聖杯戦争、それは何百年も昔から繰り替え返される大儀式、参加したからには他の六人を排除しなければならない、生き残りをかけた殺し合い。
目的はただ一つ、聖杯と呼ばれる宝具を手に入れる事だけだ。
曰く―――聖杯はあらゆる願いを叶えるという。
その所有者は一人のみ、けれど、この土地で聖杯を召喚するには七人の魔術師が必要だった。
まあ、七人も居れば当然の事ながら奪い合いが始まるのは時間の問題で、聖杯を求め七人の魔術師達は聖杯の力を使いそれぞれの使い魔を用いて競い合う。
使い魔となるサーヴァントとは、過去に英雄と呼ばれた存在が精霊の域にまで昇華された存在であり、万能の器である聖杯を巡り一組のマスターとサーヴァントになるまで戦い続けるのが聖杯戦争だ。
そのサーヴァントであるアーチャーとランサーの戦いを、よりによってこの学校に残っていた生徒の誰かが目撃してしまい、ランサーはマスターの指示なのでしょう目撃した生徒を速やかに始末するよう命じたみたい。
最速の英霊であるランサーが相手をするのだ、その時はもう校舎に逃げ込んだ生徒の命は無いものと冷静に下した私は、人払いの結界を張る事も無く始めてしまった自分の愚かさも含め、せめて死に水くらいは取ろうと追って校舎へと入ったのはいいけれど―――死に物狂いとはいえ、その学生は一体何処まで走っていったのだか……ランサーを追わせたアーチャーからも何も連絡は来ないし。
仕方なしにとはいえ闇雲に走っていると、ズンと何やら重々しい音が響き校舎が一瞬揺れる、視界の端に何か動いたと思い窓の外へと視線を向ければ目に映った光景に我が目を疑った。
小山に思える土の塊から放たれる無数の土の槍。
それらは全て生徒を追っていた筈のランサーへと襲い掛かり、その間にも校庭から生えてくる塔のような土塊は次々と増え続けていき、次第にランサーを囲む様にして降り注ぐ土の槍は、正に槍の雨と言っても言い過ぎではなくなっていた。
「―――なにアレ」
「さて、な。少なくともサーヴァントでは無いのは確かだ」
知らずに出てしまっていた私の呟きに、戻ってきたアーチャーは答える。
「おそらくは精霊の類だと思うが、よもやこんな所に居るとは驚きだな」
「まったくだわ」
ここ冬木の管理者でありながら、精霊だとかいう規格外な存在が潜んでいた事実に驚きを隠せないままアーチャーに頷きを入れる。
このまま行けばランサーとてあるいはと過るものの、相手は英霊、その宝具は発動すれば精霊すら倒す力を持つ。
そして、槍の英霊はそれを発動させ投擲し、魔槍の一撃は校庭を埋め尽くしていた精霊をも吹き飛ばし文字通り四散させてしまう。
そればかりかアーチャーが庇ってくれなければ、衝撃で割れ飛散する校舎のガラスで私も危なかっただろう。
「―――っ、アレが英霊の宝具とんでもない代物だわ」
魔力を帯びないガラスの破片などでは英霊は傷つかない。
それはアーチャーも当てはまり、宝具を発動させたランサーを見てるのかと思いきや。
その視線は少し離れた所に佇む学生につがれていた―――って、あの宝具を受けて立ってられる!?
「―――何故、投擲されたゲイ・ボルグの直撃を受け生きていらる」
呟くアーチャー。
周りにいた土の塊達が守ったのだろうか?
