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No.18329の一覧
[0] とある『海』の旅路(オリ主によるFate主体の多重クロス)【リリカル編As開始】[よよよ](2018/03/19 20:52)
[1] 00[よよよ](2011/11/28 16:59)
[2] Fate編 01[よよよ](2011/11/28 17:00)
[3] Fate編 02[よよよ](2011/11/28 17:03)
[4] Fate編 03[よよよ](2011/11/28 17:06)
[5] Fate編 04[よよよ](2011/11/28 17:16)
[6] Fate編 05[よよよ](2011/11/28 17:23)
[7] Fate編 06[よよよ](2011/11/28 17:26)
[8] Fate編 07[よよよ](2011/11/28 17:30)
[9] Fate編 08[よよよ](2011/11/28 17:34)
[10] Fate編 09[よよよ](2011/11/28 17:43)
[11] Fate編 10[よよよ](2011/11/28 17:49)
[12] Fate編 11[よよよ](2011/11/28 17:54)
[13] Fate編 12[よよよ](2011/11/28 18:00)
[14] Fate編 13[よよよ](2011/11/28 18:07)
[15] Fate編 14[よよよ](2011/11/28 18:11)
[16] Fate編 15[よよよ](2011/11/28 18:22)
[17] Fate編 16[よよよ](2011/11/28 18:35)
[18] Fate編 17[よよよ](2011/11/28 18:37)
[19] ウィザーズクライマー編[よよよ](2012/08/25 00:07)
[20] アヴァター編01[よよよ](2013/11/16 00:26)
[21] アヴァター編02[よよよ](2013/11/16 00:33)
[22] アヴァター編03[よよよ](2013/11/16 00:38)
[23] アヴァター編04[よよよ](2013/11/16 00:42)
[24] アヴァター編05[よよよ](2013/11/16 00:47)
[25] アヴァター編06[よよよ](2013/11/16 00:52)
[26] アヴァター編07[よよよ](2013/11/16 01:01)
[27] アヴァター編08[よよよ](2013/11/16 01:08)
[28] アヴァター編09[よよよ](2011/05/23 20:19)
[29] アヴァター編10[よよよ](2011/05/23 20:38)
[30] アヴァター編11[よよよ](2011/05/23 22:57)
[31] アヴァター編12[よよよ](2011/05/23 23:32)
[32] アヴァター編13[よよよ](2011/05/24 00:31)
[33] アヴァター編14[よよよ](2011/05/24 00:56)
[34] アヴァター編15[よよよ](2011/05/24 01:21)
[35] アヴァター編16[よよよ](2011/05/24 01:50)
[36] アヴァター編17[よよよ](2011/05/24 02:10)
[37] リリカル編01[よよよ](2012/01/23 20:27)
[38] リリカル編02[よよよ](2012/01/23 22:29)
[39] リリカル編03[よよよ](2012/01/23 23:19)
[40] リリカル編04[よよよ](2012/01/24 00:02)
[41] リリカル編05[よよよ](2012/02/27 19:14)
[42] リリカル編06[よよよ](2012/02/27 19:22)
[43] リリカル編07[よよよ](2012/02/27 19:44)
[44] リリカル編08[よよよ](2012/02/27 19:57)
[45] リリカル編09[よよよ](2012/02/27 20:07)
[46] リリカル編10[よよよ](2012/02/27 20:16)
[47] リリカル編11[よよよ](2013/09/27 19:26)
[48] リリカル編12[よよよ](2013/09/27 19:28)
[49] リリカル編13[よよよ](2013/09/27 19:30)
[50] リリカル編14[よよよ](2013/09/27 19:32)
[51] リリカル編15[よよよ](2013/09/27 19:33)
[52] リリカル編16[よよよ](2013/09/27 19:38)
[53] リリカル編17[よよよ](2013/09/27 19:40)
[54] リリカル編18[よよよ](2013/09/27 19:41)
[55] リリカル編19[よよよ](2013/09/27 19:56)
[56] リリカル編20[よよよ](2013/09/27 20:02)
[57] リリカル編21[よよよ](2013/09/27 20:09)
[58] リリカル編22[よよよ](2013/09/27 20:22)
[59] リリカル編23[よよよ](2014/09/23 00:33)
[60] リリカル編24[よよよ](2014/09/23 00:48)
[61] リリカル編25[よよよ](2014/09/27 01:25)
[62] リリカル編26[よよよ](2015/01/30 01:40)
[63] リリカル編27[よよよ](2015/01/30 02:18)
[64] リリカル編28[よよよ](2016/01/12 02:29)
[65] リリカル編29[よよよ](2016/01/12 02:37)
[66] リリカル編30[よよよ](2016/01/12 03:14)
[67] リリカル編31[よよよ](2018/03/19 20:50)
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[18329] リリカル編09
Name: よよよ◆fa770ebd ID:0a769004 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/02/27 20:07

