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No.18329の一覧
[0] とある『海』の旅路(オリ主によるFate主体の多重クロス)【リリカル編As開始】[よよよ](2018/03/19 20:52)
[1] 00[よよよ](2011/11/28 16:59)
[2] Fate編 01[よよよ](2011/11/28 17:00)
[3] Fate編 02[よよよ](2011/11/28 17:03)
[4] Fate編 03[よよよ](2011/11/28 17:06)
[5] Fate編 04[よよよ](2011/11/28 17:16)
[6] Fate編 05[よよよ](2011/11/28 17:23)
[7] Fate編 06[よよよ](2011/11/28 17:26)
[8] Fate編 07[よよよ](2011/11/28 17:30)
[9] Fate編 08[よよよ](2011/11/28 17:34)
[10] Fate編 09[よよよ](2011/11/28 17:43)
[11] Fate編 10[よよよ](2011/11/28 17:49)
[12] Fate編 11[よよよ](2011/11/28 17:54)
[13] Fate編 12[よよよ](2011/11/28 18:00)
[14] Fate編 13[よよよ](2011/11/28 18:07)
[15] Fate編 14[よよよ](2011/11/28 18:11)
[16] Fate編 15[よよよ](2011/11/28 18:22)
[17] Fate編 16[よよよ](2011/11/28 18:35)
[18] Fate編 17[よよよ](2011/11/28 18:37)
[19] ウィザーズクライマー編[よよよ](2012/08/25 00:07)
[20] アヴァター編01[よよよ](2013/11/16 00:26)
[21] アヴァター編02[よよよ](2013/11/16 00:33)
[22] アヴァター編03[よよよ](2013/11/16 00:38)
[23] アヴァター編04[よよよ](2013/11/16 00:42)
[24] アヴァター編05[よよよ](2013/11/16 00:47)
[25] アヴァター編06[よよよ](2013/11/16 00:52)
[26] アヴァター編07[よよよ](2013/11/16 01:01)
[27] アヴァター編08[よよよ](2013/11/16 01:08)
[28] アヴァター編09[よよよ](2011/05/23 20:19)
[29] アヴァター編10[よよよ](2011/05/23 20:38)
[30] アヴァター編11[よよよ](2011/05/23 22:57)
[31] アヴァター編12[よよよ](2011/05/23 23:32)
[32] アヴァター編13[よよよ](2011/05/24 00:31)
[33] アヴァター編14[よよよ](2011/05/24 00:56)
[34] アヴァター編15[よよよ](2011/05/24 01:21)
[35] アヴァター編16[よよよ](2011/05/24 01:50)
[36] アヴァター編17[よよよ](2011/05/24 02:10)
[37] リリカル編01[よよよ](2012/01/23 20:27)
[38] リリカル編02[よよよ](2012/01/23 22:29)
[39] リリカル編03[よよよ](2012/01/23 23:19)
[40] リリカル編04[よよよ](2012/01/24 00:02)
[41] リリカル編05[よよよ](2012/02/27 19:14)
[42] リリカル編06[よよよ](2012/02/27 19:22)
[43] リリカル編07[よよよ](2012/02/27 19:44)
[44] リリカル編08[よよよ](2012/02/27 19:57)
[45] リリカル編09[よよよ](2012/02/27 20:07)
[46] リリカル編10[よよよ](2012/02/27 20:16)
[47] リリカル編11[よよよ](2013/09/27 19:26)
[48] リリカル編12[よよよ](2013/09/27 19:28)
[49] リリカル編13[よよよ](2013/09/27 19:30)
[50] リリカル編14[よよよ](2013/09/27 19:32)
[51] リリカル編15[よよよ](2013/09/27 19:33)
[52] リリカル編16[よよよ](2013/09/27 19:38)
[53] リリカル編17[よよよ](2013/09/27 19:40)
[54] リリカル編18[よよよ](2013/09/27 19:41)
[55] リリカル編19[よよよ](2013/09/27 19:56)
[56] リリカル編20[よよよ](2013/09/27 20:02)
[57] リリカル編21[よよよ](2013/09/27 20:09)
[58] リリカル編22[よよよ](2013/09/27 20:22)
[59] リリカル編23[よよよ](2014/09/23 00:33)
[60] リリカル編24[よよよ](2014/09/23 00:48)
[61] リリカル編25[よよよ](2014/09/27 01:25)
[62] リリカル編26[よよよ](2015/01/30 01:40)
[63] リリカル編27[よよよ](2015/01/30 02:18)
[64] リリカル編28[よよよ](2016/01/12 02:29)
[65] リリカル編29[よよよ](2016/01/12 02:37)
[66] リリカル編30[よよよ](2016/01/12 03:14)
[67] リリカル編31[よよよ](2018/03/19 20:50)
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[18329] アヴァター編07
Name: よよよ◆fa770ebd ID:d27df23a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/11/16 01:01

