<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.18329の一覧
[0] とある『海』の旅路(オリ主によるFate主体の多重クロス)【リリカル編As開始】[よよよ](2018/03/19 20:52)
[1] 00[よよよ](2011/11/28 16:59)
[2] Fate編 01[よよよ](2011/11/28 17:00)
[3] Fate編 02[よよよ](2011/11/28 17:03)
[4] Fate編 03[よよよ](2011/11/28 17:06)
[5] Fate編 04[よよよ](2011/11/28 17:16)
[6] Fate編 05[よよよ](2011/11/28 17:23)
[7] Fate編 06[よよよ](2011/11/28 17:26)
[8] Fate編 07[よよよ](2011/11/28 17:30)
[9] Fate編 08[よよよ](2011/11/28 17:34)
[10] Fate編 09[よよよ](2011/11/28 17:43)
[11] Fate編 10[よよよ](2011/11/28 17:49)
[12] Fate編 11[よよよ](2011/11/28 17:54)
[13] Fate編 12[よよよ](2011/11/28 18:00)
[14] Fate編 13[よよよ](2011/11/28 18:07)
[15] Fate編 14[よよよ](2011/11/28 18:11)
[16] Fate編 15[よよよ](2011/11/28 18:22)
[17] Fate編 16[よよよ](2011/11/28 18:35)
[18] Fate編 17[よよよ](2011/11/28 18:37)
[19] ウィザーズクライマー編[よよよ](2012/08/25 00:07)
[20] アヴァター編01[よよよ](2013/11/16 00:26)
[21] アヴァター編02[よよよ](2013/11/16 00:33)
[22] アヴァター編03[よよよ](2013/11/16 00:38)
[23] アヴァター編04[よよよ](2013/11/16 00:42)
[24] アヴァター編05[よよよ](2013/11/16 00:47)
[25] アヴァター編06[よよよ](2013/11/16 00:52)
[26] アヴァター編07[よよよ](2013/11/16 01:01)
[27] アヴァター編08[よよよ](2013/11/16 01:08)
[28] アヴァター編09[よよよ](2011/05/23 20:19)
[29] アヴァター編10[よよよ](2011/05/23 20:38)
[30] アヴァター編11[よよよ](2011/05/23 22:57)
[31] アヴァター編12[よよよ](2011/05/23 23:32)
[32] アヴァター編13[よよよ](2011/05/24 00:31)
[33] アヴァター編14[よよよ](2011/05/24 00:56)
[34] アヴァター編15[よよよ](2011/05/24 01:21)
[35] アヴァター編16[よよよ](2011/05/24 01:50)
[36] アヴァター編17[よよよ](2011/05/24 02:10)
[37] リリカル編01[よよよ](2012/01/23 20:27)
[38] リリカル編02[よよよ](2012/01/23 22:29)
[39] リリカル編03[よよよ](2012/01/23 23:19)
[40] リリカル編04[よよよ](2012/01/24 00:02)
[41] リリカル編05[よよよ](2012/02/27 19:14)
[42] リリカル編06[よよよ](2012/02/27 19:22)
[43] リリカル編07[よよよ](2012/02/27 19:44)
[44] リリカル編08[よよよ](2012/02/27 19:57)
[45] リリカル編09[よよよ](2012/02/27 20:07)
[46] リリカル編10[よよよ](2012/02/27 20:16)
[47] リリカル編11[よよよ](2013/09/27 19:26)
[48] リリカル編12[よよよ](2013/09/27 19:28)
[49] リリカル編13[よよよ](2013/09/27 19:30)
[50] リリカル編14[よよよ](2013/09/27 19:32)
[51] リリカル編15[よよよ](2013/09/27 19:33)
[52] リリカル編16[よよよ](2013/09/27 19:38)
[53] リリカル編17[よよよ](2013/09/27 19:40)
[54] リリカル編18[よよよ](2013/09/27 19:41)
[55] リリカル編19[よよよ](2013/09/27 19:56)
[56] リリカル編20[よよよ](2013/09/27 20:02)
[57] リリカル編21[よよよ](2013/09/27 20:09)
[58] リリカル編22[よよよ](2013/09/27 20:22)
[59] リリカル編23[よよよ](2014/09/23 00:33)
[60] リリカル編24[よよよ](2014/09/23 00:48)
[61] リリカル編25[よよよ](2014/09/27 01:25)
[62] リリカル編26[よよよ](2015/01/30 01:40)
[63] リリカル編27[よよよ](2015/01/30 02:18)
[64] リリカル編28[よよよ](2016/01/12 02:29)
[65] リリカル編29[よよよ](2016/01/12 02:37)
[66] リリカル編30[よよよ](2016/01/12 03:14)
[67] リリカル編31[よよよ](2018/03/19 20:50)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18329] リリカル編11
Name: よよよ◆fa770ebd ID:ff745662 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/09/27 19:26

「―――って感じで、なのはは暇さえあれば日常から練習をしているんだ」

「学校でもですか?」

「はい、学校でも魔力負荷をかけてたりやマルチタスクの練習をしてます」

なのはに魔法を教えているのユーノの話を耳にセイバーは眉を顰めるものの、当の本人はまったく気にしていないようだ。
ユーノの話では、なのはの朝は午前四時半頃に起きてから外で魔法の練習、家に戻り朝食を家族で摂るという日常的な行為にすら魔力に負荷をかけるなどしていて鍛えているらしく。
その魔力負荷とかいうのがまた問題で、ユーノの話では並みの魔導師なら立ち上がるのも困難なレベルらしいのだが、なのはは常にそれ行っているばかりか、他にも学校の授業中にマルチタスクの練習を行っているとかいう、まるで狂気の沙汰とすら思えてくる話だ。