―――こんなはずではなかった。

求めていたものは遥か高みにあるようなモノでも、ましてや遠く最果ての先にあるようなモノを目指していた訳でもない、ただ、愛娘と暮らせる平穏な日々を求めていただけ……
なのに―――何処で誤ったのかは解っている、理論だけが確立されただけの技術であり、かつ小型のものでの運用試験さえも行われていないような駆動炉を大型化し大エネルギーとして扱う等という無謀極まりないプロジェクトに抜擢されたからだ。
しかも、設計主任として任されたのは一からではなく幾人もの人達が変更した様子が見て取れる設計やシステムであり、前任者か前々任者かは判らないが資料管理はずさん、加え依頼元の大手メーカーから降りて来る指示によって進捗を眺めていた上層部は修正・見直し幾度も行いその度に機能の追加やシステムの変更を行う。
もはやスケジュールは初めから不可能領域にあったと言ってもいい、始めは懸命に開発を続けていたチームスタッフも上層部からの無茶な命令や一方的な指示に朝令暮改とも思える指示の変更、組上げられたシステムが幾度も台無しにされ必要とも思われない機能の追加をさせれらる空気のなか一人また一人と離れて行った。
そんな無茶な状況のなか、スケジュールの立て直しの為に本部から「主任補佐」という肩書きを持つ男性が送り込まれ、立場上は部下だった彼が実質的にはプロジェクトを支配する。
その駆動炉に使用されるエネルギーは、大気中の酸素を消費して魔力を生み出す新機軸の燃料であり、正式認可はまだ疑問視されている危険物―――にもかかわらず主任補佐は「効率化」という名目の下、綿密な摺り合せや厳重な確認が必要なチェック機構を幾つも削り、果ては立ち入り調査のない安全基準は事実上無視するよう指示を出す。

―――その結果があの忌まわしい暴走事故を引き起こした。

勿論、反対もしたし抗議もした。
安全基準を無視して造られた駆動炉が事故や破損しようものなら、社会から信用を失い長引く休止期間により費用の増大は免れられないだろうと、しかし、度重ね伝えても依頼元には全てが無視される。
それも、主任補佐の行う「効率化」により開発の進行が進みスケジュールが良くなっていたから、そう……報告書上では順調にプロジェクトは進んでいるように見えていたのだから。
予兆は幾らでもあったのだ、主任補佐の進める「効率化」に反対を示したスタッフの内、強い態度を示した者達はすべて異動させられ後釜には主任補佐の関係者達が座り。
それ以降、私のチームは安全チェック選任となってしまっていたけれど、駆動実験直前だというのに実機への接触を禁じられてしまい訝しむものの如何する事も出来ず、設計図や確認書によりチェックを続け安全基準マニュアルの作成に勤める。
主任補佐のいう「効率化」という名の暴走は留まるのを知らないのか、駆動炉への燃料注入は結界を張ってからだという手筈にも関わらず前倒しに行い、気が付いたのは六割以上が稼動を開始していた頃だった。
暴走を始めた駆動炉に直ちに緊急停止コードを送るが止まらず、調べればここでも主任補佐のいう「効率化」の影響は現れていた―――そう、申請し受理された筈の安全装置や器機がほぼ何も成されていなかったのだ。

―――あの時、想定された最悪のケース以上と判断して転移してしまえばあんな事にはならないで済んだ!あの子は死なずに済んだのに!!

もはや駆動炉は爆発の危険性さえあり、予め確保していた安全地区への転送を申し出ても上層部や主任補佐からは許可されず。
強制停止のための反応装置が引き金となって、駆動炉から生じる莫大なエネルギーは予想を遥かに超える力となりて駆動炉を壊し、眩しい輝きは付近一帯に爆散し全てのエネルギーに反応した。
エネルギーが酸素と反応し、酸素を消費して熱と光に変わっているのだ、大気中の粉塵や毒素にも対応できる完全遮断結界の中にいる私達は兎も角外にいる生き物は……
アリシアとリニスに被害が及ばないよう、寮の部屋にも結界を張っていたけれども酸素に反応するような細かいエネルギーまでは想像が及ばず―――結果、アリシアとリニスは寝ているかのようにして息を引取っていた。
欲しかったのは愛娘のアリシアと猫一匹の平穏な時間、その為の開発部から管理部門への転属を条件にしての設計主任の筈だったのに………気が付けば全てを失っていた。

「―――っ」

怒り、憎しみ、悲しみ、後悔により霞がかかったような意識は薄れ、靄がかった脳は活性化を始める。
目を開けば眩しいと思うものの、ここ最近でこれ程よく眠れたのは久しぶりな気がする。
かつて、複製体を造りアリシアの記憶を与えればそれは私にとってもアリシアにとっても本人の筈だと考え、人造生命に記憶を転写してのアリシアの蘇生を試みるのに必要な任意のプログラムを書き込める『新たな容れ物』としての人造生命の開発、開発チームはプロジェクトF.A.T.Eと名付けていたけれど、その研究の合間に扱った薬品は私の肺を冒し、今では末期にさしかりつつある死の病は安らかな眠りすら許さなかったのだ。
それがない………それどころか、息苦しさや痛みさえ感じられない。
いえ―――

「―――そもそも、ここは何処」

眩しかった光にも慣れると視界に見知らぬ天井が入って来る、こんな天井は庭園内には無い筈ならここは一体何所なのか?
眠りにつく前の記憶を辿る、確か失敗作が私を管理局に売り―――違う、あの娘は……フェイトはアリシアの妹にした娘、決して失敗作なんかじゃない。
そうだった、もう昔の話しになるけれども山にピクニックに行ってアリシアにお誕生日のプレゼントを訊ねた時―――あの子は「ん~と」と悩んで「私、妹が欲しい」そう私に言ってきたんだ。