因果律を司る白の書の精霊イムニティは迷っていた。
先日、ある世界に送った白の書が目的とする資質である救世主としての適正、秘めたる潜在能力が高い姉妹を見つけたのだ。
姉の当間大河と妹の当間未亜、姉妹共々かなりの力を秘めており、その潜在能力を引き出せるのならば救世主にさえなれる可能性が高いのだけど……
でも、あの世界はそれまでに行なわれてきた救世主の選択から、世界そのものが独自の進化を遂げてしまい、恐ろしいまでの防衛能力を持つ非常に危険と判断されていた世界だった。
そう―――遥か昔、あの世界がまだ神代と呼ばれていた頃に起きた出来事、白の書が候補者を見つけ出し、白の召喚陣へと召喚したまでは良いけど……あの世界の免疫とでもいえばいいのだろうか、後に『抑止力』と呼ばれるモノだと判ったが。
数多の亡者共が召喚の際に現れ、召喚された候補者や、その場に居た者達がことごとく屠られ。
そればかりか、赤の書の精霊オルタラが召喚した候補者達が当時のアヴァターの軍勢と共に、まるでアヴァターに生きとし生けるもの全てを根絶やしにするかのように、いくつもの街や村を滅ぼし、殺戮を続ける『抑止力』を討伐せんと向かったまではよかったが。
黄金の鎧を纏い円柱のような剣を携えた、たった一人の男が起こした時空断層。
文字通り世界がそのものが切裂かれ、斬り裂かれた穴へと吸い込まれた軍勢は二度とアヴァターには戻っては来れず、候補者達も全員がことごとく戦死してしまい選定は叶わぬものとなった。
でも、離れた所に召喚陣を張っていた事が幸いしたらしく、『抑止力』と黄金の戦士が、私とオルタラの居る『試しの場』へと辿り着くまでには現界し続ける事ができずに消え去り、『導きの書』が無事だった事がせめてもの幸いだったのかも知れない。
でも―――あの姉妹の秘めてる力は惜しい、何よりも彼女達に匹敵する者達は歴代の候補者の中でさえいないのだから。
しかし、迂闊に召喚すれば『抑止力』が再びアヴァターに現れ、今度こそ破滅の軍団以上に全てを滅ぼしてしまうだろう。
当間姉妹を召喚するには、まず先にあの世界の目を誤魔化す事が必要、そう結論を出したまではいいとして肝心の方法が見付らなく数日が過ぎた―――ある日。
ここ『試しの場』の最下層に、大きな丸い土の玉の様なモノが現れた。
アレは何日か前にも現れ、その時には三つ首をした大型の獣、書の守護者が相手をしたが、飛び掛ると同時に見えない何かに絡み取られ動けなくなったばかりか、地面からもアレの触手だろうモノに絡みつかれ地面の下へと引き摺り込まれてしまった。
挙句には、仮に肉体を斬り分けられたとしても死ぬ事すらない生命力、不死に近い程の生命を誇っていた書の守護者が、驚くべき事にその生命力を吸い尽くされてしまい今では前足の片方を地面から突き出てる状態で亡骸を晒している。
その日は、それ以上は何もせずに去って行ったけど―――

『今日は一体何しに来たのかしら?』

書の守護者すら倒してしまえる程の力を秘め、今まで見た事がなかったモンスターでもあったからだろう、気になって観察していれば玉を構成していた触手の様なモノが解かれて行き、中から六人の男女が現れた。
………今まで、救世主を目指す色々な人達に出会って来たけど、『試しの場』に地の底から来る者は彼女達が初めてよ。