「そっか」

本来なら呆れるような話なのにどこか安心するような顔色を変えた遠坂は、

「なのはも魔術を覚えるのが楽しくなったんだ。
でも、張り切るのはいいけれど他の人達に見つかるような真似はしないでよ、魔術ほどじゃないけれどミッド式も秘匿しないと不味いんだから」

そう口にし嗜めるけど。

「いや、でも……なんていうかな、せめて学校では授業に集中した方がいいんじゃないか?」

「シロウの言う通りだ、練習を積み重ねるのは好ましいとはいえ根を詰めすぎるのはよくない」

俺と同じ考えのようでセイバーも相槌を入れる。
ちゃんと授業に集中しないと俺のように勉強で苦労するだろうし、そもそも練習にしたってやり過ぎはよくない。

「大丈夫です。実際、魔法を使うときはユーノ君に結界を張ってもらってますし、授業だってちゃんと聞いています。
それに、魔力負荷も最初はちょっと辛かったけれど、今はそんなには感じてませんから」

懸念する俺やセイバー、遠坂になのはは答えるのだけど、塾や家の手伝いとかない日は、ここ『時の庭園』や時空管理局の本局とかでフェイトと一緒に射撃や飛行訓練とかしているそうだから……子供とは思えないような練習量だ。
とはいえ、なのはが大丈夫といっている以上は見守るしかないか………
ふと、なのはやフェイトと行った模擬戦を思い出してしまう。
純粋魔力攻撃とかいう相手に致命傷を与えにくい非殺傷なる業を使えるミッドチルダの魔術、俺の投影魔術では例え刀剣の刃を潰したとしても鈍器には変わりないので非殺傷という訳にはいかないだろう。
剣に特化した俺からすれば魔力効率は悪くなるものの、非殺傷という業を主体にできるミッド式でもってどこまで戦えるかを試したのだけど、幼いものの膨大な魔力を持つなのはやフェイトが相手では例え砲撃魔法を防御魔法にて受け止めたとしても、二人共膨大な魔力を叩きつけてくる訳なので……そのまま押し潰されてしまい。
投影魔術を駆使しなければ砲撃魔法の一撃であっさり倒されてしまうのを体験した俺は、改めて自分が投影魔術師なんだなあと逆に再認識してしまったの訳なのだが。
そういえば、この前の集団戦では俺はフェイトとの模擬戦で防御魔法ごと押し潰された後なので参加せず、人数の問題からアリシアも加われないで見ていたのだけど。
セイバー、なのは、ユーノのチームとアサシン、フェイト、アルフのチームで行われた集団戦ではアサシンが突破力に優れたセイバーを受け持ち、その間にフェイトとアルフのコンビがなのはとユーノを強襲するという機動力を生かした戦法がとられたまではいいのが……
壁役となったユーノの守りが思いの外硬く、フェイトとアルフの二人でも攻めきれない間になのはが牽制するといった風に進んでしまい、互いに一進一退の形で進んでいた戦況だったけれど、変化が訪れたのはアサシンと切り結んでいたセイバーから合図が送られたのか、隙を突いたなのははあろう事かセイバーもろともアサシンに砲撃を放ち、まるで壁が向かって来るような面の広い砲撃にアサシンは飲み込まれ、砲撃の後には練習用に借りた剣型の簡易デバイスを手にするセイバーにより斬られていた。
多分、砲撃そのものは『鈍ら』によりある程度吸収したのか、それともセイバーと打ち合っている時の魔力なのかは判らないけれど、避けられないのを悟ったアサシンは防御魔法を展開したりして堪えはしたものの、体勢が大きく崩れたか動けない隙を対魔力による護りから傷つかないセイバーに斬られたのだと思う。
……というか、対魔力のないアサシンに対してアレはハメ技だろうと言いたい。
その後は三対二の戦いに移り、結局セイバーが指揮するチームが勝った訳なんだが、こうして思い出すと指揮というのが戦いに置いて如何に重要な要素なのが解る戦いでもあったな。
アーチャーの記憶には集団と戦う方法とかはあったものの、集団を率いるといったのはなかったなあとか過り、視線を移せば彩色豊かな草木あふれる穏やかな庭園の姿が目に入って来る。
ここは次元空間を移動する庭園、『時の庭園』とか呼ばれているそうだけど、ある意味閉鎖空間といえるので空調により温度や湿度とかも調整されてようだ。
この『時の庭園』は次元を隔てているものの地球の近くに停泊していて、なのはとユーノは海鳴市から転送魔法でここを経由しアースラや本局へと行き来が出来る。
そんな『時の庭園』の一角でテーブルを囲むようにしながら座る俺やセイバー、遠坂の三人に加え、なのはとユーノの五人はアーチ状の柵で区切られながらも見晴らしのよいテラスにて雑談を交わしていた。
そういうのも、長いこと研究ばかりしていたせいかプレシアさんは料理の腕というか勘が鈍ってしまっていて、そんな時にフェイトから俺の世界を訪れた時の話を聞いたらしくて教えて欲しいという話になり。
初めは俺が教えていたのだけれど、途中からアーチャーの奴が「まだまだ甘い」とか言いながら現れ、他にやる事がなくて暇なだったのかアイツが教え始めるようになってしまった。
そんな訳で先生役から転落してしまった俺だが、何故まだ居るかと言われれば作った料理には当たり前というか食べる相手が必要で、その役を買って出たのがセイバーやアリシアであり、実際アーチャーが作ったモノは俺以上なので少し悔しい思いもするけれど俺も加わり奴の味を盗んでいたりする。
他にもなのはの実家は表向き喫茶店を経営しているとかで、そこで世話になっているユーノも一緒に加わり主にお菓子関係での話で花を咲かせていた。
運送事故によりロストロギア指定された遺失物、ジュエルシードが地球へと四散してしまったJS事件の終わりから一ヶ月近くが経過している。
本来なら、事件が終わり数日もすれば元の世界に戻れるだろうと予想していたのだけど、相変わらず俺達はアースラに部屋を借りての生活をしていた。
というのも、管理局でも俺達のような並行世界からの訪問者は対応に苦慮しているらしく、念の為に俺やセイバーに遠坂が使うミッド式の術式を本局の技師のマリーさんて女性が調べたらしいが、何というかアリシアが組上げた術式は様々な術式を元にしているとかでミッドチルダ以外の文明、キャスターから教わったとかいう俺達の世界のしかも神代級の魔術から、アヴァターの魔術、親切な竜が居たとかいう世界の術式とかを知らないと話にならないとかいうとてもハイブリットな術式らしい。
まあ、例えそれを理解していたとしても……一番の問題となるのは俺達の世界でいうところの魔法の領域の業であり、こちらの世界では不可能領域魔法とかいうのに分類にされている魔法の存在だな。
いくら本局技師のマリーさんが優秀とはいえ、そんな不可能領域とか呼ばれてしまうような業が一端でも混じっていれば理解の範疇を超えてしまうだろう、そんな訳もあってアリシアが説明し今日に至っている。
そして、そのなかで解った事だけど俺達が使っているバリアジャケットは、この世界のバリアジャケットの術式に比べ三割から四割ほど魔力を節約出来ているばかりか、対衝撃等に関する強度や温度変化にしても一割ほど強いらしいのが判明し、ディアブロからの魔力供給なしにアリシアはその防護服を三十分くらいなら展開出来るとかいう話だ。
アリシアが主に攻撃に用いるフォトンランサーに関しては、ミッドチルダで公開され使われているランサーよりも威力、射程、速さ、誘導性が共に桁違いなレベルで纏まっているそうだけど欠点もあってか術者の制御、こちらの世界ではリソースとも呼ばれるそうだが、それがもの凄くかかり並みの魔導師だと一つか二つ展開するのが精一杯な術式らしい。
他にもアサシンのデバイス鈍らで展開している擬似魔術回路とかも話に上ったそうで、魔術回路仕様だとリンカーコア仕様よりもデバイスに負担がかかるらしく、管理局で使うならとアリシアはリンカーコア仕様の術式を教えたようだ。
魔術師である遠坂からしてみれば、折角の術式をただで教えるのは反対していたものの、本局の技師達から公開されている術式の数々を見せてもらうと沈黙を余儀なくされた経緯がある。
まあ、でも……やはり遠坂はただでは起きないというか色々とある術式を熱心に見比べてたけど……この辺の根っこには文明の相違があるのだろうな。
そもそもアリシアはこことは違うものの、別のミッドチルダの出身なので俺達の世界での秘匿は郷に入っては郷に従えといった考え方なのだろうと思う。
とはいえ、アリシアが提示した魔力収集の術式は一度起動させてしまえば自動的に周囲から魔力素を収集して魔力に換える術式なのでバリアジャケットとかと同じく普段は特に制御とかの必要性はなく。
ミッド式にもなのはが使ったような集束技術があるので、いわば魔力収集という用途に絞り発展させた術式といったところだろうか。
しかしというか、便利な反面これまた欠点があってデバイスに入れると容量を多くとってしまったりや、外部から魔力を取り入れ上乗せするカートリッジシステムとやらには相性は悪いそうなので混在はできないそうだ。
でも、なんだかんだでミッドチルダ式を使う局員達の能力を底上げしてしまうから本局でも大騒ぎになり、今はなんでも教導隊とかいう部隊で運用試験を行っているとか。
他にもリンディさん曰く、管理局の技師達から正式に管理局に入らないかとかいう要望の声もあるとかいう話だ。

