<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.18329の一覧
[0] とある『海』の旅路(オリ主によるFate主体の多重クロス)【リリカル編As開始】[よよよ](2018/03/19 20:52)
[1] 00[よよよ](2011/11/28 16:59)
[2] Fate編 01[よよよ](2011/11/28 17:00)
[3] Fate編 02[よよよ](2011/11/28 17:03)
[4] Fate編 03[よよよ](2011/11/28 17:06)
[5] Fate編 04[よよよ](2011/11/28 17:16)
[6] Fate編 05[よよよ](2011/11/28 17:23)
[7] Fate編 06[よよよ](2011/11/28 17:26)
[8] Fate編 07[よよよ](2011/11/28 17:30)
[9] Fate編 08[よよよ](2011/11/28 17:34)
[10] Fate編 09[よよよ](2011/11/28 17:43)
[11] Fate編 10[よよよ](2011/11/28 17:49)
[12] Fate編 11[よよよ](2011/11/28 17:54)
[13] Fate編 12[よよよ](2011/11/28 18:00)
[14] Fate編 13[よよよ](2011/11/28 18:07)
[15] Fate編 14[よよよ](2011/11/28 18:11)
[16] Fate編 15[よよよ](2011/11/28 18:22)
[17] Fate編 16[よよよ](2011/11/28 18:35)
[18] Fate編 17[よよよ](2011/11/28 18:37)
[19] ウィザーズクライマー編[よよよ](2012/08/25 00:07)
[20] アヴァター編01[よよよ](2013/11/16 00:26)
[21] アヴァター編02[よよよ](2013/11/16 00:33)
[22] アヴァター編03[よよよ](2013/11/16 00:38)
[23] アヴァター編04[よよよ](2013/11/16 00:42)
[24] アヴァター編05[よよよ](2013/11/16 00:47)
[25] アヴァター編06[よよよ](2013/11/16 00:52)
[26] アヴァター編07[よよよ](2013/11/16 01:01)
[27] アヴァター編08[よよよ](2013/11/16 01:08)
[28] アヴァター編09[よよよ](2011/05/23 20:19)
[29] アヴァター編10[よよよ](2011/05/23 20:38)
[30] アヴァター編11[よよよ](2011/05/23 22:57)
[31] アヴァター編12[よよよ](2011/05/23 23:32)
[32] アヴァター編13[よよよ](2011/05/24 00:31)
[33] アヴァター編14[よよよ](2011/05/24 00:56)
[34] アヴァター編15[よよよ](2011/05/24 01:21)
[35] アヴァター編16[よよよ](2011/05/24 01:50)
[36] アヴァター編17[よよよ](2011/05/24 02:10)
[37] リリカル編01[よよよ](2012/01/23 20:27)
[38] リリカル編02[よよよ](2012/01/23 22:29)
[39] リリカル編03[よよよ](2012/01/23 23:19)
[40] リリカル編04[よよよ](2012/01/24 00:02)
[41] リリカル編05[よよよ](2012/02/27 19:14)
[42] リリカル編06[よよよ](2012/02/27 19:22)
[43] リリカル編07[よよよ](2012/02/27 19:44)
[44] リリカル編08[よよよ](2012/02/27 19:57)
[45] リリカル編09[よよよ](2012/02/27 20:07)
[46] リリカル編10[よよよ](2012/02/27 20:16)
[47] リリカル編11[よよよ](2013/09/27 19:26)
[48] リリカル編12[よよよ](2013/09/27 19:28)
[49] リリカル編13[よよよ](2013/09/27 19:30)
[50] リリカル編14[よよよ](2013/09/27 19:32)
[51] リリカル編15[よよよ](2013/09/27 19:33)
[52] リリカル編16[よよよ](2013/09/27 19:38)
[53] リリカル編17[よよよ](2013/09/27 19:40)
[54] リリカル編18[よよよ](2013/09/27 19:41)
[55] リリカル編19[よよよ](2013/09/27 19:56)
[56] リリカル編20[よよよ](2013/09/27 20:02)
[57] リリカル編21[よよよ](2013/09/27 20:09)
[58] リリカル編22[よよよ](2013/09/27 20:22)
[59] リリカル編23[よよよ](2014/09/23 00:33)
[60] リリカル編24[よよよ](2014/09/23 00:48)
[61] リリカル編25[よよよ](2014/09/27 01:25)
[62] リリカル編26[よよよ](2015/01/30 01:40)
[63] リリカル編27[よよよ](2015/01/30 02:18)
[64] リリカル編28[よよよ](2016/01/12 02:29)
[65] リリカル編29[よよよ](2016/01/12 02:37)
[66] リリカル編30[よよよ](2016/01/12 03:14)
[67] リリカル編31[よよよ](2018/03/19 20:50)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18329] リリカル編21
Name: よよよ◆fa770ebd ID:f7256155 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/27 20:09

転送用のゲートにて各々の家に戻る皆の背中を見送った俺達は、近場の休憩用スペース、自販機と長椅子が置かれただけの場所にて飲み物を片手に座り、

「並行世界間での交流か。
今回の事で解ったけど、神の座から来たイムニティって娘が第二を面倒くさく思うのも無理ないわね……」

考え事をしているからか、片手の飲み物を左右に揺らす遠坂は、今回起きてしまった並行世界間の交流について思うところを呟く。

「しかし、影響は宇宙全体という訳でもないのですから、それほど深刻に考えなくてもいいと思いますが?」

神の座に行った経験を持つセイバーは、神の座の役割が生命が異常に力を持ったり、逆に衰えたりするのを防ぐ他に、宇宙単位の収縮や膨張によって潰れたり張り裂けたりしないようエネルギーの調節を行なうのが主な目的であるを知っているから、今回の騒動くらいで神の座の面々は動かないと判断するものの、

「逆に個人で宇宙全体に影響を与える方が異常よ」

「それはそうですが……」

と逆に遠坂に返されてしまう。
遠坂の言い分にも一理ある、なにせアリシアが神の座の救世主達から目をつけられている理由は、個人でありながら『原初の海』とかいう神様から力を引き出せば街とか国ではなく、宇宙という単位で滅ぼせるからなんだし。
とはいえ、俺には核兵器すら余裕で越える宇宙規模の破壊力とかいうのはいまいち想像がつかないでいる……