「妹がいたらお留守番も寂しくないし、ママのお手伝いも一杯出来るよ」

「そ、それはそうなんだけど……」

「妹がいい、ママ約束―――」

戸惑いながらも私はあの娘はそう約束したのだから、利き手や性格、話し方、魔力資質等フェイトはアリシアとは違い過ぎたけれど本人ではなく妹としてなら何ら問題はない。
だから私はフェイトに自分がアリシアと呼ばれていた記憶を消したのだから……でも、もう大分時間が掛かりすぎて妹というよりお姉ちゃんになってしまったわね。
そのフェイトが私の手伝いとしてジュエルシードの収集の最中、管理局に捕まり私に連絡を入れ―――別の世界から来たというアリシアが鏡面モニターに現れてから記憶が無くなっている。
そのアリシアはモニター越しに見た限り、利き手は左でリニスについても知っていた……恐らくそのアリシアを見て気が緩んでしまい何時もの発作が起きてしまったよう。
記憶を整理すると体を起こす、状況からして私も管理局に捕まったようだけど……管理局は私に何を施したのか、動かそうとする体は反応が鈍いものの喉や肺等すら痛みは無く健康そのものに思える。
私が研究に没頭している間に新しい治療法でも見つかったのかしら?
腕を伸ばしたりしながら私が自身の体について訝しんでいると、ガチャと音がして部屋の扉が開きフェイトとアルフの二人が姿を現し、更に視線を横に向ければガラス越しに何人かの男女の姿が見て取れる。

「母さん……なんだよね?」

「そうよ」

小走りに私のベッドまで近寄ったフェイトは何故か恐る恐る訊ねて来る。

「よかった、成功したんだ」

「フェイト、ここは?」

「うん、ここは時空管理局本局の医療施設のなかだよ母さん」

「そう……」

予想した通り捕ってから何かしらの治療を受けたようね……それはいいとしても、保存ポットにあるアリシアの遺体や人造生命であるフェイトがどのような扱いを受けるのかが気になる。

「でも、安心して母さん。
母さんが護ろうとしていた世界、地球はクロノやなのは達が護ってくれてるから大丈夫だよ」

「え……?」

続いて聞かされた話からは、一体何処でそうなってしまったのか解らないけれど移送中の事故により四散してしまったジュエルシードの脅威により、第九十七管理外世界とか呼ばれている世界が危機にさらされてしまったのを知った私は、自身は病で動けない事情からフェイトを派遣して回収に当たらせていたとかいう話になっていた。
その為、公務執行妨害やジュエルシードに関するロストロギアの不法所持にしてもある程度免除されるらしい。
それどころか、ジュエルシードにしても研究内容についての報告も含めて申請すれば内容次第で使用を許可されるかもしれないとかいう―――何処を如何したらそうるのかしら?

「それとは別に………聞いてもいいかな?」

「なにかしら」

普段から遠慮がちに接してくるフェイトだけど、何やら意を決したかのような表情を浮かべ訊ねて来る。

「私の記憶にある思い出で、母さんは私をフェイトじゃなくアリシアって呼んでいるんだ……それって如何いう事かなって思って………」

「そう、思い出してしまったのね。
フェイト、貴女は複製されたアリシアの体と記憶を持って本来ならアリシアとして生きる筈だったけれど、アリシアとは違い過ぎたのよ貴女は」

「……そんな、なら私はアリシアの失敗作なの」

悲しげに表情を歪ませ、フェイトはアリシアと同じ深紅の瞳に涙を浮べていた。

「……それは違うわフェイト。
貴女は他の誰でもないフェイトなのよ、だから私は貴女の記憶から自分がアリシアと呼ばれていた記憶を消してアリシアの妹としてフェイトという名を与えたの―――だからそんな顔をしないでいいのよ」

そう口にしながら腕を伸ばしフェイトの頭を撫でる、そういえば病で時間がなくなっていたとはいえ、この娘にこんな風に接したのは初めて……なら不安がるのも当たり前なのかもしれない。

「私はアリシアの妹なの?」

「ええ、少しお寝坊さんだから何時の間にかフェイトの方がお姉さんになってしまったけれども、ね」

フェイトの頭を撫でながら続ける。

「だから安心しなさい、貴女はアリシアの妹でありこのプレシア・テスタロッサの娘なのだから」

「―――っ、母さん」

その言葉を耳にしたフェイトは、潤ませていた目から涙を流し私に抱つき、私もフェイトを腕で包むようにして頭を撫で続けた。
でも、ジュエルシードによって世界に穴を開け、次元の狭間にあるという古代魔法の聖地アルハザード、不可能領域魔法と呼ばれる死者蘇生や時間遡行という秘術があると言われている場所だけれど―――私とアリシアだけなら兎も角、フェイトを連れて行っても良いものかと思い悩む。
幾ら管理局の医療技術が進歩していて私の体から苦痛が抜けたとしても、死の病に冒されてしまった私の命が長くないのは変えられない。
だからこそ、分の悪い博打に近いとはいえアリシアを蘇生出来る可能性を持つあの場所へと向うのに躊躇いはない―――けれども、フェイトはまだこれからなのだ………かと言ってこの娘を置いて私とアリシアだけで向うのにも抵抗はある。
例えアルハザードへと辿り着きアリシアの蘇生が出来たとしても、フェイトという折角出来た妹を置いて来たとなればアリシアは悲しむだろうし、残されたフェイトも如何なるか………

「鬼婆だと思っていたのに……ちゃんと母親らしい処もあるじゃないか」

「よかったね、フェイトさん」

声がして目線を動かし見れば、扉の近にフェイトが使い魔にしたアルフが佇み精神リンクによる影響なのでしょう瞳を潤ませていて、その横には別の世界から来たというアリシアがいた。
あのアリシアもまた私のアリシアでは無いけれど、モニター越しに話した限りではフェイトよりアリシアに近く感じられる。
その後ろには複数の男女が見て取れ、うちの一人は確かモニターに現れた時空管理局の提督で名はリンディ・ハラオウンとか言っていたわね。