「おまたせ」

「今日は私も手伝ったんだ」

声と共に盆を手にしたプレシアさんとフェイトの二人が姿を見せ。

「私も手伝ったよ」

「私だってそうさ」

少し口を尖らせながらアリシアとアルフの姿が現れる。

「ふむ、西洋の煎餅というのはなかなかどうして香りのよいものだな」

「……アサシン」

前を歩く四人なのか手にする盆なのか判らないものの、漂う匂いにアサシンは口にするが、その言葉は隣に歩くアーチャーの表情を顰めさせる。

「これはクッキーであって煎餅ではない、そもそも素材からして違う物だぞ」

「ふむ、見ていただけなので詳しくはないが……米と小麦の違いだけではないのか?」

「ジャムやチョコ、バニラオイルなどの配合具合や素材の練りだし方に焼き方なども色々あるが―――まあ、煎餅には煎餅のクッキーにクッキーのよさがあるというものだ」

「いわれてみれば、しょうゆ味やみそ味のクッキーは目に掛かった事がないな」

「それこそ煎餅の領域だろうよ」

剣の腕は兎も角として、こと料理に関する限りアーチャーにはアサシンやセイバーすら及ばないでいる。
というか、俺にしても未だにアーチャーの腕までは至っていないし、もし仮に料理やお菓子作りで勝負するのであれば聖杯戦争で呼ばれた英霊のなかでも最強に位置する存在なのかもしれない。
……まあ、アサシンやセイバーが居た頃は食に関して贅沢が出来るような時代じゃなかっただろうから無理もないのだけど。