だとしたら、あれ家の不良精霊に見習わせたいわね。
そんな思いも直後の轟音で掻き消えた、まさかあの精霊は神獣の域ではないでしょうけど幻獣の域なのか、兎に角トンデモないモノが校庭に出てきたのだ。
それは正しく灼熱の輝きを放つ溶岩塊、宝具を受け怒ったのかそれは校庭を覆いつくした。
あまりの事に思考停止してしまったが「凛、ここは危険だ」とアーチャーに抱き上げられ避難し。
その後は監督役である綺礼のいる教会へ連絡を入れようかと考えたものの、状況は既に火災が起きていて校舎からは黒々とした煙すら立ち上がっているので隠し様、仕方なく私はアーチャーに消防へと連絡を入れる様に指示した。
現状は余りにも大事になっているので、人払いの結界等は使っても役には立たないだろう。
それ処か、先程まで在った溶岩流が住宅地に流れ込めば十年前の新都での大火災の再現にもなりかねない。
その前にあの精霊だか何だかを止めさせないと。
その後は、使役しているだろう生徒の記憶を魔術師のルールに則って消せばいい。
私は精霊を操るであろう学生を探し、何を考えているのか校門前で再び校庭に入ろうとしていた自殺未遂の男子生徒を見つけた。
「(―――っ、やめてよねなんだってアンタが)」
ぎり、と歯を噛む。
そう、精霊を操っていただろう男は私の知っている人間だ。
ついでに、わりと昔の、赤い放課後なんかを思い返してしまう。
「まさか、この中を行くつもり?」
火災も危険なのは確か。
しかし、宝具で出来ていた筈のクレーターも無いのは変だ。
それは有得ない事、あの大穴が直ぐに戻る筈は無いし、火災の炎の光を反射してるとこから大方の検討はついた。
今止めなければきっとあの子、桜は泣くだろう。
「―――で、衛宮君はコレ見て行くつもり?」
だから止めていた。
近くに落ちていた小石を拾い校庭に投げるという方法で。
「っな!?」
「何でも無い訳無いでしょう。
夜で視難いけど、ランサーの宝具で大穴空いている筈なのに、一見元に戻って見えている。
でもね、あれは水気を含んだ熱い土、泥なのよ」
衛宮君は予想もしていなかったのか、校庭の大穴を埋めているのは高温に熱せられた泥だという事実に驚きを隠せないでいた。
念の為、私が「解った」と言うと「ああ、助かった遠坂」とぎこちなく衛宮君は感謝を述べ。
そこに―――
「凛、消防には連絡を入れた。
だが、君はサーヴァントを何だと思ってるんだね」
と、アーチャーが戻って来る。
流石サーヴァント、速いものね。
「ありがと、アーチャー。
貴方に行ってもらったのは単純に時間の問題があるからよ」
当然でしょと視線を送った後戻し。
「じゃあ衛宮君、火事は消火の専門家に任せて行きましょうか。
あと、この土地の管理者として、貴方にも色々聞かせて貰うわよ。
特にあの精霊についてはね」
これが今一番重要な事、あんな精霊が冬木に居るなんて私は知らない。
それなのにコイツは―――
「精霊―――ああ、ポチの事か?」
精霊にポチって名前をつけて……精霊、存在自体が神秘の塊を犬扱い!?
何かの訊き間違いかもしれないから訊き直したが。
「そうだ、ペットで名前はポチだ」
「ペット、あれだけの精霊を?」
事もあろうに、家で飼ってるペットだなんて言いやがりました。
つ~か、何処の国に精霊を飼うなんて真似が出来る奴がいるのよ!?
「飼い主はアリシアなんだ、何時もは地面の下を散歩していて。
時々家に来る猫なんかを追い払ってるんだけど。
今日は遅くまで学校にいたから迎えに来たんじゃないかな」
「へぇ~、精霊を野良猫除け……て」
それが私、遠坂凛の理性の限界だった。
気が付いたら無意識に足は踏み込みを入れ、崩された重心と震脚による全身の動きと力が込められ放たれた崩拳は良い感じに衛宮君の鳩尾に決まっていました。
「ま……あ、いいわ。
丁度良い感じで寝てる様だし、少し覗いておきましょうか」
「どんな時も余裕をもって優雅たれ」という遠坂家の家訓が過ぎり、今の一瞬に起きた事をあくまで計算通りといった感じで自分の腰に手を当て誤魔化す。
何となくアーチャーの視線が痛々しく感じられるけど気にはしていられない。
「――――――Anfang(セット)」
で、やってしまったのは仕方ないとしても、あの精霊を野放しにするのは危険すぎる、取敢えず衛宮君の記憶を覗いてみると魔術師なのは予想をしていたけど―――何、コイツとんでもないへっぽこよ!?
