ての悪』が生まれようとしてる、故に降臨されたアリシア様に、聖杯を現界させる大元、大聖杯まで辿りついて頂きたいと思い資料を持ってきたのだよ」

そう口にする言峰は紙の束を指し。

「大聖杯と一言に言っても、アレは魔法すら使用されてるだろう代物だ。
ランサーの宝具を使用すれば別かもしれないが、それ以外ではな、何分大聖杯は大掛かりな魔術の装置だ容易には壊せまい。
更には、行く道の途中にアサシンとキャスターが居る。
それ故、アリシア様に協力してくれそうなマスターである―――衛宮士郎、お前に頼みに来たのだよ」

「ちょっとまて、なんでアリシアに様なんだ?
それに、それなら管理者の遠坂の方が良いだろう」

「なにっ、知らないで匿っていたのか!?」

魔術の名門、そう遠坂が言ってたけど、エーデルフェルトてこの神父が様をつける程に凄いのか?
ワープロらしき物を弄るアリシアに視線を向けると、「なに?」て感じでキョトンとしている。
そんな俺を言峰は一瞬、呆然として見た後。

「アリシア様は―――いや、アリシア様には何か考えがあっての事。
ならばここで私が話す必要もないだろう」

とか、言い横でワープロらしき物を弄っているアリシアを一瞥する。
アリシアってとんでもなく凄い処のお嬢様だったのか、しかもこの神父に何したんだろうか、昨日の雰囲気とはえらく違う。
まさか協会は当然として、教会にまで強い影響力を持っているのだろうか?
よし、ここは出会った時の事を思い出してみるか。
確か―――

―――夜の公園で。

―――全裸で。

しかも野良猫をまるかじりしていた、な。

「………」

別の意味で凄いのは確かだけど、正直とてもそんな凄いお嬢様とは思えないぞ。

「次に、お前よりも凛の方が遥かに有能なのは確かだ。
だが、凛には一般人に手を出しているマスターの始末を依頼してある。
それに、凛は甘いところもあるが魔術師、それも大聖杯作製に関わる家柄だ、壊すなどと話せば敵に回すだろう」

くっ、何も知らない一般人を犠牲にしている奴がもう居たのか、確かにそんなマスターが居るなら言峰の言う通り放って置けない。
それに、大聖杯と遠坂が関係してたのなら協力は難しいか。
俺と言峰がそこまで話した処で。

「おい、マスター。炒飯ができたぞ」

台所から食欲を誘う良い匂いと共にランサーが入ってくる。
さっきの音は鍋を振るう音だったのか。
いや、それより。

「……ランサー、料理出来たんだな」


とある『海』の旅路 ~多重クロス~

Fate編 第7話


また、私はお兄ちゃんの記憶を見ている。
それは月の綺麗な夜、只何もする事も無く横にいる見ず知らずのおじさんと月を見ていた。
お兄ちゃんの記憶からはそのおじさんが衛宮切嗣だと解る。
おじさんは死期が悟った動物の様に外出が少なくなっていたらしい。

「子供の頃、僕は正義の味方に憧れていた」

それは遺言なのか理想を語りだす。

「なんだよそれ。憧れてたって、諦めたのかよ」

記憶のお兄ちゃんが自分の目標としている相手、そのおじさんが諦めた様な言葉にむっとしていた。

「うん、残念ながらね。ヒーローは期間限定で、オトナになると名乗るのが難しくなるんだ。そんなコト、もっと早く気が付けばよかった」

記憶の中でのお兄ちゃんは納得している様だけど、私は納得してない。
だって、元々正義なんて人――ううん、生命全てに置いて違うのだから。
犬や猫、鳥にだって正義はあるんだよ。
それでも生きる為、理想の為、他者の正義を蹂躙し自分の正義を押し通す、それが生命、故に常に争い成長、進化して行く存在。
それを諦めるのは、今まで自分の正義の為に蹂躙してきた者達に対しての冒涜にもなるんだよ。
私としては立ち止まらず、正義の味方を押し通して欲しかったと思うけど。

「そっか。それじゃしょうがないな」

「そうだね。本当に、しょうがない」

これはお兄ちゃんの記憶なのだから仕方が無いと相づちをうつ。

「うん、しょうがないから俺が代わりになってやるよ。
爺さんはオトナだからもう無理だけど、俺なら大丈夫だろ。まかせろって、爺さんの夢は」

……ああ、そうか。

「――――俺が、ちゃんと形にしてやっから」

おじさんは諦めたんじゃない、お兄ちゃんに自分の正義を託したんだ、だから―――

「ああ―――安心した」

微笑み、最後にそう言ったんだね。
おじさんが静かに目蓋を閉じ、その生を終えたのを解ったお兄ちゃんはただ静かに見守り。
それからは託された正義を、憧れた夢を現実に成す為に歩き始めたんだ。
そこで夢から覚めた私は身体を起こした。