「このクッキーの生地は私がかき混ぜたんだよ」

「私のはこっちだね」

「私はこっちのトッピングを加えたのかな」

それぞれが椅子に座るなか、テーブルに置かれた数種類のクッキーにえっへんと胸を張るアリシアに、アルフもつられたのか口を開き、続いてフェイトも指を指す。
クッキーというのは、ボウルに薄力粉を入れてからバターや砂糖に卵、牛乳を加え、数滴ほどバニラオイルを入れた後、更に薄力粉を加えてよくかき混ぜてから型や絞り袋で絞り出してオーブンにて焼いて作る。
アリシアとアルフの二人が作ったのも、フェイトの更にジャムやチョコによるトッピングを加え焼いたクッキーも見た目から悪い印象は受けない。

「へえ、よくできてるじゃない」

「なに。私が見ていたのだ、よもや間違える筈もないだろう」

「そうね。何年も研究しかしていなかったから色々と手間取ったところもあったけど、おかげで上手くできたわ」

テーブルのクッキー視線を向ける遠坂に、アーチャーは紅茶を淹れながらも当然とばかりに答え、プレシアさんは感慨深そうな目をフェイトにアリシア、それにアルフの三人に向けていた。
プレシアさんとフェイトの関係も、始めはややぎこちないかったけれど一ヶ月も経てばその辺は解消されて来ているようだ。
そうはいっても亡くなったこの世界のアリシアに関してはすぐに気持ちの整理がつく筈もないので、未だお墓というか透明な保存ポットにて無垢な姿をさらしている。
そういえば俺の妹のアリシアは、この世界のアリシアの動く事のない姿を見て思うところがあったのかジッと見ていたたっけか……
そんな事を思い出しながらも、俺はクッキーと紅茶にて舌鼓をつちつつ他愛のない話に花を咲かせいると。

「ところで午後は何か予定はあるんですか?」

「どうしたんだ、なのは?」

問いかけるなのはに俺が声を上げる。

「空いてればでいいんですけど、またセイバーさんの戦術の話を聞きたいなって思いまして……」

「なるほど、兵法を学びたいという訳か」

「ええ、なのはがミッド式を学ぶというのはいずれ管理局に入るのも選択肢の一つとなるのでしょう。
仮にそうであれば、いずれはクロノのように指揮する立場にもなり得るでしょうから、今のうちにチェスや将棋などを通じて戦術を教えていたのです」

なのはの話にアサシンが「幼いながらも勤勉な」と感心するなか、セイバーはなのはの将来を見越して今のうちに個人の戦いとは違う集団での戦い方を教えていたらしい。
いわれてみれば、セイバーはあのアーサー王でありピクト人やらスコット人やらの異民族の侵略からブリテン島を護ったのだから戦術や戦略に関しても相当なものだろうといえる。
まてよ、そう考えると俺やなのはって洒落にならないような環境にいるんだな………

「しかし、残念ですが今日の午後はクロノと並行世界のミッドチルダに向う予定が入っていますので日を改めましょう」

セイバーの視線になのはは「解りました、用があるんじゃ駄目ですね」と頷いたものの。

「……あの、その並行世界って僕もついて行ったらだめかな?」

「まあ、不可能領域魔法って呼ばれている業を見たいって気持ちは解るけれど―――」

不可能魔法と呼ばれるようなモノを見てみたいと思っていたのだろう、ユーノは口を開くけれど遠坂は苦笑しつつもやんわりと断りを入れようとする。
が、しかし―――

「別に減るものじゃないし、いいと思うよ」

などと口にしてしまい、魔法使いであるアリシア自身が了承していまう。
すると―――

「いや、減るでしょ!神秘とか幻想とか預金残高とか!!」

アリシアの魔法使いにあるまじき言葉に怪獣のようにガーと叫ぶ遠坂、でも神秘は解るけれど預金残高は関係ないと思うぞ。

「ん~、ただ別の可能性の世界に行くだけだで何か使ったりする訳じゃないし……」

「アリシアもこう言っているから行くだけならいいんじゃないのか?」

「私ももう何度か経験したけれど、魔法なのに何も使わないってアンタどこまで滅茶苦茶なのよ!?
本来、魔術ってのは金食い虫なんだから、使ってればどんどんどんどんお金は減っていくものなの!
魔術でさえそうなんだから、魔法ともなればそりゃもう桁違いに減るもんでしょ!!
そうでなければ許さないんだから、とくに私が!!!」

小首を傾げながら特に何か使ったりしないと口にするアリシアだが、怪獣化し怒りの炎を噴き上げる遠坂には通じないようだ。

『実は凛の魔術は宝石魔術といって、使えば使う程お金を消費するという魔術なのです』

遠坂の意外な一面に、話を持ちかけたユーノは勿論の事、なのはやフェイト、アルフにプレシアさんまでやや引き気味になるのだが、セイバーによる念話でのフォローが入りああ成る程といった表情に変わる。
それにしても、俺達の世界でいう魔法という域、この世界では不可能領域魔法と呼ばれている業なのだけど、アリシアは『原初の海』とかいう神様の加護を得てるからか初めから魔法が使えてしまうので貴重性とかありがたみを感じてない様子。
加え、生粋の魔術師であるキャスター程ではないにしろ、遠坂からしてみれば等価交換とか色々なものを無視しているアリシアはやり難い相手なんだろうな。

「それなら、私も行っていいかな?」

「どうしたんだいフェイト?」

「その世界にも私がいて……母さんやアリシアがいないなら一人ぼっちなのかもしれないんだ」

「そういう事か」

ガーと怪獣化した遠坂により静まったなか、恐る恐るフェイトが口にするとアルフは視線を向け、アーチャーは何だか納得するような表情に変わる。
言われてみればそうだ、俺達が前にミッドチルダに渡った時、一応、アリシアが住んでいたという地区を見回ったものの、フェイトというアリシアにとっての姉妹がいるなんて想像もしていなかったから詳しく調査なんてしていないのだから。
事故にあったプレシアさんに一度は亡くなったアリシアがいるなら、その世界にフェイトが居ても矛盾はない、ならアリシアを根源を超えた深淵へと送り込み、蘇らせたプレシアさんが元々居たと思われるあの世界にもフェイトがいる確率は極めて高いと予想できる。