「ふ~ん、ここがそうなの」

「みたいだね、お姉ちゃん」

三人の男が油断無く剣を構えてるなか、銀色の髪の少女と金色の髪の少女が辺りを見渡していた。

「イリヤスフィール、アリシアここは既に敵地、油断は禁物です!」

銀色の鎧を纏った少女、恐らく彼女がこのパーティーのリーダーなのだろう。
彼女達は、用心深く辺りを注意しながら何かを探している、ここ『試しの場』に来る以上、私が封印されている『導きの書』を捜しているのは間違い無いでしょう。
でも、地下から現れた事といい、私が契約するに相応しい力を持つのか解らないわ。
取敢えず、白の書で確認をしてみる事にする。
三人の男は論外として、まずはリーダー格である銀の鎧を纏った少女を調べると―――

『凄い力じゃない』

無論、以前から悩んでいた当間姉妹の潜在能力には僅かだが足りないけれど、一体今まで何万人殺して来たのか判らない程、彼女の存在力は桁違いに高く、潜在能力以外では当間姉妹を上回事から無視出来るものではない。
救世主に必要な存在力という資質は十二分にあり、更に、私―――白の書の理に対する適合性も高いのだから候補者として申し分ない。
例え救世主になれなかったとしても、彼女程の存在力を持った者が傘下に加わるのなら、先に召喚したシェザルとムドウは用済み、元々救世主になれる程の高い存在力なんか持ち合わせてないのだし。
潜在能力にしても役不足、まあまあ存在力があるので使えそうだから呼んだに過ぎないのだから、あの二人は適当な処で使い潰しても構わないでしょう。
次に、銀色の髪をしたイリヤスフィールと呼ばれた少女も、中々如何して高い存在力を持つけれど、潜在能力では当間姉妹、存在力では銀の鎧を纏った少女に及ばず契約するには程遠い。
そして、最後にあのアリシアと呼ばれた少女を調べる、けど……

『―――アレってまさか……よね』

何だか、矢鱈と神々しい少女アリシアを調べると―――て、何よコレ!?

『力も存在力も全部―――底が無い!?』

この力―――当間姉妹や銀の鎧を纏った少女どころのレベルじゃない、いえ、存在としての次元そのものが違いすぎる―――まさか、本当に神だとでもいうの!
白の書ですら解らない力を見せ付けられ、唖然としてるなか、彼女達はここ最下層の調査を続け、命であるマナを吸い尽くされた守護者の片足を見つけていた。

「モンスター?」

「おいおい、何言ってんだデビット。ここは仮にも学園なんだぜ、モンスターなんかが居る訳ないだろ」

「……そうだなセル」

セルという男に言われ、デビットと名の男が「幻覚か、どうややら疲れてるらしいな」とか言って片手で顔を覆う。

「いや、少なくても在るのは確かだから、幻覚じゃいぞ」

「きっと、この階が使われていた時にお勧めの本を飾って―――ん?」

赤毛の男が顔を覆っている男を宥めるなか、神らきし少女アリシアが、足元で回っている丸い玉を見やり。

「ほえ~、その子ってポチがお散歩中してたら襲って来たんだ」

神らしき存在の足元で、どうやらポチというらしい丸いモノが、自己主張しているのらしくクルクルと回り、アリシアが「頑張ったね、襲い掛かられて怖くなかった」とか言って撫でている。
怖いとか言う前に、そのモンスターはアヴァターでさえ珍しい程の化物、『導きの書』を護り候補者が救世主に相応しい力を持っているかを試す番人だった相手すら喰い殺してしまった怪物なんだけどねぇ……
その横では「明日は我が身だなセル」とか「洒落になってねぇよ、デビット」とか話しあっていて表情を青くしていた。

「だとすると、ここ図書館地下にはモンスターが住み着いているのか?」

「いえ、住んでいるのでは無いでしょうシロウ。
そもそも住んでいた場合、ここがこれほど整然とされている筈がありません、憶測ですが、もしかするとモンスターが召喚される類の罠があるのかもしれない」

「モンスターを召喚する罠、か。
これを見る限り無いとは言えないな、解った、注意するセイバー」

銀の鎧を纏った少女セイバーに注意され、赤毛の男シロウが辺りを注意深く見渡すと、目が疲れたのか片手で頭を押さえ。

「っ、解析出来ない。何か変だぞあの本?」

と、私が封印されている『導きの書』を指し示した。

「私達の知らない魔術なのかもしれないし、何よりシロウは魔術抵抗が低いんだから怪しいなら触らない方がいいわよ」

「でも」と呟きながらその少女は周りを見渡し。

「図書館の中に罠が在るって事は、やっぱり、ここが拠点なのは間違いなさそうね」

イリヤスフィールなる銀髪の少女が視線を戻し『導きの書』を見詰め、セイバーが「ええ、間違い無さそうです」と頷く。
拠点って何の事かしらと思っていると、神らきし少女が「ん、ちょっと待って、あの本の中に誰か居るよ?」と言い出し『導きの書』の元に走って来ると、物理的にも鎖で覆われ開かれないようにされていた『導きの書』に手を伸ばし、無造作に封印を中和しながら中に居たはずの私を外に引き摺り出した。