使える魔術は強化と投影なんて半端もいいとこだし工房らしき場所は在るけど。
私はアレを工房とは認めない、つ~か、あんな土蔵を工房と言い張るのなら先ずは自分以外の魔術師全員に謝ってから言え。
更に調べると工房とかいう前に、このぺっぽこは魔術回路の切替すら出来てなかったりする……
「………」
ああ、そう言う事―――全てはアリシアって娘が絡んでるのね。
その娘が何を企んでるのかは知らないけど、衛宮君の邸の結界は簡単なやつだし。
良いわ、行ってやろうじゃないのよ!!
とある『海』の旅路 ~多重クロス~
Fate編 第4話
藤姉さんとみかんを食べながらテレビを見ていたら、お兄ちゃんの深層意識から危機感か伝えられて来る。
覗いてみたら赤と青の人型の存在が遊んでいて、人よりも遥かに力を持った二つの存在はお兄ちゃんに気が付くと闘いを止めるのだけど。
青い人はお兄ちゃんに襲い掛かったんだよ。
きっと、もう暗くて大丈夫だろうとテレビや映画のコスプレって呼ばれる事をしてたら見つかってしまい、恥ずかしさの余り口止めをしようとしたのか?
それとも、不審者として通報しない様かな?
などと思案してたら如何も本当に危ないみたい。
だから昼間考えたお兄ちゃんの強化法を試してみた。
私の力をだいぶ薄めているとはいえ、座に居る影の力を直接送ると以前のダウニーの様に姿や魂までもが変異してしまい理性を持たない異形となってしまう。
しかもアレ、力はあるけどそれだけだからね。
お兄ちゃんは正義の味方、つまりは私が求めた問い。
「何処か私の管理の仕方に問題があったのかもと、行動も移さないで私にばかり頼りきるのは何故か?」
努力家のお兄ちゃんなら、その答えを出してくれそうな気がするんだ。
だから近い存在を見つけ出し、その力を参考にして貰おうとしたんだよ。
そしたら守護者って存在にお兄ちゃんその者が座として存在していたから、丁度良いのでこれを参考にしてもらう事にした。
でも、何というか……座のお兄ちゃんの情報は。
「理想に溺れて溺死しました」
って、正義の味方である事に疲れてしまってる様だったけど。
これはこれで重要かな、何といっても霊長の守護者として契約し、力を受けても本当に目指した者には成れなかったのだから。
思想にも問題があると思う。
座のお兄ちゃんは助けた人の数だけを見ていて、更に、助けられなかった人も数を気にしていた。
まるで、自分で助けた人達一人一人の命に価値が無いと言っているみたいに。
だから、お兄ちゃんには人一人の意味、命の可能性を知る本当の正義の味方に成ってもらいたいんだ。
だから世界の理を無視し、己の意思を押し通すルール違反、すなわち破戒者と成ることをすすめた。
まあ、私には全てを救うなんて破戒者に成る事しか思いつかなかったのもあるけどね。
その座の情報量は今のお兄ちゃんには当然ながら入りきらない、だから壊れない様に情報の種類は選択して、戦い方の情報をゆっくり情報を送り込んでまずは生き残る事を優先した。
今は兎も角として、いずれは守護者エミヤを越えてほしい。
ここは、お兄ちゃんの進化に期待かな?
ついでにポチにも迎えに行く様に伝えると、私は二個目のみかんを食べ始めた。
それでもテレビ見てたらお兄ちゃんは槍で貫かれて、その槍の衝撃で肉片になるし、魂も滅びかけてたので数秒前の情報を元に再構築したり。
ついでだから二十七本確認した魔力回路も開けといたよ。
でも、こんなに容易く死んじゃうなんて藤姉さんや桜姉さんが心配する訳だよ。
困ったものだねと思うも、お兄ちゃんを復元した私はその情報を世界樹の幹に記録する。
世界樹の幹にお兄ちゃんの情報を記録する事で成り得る世界の破戒者、それは幹から世界の栄養となる力を貰って強くなる事も出来るし。
何より世界の理から外れた存在となるので死や滅びが無いんだ、これなら藤姉さんや桜姉さんも安心だよ!