「確かに、な。
世界というか、次元世界に混乱を巻き起こしているのは否定しようがない」

「でも、次元世界っていったって精々銀河系一つか二つ程度の影響だよ?」

「次元世界全体に影響を与えるって話なら、向こうの世界でテロを起こしたスカリエッティだってそうだろ?」

「そうはいっても、並行世界の影響っていう本来なら起き得ない出来事の影響なんだし、イムニティ達からしてみればようやく減らした並行世界を増やされるのは好ましく思わないでしょ?」

「それもそうか……」

遠坂の話しにアサシンも頷きを入れるものの、当事者であるアリシアは神の座で問題になるような影響を与えている訳でもないから大丈夫だって反論して、俺も次元世界での影響なら向こうで起きた地上本部襲撃の方が衝撃は大きいだろうとか思っていたけど、言われてみれば遠坂の言う通り本来なら起こり得ない出来事が起きる方が不味いか。

「しかし、事は既に起きてしまったのですから今更なにを言ったところで如何しようもないでしょう……」

「……そうね、それに向こうの世界に行った主な理由はアリシアの姉妹を捜す事で、まさかあんな事件に巻き込まれるなんて想像もつかなかったんだし」

セイバーや遠坂にしても、既に起きてしまった事を変えられないのは解っているから半分は諦めの表情だが、

「アリシアも、これ以上ややっこしくしないようにするんだぞ」

「は~い」

色々あったにせよ、アリシアの姉妹であるフェイトが見つかってよかったのは事実だから、俺としてはとりあえずアリシアに注意する程度に止めた。
まあ、その大人のフェイトにしても会議中だし、こっちのプレシアさんとフェイトにしてもアースラが係留されている本局からなのはとユーノを帰すにはプレシアさんの庭園を経由する必要があるから、大人のフェイトともろくに話せないままプレシアさんやフェイト、アルフの三人は後ろ髪を引かれる思いのまま本局を後にしている。
そうは言っても、プレシアさん達は明日になればまた会える時間はあるだろうけど、習い事が多いいなのはは休みの日じゃないと難しいかもしれないな。
などと思いつつ飲み物を口にし、幾つか雑談を交えていると、

「そうだ、これ飲み終ったらマリーさんの所にいかなきゃ」

長椅子に座るアリシアは、アルフが居なくなって寂しく感じたのか摩りついて来るポチを撫でながら思い出したかのように口を開いた。

「そうね、デバイスも簡単なメンテナンスなら自動修復機能でなんとかなるけど、ガジェットの大軍を相手にした後なんだから色々負担もかかってるだろうし、一度本格的に見なきゃならないわね」

「いや、そもそも擬似リンカーコアシステムの試作品について言われてたんじゃなかったけか?」

「うん。それに、向こうで設計してみた擬似リンカーコアシステム搭載型のガジェットなんかも、少し設計を変えればこっちでも作れるもの」

遠坂はデバイスのメンテナンスについて考えがいったようだけど、俺はあの試作品が元々向こうの世界に行く前にマリーさんから設計したアリシアに確認するよう渡されのを思い出した。
ガジェットに擬似リンカーコアシステムを搭載するとかいう話にしても、ゆりかごという圧倒的な存在感で頭からすっかり消え去っていたけれど、地上本部が襲撃されてから次の日か、もしかしたら数日後だったかもしれないがクロノに頼まれたような気がする。
でも、遠坂の言い分にも一理あるか、実際のところガジェットを相手にしてる時に防護服であるバリアジャケットや、空での足場を作り出すフローターフィールドに動きを速くするブリッツアクションなどの主に補助系統の魔術を多用していたとはいえ長い時間使い続けていたんだ整備は必要だろう。

「それより。こちらにもスカリエッティが居るのですから、彼の者達が動く前に奇襲をかけ設備を奪い取ってしまえば設備投資を抑えられるのでは?」

「確かに。一から作るよりも、既にある物を使うのは効率はよかろうが―――よりもよって犯罪者の上前をはねるか」

「スカリエッティって、最高評議会とかいう管理局のトップに繋がりがあるんでしょ、だったら―――いや、まさかそんな筈はないわよね………」

十年分の技術の差を設計の変更だけで対応するというアリシアに、セイバーはこの世界にもスカリエッティは居るので十年後、地上本部を襲撃する前にガジェットを生産してる施設を強奪してしえばいいとか提案する。
そんな、テロリストの上前をはねようとするセイバーの案に、アサシンは感心したような呆れているようにもとれる表情を見せ、遠坂は遠坂でなにやら考え込んでしまっていた。
そうか、地上本部が襲撃された世界にはアリシアが作ったような擬似リンカーコアシステムみたいな部品は無かったけど、この世界には原型があるんだった。
そうなれば、最高評議会やら地上本部がスカリエッティに戦闘機人とかいう、過去に向かって進む俺達の魔術では難しい業、未来に向って進む魔術だからこそ出来るのだろうサイボーグ戦士達の研究を頼んだりする必要性も少なくなるのかもしれない。

「まあ、こういった部品で十年後に地上本部の襲撃が防げるのなら安いものかもな」

「うん」

俺達は、紙コップのなかみを飲み終えた足でマリーさんがいる研究室へと向い一声かけてから中に入る。
マリーさんが勤める本局技術部の部屋は一見なにもないようにも見えるけど、壁には幾つもモニターやら俺には理解できそうにないような装置や機械等で埋め尽くされていている。
でも、研究室内にはマリーさんの他に見慣れない初老の男が居て、

「おや、君達は」

声をかけられるが、この声―――どこかで聞いた記憶があるんだけどどこでだったろうか?