「だったら私も―――私も何か手伝いたいです!
助けてもらっら他にも色々教えてもらっているのに、私でなにか力になれるのならさせてください!!」

「確かに捜すのであれば人手ではあった方がいいのですが……」

「そうだな……」

フェイトの話しになのはは椅子から立ち上がりながら協力を強く申し出てくれるが、セイバーと俺はどうしたものかと思い悩み言葉を濁す。

「しかしだ。捜すにしても、先ずは向こうにフェイトが居るかどうか確認しなければ無駄足を踏む事となるだろうよ」

「それに、こちらの本局にて聞きかじったに過ぎんが次元世界というのは数多くあるのだろう。
なら、そのなかから一人だけを捜すというのは砂漠で一つの砂粒を捜すのに等しいのではないかね?」

アサシンに加えアーチャーの言葉通り、数多に存在する次元世界からフェイト一人を捜し出すのはもの凄く困難な事だろうと思う、幾らなのはやフェイト達が協力してくれるとはいえ何年かかるか分らない事柄に巻き込む訳にもいかない。

「でも、その世界に私が居るかもしれないのを確認するだけなら―――」

「フェイトには何か当てがあるのですか?」

「―――うん、あそこに行けば解る筈なんだ」

何かを思い出すように語るフェイトにセイバーは問いかけ、フェイトは確固たる意思を感じさせるような視線で答える。

「どの道、向こうの世界には行く予定なのです―――ならば調べるだけ調べるのも手でしょう」

「そうだな、フェイトに繋がる手掛かりがあるなら意外と早く見つかるかもしれないしな」

「なら、私も行くわ」

フェイトの口調には確信的な自信が込められているからだろう、手掛かりすらないセイバーと俺には断る理由がなくなり頷くのだけど、保護者であるプレシアさんも参加の意思を伝えて来た。

「その世界の私がアリシアを蘇生させたからこそ、こうして私は生きていられるの、アリシアを蘇生させる為にフェイトを置き去りにしてしまったのなら世界は違っても私に関わりがないとは言えないのよ。
それに、例え世界が違っても私はフェイトの母親よ、娘と同じ子が苦労してたり、苦しんでいるのなら手を差し伸べたいわ」

「フェイトもプレシアも行くなら私だってついて行くよ」

「結局、ここにいる全員で行くわけね……」

プレシアさんの話しにアルフも同調し、遠坂は諦めたような感じで言葉を漏らす。
そうはいっても、プレシアさんの話ももっともだし、世界は違えど母親なら分るなにかがあるかもしれない、だからこそ遠坂にしても異論を言えないのだろうな。

「じゃあ、皆で向こうのミッドチルダに行ってフェイトさんを捜そう」

アリシアの言葉にフェイトやなのは、アルフが「はい」とか「うん」とか「お~」と口々にすると善は急げとばかりに席を立ち。
アリシアの足元にポチが「一緒に行く」とでも言いたいのか現れ、ぽちを両手で抱き上げたアリシアは本局へと続くゲートに向ってとてとてとフェイトやアルフ、なのはの姿を追いかけて歩き出し、その後ろをアサシンとユーノが見守るようにしながらついて行く。

「私は片付けをしてから向うから、先に行ってちょうだい」

「片付けってどれくらいあるんだ?」

「なに、焼いている間にやっていたから残っているのは先ほど使った食器類だけだ」

先に向った四人の姿を微笑ましそうにしながら見送ったプレシアさんは俺達に視線を戻しながら告げ、多かったら大変だと過る俺にアーチャーは残っているのはここに出ている分だけと語る。
次元を航行する『時の庭園』は俺の常識では想像も出来ないようなレベルで自動化されているので、俺達の文明ですらある食器洗浄器みたいな物も当然ながら存在している、その為これくらいの量なら数分もあれば終えられるから心配ないか。

「シロウ、凛、私達も行きクロノに話を通しておきましょう」

「解ったセイバー」

「そうね」

「お願いするわ」

早々に霊体化して消えるアーチャーにならい、セイバーは俺と遠坂に視線を向け、席を立つ俺達にプレシアさんは「頼むわね」と口にして皿を重ね室内へと向う、その姿を尻目に俺達は本局へと向った。
転送用のゲートから本局に移動すると、先に向ったフェイト、アルフ、なのは、ユーノ、ポチを抱きしめるようにして手にしているアリシアと護衛役のアサシンがいて、その先にはエイミィの姿が見て取れる。

「どうかしたのか?」

「ええ。マリーに擬似リンカーコアシステムの試作品が出来たから、アリシアちゃんに見て欲しいって訳で預かったんだけど丁度よく会えたから渡そうとしてたところなの」

声を掛けた俺にエイミィはアリシア達から顔を上げ。

「擬似リンカーコアシステムですか?」

「術式の方となにが違うの?」

「術式はデバイスに登録すればいいだけの手軽さはあるんだけれど、少ないとはいえデバイスの方に負荷がかかるから壊れやすくなるし、なんていっても容量がとられるから多くの術式を扱う人からは不満の声も上がってたんだって。
そこで、術式ではなくベルカ式のカートリッジシステムみたいにデバイスに組み込む形にしたのがこの擬似リンカーコアシステムらしいよ」