「……聞くけれど、私はあとどれくらい生きれるのかしら?」

「それは気にしなくてもいいわ」

「―――ちょっと通して」と口にし、長い黒髪を髪同様黒いリボンで両側を纏め上げた少女は扉の前に立つアルフとアリシアの脇を通り抜けるようにして前に出る。

「貴女は?」

「初めましてプレシア・テスタロッサ。
私は遠坂凛、このアリシアが住んでいる土地の管理者よ」

「土地の管理者、要は地主って事……その娘が世話になっているのならそちらの世界の私に代わって礼を言うわ遠坂凛。
それで、気にしなくてもいいというのは如何いう意味?」

あのアリシアを蘇生させたという別の私は、蘇生させた後に病ではなく殺されたという―――なら、例えアルハザードへと向かい蘇生に成功したとしても、待っているのはあのアリシアが来たという世界の私同様の死なのかもしれない……

「答える前に聞くけれど体に痛みとかはある?」

「……いいえ。特に問題は感じられないわ、酷かった喉や肺も今は痛みを感じないもの」

「そう、ちゃんと術式は成功したみたいね。
まだ、魂がその体に馴染んでいないようだから動かし難いと思うけれど時期に慣れるから」

遠坂凛という少女の口にする術式という言葉から、私の体には何らかの魔法技術が使われたよう……まあ、ミッドチルダの医療でも魔法技術は様々な用途で使われているから問題は無い。
しかし、聞きなれない単語を耳にしたので聞き返した。

「魂?」

「ええ、貴女の体はもう助かる見込みがなかったようだから、魂を移す器を用意して移し替えたのよ」

「―――それなら、魂とかいう曖昧なモノなどではなく記憶の間違いじゃないの?」

もしも、この遠坂凛という少女の言葉通り『新たな容れ物』に入れたというのなら、それはプロジェクトF.A.T.E同様入れたのは私の記憶であり魂とかいうものでは無い―――もっとも、その場合だとオリジナルの私は死亡している事になる。
でも、その仮定には無理があり先ほどフェイトが話してくれた内容からは、まだ全てのジュエルシードは回収されていないのだから……意識を失った私を運び、そこから人造生命を造るにしては余りにも時間が短過ぎるという矛盾が生じてしまう。

「プレシアさん、私達の文明では義手や義眼等は在っても義体という発想は無いし、そもそも魂というモノの存在が曖昧に定義されているから、それを移し替える等という発想が出てくる事自体が難しい文明なの……だから貴女が驚くのも無理はないでしょうね」

私は遠坂凛に言ったつもりだったけれども、私の質問は続いて入って来た時空管理局の提督だというリンディ・ハラオウンが答える。

「……なら、何処の技術なの?
アリシアを失ってから私は様々な方法を模索したけれど、そんな技術や術式は見た憶えが無いわ」

「そうでしょうね、その場所は私達が第九十七管理外世界という名称で区別していて、現地惑星名称は地球、その地球が魔法文明を持つに至った世界の技術と術式だからよ」

「あの世界に魔法文明があると言うの?」

「在るわ……でも、その文明に行くにはそれこそ不可能領域の魔法が必要になるけれど」

「辿り着くだけで不可能領域クラスの魔法が?
例えそれが本当だとしても、まるでアルハザード並みの信憑性ね」

「そう、あの世界は―――私達が観測して第九十七管理外世界という名称で区分した世界、その並行世界に位置する地球だから私達の知る手段では辿り着くのはまず無理だと思うわ」

「並行世界―――所謂、可能性の世界という事……」

「ええ。だから、その世界で用意した義体に貴女の魂を移す準備として医師達の了解を得るのに少し苦労したわ。
でも、成功した今となっては医師達の考えも変わって、治療の見込みのない患者の魂を義体に移す方法について各方面に連絡を取り合っている最中よ。
あの世界の技術が私達の世界でも再現出来るのなら、今までとは違い病を治すのではなく、根本的に体そのものを代えてしまう方法は画期的な治療法とすらいえるもの」

リンディ・ハラオウンが語る予想すら出来ない異世界の未知なる業、それを用いて私は生き延びたよう。
しかも、並行世界という無限の可能性を秘めた世界を行き来する秘術―――多分、その秘術ならきっとアリシアが死なずに生き続けている世界も判るのでしょうね……

「遠坂凛だったわね」

「そうよ」

「魂を移す技術が確立されている世界から来たというのなら、貴女の来た世界には不老化や不死の技術とかが存在するのかしら?」

「そうね……私達の世界なら捜せば器を入れ換えて百年以上生きている魔術師も結構いると思うわ。
完全な不老不死って訳じゃないけれど、死徒とかいう人間を辞めて不死に近い化物になる魔術師も居るし、人形の器じゃないけれど蟲を使って五百年位は生きていた奴もいたから捜せばもっと長生きしているのも居るんじゃないの?」

「っ、五百年……」

遠坂凛の語る魔術師という術者達が扱う延命術は私の予想を超えていた。
私達の魔法という技法ですら体を棄て脳だけの存在として生きたとしても、脳の寿命である精々二百年程度が限界の筈……
それなのに、五百年以上生きて存在し得るモノが居るのだとこの少女は語るのだ、この少女が居る世界とは、かつて「聖王」と呼ばれる者達が居たと伝えられている古代ベルカ戦乱期並の技術を持つとでもいうのだろうか……
しかも、後日フェイトから聞いた話では延命技術に関してはそれ以上らしく、ルビナスとかいう人物が千年以上生き続けているというから驚くばかりの世界のよう。

「それからプレシア・テスタロッサ、貴女は運が良いわ。
何せここには貴女達の世界では不可能領域、私達の世界では第二魔法と呼ばれている並行世界の干渉の業を成し遂げたプレシア・テスタロッサが私達の世界へと訪れ、蘇生させたアリシアが居るんだものその結果が如何なのか判るじゃない」