でもお兄ちゃん何だか女性には弱いね……
お兄ちゃんの正義の味方の有様に不安を覚えつつも、遠坂さんて女性が家まで送ってくれる様なので安心……なのかな?
そんな感じに心配していたら、少ししたら藤姉さんが帰るので外まで見送り。
「士郎が帰って来たら、怒ってたって伝えといて」
そう言われました。
「……お兄ちゃんは説教か」
色々な事に巻き込まれる割には見返り、運が無いかなとか考えてると地面からポチが霊核のまま現れ「虐められたよ~」と足元に擦り付く。
「ポチも頑張った、偉いね」
土の塊から石の塊まで進化した霊核を抱き、撫でながら癒しを施し痛みを取り除く。
如何やら霊核のある地面の奥底には槍の効果も及ばなかったようなので、ポチは受けた傷は霊糸として使っていた部分だけのようだ。
「今日は一緒に寝ようね」
ポチの痛みを取り除き伝えると嬉しそうに擦り付いてくる。
そうして、一緒にお布団で寝るためにお風呂でポチを洗い終える頃、お兄ちゃんは帰って来たので藤姉さんからの伝言を伝えて私も寝ようと居間に向う。
「へえ、けっこう広いのね。和風ってのも新鮮だなぁ。あ、衛宮君、そこが居間?」
すると、そこにはお兄ちゃんの他に遠坂さんと、最近何処かで見た男の幽霊が居ました。
誰だろう、何処かで視たと思うんだけどな?
「今晩は私は遠坂凛。貴女がアリシアちゃんね」
遠坂さんは何かとても良い事があったのか、満面の笑顔で私を見詰める。
「うん、そうだよ。初めまして凛さん」
アリシアの記憶から挨拶は大事だと判断した私は、両手でポチを抱きながらも頭を下げ、こんな笑顔を向けて来るのだから私も親しみを持込めて姓ではなく名で応えないと駄目だろうと判断を下して口にする。
名でなく姓で言ったのなら、多分、凛さんから遠慮がちな子か人見知りをする子だと思われてしまうかもしれないから、一礼をして視線を戻せば凛さんは何か遣り辛そうな表情をしていた―――もしかして選択を間違えたのかな?
「~っ。(そう、あくまでも魔術師って事隠す訳ね。
でもね、微かだけど魔力が洩れてるから無駄なのよ)」
ふう、と一息つくと。
「ここ冬木の管理者、それともセカンドオーナーって言った方が解り易い?」
管理者って事は―――あれ、この衛宮邸って借家だっけと過り。
「お兄ちゃん、この家借家なの?」
笑顔なのに何か強張ってる凛さん。
凛さんは如何やら不動産関係の人だと理解しつつ、くしゃみでも我慢してるのかなと予想した。
「そんな事ないぞ。
それに遠坂、アリシアは一般人だぞ?
いいのか、そんな事言って?」
台所からお茶を持ってくるなり凛さんに言い含めるお兄ちゃん。
お茶があるので凛さんにお兄ちゃんに続き私もテーブルを囲むようにして座る。
「当たり前でしょ。アレだけの精霊を使役してるのよ?