アリシアの開発力も大概だが、わずか一ヶ月あまりの時間でそれ程の部品が作ってしまえる管理局の技術力の高さに聞き返したセイバーと遠坂の目が丸くなる。

「要はソフトからハードに変わったって話しなのかな?」

「それだけじゃなく、デバイス自体にかかる負荷を一つの箇所に集中させる事によって、カートリッジの要領で部品をリロードさせて素早く交換できるから信頼性も向上しているみたい」

「凄いじゃないか、発案者はマリーさんかい?」

質問するユーノにエイミィは答え、更に使い易くなった擬似リンカーコア関連の技術に対しアルフは賛辞を送った。

「いや~、それがね開発及び設計はアリシアちゃんが行ったんだって」

「うん、マリーさんに術式の方だと使いにくいって話を聞いたから使い易いように設計図を描いたんだよ」

えっへんと胸を張るアリシアに、エイミィは「本局の技術陣が欲しがるわけだよね」と付加えるけれど、設計図を描いたのはアリシアだとしてもこんな短期間で試作品を作り出せる技術力は凄いと思うぞ。

「たく……魔術の技をほいほい教えるだなんてキャスター辺りが聞いたら発狂しそうな話ね」

「しかし、それを使えば多くの管理官達の力が底上げされますから次元世界にとってはよい事なのでしょう」

「文明の差になれるのも難しいわ……」

手を顔にあてる遠坂にセイバーは理を説くものの、基本的に魔道の技は秘匿するものとする魔術師からすれば感覚がついてこれないのだろうな。
まあ、それはそれとして、何分にも俺やセイバー、遠坂が使っているデバイスは基本的に耐久性や演算機能なのど性能は高いものの、余分な機能は持たせていないからある意味簡易デバイスに近いらしい。
その為、管理局内でよく使われているデバイスを留守番電話みたいにして行なわれている連絡方法にしても、送受信そのものが出来ないので使えないでいた。
したがって、擬似リンカーコアシステムとかいう部品が出来たとしても使えないんだろうと思うとやや残念な気持ちにもなってしまう。
そう思うのも、俺の展開できる固有結界『無限の剣製』(アンリミテッドブレイドワークス)は精々十数秒程しか持たないので切り札の一つではあるけれど実戦レベルでの運用は厳しいのがあるからだ。
何せ固有結界の展開・維持には多くの魔力が必要になるのだけど、固有結界を使うまでに追い込まれている状況なら魔力は相当消耗している筈なので展開してもそう長く持たないだろうし……
まあ、そもそも固有結界なんていう物騒な結界を展開するような出来事そのものがない方がいいんだけどな。

「話は変わるけど、クロノは空いているか」

「ごめん、クロノくんはまだ仕事が残ってるんで代わりに私がメンテナンスを頼んでいたデバイスを受け取りにマリーの所に行って来たところなの。
擬似リンカーコアシステムを受け取ったのも、そのついでって感じかな」

エイミィから擬似リンカーコアシステムを受け取るアリシアを見つつ、クロノに用件を話そうと思い訊ねるとクロノはまだ仕事中らしい。
とはいえ、俺達と一緒に向こうのミッドチルダに行くのも仕事な訳だが……

「なあ、エイミィ。時空管理局って他に人がいないのか?」

「仕方ないよ、クロノ君は執務官なんだし」

「そもそも、母親が提督なんだから今は秘書みたいな仕事とかさせて育ててるんでしょ?」

「そうはいっても、一介の事務員に仕事が集中するのはいただけない」

リンディさんの下にはランディさんとか結構人がいるのに、なんでクロノばかりに仕事が集中するのか不思議でならない俺はエイミィに疑問をぶつけるものの、エイミィの言葉は答えになってなく。
代わりに遠坂はリンディさんがクロノに経験を積ませる為にあえて仕事を多くしているといった口振りで言うけれど、セイバーは艦長が母親であり将来有望視されているだろうとはいえ、一介の事務員なのに仕事が山ほどあるのは問題だと考えているようだ。

「……えと、セイバーさん。事務員ってクロノ君は執務官ですよ?」

そう口にするものの、エイミィとの話のかみ合い具合からしてセイバーも何かしらの違和感を感じたようで。

「そうですが、執務を行う役人ですから事務員なのでしょう?」

「あ、あの……まさかとは思うけど」

何だか困惑し始めたエイミィさんは聞き返すも、執務というのは事務という意味合いであり、それを行う役人だから事務員だという話しに目を丸くし、聞いていたなのはやフェイト、ユーノにアルフも「え?」とか「事務員って訳じゃ……」とか零している。

「―――あ。そうか、管理外世界の出身だからか………」

とはいえ、すぐに何かに気付いたのかエイミィはしまったといった表情に変わって。

「初めから話すね。執務官っていうのは事件捜査や法の執行権利、現場の指揮権もつ管理職のことで、高い権限を持つ代わりに知識や判断力に加え実務能力が求められる役職なんだ」

返されるエイミィの言葉からは、執務官という役職というのはただの事務員ではなくいわゆる警察と司法、それに現場監督まで兼任する凄い役職のようだった。

「なるほど、そういう事でしたか」

「お~」

「そうなのか……」

セイバーにならいアリシアや俺も口々にするけれど、俺が十四歳の頃はクロノほど凄い事はしていないし、十四歳なのにそんな役職を得ているクロノは才能もあるだろうけれどそれ以上に努力家なんだろうと容易に想像できる。
しかし―――

「―――それって権限が集中しすぎてないか?」

「そうでもないでしょ。
何せ、本局から離れた先で事件を担当するのだから、ある程度の権限が纏まってないと仕事にならないでしょうし」

「そうよな、仮に事件や事故の影響にて本局と連絡が取れないような事態が起きて動けぬでは管理局の意味がないだろう」

「凛とアサシンの言う通りだ」

現場での指揮や捜査は必要だとしても、司法まであるのは行き過ぎじゃないかと俺が答えると遠坂やアサシンはそれは違うと口々にしセイバーも頷きを入れ。

「しかし、執務官というのがそれ程の権限を持っているのなら、艦を預かる提督ともなれば他にも艦の安全や外交権とかもあるでしょうから執務官と衝突したりはしないのですか?」