「初めまして。私はギル・グレアムといい、今は顧問官をしている者だが異世界から来た君達の話は耳にしているよ」

「貴方がそうでしたか」

そういえば、グレアムって人の名は先程の会議の時にリンディさんが話していた相手なのを思い出し、リンディさんが提督と口にしていて、本人は顧問官っていっているから提督まで出世したのは間違いない。
グレアムさんの出身地は英国だからか、イングランドの王だったセイバーにしてみれば時空管理局というか、次元世界にまで自国の民がいるのが嬉しいのだろう。

「すまないね、こちらの事情で長く滞在させてしまっていて―――不便はないかな?」

「不便なんてそんな、こちらこそなにかとよくしてくれて助かってます」

「そう言ってくれると助かる。
今しがたも見せてもらっていたが、君達は時空管理局内で一番注目されている擬似リンカーコア技術の開発に関わっている貴重な人材でもあるからね」

「それほどまでに人手が足りないのか?」

「ああ、なんといっても次元世界は広いからね。
かつて栄えた文明の異質技術の遺産が、ある日突然動きだすような事もしばしばある。
だからこそ、日々巡回して回りながらそれらしい反応がないか捜査しているんだ、でも、君達が提供してくれた技術で作られた擬似リンカーコアがあれば局員の底上げで人員が増えるから今より少し楽になれるだろう」

グレアムさんに遠坂は外行きの猫を被りながら答えるが、アサシンは地上も海も人手不足を嘆いている管理局の実情に首を傾げてしまっている。
グレアム提督のいう遺産の多くはたぶん、古代ベルカ時代に作られた代物だろうけど正に不発弾のような扱いだな。

「グレアム提督は艦隊指令まで務めた方なんですよ」

「艦長ではなく艦隊指令とは、このような祖国より遥か遠き異郷の地にて武勲を積み重ね艦隊の指揮を任されるまでなれるなんて、同じイングランドの民として貴方を誇りに思います」

「はは。大げさだよ、今では後進に助言をするだけの顧問官に過ぎないのだから」

マリーさんもそうだが、グレアムさんがセイバーは実はアーサー王であるのを知らないのもあって、セイバーが何故そう思うのかがわからないのかもしれない。
これは想像でしかないが、セイバーからしてみれば子孫にあたるかもしれないグレアムさんが、次元世界とかいう地球外にまで進出しているばかりか責任ある立場にまでなっている事を素直に感心しているのだろうな。
でも、当のグレアムさんは「そうか」と区切り。

「君は英国の生まれなのだね。
先程、リンディ提督からアーサー王の話を私に聞いてきたので少々気になっていたが、なるほど英国の話題からそのような話になって訊ねてきたのか」

それからグレアムさんは目を伏せ、軽く息をはいてから開くと「しかし、だ」と続け。

「確かに艦隊を率いる立場にもなっれたが、それでも守りきれなかった事は多々あったよ……
だが君達のもたらしてくれた技術があえば、これからはより良い結果を出せるかもしれない―――期待しているよ」

かつてのグレアムさんは艦隊司令官という立場だった以上、艦隊の乗員や魔導師達の安全などを天秤にかけなきゃならないような状況に遭遇してしまった事があったのかもしれない。
それこそ、アーチャーのように九を生かす為に一を切り捨てるような経験を………その原因の一つは、ロストロギア以外にも圧倒的な広さをもつ次元世界そのものの環境が問題なのかもしれない。

「それでどうだった?」

俺が推察するなか、技術官という立場のマリーさんは、実は開発の方ではなく運用部門に属しているのもあってか、開発部から送られた擬似リンカーコアシステムについて不備がないか聞いてくる。
この様子では試作品はアリシアに渡されたのや、グレアムさんが見ていた物以外にも作られていて既に教導隊の方にも送られているのかもしれないな。

「うん。一応、設計通りに作られてるから問題ないみたい」

ガジェットの襲撃やゆりかごが現れたりと大変だったけど、向こうでの時間は十分にあったからその間に調べていたアリシアは訊ねるマリーさんに返すけど、

「ほう。その歳で図面が読めるなんて、まだ小さいのに将来が楽しみな子だね」

「いえ、提督。その、アリシアちゃんは擬似リンカーコアシステムを開発した本人なんですけど……」

「な……に………」

グレアムさんは、擬似リンカーコアシステムを開発したのがアリシアだと知らなかったらしく頭のいい娘だって褒めるがマリーさんに告げられ絶句する。
……無理もない、俺の世界だって大半の人間は小学校一年生が設計しましたとか言われたら驚くって言うより呆れる、むしろ大丈夫なのかって疑問に思うのが普通だ。

「でも、大丈夫ですよ。
元になった術式にしても、今のところ教導隊からは運用に支障をきたすような報告は受けてませんし……」

「……そうだな。もし、何かしらの不具合があったとしても教導隊による試験の段階で洗い出せる筈だからな」

開発したのがアリシアなのを知ったグレアムさんは唖然とした表情で固まってしまったものの、内心を読んだマリーさんのフォローで元に戻り、まるで自分に言い聞かせるように言う。
擬似リンカーコアシステムに先駆けて、擬似的に魔術回路を模倣し運用する技術が使われるデバイス、鈍らを持つアサシンは何も疑問を抱かずに使ってるようだが、こっちの世界に来る前に色々試していたから、それが教導隊がやっている試験と同じ結果をもたらしたのだろう。
でも、グレアム提督からしてこの反応だとするれば術式っていう前例が無ければ、擬似リンカーコアシステムの設計は子供の戯言とか思われ相手にされなかったかもしれない。

「……なるほど、この技術は子供ゆえの純粋さがあってこそ、それまでの概念に囚われないからこそ生み出されたものなのか」

「それは兎も角、教導隊での運用試験に合格したとして量産体制が整った後はどのような配分をするつもりなのですか?」

「その件か。これは魔力を持つ者には上乗せする以外にも、リンカーコアを持たない者にも魔力の運用を可能にするという重要な技術だよ。
量産するにしても、犯罪組織の手に渡らないようナンバリングするなりして、シリアル管理を施さなければならない。
それに、本局は次元世界全体に影響を及ぼす危険なロストロギア対策を行なっているが、陸の……いや、地上部隊は精々個々の次元世界の治安維持を行なうだけだから優先順位は下がるだろう」

「それはよくない判断だ」

「どうしてだね?」

子供の感性も侮れないものだとか零すグレアムさんに、セイバーは向こうの世界にてスカリエッティが自ら口にした話を思い出したのだろう。
スカリエッティとは直に会っていない俺だけど、避難所で見たテレビで何度も繰り返されれば嫌でも頭に残る。

「そうした場合、地上部隊は人員不足で悩んだ末に戦闘機人や人造魔導師による解決を選んでしまうかもしれない」

「そうよな、そのせいで向こうの世界では最高評議会やらレジアスとかいう地上本部の長官が、ジェイル・スカリエッティなどという犯罪者に協力してものの見事に裏切られたばかりか本部を襲撃されたのだからな」