「……人は、凄いな。成せなかった夢を次の世代へ託して、きっと何時かは現実に出来るだろうな」

気が付けば少し目頭が熱くなっている。
何時の間にか布団に潜り込んで来たらしく、ポチがいて「大丈夫か」と慰めてるのか擦りつく。

「私は大丈夫だよ。
少し良い夢を視ただけだから、人と人との絆の夢を理想を託し何れは現実に成すだろう夢をね」

ポチにはよく解らないらしく「………」と動きを止めている、そんなポチを撫でているとふと気が付いた。

「でもポチ、遠坂さんに言われた霊脈は押さえてる?」

「問題ない、ちゃんと此処から伸ばして押さえてるぞ」

私の質問に答えたポチは褒めて褒めてと擦りついて来る、そんなポチに私は「うん、ポチはえらい子だよ。いい子いい子」と撫でる。
ポチを撫でつつふと目に入った時計からは、時間は午前八時を回った頃、二度寝するのも勿体無いので起きる事にした。
身支度を終え、ラインを通してランサーさんと挨拶を交わし、自分がやるべき事を考え、小型の端末を持って居間に行く。
やるべき事は、私が力を使わなくても戦える様にする事、取れる選択肢を多くしておくのは必要だと思うんだ。
だって、力使う度に世界を遮断しないといけないのは、もしかすると不便かもしれないから。
しかも、ちょっと力の加減を間違えれば抑止力が発生してこの国や街が消えてしまうか、私の力で星や銀河ごと消えるか、かな。
手に持つこの端末は、虚数空間に漂う残骸のメインシステムらしき物から複写した情報が入っている。
その情報にはお母さんが何をしてたのかは知らないけど、管理世界の魔法の術式が含まれているんだ。
アリシアの記憶からは民間企業の研究開発とかだったとなっているけれど、もしかしたらアリシアの死んだ後は管理局で働いてたのかなと思いつつも、居間で端末を起動させ魔導師の魔法『ミッド式』と呼ばれる術式を確認する。
次元跳躍魔法に、対人用のハーケンセイバー、プラズマランサー、バインド等色々とあるけど、基本的な術式のフォトンランサーが気に入ったかな。
ランサーかうん良いね、基本なだけあって色々な改造が出来るのもいい。
それに神父さんから預かったランサーさんの動きや、槍術を参考に出来れば私でも少しは出来るかもしれない。
じゃあと、昨日お腹を刺さしてくれた槍の呪いを確認し術式を組み合わせてみる。

「こんな感じかな」

呪いの効果と威力のバランスで悩んだけど、一時間ほどした頃『フォトンランサー・ゲイ・ボルグ・シフト』、因果反転を利用し、放てば既に当たっている術式が出来上る。
出来れば簡単に魔法が使えるようデバイスが欲しかったけど、如何も演算回路が『ゲイ・ボルグ』の呪いを計算しきれないのか、デバイスを使用しての使用は無理みたい。
でも、術式を制御する処理能力程度なら幾ら使っても抑止力は起きないだろうから良いとするかな。

「後はサーヴァント相手にどれだけ通用するかだね」

そう言いつつポチに用意させたお茶を飲む。
サーヴァントの中には魔術に長けたキャスターがいるそうだから、この相手に通用するのかが問題かな。
下手を打てば空間操作により、放った全てが反射される可能性も無くはないし、相手が世界との位相を歪めれば当たる事すらないだろう。
でも、この世界の英雄ってどれだけの事が出来たのかな?
先日収集した知識からは、英雄と呼ばれる者達のなかには神すら倒した者もいるとあった、まだ生きているとはいえ神の座まで来て私の影と戦っている当真大河も英雄と呼ばれているのだろう。
そんな事を考えていたら来客らしく呼び鈴が鳴り、「はい、どなたですか」と玄関へと出て開ける。

「……アリシア様、今は聖杯戦争の只中。もう少し慎重になられては如何かと」

目の前には昨日会った神父さん。
その神父さんは、お客さんが来たから玄関を開けただけなのに私が迂闊だと言ってきた。
そんな事を急に言われても理解等出来ず私は「はにゃ?」としていけど。

「……ランサーはちゃんと護衛をしているのか」

神父さんは何故かため息をつき。

「テメエに言われるまでもねぇ、バゼットの二の舞なんかさせるかよ」

私の後ろで実体化したランサーさんが現れる。
ん、バゼットって誰だろう?