「……まあ、偶にね。
例え、艦長決定だとしても問題があるのなら食ってかかるからクロノ君は」

言葉を続けるセイバーにエイミィはやや苦笑いをしながら答え、次元空間という広大で遥か遠い所にて行われている治安維持活動にそれ程の苦労と重責があるとは俺には想像も及ばないでいた。


とある『海』の旅路 ~多重クロス~

リリカル編 第11話


「そうか」

エイミィからの話で僕の務める執務官という役職を事務員と勘違いしていた話を聞いた、しかし、いかに並行世界という異なる時空管理局を知っているとはいえ異世界出身の彼等に管理局の組織構成まで詳しいと判断するのは厳しいだろう。
並行世界のミッドチルダ出身であるアリシアにしても、見たところ五歳か六歳ほどだろうし、むしろ柔軟に対応してくれた方だ。
そう考えれば管理世界では通用していた執務官である身分証の提示にしても、彼らからしてみれば何の身分を証明するのかさっぱりだった筈だ………もし、これから管理外世界で活動するような事があったならこの事例は参考するべきだな。

「まあ、そんな訳で誤解は解いといたけど……クロノ君は来れそう?」

「ああ。予定には少々早いが大丈夫だ」

「了解、もうすぐ行くって伝えとくね」

ジュエルシード事件による公務執行妨害や、ロストロギア不正所持に加え違法研究であるプロジェクトF.A.T.Eに関わったプレシア・テスタロッサとその娘フェイト・テスタロッサに関しても状況から酌量の余地は十分あり、プレシア・テスタロッサがプロジェクトF.A.T.Eに関わる切欠となった新型魔力炉の暴走の件を再調査し始めると幾つかの人脈から接触があり、そこから根回しを行ったところ一年はあるだろうと予想していた保護観察の期間が僅か二ヶ月程度にまで短縮され、彼女達にとって好ましい結果となったのはいいが、このような管理局の内部に溜まった膿みは何れどうにかしなければならないだろう。
幾つか考えを巡らしている僕にエイミィは「それから」と続け、目を向ければその表情からはやや困惑が見れとれる。

「なにかあったのか?」

「うん、それなんだけど。
その私達の世界とは違うミッドチルダに、なのはちゃんやフェイトちゃん達も行きたいって話なんだ」

「なのはやフェイトが……如何してだ?」

「それがね、前に行った時にはアリシアちゃんにフェイトちゃんっていう姉妹がいるなんて知らないから調べたりしてなかったそうだけど、知ったからには幸せに暮らしているかどうか心配しているみたい。
それで、なのはちゃんやフェイトちゃん達も力になりたいって事で行きたがっている感じかな」

「言われてみれば………僕達の世界にアリシアとフェイトがいたのだから、向こうの世界にいても不思議じゃないか」

「でしょ、そんな訳で向こう行った時に捜せるようなら何か手伝いたいんだって」

とはいえ、母さんから聞く限り向こうは僕達の世界からすれば約十年ほど未来の世界のようだし、捜すにしても容姿も変わっているだろうから見つけ出すのは容易じゃない。

「何か手掛かりとかはあるのか?」

「それはフェイトちゃんが知ってるみたい」

「解った。取敢えず着いてから話そう」

そうはいってもミッドチルダは次元世界の中心都市、例え並行世界であったとしても危なくはないだろう。
強いていうのなら入管を通さずに行くくらいか、それも十分問題だけど素直に並行世界から来ましたと告げても相手にされる筈もないだろうから………フェイトの手掛かりで見つかるのなら問題ないし、仮に時間がかかるようならなのはやフェイト達は此方に戻ってもらえばいいだろう。
それとは別に僕からもアリシアにも話さないといけない事がある、それは保護者である衛宮士郎やセイバーにも関係する筈だ。
アリシアが考案した擬似リンカーコアシステム、デバイスに組み込んで使えるリンカーコアを模した魔力収集システムなのだけど。
幼いからだからだろうか、この画期的な発明にもかかわらず当のアリシアは特許を出そうとしていない、そのままでは何れ問題になるだろうと判断した僕は代わりにアリシアの名義にて提出したところ、驚いた事にミッドチルダ地上部隊のレジアス中将から面会の要望が来るという事態が起きてしまった。
確かに地上部隊の人員は主に魔力ランクが低い者達が多いいけれど、主な職務は交通整理や違反・事故・軽犯罪の対応であり、事件にしても窃盗や傷害の逮捕などで高ランク魔導師が必要となるような凶悪事件の発生件数は多くない筈だ。
高ランク魔導師が必要となる凶悪事件にも対応する魔導師は最低限は居る筈だし、局員の底上げが目的だとしても出願されたばかりの技術に飛びつくほど地上部隊は魔導師のランクが低くなっているのだろうか?
それでも部隊として展開すれば相手も人間、ジュエルシードの複合暴走体とかいう化物とは違う。
時間の猶予さえあるのなら、例え高ランクの魔導師でさえ包囲し牽制を続ける事で体力と精神力を削り捕まえられるだろう。
………しかし、局員達もまた人間、稀とはいえ展開する局員が功を焦ったり、痺れを切らして突出してしまうケースもあるだろうから局員の底上げが出来る装備は必要という考えなのかもしれない。
優秀な魔導師が足りないのはどちらも同じ、もしかしたら僕達が思っているよりもミッドチルダでの犯罪は多くなって来ているのかもしれないし、凶悪化もして来ているのかもしれない、そう考えればレジアス中将が一縷の望みと飛びつくのも解るような気がする。
などと思案しながら僕は皆が待つだろう部屋にたどり着き、「すまない、待たせたようだ」と口にしながら中に入れば衛宮士郎、セイバー、アサシンというアリシアの保護者に、関係者である遠坂凛の姿があり、今は姿を消していて見えてないのだけだろうけど思念体であるアーチャーという男も居るのだろう。
他にもエイミィから連絡があった通り高町なのはと師匠役のユーノ・スクライア、フェイト・テスタロッサにその使い魔アルフの姿があり、やや予想外ではあるがフェイトの母親であるプレシア・テスタロッサの姿も確認できる。