「―――っ!?」

「状況からして貴女がアリシアの蘇生を望んでいるのは解ってる、だからよく見るといいわ、このアリシアが貴女の蘇生したかったアリシアなのかを……」

まさか遠坂凛という少女は心を読めるとでもいうのか、私がジュエルシードを使いアルハザードへと向う計画を知っているかのような口振りでアリシアへと指を指す。

「ほえ、私は本当のアリシアと違うよ?」

「え……貴女だってアリシアでしょ?」

「うん。でも、名前も体も同じだけど一度死んだ者を蘇生したとしても、その存在の本質である魂は違うモノが入るんだよ。
存在としての本質が違うのならそれは違う別のモノなんだから」

「うっ………そりゃあ、魂が代われば起源も変わるからそうとも言えるけど」

このアリシアを蘇生した私が行ったという事は、まさか私がアルハザードだと思っていた所は別の場所で、その第九十七管理外世界こそアルハザードに近い世界だとでもいうのかと過りながらも聞いていると、指されたアリシア自身が自分を本物のアリシアとは違うと口にしてしまい遠坂凛は表情を顰めてしまう。
その様子から遠坂凛という異世界の少女は相手の心を読める訳ではなさそうなので少しほっとするものの、冷静に考えてみればリンディ・ハラオウンとの会話や遠坂凛の言葉通り、状況から幾らでも推測出来る内容だ。

「シロウ、その起源ってなんなんだい?」

「確かあらゆる存在が持つ方向性であり、存在そのものと切り離せないとかいう話らしい」

「ならシロウの起源ってのは?」

「俺のはどうやら剣とかいうのらしくて、ミッド式はいいとしても他の魔術に関するモノはどうもな……」

アルフはシロウというアリシアの後ろに立つ赤毛の少年に話しかけ、起源とかいうモノは魂と不可分の関係なのだと語り、それどころか、その世界では魔法の資質にも影響するとされているよう。
その横では民族衣装とでもいえばいいのか、顔立ちはかなり整っているので衣装で損をしているような奇抜な衣装を纏った長髪の男性が、どことなく気品が漂う金髪の少女と「お互い魔術に関しては門外漢よなセイバー」とか「そうですね、アサシン。わずかとはいえミッド式を扱えるようになりましたが、ミッド式にはそのような概念はありませんから、ミッド式と魔術とは似て異なるものと判断した方がいいでしょう」とか語り合っていた。

「でもね―――」

遠坂凛に向いていたアリシアの視線が私に向き。

「この世界で紛い物の私だけど解る事も一つあるんだ。
それはね、例え本物のアリシアが蘇ったとしてもお母さんやフェイトさんが笑顔じゃなかったり、幸せじゃなかったりしたなら嫌な事だよ。
アリシアの記憶が教えてくれるんだ、この想いは理屈じゃないって、私の記憶のアリシアもお母さんやフェイトさんが好きだから―――」

「アリシア……」

如何に似てようとも、このアリシアもまたプロジェクトF.A.T.Eの問題点同様、同じ記憶と同じ体ではあるものの別人なのだと判る。
使い魔として蘇らせたリニスがリニスではない何かになっていたり、例えプロジェクトF.A.T.Eにより記憶と体は同じでも、フェイトのように魂やら起源やら呼ばれる未知のモノを知らなかった為に本質部分で違って来るのでしょうから……
お母さん―――私の知っているアリシアは私の事をママと呼んでいた、いえ、もしかしたらあの娘も………このアリシアやフェイトと同じようにいずれは私の事を母さんと呼ぶようになるのかもしれない。

「忘れられたら悲しいけれど、重荷になってお母さんやフェイトさんが前に進めないようになるのはもっと嫌なんだ。
だから、いっぱい泣いて悲しんでくたら、泣いて悲しんでくれたなら―――それでいいんだ、アリシアという、お母さんの娘がいた事を忘れないでいてくれたならそれでいいんだって……」

「っ、私は忘れないよ。姉さん、アリシアが居た事は!」

私に抱きついていたフェイトが体を起こしアリシアを見詰める。

「うん、有難う。この世界のアリシアに代わって礼を言うよ。
だから、お母さんとフェイトさんはいろんな所に行ったり、美味しいものを食べたり、一緒に買い物をしたりして欲しいんだ。
私の記憶に在るアリシアのように、フェイトさんには夜遅くまで働いていたお母さんの帰りを今か今かと待っていた時のような寂しい想いはさせないで欲しいんだよ」

あの娘は私のアリシアではない。
―――しかし、魂という起源が違うアリシアでも、楽しい事も寂しい事も覚えているアリシアが語る言葉は、まるで何もしてやれず寂しい思いさせてしまっていたあの娘の……遺言そのもの。
そして、私はまた同じ事をしようとしていた事に気付かされる。