「なら良いのだがな」

ランサーさんは何故か神父さんに殺気を向けている、昨日まで神父さんがマスターだったのに仲が悪かったのかな?
そんなランサーさんから視線を戻し。

「昨夜話しました大聖杯の場所と、大まかな構造を記した資料を持参しました―――お受け取り下さい」

神父さんは言いながら大きな紙の封筒を渡してくれる。

「後は衛宮士郎に話があるのですが、上がっても宜しいか」

「うん、お客さんを玄関で待たすのはいけない事だし。
お兄ちゃんも神父さんに会いたがっていたよ」

「それは何より。互いに好都合と言ったところでしょうか」

神父さんを居間に案内した私は、取敢えずテーブルを挟んで対面するように座ってもらい、ポチにはお茶を煎れさせる。

「ランサー、一つ聞くがコレは何だ」

そんな神父さんは、お茶を入れ運んで来るポチを見つめ呟く。

「ああそいつか、夜明け前くらいだったな、マスターの部屋の床下から現れて布団に潜り込んでたぜ。
マスターがポチって呼んでるからな、そうなんだろ。
そういやぁ、昨日校庭に現れた精霊もポチだったか―――マスター、此処にはポチって精霊の種族でもいるのか?」

質問は流れるようにしてランサーさんから私に振られる。

「ん、ポチはポチで他にはいないと思うよ。
昨日はお兄ちゃんの帰りが遅いし、藤姉さんも怒るからこの子に迎えに行って貰ったんだよ」

テーブルの上に乗せポチを紹介する。
神父さんとランサーさんはテーブルの上を転がるポチを見て。

「昨日の奴がこんな奴だったとは」

「……サーヴァントさえ梃子摺る相手が、こんな石の玉だったとはな」

ポチを見詰めるランサーさんと神父さんは、褒めてるのか貶してるのか良く解らない発言をしていた。

「話を戻しましょう。む、衛宮士郎は」

ポチにお兄ちゃんの事を尋ねると「まだ、寝てるみたい」って言うけど。
神父さんにはポチの思考を読み取る力が無いらしいので私から話す事にした。

「呼んだ方が良いかな」

「いえ。尋ねてきたのは私の方、待つとしましょう。
それに、その間にアリシア様には大聖杯へ向かう為の危険等も説明出来ますので」

そう口にする神父さんは話を続け、何でも大聖杯は柳洞寺ってお寺の地下深くに在り、その柳洞寺にはアサシンさん、キャスターさんが拠点としているそう。
相手もまた英霊、ランサーさんだけだと二人同時に相手をした場合、恐らくキャスターさんが私を狙いに来るので危険ならしい。
そこまで聞いた時、「くぅ~」とお腹から音がしてしまい、時計を見れば十時になろうかとしている……お腹が空くのも仕方が無いね。

「む、ランサー。アリシア様がお腹を空かせてのようだ食事の用意を」

大聖杯には興味が無いのか、話を如何でもよさ気に聞きながら畳の上でころころと転がっているポチを突付いているランサーさんへと視線を向ける。

「―――ちょっと待て、何で俺が料理しなきゃならない!?」

「簡単な事だ。私は客人であり、尚且つアリシア様と打ち合わせの最中、更に今の時間は出前は無理だろう。
ならば、残るは貴様しか居まいランサー、それともそのポチにさせると言うのか?」

「えっ、ランサーさんて料理できるんだ!
ポチは人とはちょっと違うからね、料理は多分無理だと思うし良かったよ!!」

「なら決まりだな。生前の記録もあるが、そもそもサーヴァントとは聖杯より知識を授かる筈、なら料理の方法等もあるのだろう」

「違うかね」と神父さんが確信的に言い放つと「ああ、納得出来ねぇが、変な記録が過ぎったんで納得したよ」そう言いランサーさんは台所へと向って行った。
それからも神父さんの話は続き、地下の空洞の構造とか大聖杯の資料の説明を受けたけど、大聖杯については資料が簡素なものしかなく結局は行ってみないと解らないとの事だった。
聞いた話を元に端末を操作するけど、やはり情報不足で爆薬とかだとどれだけ要るのか解らない。
ここから直接視れば早いけど……他にも聖杯戦争をしている人からすればズルでしかないので気が引けてしまう。
そんな風に悩んでたらお兄ちゃんが「おはよう」と起きて来た。
私も挨拶を返すが、お兄ちゃんは神父さんとお話の最中だから邪魔しちゃ不味いかな。
時折私の名前が出るけど邪魔をせず、『フォトンランサー』の派生型、大型にして手で持てるミッド式魔法。
名付けて『フォトンランス』、魔力で出来ているので長槍・短槍自在に長さを変える事が出来て。
ある程度の強度を持ち、投げての使用も出来る光の槍。
欠点は圧縮した魔力そのものを直に持つので刃等に出来るはずも無く、光槍と言いながら実際には光棍なので、多分『ゲイ・ボルグ』の呪いを付与して投げても貫くのでは無く粉砕する感じになると思う。
後は実際に試して使い辛い処を改修していくだけかな。