「最高評議会か……噂くらいなら聞いた事はある、しかし地上本部が襲撃された等という報告は受けてないが?」

セイバーは向こうの世界でスカリエッティが語った内容のうち、元となる原因について言及し、アサシンはそれがどんな結末を迎えたのかを告げた。
とはいえ、クロノの報告で聞き覚えはあっても知識はないグレアムさんからしてみれば、並行世界の話をこの世界で起きた出来事と捉えてしまっても不思議ではない。
そこで―――

「まあね。この世界とは少し違う世界、それも十年ほど未来の並行世界という可能性の世界で起き得た話だもの」

「そうだよ、ゆりかごの聖王って人を使って悪い事をしようとしたんだから」

「ゆりかごの聖王!?」

並行世界の概念と起きた内容を簡潔に纏める遠坂に続き、アリシアも口にすると、こっちの世界でもゆりかごの聖王とかいうのは歴史の教科書にも出てくるような有名なロストロギアだからかマリーさんは目を丸くしてしまう。

「俺達は巻き込まれただけだから少ししか知らないけれど、詳しく知りたいなら向こうの世界から来てる八神達に会うといいかもしれない」

「ええ。なんでも元『闇の書』のマスターだったとかいう女性で名は八神はやてという者です」

「八神……はや…て………」

「聞いた話では十九歳らしいから、この世界でも居ればおよそ九歳か」

こっちの管理局でも問題になる事件だったから、詳しく知っていれば話したいところだけど、生憎と俺達は向こうの世界のフェイトを捜していてスカリエッティを追っていた訳じゃないから事件の詳細を知っているだろう八神の名をだし。
セイバーが、どういった特徴の人物なのかを口にだすとなんだかグレアムさんの表情が曇りだすが、もしかしたら何かしらの縁で知っている相手かもしれずアサシンは今の歳が幾つくらいかを告げる。

「『闇の書』っていったら、広域指定されてるAランク級ロストロギアじゃない!?」

「その辺はクロノや八神から聞いたわ」

「なんでも本来の名は夜天の書というらしいですが、転生機能とかいう能力を備えマスターの殺害や、『闇の書』そのものを壊したとしても蘇り、最終的にはマスターになった者を暴走させてしまうようになった為に『闇の書』という呪いの本の如く呼ばれるようになったとか……」

ゆりかご程ではないけれど、壊すに壊せない『闇の書』の話は本局の技術官であるマリーさんも知っているらしく息を飲むが、既に俺達はクロノから話を聞いていたのもあって遠坂とセイバーは簡潔に返す。

「馬鹿な……あの方法で………」

「おじさん何か知ってるの?」

「提督はかつて『闇の書』が起こした事件にも関わってたから……」

「そうなのか……」

「きっと何かしらの対策をしていたのでしょう……」

グレアム提督は胸の奥底から零すような声を漏らし、聞き返すアリシアに提督に代わってマリーさんが答えた。
グレアム提督は前の『闇の書』が関わった事件で、これで終わりだこれが最後だと願いを込めたやり方が上手くいかなかったのを知ってショックを受けたのだろうと俺もセイバーも予想する。

「問題は改竄された防衛システムね。
向こうの世界の八神は、マスタープログラムと一緒になって内側から防衛システムを切り離せたっていうけど試してみないとなんともいえないし」

「っ、それは本当かね!?」

「しかし、暴走を引き起こす大元の自動防衛システムなのだが、マスタープログラムとやらと複雑に絡み合ってたとかで防衛システムを復元させないよう魔道書と共に果てる道を選んだという話だ」

「そのマスタープログラム、リインフォースだったけ……それが犠牲にならないで済むようなやり方がないかをクロノやリンディ提督達と一緒に模索している最中よ」

遠坂が『闇の書』と呼ばれるようになってしまった原因と向こうの八神が行なった解決策を口にすると、余程因縁があるのかグレアム提督は飛びつくような視線で俺達を見渡すが、アサシンと遠坂はそれでも犠牲は避けられなかったのを語った。

「……そうか、そんな方法があったのか」

それでも、『闇の書』がまだ存在していた事へのショックから青ざめたようになっていたグレアム提督の顔色も元に戻り、

「すまないがこれで失礼させてもらうよ」

俺達に礼を述べつつ研究室を後にする。
さっきグレアムさんもロストロギアについて話してたけれど、今のように手がつけられなかったロストロギアに突然解決策が出てきたりもするから管理局の局員ってのは色々大変なんだな。
グレアムさんの背中を見送り、自動扉が閉まるなか内心そんな事を思っていたら、

「ところで、マリーさんには向こうでガジェットって呼ばれてたロボットを見て欲しいんだ」

「ガジェット?」

「うん。向こうのミッドチルダの話なんだけど、スカリエッティって悪い人が街中で暴れさせたりとか、地上本部の襲撃とかに使ってたんだけど」

マリーさんが返すなり、アリシアは修理したガジェットⅠ型を召喚魔術の如く転移させ。

「このガジェットは前に襲ってきたのをやっつけて、使える部品を集めて組上げたんだ」

「アリシアの他に、プレシア・テスタロッサも加わってプログラムを書き換えていますので危害はない筈です」

初めて目にするガジェットを物珍しい視線で見るマリーさんに、アリシアはこのガジェットを手に入れた経緯をかいつまんで話し、セイバーは向こうのミッドチルダで様々な騒を起こしていたものの、このガジェットは無害なのを強調する。

「これは、向こうでⅠ型と呼ばれてたが他にもⅡ型、Ⅲ型などと呼ばれるものもある」

「うん。まだ、このⅠ型みたいに組上げてないけれど残骸は沢山あるからサンプルには事欠かないよ」

「沢山?」

様々な角度から見詰めるマリーさんに、アサシンはこのⅠ型の他にも機種があるのを話すものの、アリシアは見本は十分あるのを告げ、俺と同様疑問に思った遠坂が返すが、

「今日、皆で残骸の撤去してる時にちゃんと持って行っていいって聞いたらいいって言われたから持って来たの」

などど、今朝やった撤去作業の合い間に回収したとか口にした。

「……それって不味いんじゃないか?」

なんで不味いかといえば、向こうの管理局にだって調査しなければいけないから勝手に持って行ってしまえばそれ自体が事件になってしまうからだ。
とはいえ、前に残骸が消えた事件はニュースでも流れはしたものの、幾ら原因を作ったのが自分達だからって冤罪になるのはよくないと思うが、スカリエッティ一味が行なったという事でミッドチルダの人達は認識してしまっている。