魔術師に決まってるじゃない―――まさか、衛宮君は気が付かなかったの」
おう、と自信満々に頷き応える兄ちゃん。
そんな凛さんの後ろでは、とり憑いているのか幽霊のお兄さんが溜息をついていた。
「ついでに聞いておくけど、アリシアちゃんから微かに魔力が洩れてるの気が付いてる?」
「そうなのか、全然気が付かなったぞ……」
「――――はぁ」
予想外なのかピタリと動きを止める凛さん。
「今ので、衛宮くんがへっぽこなのは十分解ったわ。
で、アリシアちゃん貴女はこの冬木に何しに来たのかしら」
突然話を振られた私だけど、その辺は昨日の内に準備してあるので大丈夫と冬木市に来るまでの経緯を話す。
すると――
「ちょっとまって、エーデルフェルトって魔術の名門じゃないの!?」
お兄ちゃんも「アリシアの両親って魔術師だったのか!?」となり。
「当然でしょう。ただのサラリーマンがエーデルフェルトの洋館なんて買える訳無いじゃない!」
と、予想外の事になりました。
あれ~と思ってると。
「三次の雪辱か、まあ良いわ。貴女の両親はエーデルフェルトに属する魔術師な訳ね。
すると、あの精霊はサーヴァントと併用しての戦力。
いえ、敵マスター対策や失った時の保険と考えても良いわね」
そう口にして、凛さんは何やらブツブツと呟き考え始めちゃいました。
話についていけてない私とお兄ちゃんは。
「アリシア、エーデルフェルトって何だ」
「うん、私が引越しした家の前の持ち主だよ」
「そっか、確かにしっかりした造りの家だったしな。
建築当時に相当金は必要だたろうし名門な訳だ」
そう確認するだけで、如何やらエーデルフェルトの魔術師らしいのは決定事項のよう、何でかな?
「確認するわ、貴女マスター?」
「ほえ?」
言ってるが事さっぱり解りませんと表情で訴えると。
「……貴女の身体に聖痕、変な痣は無いかしら」
こんなのと凛さんが腕の令呪とやらを見せてくれる。
「ああ、それなら俺にもあるぞ。
今日の朝頃について、変な痣だなと思ってたけど―――そうか、令呪っていうのか」
お兄ちゃんも手の甲まで伸びている変な痣を見せてくれた。
「何で衛宮君に令呪の兆しがあるのよ!?」
「そんな事言われてもな」
「もう怒った」と言って、凛さんの講座が始まりました。
それは聖杯戦争と言い、七人のマスターが従える七騎のサーヴァントで行われる生存競争。
サーヴァントとは過去の英霊と呼ばれる存在で、その功績から精霊の域に達した者達。
魔術師同士の殺し合い、他の六人を倒したマスターとサーヴァントには、望みを叶える聖杯が与えられるとの事でした。
また、召還準備までがマスターの役割で、あとの実体化は聖杯がしてくれるそうだよ。
そこまで聞けば私にも解る―――
「そうか、ようやく謎は解けたよ。
お兄ちゃんと凛さんは魔法使いと魔法少女なんだね」
そしたら「まさか、魔法と魔術の違いも知らないのか」
とか「この娘、素人。いえ……まさか本当に一般人だったの」とか言われたよ。
それから凛さんは私の目を見つめて「なにこの娘、記憶消そうにも魔力耐性半端じゃないわよ!?」とか叫びだすし。
って、全世界管理してた私の記憶を消そうとしてたんだ。
いや、まあ。
それはそれで凄い挑戦だとはおもうけど、私の記憶は最低でも数百億年あるんだよ?
「気になったんだが、いいか?」
「なに?」と凛さんの視線は私からお兄ちゃんに変わり。
「さっきアリシアから魔力が漏れてるって言ったろ?