「いえ、こちらが一方的に早く来ただけですので気にせずに」

向う先はミッドチルダとはいえ並行世界という可能性の世界であるから隠密かつ速やかに確認を済ませたかったが、集まった人数を見渡し、この人数で向うとなるとなればそれは厳しいかもしれないと過るなか逸早くセイバーが口を開いた。

「そうだな、クロノは執務官って役職だから忙しいんだろ?
それなのに早く来させてしまって悪い―――でも、エイミィから聞いているだろうけど向こうの世界にもアリシアの姉妹のフェイトが居るかもしれないんだ」

「そうだよ、向こうのフェイトさんはお母さんもいなくて寂しい思いをしてるかもしれなんだ。
私はお姉ちゃんなんだから、フェイトさんが寂しい思いをしれいるなら助けないと」

「血は水よりも濃いというしな」

続き衛宮士郎とアリシアが口にし、アサシンは頷きを加える、多元世界に干渉するという不可能領域魔法にて彼等が来なければ、この世界のフェイトもまた向こう側の世界と同じく母を失うという事態になっていたのかもしれない。
プレシアの供述によれば、フェイトにジュエルシードを集めさせていたのは失われた世界アルハザードへの旅が目的であり、大規模次元震の最中に発生する断層内にその道はあるという話だった。
しかし、アルハザードはオカルトの如き伝承に過ぎずプレシアにしてもフェイトを連れて行っていいか迷っていたようだし、そもそも正気の発想とはいい難い。
恐らく病により正常な判断を失っていただろうプレシアは、亡くなったアリシアを蘇生させようと躍起になっていたのは違いない。
そんなすれ違いの親子であったのなら、生きて欲しいと独りその世界に残されたフェイトはどれほどの悲しみと苦しさを味わった事だろうか……
聞く限りこのアリシアは、執念とでも呼べばいいのか並行世界への干渉という不可能領域魔法を手にしたプレシア・テスタロッサが衛宮士郎達が住む魔術とう魔法文明のある地球へとたどり着き蘇生させたという話であり、そこにフェイトの姿はなく、アリシアもまたこの世界でのジュエルシードを巡る事件がなければフェイトの存在を知らずにいたことから、その世界のプレシアもまた心を病んでいた可能性は否定できない。

「それで、私達もお手伝い出来たらと思って」

「うん、ミッドチルダなら僕も少しは知っているし―――事情を話せば向こうの僕も手伝ってくれるかもしれない」

僕の心情を察したのかなのはとユーノは視線を向けて来て。

「その世界の私が母さんに嫌われてたと、必要とされてなかったんだと思って悲しんでたらそれは違うよって教えてあげたいんだ」

「………もしもだよ、フェイトがそんな目に遭ってたのなら、その世界のあたしはプレシアもアリシアも許せないだろうからね」

「向こう側の世界の私がこのアリシアを蘇生させたからこそ、私は失ってしまったアリシアだけではなく今いるフェイトを見れるようになったの。
一つ間違えば私も同じ事をしていたのだし―――それに、例え世界が違っても私はフェイトの母親だもの並行世界とはいえ自分の娘を心配するのは当然だと思うわ」

フェイトは向こうの世界の自分を元気づけたいと思い、アルフもまたプレシアとアリシアに好くない心情を持っているだろうから自身が行って説得しようと思っているのだろうし、フェイトの髪を撫でるプレシアも母親となれば当たり前の想いなのだろう。

「て、訳よ………」

既に諦め顔の遠坂凛は顔に片手を当てている、彼女もまた並行世界という可能性の世界での行動は少ない人数で慎重に行いたいと思っていたのかもしれない。
その考え方には賛成するものの、向うのは並行世界とはいえ次元世界の中心都市であるミッドチルダだから危ない事はないと思う。

「解った。少々予定よりも多いい人数だけど行って確認するだけなら大丈夫だろう」

「なら、さっそく行くよ」

皆の意見を聞いた僕が頷きアリシアが声を上げたと思うと周囲の光景が変わり、何処かの公園のみたいな場所に僕達は立っていた。
―――っ、母さんから聞いてたけれど、これが不可能領域の魔法なのか………転移魔法にしても移動する際には少し衝撃というか浮遊感というか、移動したという感じがあるのにアリシアの並行世界へと移動する魔法にはそれがない。
目や耳を閉じたりふさいだりしている時に使われたなら気がつかないレベルだぞこれは―――僕がそこまで巡らしていると不意に頭の中にミッドチルダに関する情報が流れ込んでて来る。
なるほど、これなら例えどんな世界に行ったとしても文化の違いで困る事は少ないはず―――っ、新暦は七十五年、母さんの予想通りこの世界は僕らの世界と比べて十年後の世界、か。
アリシアの使った不可能領域という魔法に対し畏敬の念を抱くと同時に、このように容易くミッドチルダに入り込める魔法には懸念を抱かざるを得なかった。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.03351902961731