「どうして、ちゃんと局員の人達に聞いてから貰ったんだよ?」

「それはそうですが、向こうの局員にしても状況が状況ですから、指定された回収場所に転送したのだと思ったのでしょう」

「言葉って難しいわね……」

アリシアからすれば局員に確認を取ってから貰った訳なので、俺の言う不味いという意味が判らず小首を傾げてしまい、アリシアが許可を取ったという局員にしても町の人達が一丸となって明日の生活のために撤去作業をするなか、住民からすれば邪魔にしかならないガジェットの残骸なんかを好き好んで持っていく奴もいないのだろうと判断したのだとセイバーは告げ、遠坂は半分呆れているんだと思うが、同じ言葉であっても状況によってとらえ方に差がでるのが判る事例だとでも思ったんだろうな。

「まあ、向こうの世界に戻る際に八神達に一言いった方がいいか……」

「そうしましょう」

とりあえず、こっちの世界ではどうしようもないので俺もセイバーも保留にし、その後はアリシアとマリーさんの間で端末に表示された図面から擬似リンカーコアシステム搭載型のガジェットについて色々話が交わされるものの。
ガジェットに使われる技術なんかの話はストーブとかの修理とは訳が違うので俺には解らず、ポチと戯れるアサシンを尻目に俺とセイバー、遠坂の三人はマリーさんの許可を貰ってデバイスのメンテナンスをする事にした。
その時、ふと遠坂を見やれば自分の端末でマニュアルを開きながら四苦八苦している様子が見てとれるけれどなんとか出来ている感じがする―――これは、プレシアさんの苦労が実った瞬間でもあったのかもしれない。


とある『海』の旅路 ~多重クロス~

リリカル編 第21話


闇の書について有力な情報を聞いた私は、急ぎ執務室に戻った。
私専用に用意された執務室には、落ち着いていながらも格調高い風格を感じさせる机と椅子があり、それらの風合いを損なわせないよう合せられた調度品やソファ、テーブルなどが用意され。
かつて、艦隊指令として艦隊を率いていた頃こそ使う事は稀であったものの、一線を引いた今では重宝している。
『闇の書』が起動すらしていない今の状況で、八神はやてが闇の書の主であるという関係や関連性を断定できるはずがない。
それにも関わらず、その名が出てきたという事は彼らの言う十年後の並行世界に行った話は信憑性があると言える。
椅子に座った私は机の引き出し引き二枚の写真を取り出す、一つはクライド・ハラオウン、リンディ提督の夫であり、執務官となったクロノの父親であり、十一年前まで私の部下だった男だ。
闇の書とは一度暴走を起こせば、その暴走は周囲の全てを取り込みながら狂わせ、その世界の文明を滅ぼしかねない危険で異質な魔導技術の塊。
時空管理局創設以前の文献なども参考にし、決して甘くみていた訳ではなかった……しかし、闇の書事件を指揮していた十一年前のあの日、当時、闇の書の主となった者を連行する際クライドが艦長を務める艦内にて融合暴走が始まってしまい艦内の制御が奪われ、乗組員を避難させる為に一人残った彼もろともこの手で沈めるほか手がなかった。
もう一枚は八神はやてといい、現在闇の書の主に選ばれ、悲しい運命を背負わされてしまった年端もいかない少女の写真。
いずれは闇の書の暴走に巻き込まれてしまう運命が待ち受けているが、二親は幼い頃に亡くなり、幼い体への闇の書による影響は彼女を車椅子を使った生活をよぎなくしている為に友人も少ないだろう。
悲しむ人が少ないのがせめての救いではあるが、彼女は闇の書に選ばれただけの被害者だ、闇の書に対して効果があるとされる凍結封印をする程の罪など犯してなどいないのだ……
だが、闇の書の主となった者は、その特性を知り蒐集する事によってもたらされる絶大な力に惹かれてしまい最後の時まで周囲の人々を傷つける―――もしかしたら、この娘も同じ事をしてしまうかもしれない……
そう思っていた―――いや、思い込もうとしていたのだ、しかし、聖王教会関係者のカリムという少女が持つレアスキル、『予言の著書』(プロフェーティン・シュリフテン)によって異世界から来ると予言されていた彼らが語った対応。
闇の書の主と協力しあい、暴走を引き起こすシステムそのものを切り離すという考えは今まで考慮すらしてこなかった方法だ。
私が選んだ方法は、氷結の杖デュランダル、時空管理局最新技術を用いて開発された高い氷結強化能力を持つデバイスによる永久封印。
完成した闇の書は、魔力蒐集をする必要がなく自らは動かないという闇の書の盲点をついた方法であるが、闇の書が発動すれば必ず陥る暴走状態、その直前の数分前にこの杖による極大氷結魔法、エターナルコフィンを用いれば理論上永久封印は可能だ。
しかし、エターナルコフィンという極大氷結魔法による封印は、外部からの干渉で容易に解除できる事や、前提となる暴走状態の闇の書が動かないといった状況に左右される。
だが、もしも彼らの言う通り闇の書に取り込まれる八神はやてが内側から協力し、暴走する防衛システムを切り離せれば闇の書というロストロギアは事実上消滅する筈だ。
戻す写真の横にカード状態で待機するデュランダルを手に立ち上がり執務室を後にする、これは闇の書が動きだしたのならアリアに持たせようと準備してきた物だが……
因縁とでも呼べばいいのか、別の事件の調査で異なる世界に行き、そこで闇の書に対して効果的な方法を見つける、もはや何かしらの縁を感じずにはいられない。
その未来に相当する世界から、闇の書の暴走の原因となる防衛システムを切り離す事ができた八神はやてが来ている以上、闇の書に関する事件はリンディ提督の管轄になる筈、そうなれば捜査を進めるのは主に執務官のクロノだ。

「父親を失う原因となった闇の書の闇を成長した息子が解決する、か」

私は執務官としての手解きをした程度だが、彼の成長した姿は魔法や戦技教育を施してきたアリアやロッテではなくとも誇らしい、クロノならばデュランダルを正しく使ってくれるだろう。