それってずっとか」
「あ、そういえば確かにそうね」
二人して私を見つめだし、ああ、そうかそうなんだと理解した私は。
「私にあるのはリンカーコアっていって、周囲から魔力生成するんだよ」
えっへんと胸を張って言ったら。
「貴女、ちゃんと魔術知ってんじゃないの!?」
ガーと、凛さんに怒られたけど「魔術回路とリンカーコアって何が違うんだ?」とお兄ちゃんに質問されたので続けた。
「リンカーコアはね、魔術回路と比べて魔力変換効率は劣るけど、身体に負荷がほとんど無いから、常時変換し続けれるんだよ」
魔術回路については、お兄ちゃんの未来の可能性の一つ、英霊エミヤの座の情報から確認した情報なので、それを元に凄いでしょって胸を張ったら。
「それだと常にその魔力なのか?俺より少ないぞ」とか「身体に負荷が少ないのは良い事でしょうけど、常に有るか無いかくらいの魔力しか発生しないんじゃ意味ないわ」
と、散々に言われ「ぁぅぅぅ」と肩を落としてたらポチが「元気だせ」と言ってくれる。
君だけだよ私の味方は……それに、きっとこの世界ではリンカーコアが魔力を生成するのに必要な魔力素とよばれる素が少ないので力が弱いのだと思いたい。
そして―――話の矛先はお兄ちゃんにも向き。
「なら、魔力のある衛宮君はちゃんと工房の管理出来てるの?」
となり。
「……?
いや、工房なんて持ってないぞ俺」
「……はあ、こんな所に素人同然のへっぽこが二人も。
なのに、何であれだけの精霊を従えられるのか不思議だわ」
―――あう、私数百億年は存在してるけどへっぽこって言われたのは初めてだよ。
見れば守護者と同じで、心は硝子なのかお兄ちゃんも何か肩を落としている。
その元凶である凛さんはため息をつき、この冬木の管理者として精霊ポチについて尋ねてきた。
その際にようやく凛さんが、不動産関係の人じゃないのが解り。
魔術側といってるから、きっと行政の裏側、影で市役所で働いている人だと理解した。
それにポチの事も別に隠す必要も無いので正直に答え。
まず、抱いていたポチの霊核をテーブルの上に乗せ「何か用か」と転がるポチを紹介。
「こんなに小さいのにアレだけの事が出来るの!?」
と、驚いている凛さんにポチの能力、地面へ潜りそこで約四十~六十メートル程の身体を構築して。
そこから根の様な霊糸で土や水等を操るといった程度、それ程凄い力は無いよと言ったら「十分凄いでしょうが!!」って怒られ。
「ランサーの宝具を受けたけど大丈夫なの」って質問されたので、ポチに聞いてみると「痛い、虐められたよ」って言ってる。
「ああ、そうなの……宝具受けてそんなもんなの」って呆れられた。
むぅ、ポチはその痛みから更に進化したんだ、「ポチだって頑張ってんだよ」と言っても、何故か「次」って言われ少し不満だけど続ける。
「大体、地面の下を深くまで潜った処で身体を造って散歩したり。
食事はしない代わりに霊脈・地脈等の力を貰ってるんだよ」
そこまで言うと凛さんは「霊脈って、昨日キャスターの被害は無かったのはそれか……」って頭を抱えてたけど。
「ポチが霊脈を操れるなら」
凛さんは俯くようにして抱えていた頭を上げ。
「冬木の管理者として要請するわ」そう口にしする凛さんは、私とお兄ちゃんに真剣な表情を向け続ける。
何でも新都で起きてるガス漏れ事件は、柳洞寺にいるキャスターさんが霊脈を使い、新都から魔力を吸い上げて起こしているとの事で。
霊脈にポチが居るとキャスターの術も新都まで届かないのか被害が無かったらしい。
「そういった事なら俺からも頼む」とお兄ちゃんからも頼まれたのでポチにお願いする事にした。
ポチも「いいよ」とテーブル上で転がり答え話は纏まり。
「でも、判らないものね。こんな処でキャスター対策が出来るなんて」
ガス漏れ事件の真犯人であるキャスターさんと色々あったらしく、抱えていた問題が一段落して安心したのか凛さんは腕を組みつつ、お兄ちゃんへと視線を向ける。
「衛宮君、アリシアちゃんに感謝しなさい。
長年の無届滞在の件は、精霊ポチの力を借りる事で良いわ」
それだけ告げ「じゃあ行きましょうか」と凛さんは口にして立ち上がるけど、私やお兄ちゃんが何所に向うのか判らないでいたら。
「決まってるでしょ?サーヴァント召還しないのなら教会へ行き保護して貰うのよ」
とか言われ、私達は教会へと向う事になりました。