「おい、マスター。炒飯ができたぞ」

声と同時にランサーさんが台所から出てきて、手馴れた様子で皿に盛った炒飯をテーブルに置く。
お兄ちゃんも負けずと昨日の余り物やらを出してくれて皆でご飯にした。

「どうです、破壊は可能でしょうか」

食事の後、神父さんが私に訊ねてきたので考えた末の答えを話す事にした。

「ん~、行ってみてからじゃないと解らない処が多いいけど。
私は大聖杯の破壊じゃなくて、中身の入れ替えをしようかなと思うんだよ」

「確かに大聖杯を破壊してしまうのは我々としても心苦しい、出来得る事ならそうして頂けると有難いのは確かですが……」

神父さんが言いたい事はよく解るだから。

「大丈夫だよ、交換する渦ならある場所知ってるもん」

世界に穴を開け渦の中身を出現させる。
本来ならこの渦は世界を循環する力、世界を木に例えるならば水や栄養に相当するもの、多ければその力により次元断層やら力を持った存在やらが生まれたり。
反対に足りなければ隣接する世界は力の無い世界になり緩やかな滅びを迎えてしまう、そう人に例えるならば血液に相当する力だと言える。
繋げた穴こそ小さいものだけど、そこからは確かに世界を警戒させる程の力が溢れて来る。

「これを大聖杯に繋げて、聖杯戦争の正常化を図ろうと思うんだよ」

溢れでた無色力の塊の一つを神父さんの前に移動させ、「如何かな?」と意見を聞いてみることにした。

「―――――こ、これは!いや、まさか本当に!?」

恐る恐る塊に触れると無色の力は神父さんを包み込み消えた。

「……よもや本当に聖杯だったとは。
喜べランサー、貴様のマスターは聖杯戦争をせずとも既に聖杯に等しいモノを持っていたぞ」

神父さんは左胸に手を当て呟く様に答える。

「まあ、驚いたのは確かだが……俺は二度目の生になんて興味もねえよ」

「ちょっとまて。一体如何言う事だ、何が起きたんだ!?」

理解出来なかったのか、横に居るお兄ちゃんがテーブル越しに神父さんに詰め寄る。

「ふむ、確かに傍目では解らないか―――いいだろう。
先程までの私は心臓が無くてな、もって二日程といった処だったのだが、先程の無色の力に触れた時に心臓を創り如何やら死なずに済んだらしい、な」

「なっ!?」

「確かにこれは望みを叶える力、それも現在聖杯に潜む『この世全ての悪』に汚染されていない無色の力!
これを、聖杯と言わずに何と言うか!!」

お兄ちゃんに説明している内に、神父さんも興奮気味になり声が上がっていく。
その話の中に、実は昨日の使った力のせいで神父さんの心臓代わりだったモノが消えてしまい。
実は神父さんは瀕死の状態だったらしい。
それが今ので心臓が出来たので死なずにすんだとの事だった。

「だから言峰はアリシアに様を付けていたんだな……
(宝具を今に伝え持つ家系かもしれないからエーデルフェルトは名門って思ったけど、そうかこういった事が出来るからなのか……)」

「ふむ、確かにこれだけでも聖女と言えるだろうな」

「……(―――っ、これだけって、他にも出来るのか?)」

たかが世界の栄養を見せただけなのに何を驚いているのかなと思いつつ、お兄ちゃんが神父さんに話をしていなのに気がついた。

「ねぇ、お兄ちゃん、神父さんにサーヴァントの召喚方法聞かなくて良いの?」

「召喚―――っ!?
衛宮士郎、貴様まさか紛いなりにも魔術師だろうに、サーヴァントの召喚が出来ないなどと言うのではなだろうな?」

「……ああ、その通りだ。けど、俺は魔術師じゃなく魔術使いを目指しているぞ」

「詭弁だな。貴様の養父、衛宮切嗣は魔術使いであったが魔術の腕や知識は相当のものだった」

「もっとも」と溜息混じりに一旦区切り。

「師と呼べる者も無く今までほぼ我流で鍛錬をしてきたのだろう、解らないのも無理はないか」

神父さんはお兄ちゃんを見据えながら。

「貴様が召喚しなければアリシア様が大聖杯に近づくのも難しいだろうしな。
そもそも、七騎揃わなければ聖杯戦争は開幕すら出来まい……良かろう。
衛宮士郎、私で良ければ召喚方法を教えるとしよう」


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