次元世界とはまた違う区切りである多元世界、いわゆる並行世界と呼ばれるそうやが、異なる世界同士による前代未聞の話し合いは小さななのはちゃんが家に帰る時間になった事から、私達の世界では人造魔導師の疑いで被保護対象になるかもしれないんやけど、この世界では民間協力者である衛宮一家の人達や小さななのはちゃんにフェイトちゃん達を見送る事になってしまう。
残されたんは、同じ時空管理局という組織に所属していながらも、時間や世界が異なる局員一堂のみになってしもうたが、ここらでいったん休憩を入れる事にした。
テーブルにちょこんと座れるリインは兎も角、それまで立って話していたフェイトちゃんやシグナム、ヴィータも今は小さなクロノ君と向き合う形で座っていて、一休みという事から、まだ艦長時代のリンディさんやエイミィさんが飲み物を持ってくるという形でこの会議室に来ていた。
通信だけなら疑いようもあるもんやけど、こうして直にリンディさんやエイミィさんの姿を見れば、ここが私が指揮しとったアースラでないのは嫌でも解る。
というか、仮に私の指揮しとるアースラやったなら何処にリンディさんやエイミィさんの人造魔導師が潜んでいたのかって話になる………まあ、疑いだしたらきりがないって事なんやろ。
それに、この小さなクロノ君達にしても当初はスカリエッティの動きを訝しんだレジアス中将が組織したんやろうって予想しとったんやが、実はまったく関係ない不可能領域級の魔法で多元世界を渡って来た並行世界の魔道師達やったなんて想像すらしとらんかったから考え過ぎは禁物ともいえる。
いや、ある意味ではあってるといえなくもあらへん、か?
一応、背後に最高評議会やなんらかの大がかりな組織がいるだろうとは想像していたんや、それが偶々似て異なる世界の時空管理局やっただけなんやし。
しかし、まあ………十年前の似て異なる世界なぁ、それにこうしてエイミィさんにお茶を淹れて貰うとまだ嘱託魔導師やった頃を思い出してしまうわ。
などと、出されたお茶や端末を操作し話し合いの内容を纏めてくれてるリインを横目にしながら考えてしまう。

「……なのはって、嘱託魔導師になる前は習い事が多かったけ」

「そうだよな、今思えばあの頃からなんだかんだでえらいスケジュールで過ごしてたんだ……」

フェイトちゃんとヴィータが昔のなのはちゃんについて思い思い話すなか、小さなクロノ君はリンディさんやエイミィさんと私達の世界に行って知りえた内容を報告している。
こうして見ているかぎり、クロノ君とエイミィさんって仲のいい姉と弟って感じしかしないんやが、私達の世界みたいにあと十年もすれば一緒になる仲なんやろうな……
そう思うとると―――

「クロノ執務官、一つ伺いたいのだが」

私達からすれば、クロノ君のこの姿も見慣れたもんやったが、この世界のクロノ君を初め、リンディさんやエイミィさんからすれば私達とは初対面なんやけど、シグナムは姿が同じだから私達の世界と同じく敬語を使う。

「なんだ」

「そもそも、多元世界からの来た六人をよく受け入れられたな?」

「ああ、その事か」

シグナムは多元世界移動という不可能領域級魔法だったにも関わらず、それらの状況を受け入れられたクロノ君の内心を訊ね、クロノ君もシグナムのいいたい事を理解し続ける。

「僕達が出会った経緯は話した通りだが、彼らが知らないだけで僕達の魔法技術が使われているかもしれないから身元の確認をしたんだ。
その調査でアリシアから伝えられたプレシア・テスタロッサの名が出てきた、しかし当のアリシアは二十六年も前に亡くなっていたんだ、そうした経緯からなにかしらの不可能領域級の技術が存在していても不思議には感じなかった」

「人造魔導師とは考えなかったのか?」

「大魔導師と呼ばれるプレシア・テスタロッサなら兎も角、魔力資質を受け継げなかったアリシアを人造魔導師の素材として考えるのは不適切だと思うが?」

「そうか、テスタロッサとは違うか……」

シグナムは多元世界という、可能性の世界の話よりも人造魔導師の線の方が現実味があったのではないんかとか言いたいんやろうけど、クロノ君は人造魔導師を計画するにしても、元々の魔力資質が低い相手を選ぶ理由が見当たらないと指摘され納得したようや。
とはいえ、不可能領域級の魔法を扱えるのに、フェイトちゃんのように魔力資質を正しく受け継いでないというのは別の意味で驚きの話なんやが。

「でも、アリシアちゃんは魔力資質が少ないなりに術式の魔力消費を抑えるとか、集束魔法みたいに魔力を集められる術式とかを作ってるから総合的な魔導師ランクで考えれば低いとは思えないよ」

「他にも、ジュエルシードを元に改修したジュエルシード改なんかもあるから魔力には困らないようだしな」

エイミィさんが言うに、あの子は魔力ランクが低い代わりに、術式の消費量を抑えたり、集束魔法を使うなりして補っているそうやが、クロノ君はジュエルシードに改良を加えたモノからも魔力を供給しているとかいう話しやった。
私とこのアースラでも、衛宮一家や小さななのはちゃんやフェイトちゃん達が避難していた所にゆりかごやガジェット群が襲来した際には、『ディストーションシールド』なんていう広域防御魔法が使われてるのを確認しとるさかい、アレもアリシアちゃんが絡んどるんやろな。

「なるほど、魔力ランクこそ低いが補って余る技術を持っている、か」

「そりゃなぁ、スカリエッティのアジトを制圧した次元跳躍魔法だって使ってたんだ、条件にもよるだろうけど魔導師ランクの適正が低い訳ねえ」

「うん。あのトーレとセッテの二人組みは機動力で上回るトーレの隙をセッテが補うかたちで連携がとれてたから正面から戦ったら厳しかったと思う」

シグナムは自爆まがいな方法や手段ではなく、まだ幼いながらも元となる魔力資質が少ないなら少ないで消費量を減らしたり他から用意するというやり方を行なうアリシアちゃんに感心し。
ヴィータやフェイトちゃんは、既に次元跳躍魔法などという高度な技術を持つ以上、仮に魔導師ランク試験をしたとしても総合的なランクが低い筈がないと予想する。