「いつもそうね……いつも私は気付くのが遅すぎる………」

そう口にした時、気付けば私の頬を知らず流した涙がつたっていた。


とある『海』の旅路 ~多重クロス~

リリカル編 第09話


病室でのやり取りの後、補給を済ませたアースラにて俺達は第九十七管理外世界とか呼ばれいる地球へと向かい、クロノ達がジュエルシードの観測としてフェイトから借用している移動庭園『時の庭園』に合流しようとしていた。
まあ、当たり前といえばそうなのだけど管理局の法ではプレシアさんの病に蝕まれ魂を移し替えなければならなくなった問題とかは整えられていないし、元々の体は魂が抜けてしまい死亡しているからプレシアさんの生死を巡り医師達の間でも見解が分けれていたりとかして問題点はまだあるものの。
現時点での緊急を要する事案としては運送事故により地球に散らばってしまったジュエルシードの脅威の方が高いので、リンディさんを始めとするアースラクルーと俺達は再びロストロギアに区分されているジュエルシードの回収に重点を置く事にしていた。
それと、病室で聞いた限りでは何でもプレシアさんは研究の際に扱った薬品が原因で肺を患ってしまったのにも関わらず、研究を重視してしまい十分な治療を施さなかったとかで末期の腫瘍にまで悪化してしまい、ついには危篤に陥りかけていたらしい。
それは遠坂の提案した通り魂を移し替えればプレシアさんは助かるとして、俺達の世界でキャスターに頼み造ってもらった人形の器に魂を移す事によりプレシアさんは亡くならずにすんだからいいとしても。
如何やらフェイトの母親のプレシアさんはこの世界でも死んでしまったアリシアを蘇らそうとしていたらしく、その研究に没頭してしまい、アリシアの蘇生として研究の結果、誕生したフェイトに構ってやれなかったらしい。
そういうのも、プロジェクトF.A.T.Eとかいう研究から生まれたフェイトは、本来のアリシアとは性格やら利き腕やら魔力資質やらなどが違っていたから、本人ではなく妹にすればいいと判断したプレシアさんによりアリシアと呼ばれていた記憶を消してフェイトという名を与えて育てられたとか。
でも、病に冒されたプレシアさんには残された時間は少なく、俺の妹のアリシアの世界ではペットとして飼われていた山猫のリニスだったけど、この世界ではプレシアさんの使い魔になっていてフェイトに色々な魔法を習わせ幼いながらもフェイトを一流の魔導師に育て上げたそうだ。
フェイトは一人前の魔導師になるとアルフと共にプレシアさんの研究に必要なモノを集めたりなどの手伝いを出来るようになったものの、育ての親ともいえるリニスは使い魔としてプレシアさんと契約しているだけでも負担となっていたらしく契約を終えると何処かに去ってしまったそうだ……
プレシアさんは失ってしまった娘のアリシアにばかり目がいってしまい、新しく手にした筈のフェイトに目がいってなかったのだろう―――とはいえ、これは俺やアーチャーにも当て嵌まるのだろう、な。
俺やアイツがかつてあった大火災や親父の夢に縛られているように、プレシアさんはアリシアに縛られていたのだから………
死者の蘇生―――俺達の世界でも魔法の域に在る業なのだろう、ただ娘と当たり前の幸せを望んでいたプレシアさんの『奇跡』は如何して人の手に余るのだろうか、考えれば考えるほど悔しくて悲しくて涙が出てきそうになる。
失ったものは戻らない、無くしたものは戻らないんだ、あらゆる悲しみが、失われた者への未練が、死者は戻らないし、現実は決して覆らない―――だからこそ死は悲しくても同時に眩しい思い出を残すんだ、思い出となり、その人達の心の礎となって良い方にも悪い方にも影響を与える……それがプレシアさんの場合は悪い方に向ってしまったのだろうな。

「衛宮君も大変ね……」

「世界は救えても自身の学力は救えなかった、か」

集中力が途切れてきているものの、アヴァターでの出来事から色々と忘れてしまっていた学力を取戻そうとアースラの食堂で勉強をしていると、遠坂に続き珍しくアーチャーも実体化して何処と無く皮肉げな言葉をはく。

「別に俺の学力を犠牲にしたから成し遂げられた訳でもないけれど……でも、何ていうか俺なんかの学力で滅びの運命を変えられたとしたのなら安いものだと思うぞ」

というか、俺達の世界を含む世界の枝を管理していた神様でさえ困っていたのに、そんなんで何とか出来るのなら安すぎだろう。

「だが―――その破滅すら人類を滅ぼすだろう要因の一つでしかないのだろうがな」

「まあ、そうね。
そうじゃなければ、アトラス院が滅茶苦茶な代物を造り続けている訳無いものね……」

「それでも全くの無駄って訳じゃあないんだからいいいだろう」

そう答えたものの、守護者として人類にとって滅びの要因を排除し続けて来たアーチャーからしてみれば人類が滅びる要因など沢山あるのだろうな。

「でも、遠坂の言うアトラス院って何なんだ?」

「それはね―――」

髪をかき上げながら遠坂は口を開くと三大部門とか呼ばれている魔術協会の一つで、何でも初代院長が未来に来る終末を予測したらしく、それに打ち勝つための武器や道具を造るものの、それが原因で別の破滅がもたらされたりとか別の要因で人類の滅びが予見されたりとかしてしまい、その度にトンでもな代物を造り続けているとかいうよく解らない組織だそうだ。

「それに、この世界からして見ればロストロギアと呼ばれているジュエルシードもまた滅びの要因の一つといえるのかもしれない」

「そうかもしれないわね……」

俺が遠坂から聞いたアトラス院についての話に開いた口が塞がらないなか、アーチャーはジュエルシードもまた人類にとっての災厄となるりえるだろう口にし、遠坂も頷きを入れた。

「だからこそ、地球とは国交のない時空管理局が協力してくれる訳なんだろ?
元々、向こうの世界の運送事故が原因とはいえユーノみたいな子供ですら責任を感じて回収に来ていたくらいなんだから」

今までの経験から、ロストロギアと呼ばれているジュエルシードが危険な物なのはよく解っている。
暴走して動物に取り憑いただけでも、その辺にいる小動物が危険な怪異になってしまうのだし、しかも、暴走が過度に進めば一瞬で蓄えた魔力が反応して街一つが壊滅的な被害を受けるだろうし。
次元に干渉するエネルギーなのだから、繋がった先によればジュエルシード一つですら人類を滅ぼせる可能性は在り得るのだから。
他にも大規模の次元震が起きれば、次元が近い世界にも危険は及ぶのだから時空管理局が協力してくれるのも解るというものだ。