「まともに戦ったら、うちのところのフェイトだって手強い相手だったのに、あいつは……次元跳躍攻撃の面で制圧しやがったんだからな」

「その次元跳躍攻撃ですけど。画像を調べたら、ちゃんと制御されたらしく、外側から内側に順次撃ち出されるよう工夫されてましたよ」

「て、事は逃げられないよう閉じ込めてめった撃ちかよ……」

ヴィータは、アジトや本局や六課の隊舎が襲撃された際に交戦したフェイトちゃんの言葉に反応し返すが、事前に調べていたリインからするとアレだけの次元跳躍魔法にも関わらずコントロールされているのを指摘し、それを聞いたヴィータは「えげつねぇ……」と顔を顰めた。
まあ、次元を挟もうが元となる射撃魔法ってのは様々な工夫がされとる分野や、ティアナがよう使うクロスファイアシュートやかて複数の魔力弾を誘導制御して当て易くする術式に過ぎへん。
せやから工夫自体は不思議には思わんのやけど、問題は次元を挟んで行なう次元跳躍魔法でありながら、リインの言う逃がさない工夫や、そうでありながらフェイトちゃんには一発も当てない程の精密な制御を行なっていたという点やろう。

「貴女達の世界のプレシア・テスタロッサは、きっとアリシアちゃんを蘇生させる時に向こう側の世界で得た技術を用いたんでしょうね……」

先の話し合いでも話題になったが、アリシアちゃんを蘇生する段階で転写されただろう知識は私達の世界―――いや、そやない……きっと私達の世界を含め様々なロストロギアを見知っている時空管理局が存在する世界からしても異質な技術であるって事をリンディさんは言いたいんやろな。
しかし、なんていうか士郎君達の世界は古代ベルカ並に異質技術が発達しとる世界なんやろか?
多元世界とは可能性の世界、一概に否定できんとこが怖い……

「……せやな。アーサー王であるアルトリアの件や私が巻き込まれた士郎君の結界魔法やかて十分異質なもんやったんやし」

「っ、君は禁呪を使った衛宮士郎の結界の中にいたのか!
あの結界は、彼らからしても禁呪指定にされてる攻撃性を持つらしいだんぞ!?」

「ゆりかご周辺でガジェットと交戦しつつ、突入口を探しとったら、ジュエルシードの反応に惹かれたらしいガジェットが街に向ったさかい追撃して巻き込まれたんや、リイン」

「はい」

無数の剣が刺っとる結界を思いだしながら口にすると、クロノ君にしても結界の詳細は聞いてなかったらしく驚きの表情を見せるものの、私はデバイスに記録しとった映像をリインに表示させるよう指示する。
映し出される映像は、炎が吹き荒れる荒野に無数の剣が突き刺さり、空は幾つもの歯車と巨大な樹木の二つに別れとる異空間。
遠くには、ガジェットを相手に剣の雨を降らせ戦い続ける赤色の二人の姿が窺える。

「これが結界の中か……」

「そや、まるで殲滅戦の様相やった」

息を飲むクロノ君に私は頷きで返す。

「士郎君って魔力ランクはそれ程でもないのに、こんなレアスキルがあったんだ」

「遠坂凛とアサシンの二人は知らへんけどな」

恐らくあの結界は士郎君にとっても切り札やったんやろな、思いもよらない隠しだまにエイミィさんは目を丸くし、士郎君とアーチャーの二人に加え、ゆりかごを大破させたアルトリアの三人はこうして知り得たんやが、向こう側の世界から来たうちの残り二人はまだ未知数や。

「そうなんだ、まあ遠坂さんにしても変換能力が五種類もあるのにちゃんと使いこなしているからそれぞれ単独でも使えるようだしね……」

「っ、五つ!?」

「そんなに!?」

そう溜息交じりに口にだした言葉やったんやけど、エイミィさんは思わぬ言葉を返してくれ、でも変換能力が五種類もあるという話はシグナムやフェイトちゃんにしても驚きを隠せないようやった。

「そういえば、実際に艦長は見てきたんですよね?」

「ええ、向こうの世界の技術は凄いものがあったわ」

そやろうな、私には今までの話から想像するに、古代ベルカみたいなロストロギアに指定されるような代物がゴロゴロしとる世界にしか思えへんわ。

「例のキャスターって人が作った、リンカーコアの模型とか擬似リンカーコアですか?」

「それもあるけれど、一番は義手や義足みたいな感じで人の体そのものを交換できる技術よ」

「体なんて変えても大丈夫なのか!?」

エイミィさんから振られて話しやったけど、リンディさんはトンでもない事を言い出し、私達の世界では想像もできない発言にヴィータはちょっと待てとばかりに異論を唱えた。

「それがね、魂を移し変える技術があるから例え変えるのが体そのものだとしても大丈夫って話しになるのよ」

「そんな技術があったからこそ、僕達の世界のプレシア・テスタロッサは正気に戻れ一命を取りとめたんだ」

ヴィータの言い分は私達の言葉でもあるんやが、リンディさんはミッドチルダで研究されとる魔法科学とは一線を隔てたオカルト領域の話をしだしクロノ君も相槌をうつ。
しかし、この手の話は昨日放送されたスカリエッティとの対話でもされとるさかい、ある意味で信憑性はあるのかもしれへんな……

「ただ、そういった技術を使って千年以上生きてる人物もいるそうだけど、それ程長く生きてたら感性がどうなってるか判断が難しいところでしょうね」

「千年も……」

「凄い長生きですね……」

続けて語るリンディさんの話しにフェイトちゃんやリインが呆気にとられとるけど、多分、それも起源とか魂とかに関する技術が絡んどるんやろな。
そら未知の生命技術分野なんやから、スカリエッティでなくても興味は持つ、か。

「他は魔法技術の秘匿が徹底されている事と、そうね……精々お寺のなかに神殿があったくらいかしら」

「なにがあったのかは知る由もないが、向こう側の世界は魔法技術の隠蔽が徹底している。
それに結界魔法にしても、僕達魔導師では認識すら難しいレベルで組上げられているんだ―――あんな技術が入ってきたら次元世界は大変な事になる」