「かなり無茶な行動だったがな」

「そうね、来たのはいいとして魔力適合に失敗して遭難しかけてたし……」

「そう言うなよ、ユーノも慌ててたんだろうからさ」

やはりというか、クロノやセイバーと同じ様にアーチャーと遠坂もユーノの行動には無茶というか無謀にしか思えないのだろうな。
散らばってしまった先が管理外世界いう、管理世界に比べれば情報が少ないのもあるけれど魔力の適合性くらいは調べないと不味いのは俺でも判る……けど、発掘に関わったからこそ危険性を知っていた訳だし、それこそ当時のユーノは急いで回収に向ったのだと思うから俺が非難出来る話じゃない。
何せ同じ様な状況なら俺も同じ真似をしてしまいそうだからな。

「―――そういえば、セイバーやアリシアは如何しているか判るか?」

ユーノの行動を引き合いに「小僧、お前ならどうしていた?」とかアーチャーから小言を言われる前に話題を変えるべきと判断して口にするが、アサシンについてはアリシアの護衛役なのでアリシアについて聞けばそこに居るはずだろう。

「私も訓練室で練習していたから知ってるわ。
セイバーは朝からフェイトやアサシンと一緒にミッド式の練習や模擬戦とかしてるいたわね、アリシアは狼姿のアルフと一緒にポチと遊んでいたけど―――どちらにせよ、もうすぐ合流だから皆で汗を流している頃じゃないの」

「そうか、ありがとうな遠坂。
本来なら兄貴として俺がアリシアを見てないといけないのに」

「まあ、大丈夫でしょ。
幾ら何でも、あんなちっちゃい娘が世界すら滅ぼせる力を持っているなんて普通は想像しないもの」

「そりゃそうだ」

いわれて気付いたけれど、世界の破滅については俺のすぐ近くにも居たんだと思い出させられる。
でも、俺やセイバーがいる限りアリシアにそんな真似はさせはしないけどな。

「まったく、何処も彼処も破滅の要因だらけとは嘆かわしいものだ……」

何となく疲れたようにして呟いたアーチャーの姿が磨耗していそうな気がするけれど、零した言葉の通り守護者が必要な訳だと思えてしまう。

「衛宮君、遠坂さん、そろそろブリッジに集まってもらっていいかな?」

毎度の事ながら唐突に空間モニターが開くと、ランディという男性乗組員が通信に現れる。
本来ならアースラの通信は主任のエイミィが行うらしいけれど、エイミィは主任補佐官という役職もあるのでクロノ達と一緒に居るからその代わりのようだ。

「おや―――アーチャーさんが実体化しているなんて珍しいですね」

「さん付けはいい。
なに、凛以外と話をするのなら実体化しないと会話にならないだけにすぎんさ」

「何というか……思念体ってのも色々あるんですね―――まあ、それは兎も角として三人とも時間になるから来てくれよ」

「解った」

「ええ」

通常アーチャーは遠坂の魔力消費を抑える必要もあってか霊体化しているのだけれど、それがかえってアースラの人達から珍しく思われているようだ。
そのランディさんは俺や遠坂が答えると空間モニターの画面ごと消え、俺と遠坂がブリッジへと向うとアーチャーの奴も霊体化して見えなくなる。
次元航行艦であるアースラの内部は入り組んでいるものの、最近では漠然とだけど何処に如何行けばいいのかが判るのでブリッジには問題無く辿り着いた。
中に入るとリンディさんが既に居て、俺と遠坂の後からセイバーにアリシアとその護衛役であるアサシン、続いてフェイトとポチを手にしたアルフの姿が現れる。
そういえばフェイトから聞いた話だと、ああ見えてもアルフはフェイトよりも年下らしいから丸くてくるくる回るポチの姿は丁度いい玩具か狩猟本能を刺激する獲物とか思われているのかもしれない。

「時間前だけど全員集まったみたいね」

リンディさんは立ち並ぶ俺達を見渡した後、制御卓を操作しているランディへと視線を向け。

「ランディ、時間より少し早いけどクロノの方は如何かしら?」

「はい、クロノ執務官の方も準備できているとの事です」

「そう、それなら始めるとしましょう―――ランディお願いするわ」

「了解です」

通信管制しているランディさんにリンディさんは指示をだすと前面の大型モニターにクロノになのはとユーノの姿が現れ、後ろの方では以前プレシアさんが座っていた豪奢な椅子に座りながらエイミィが操作パネルを展開して操作していた。

「お久しぶりクロノ、そちらの状況は如何かしら?」

「はい、艦長。
僕等が受け持つジュエルシードの回収に関しては、なのはとユーノの協力もあって残り六個までとなりました。
その時の映像を送ってくれエイミィ」

「了解、クロノ君。映像送ります~」

艦長とクロノの話からエイミィによりブリッジの大型モニターに映し出される映像からは、ユーノのバインドとかいう拘束魔術により動けなくなった鳥の怪異に対し、なのはの礼装であるレイジングハートの先端が変化して環状魔法陣が展開されると凶悪なまでの直射砲撃が放たれ、鳥の怪異からジュエルシードが離れ封印されるまでの流れが映し出されている。

「これは女狐並というべきか……」

「これで、ミッド式を使い始めてからまだ数週間しか経っていないだなんて、本当にもう滅茶苦茶としか言いようが無いな」

その様はモニターを見詰めるアサシンも俺も驚くというかある意味呆れてしまう内容だった。
なにせ、他にもなのはが学校に行っている時間帯なのだろう、クロノがバインドで暴走体を拘束し続けながら数名の武装局員達が四苦八苦しながら封印作業を行っている姿もあるので比較は容易い。
聞いた話では、封印作業には術者の魔力や術式の展開速度が要求されるそうだけど、訓練された武装局員数人で苦労しているというのに、ユーノにより拘束されているとはいえなのはは自身に秘める膨大な魔力だけで封印を行っているのだから魔力量の桁が違うとしかいえない。

「なのはさんの魔力光ってピンクで綺麗だね」

アリシアが口にする魔力光とは、個人による魔力波長によって生じる色で属性とか起源とかは関係ないようだけどアリシアの言う通り桜色の輝きはなのはに似合っていた。

「こうして見るとあの娘の破壊力は洒落にならないね―――まあ、それでもフェイトには及ばないだろうけど」

「まだ荒い処もあるけれど、なのははもう手加減出来るような相手じゃない。
それに、もうなのはやユーノと争う必要もないんだよアルフ」

如何やらアルフは、なのは達とジュエルシードを巡って争っていた確執もあってか張り合おうとしているようだけど、主人であるフェイトから窘められる。

「そういうよりも……なのはの歳であんな真似していたら危険じゃないの?」

「そうですね、なのははまだ体が出来上がっていないのですから無理をしては体を壊す元になるだけだ」

ジッとモニターに映し出されるなのはの姿を見ていた遠坂は、魔力がもたらす体への負担を気にしてか口にしセイバーも頷きを入れた。
アリシアから聞いた限りでは、リンカーコアは魔術回路に比べ体への負担は少ないものの、なのはのような幼さであれ程の魔力を使えば体に掛かる負担は相当のものだろう。
なにせ、俺がなのは並の魔力を扱うとなれば、魔力回路にかかる負荷は洒落にならないので暴走の危険性さえあり得るレベルの魔力量なのだから。
そうはいっても、なのはと同じく膨大な魔力量を使えるアリシアは……なんというか、自身の魔力ではなくデバイスであるディアブロから供給されているのを使っているそうだから、術式制御に掛かる疲労はあるだろうけれど魔力による体への負担は少ないので参考とするのには難しい。
同様にリンディさんからなのは以上の魔力量と言われているセイバーにしても、基本的に魔力放出という一時的な強化に用いるので砲撃のような感じとは違から比較が難かったりする。

「僕もそう感じてはいるが、なのはが魔法に関与した状況からしてみれば実戦的になるのも無理は無いだろう。
なにより、曲がりなりにも魔法学院出のユーノが指導しているのだから必要以上に負担をかけてしまうような誤った運用をするとは思えない」

「他にも、なのはちゃんの魔力資質はお世辞にも均整がとれているとは言いづらいけど、保有魔力量と放出量の兼ね合いとか、集中に制御は異様に高いレベルを指しているから射撃系や砲撃系の魔法はなのはちゃんにとって相性がいいって理由もあるんだよね」

クロノがいうには、なのはの師匠にあたるユーノは魔法学院とかの出身らしい………ユーノの歳で卒業したとなると飛び級とかいうヤツなのだろうか?
少し疑問に思うものの、クロノの言葉をエイミィが補足するように付加えた内容からすると、なのはの魔力保有量からすればそれ程心配するレベルでは無いようだ。

「……そんなに凄いのかな」

「そうだね、少なくても僕からみたらなのはもフェイトも凄い魔力量だよ」

言われている当人のなのはは自覚が無いのかやや困惑気味だけど、ユーノからみてもなのはやフェイトの魔力量は凄いらしい。

「それより、フェイトちゃん。
リンディさんから通信があったから知ってるよ、お母さんの具合が良くなってよかったね」

「うん、ありがとうなのは」

凄いとユーノから言われるものの、なのはからしてみれば比較するのは難しいのだろう、話を変えるようにしてなのは口にし、その言葉にフェイトは嬉しそうに微笑み返した。

「そうはいっても、体ごと交換するなんて僕等の常識じゃあ想像も出来ない技術だけど」

「ああ、それに母さ―――いや、艦長が向こう側から持ち帰ったというリンカーコアの模型というのも気になる」

ユーノとクロノの会話で思い出したけど、キャスターがリンカーコアの構造と機能について調べる為に作られたリンカーコアの模型は、器が造られた後はキャスターにしても必要としていないのかリンディさんが貰い受けこちらの世界へと戻ると本局に送られたらしい。

「そうだね、私達の世界でもリンカーコアについてはまだ判らない部分とかも多いいから実際に魔力変換出来る模型があれば色々と変わってくるでしょう―――っ」

エイミィがユーノとクロノの話を補足しようとしていると突如アラームが鳴り響き表情が強張る。

「クロノ君。捜索に出ている局員から報告、ジュエルシードの反応を感知―――場所は捜査区域の海上!?」

エイミィの様子からは海にジュエルシードが在るのは予想外だったようだ、そういば俺達がいた時は陸ばかりだったから場所が海なのは意外なのかもしれない。

「解った。艦長、報告は以上で僕達はジュエルシードの回収に向います」

「解ったわ」

クロノはリンディさんに告げると通信を切り替えたらしく、ブリッジの大型モニターには向こうから送られてくる海上の映像が映し出された。

「ランディ、こちらからは転送出来そう?」

「あともうすぐで転送可能距離になります」

確認を促すリンディさんに制御卓を操作しているランディは声だけを返し。

「判ったわ。では、転送可能距離に入り次第皆さんも現場に送ります」

そう告げるリンディさんは静かに振向き俺達を見回した。


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