リンディさんの話しにクロノ君も口を開き、向こう側の世界の住人である士郎君達と一緒にいた経験から心のうちを吐露する。
寺のなかに神殿があるってどんな文明なんやろとか思うものの、クロノ君が言うからには向こう側の異質技術は相当危ういものらしい。
一息いれる感じから始まった話は互いの疑念を洗い出し、先の話し合いでは多元世界同士の交流に関して重点を置いていたさかい割愛しとったんやけど、こっちでも十年後には起こるかもしれへん出来事や私達の世界で起きたロストロギアレリックに関する事件のあらましとかを伝えとると―――

「リンディ艦長、少しいいかい?」

空間モニターの画面が開きグレアムおじさんの姿が現れる。
私が知るグレアムおじさんよりもやや若いようやから、やはりここは十年まえの世界なんやな。

「はい、なにか?」

「例の異世界から来たという彼らから、闇の書に有効な手立てがあると話を聞いたんでね」

画面のなかのおじさんは私の方に視線を向け、

「なるほど、君が別の世界から来たという………確かに面影がある。
それに守護騎士達も、そうか、やはり彼らが言った通り………ならその方法の方が私が考えていたのよりも有効なのだろう」

私が似ているというんやが、そらまあ……成長しとるとはいえ本人やさかい似とるのは当たり前や。

「提督は闇の書についてなにかご存知なので?」

「ああ。十一年前の事件以来独自に調査を行い、なんとか今の所持者を見つける事ができたよ」

「本当ですか!?」

色々思うところがあるんやろうな、私を見詰めるグレアムおじさんにリンディさんは問いかけ、返すいじさんの言葉にクロノ君が反応した。

「うむ。彼女の名は八神はやて、今年で九歳になる女の子だ―――だが、君達はそれ以上の手がかりを得たのだ。
したがって、この事件の担当は君達になる筈だ、後で私が得た情報や計画していた方法において要になる筈だったデバイスも渡す事にするよ」

「さっきの話って本当の事だったんだ……」

「その通りや」

続くグレアムおじさんの話しから、エイミィさんは私の話が信憑性の高いのや、主になった者がまだ小さい子供であるのが判って顔色を変え、私も頷いて事実と肯定する。

「恐らく、君の世界の私は君に対し非道な行いをした筈だ。
なにも罪を犯してない少女を闇の書の主であるというだけで凍結封印しようという計画していたのだから……
私がそんな計画をしているとは知る由もないあの娘は、体が不自由なのにも関わらず文字を習い、ありがとうと礼の手紙を寄越してくれた、私にそんな資格などないというのに―――すまないが、この世界には君と同じ境遇の娘がいる、どうか助けてはくれないだろうか?」

「そなことない。感謝してるのはこっちの方や、両親を亡くしてからなに不自由なく生きていけたのは忘れてへん。
それに、夜天の書が闇の書と呼ばれたままにして野放しにして置けば被害は広がるばかり、方法が限られてくるなら誰かがやらなきゃならへんのや」

グレアムおじさんもリーゼ達も闇の書の呪いを終らせようとしただけや、それに………もともと私は闇の書の呪いで死んでる筈やったんや、皆が私を助けてくれたからこそ拾った命、恨みなんかあらへんのに。

「私かてマスタープログラムのリインフォースを助けられなかったから、今度こそは助けたいのもあるんやから」

「そういってくれるとありがたいが……」

「大丈夫や、私がいるって事は闇の書を夜天の書にする方法があるって事なんやから」

「すまない、どうかあの娘を助けて欲しい」

「もちろん、そのつもりや―――それに、この世界やったらリインフォースを助けられるかもしれんのやから」

とはいえ、今回ばかりは私個人の私情なんし、苦しい時に支えてくれたグレアムおじさんに対しては感謝の気持ちしかない。
それがどうも伝わってないのか、私に対する引け目を感じてるさかい画面のなかのグレアムおじさんは目頭を押さえだす。

「………話の途中ですなまい。ところで、聞くところによれば君達は十年も先の未来から来たという話だが、その世界にもリンカーコアの代わりをするような技術は存在するのかな?」

「いえ、私んとこの世界はスカリエッティが魔法無効化技術を広げてしまったから、そういった技術を開発しとる最中や」

昂る感情を抑える為なのか、話を変えるグレアムおじさんやが……ガジェットに使われとったAMF技術が次元世界に広まっているさかい、そんな局員の底上げになる技術が出来てたらいいんやけどな。
などと思いながら口にしたら―――

「なら、後で研究室に行ってアリシアという娘に聞いてみるといい、彼女は異世界の技術と我々の技術を組み合わせて開発した擬似リンカーコアシステムの開発者だからね」

「擬似リンカーコアシステム?」

「そういえば、さっきリンカーコアの模型とか擬似リンカーコアとかいってましたよね?」

グレアムおじさんは未来の世界である私達の世界ですら開発されてない技術があると答え、聞き返すヴィータにリインは少し前の話にそんな言葉が出てきたのを思い出す。

「歳こそ幼いが、先に発表された擬似リンカーコアの術式は教導隊からも既に実用レベルだという話しだよ。
まあ、なんでも術式の方はデバイスに負荷が掛かったりリソースを多くとってしまうそうだが、それらを機械的にする事で負担を減らし、使い易くしたのが擬似リンカーコアシステムという話だ」

「あれ、開発したのってアリシアちゃんだけどクロノ君から話してなかったの?」

「ああ。そういった話をする前にアリシアがこっちに転移したからな」

大まかな概要を話すグレアムおじさんに、エイミィさんはきょとんとした表情でクロノ君を見るんやが、クロノ君にしてもこっちの世界に来たのはある意味突然の感があり話す時間がなかったのは確か。

「あんな娘が作ったのか……」

「私達の世界のデバイスの世代を超えてる凄い技術だよ」

シグナムやフェイトちゃんは、アリシアちゃんがヴィヴィオ程の歳にしか見えないのにも関わらず、そんな凄い技術を開発していたのに対して一抹の不安やら驚きをあらわにしとる。
まあ、気持ちは判らんでもない。

「擬似リンカーコアシステムな……」

話から大まかな概要は判った、そなら―――まだ私の誕生日まで一週間は余裕があるさかい、単体機能だけの簡易デバイスみたいにすれば、この世界の私が魔力不足で守護騎士達が動き出すまでの時間稼ぎにも使えそうやな。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.039700984954834