「―――ちょ、なっ、貴女何者なの!?」

あの封印は、私でも消耗を厭わずに力を使えれば抜け出せる程度のモノとはいえ、容易く無効化なんかできるモノでは無いはずなのに……それを、ああも簡単に中和してしまうなんて。

「ん、私?私はアリシア・T・エミヤだよ」

「なら、アリシア。何故、貴女はそんなに神々しいの?」

「神々しい、そうかな?」

首を傾げるアリシアに、「気が付いてなかったのか……」と赤毛の男シロウが呆れたように洩らし。
その横ではセルとデビットと呼ばれた男が「……みたいだな」、「……そのようだ」と相槌を打っている。

「えと。これは、座に居る子……じゃなかった、神を真似ただけだよ」

「真似た―――貴女、見た事があるの!?」

「うん、知ってるよ」

アリシアは、さも当然であるかのように頷き、

「そんな信じられな―――っ!?」

そして私は全てを理解した。
―――そう、この少女アリシアは、毎回、救世主が選ばれない事に業を煮やした神が自ら選定した候補者なのだろうと。
なら、神の加護か寵愛を受けている以上、白の書が示した、異常ともいえる力や存在力も頷けるというもの。

「そうだ。雰囲気だったら、こんな感じも出来るよ」

私が考えている間にアリシアが、神々しい感じから真逆の禍々しいモノへと変わる。

「っ、何よこの禍々しさ!」

イリヤスフィールの前に色黒の巨人が護るように現れ。

「如何したというのです、アリシア!?」

セイバーが何かを手にして身構えた。

「えと、ただのイメチェンだけど」

口にしながら、圧倒的な禍々しい存在感に気圧されたのか、身動き一つ出来ないシロウ、セル、デビットの三人の男達を視界に納め。

「駄目みたいだね……」

元の矢鱈と神々しい感じに戻す。

「……今のがただのイメチェンて」

「あの、得体の知れない恐怖すら醸し出す不吉な気配、正に今の神聖な感じとは真逆、あの様な事も出来るのですかアリシアは……」

シロウが何か疲れた感じで呟き、同じくセイバーも「はぁ……」と溜息を吐いて手にしていた何かを収めたのか構えを解いた。
他にも「……今のは一体」とか「さっきのアリシアが、実は破滅の魔王でしたって言っても俺は納得出来るぜ……」とか話していたセルとデビットだけど、現れた色黒の巨人に気が付きセルは「ひっ、バーサーカー!?」とか悲鳴を上げ、デビットは固唾を飲み込み凝視していた。

「まったく、アリシアにも困ったものね」

イリヤスフィールが零すと同時に色黒の巨人バーサーカーが消え、セルとデビットの二人も緊張から解放される。

「……あう、ごめんなさい」

本人からすれば、纏う雰囲気を変えただけのようだけど、アリシアは今のが失敗だったのが解って俯いてしょげる。
まあ、性格はまだよく解らないけど彼女以上に力と存在力を持つ者は存在しないはず―――決定ね。

「アリシア、少し屈んでくれるかしら」

「ん、良いけどなに?」

私の目線と同じ高さまで屈むアリシアに、逃さないよう顔を両手で持って固定し、私の唇でアリシアの唇を塞いだ。
契約には体液の交換が必要である故に、口の中に舌を入れ丹念に絡め、驚いてるアリシアの舌を絡ましながら互いの唾液を交換してゆく。
舌を丹念に絡ましながら数分が経過し、契約が完了したのだろうマスターであるアリシアから途方も無い力が流れ込んで来る。
正常にパスが繋がった事を確認しつつ、唾液で出来た架け橋を残しながら私がマスターの唇を離せば、頬を朱に染め、困惑の表情を浮べるマスターの顔から手を放し見詰め合う。
その横では―――

「「「「「………」」」」」

先程の契約を行なう様子に他の者達は言葉にならない驚きを隠せないでいた。

「お、女の子同士でキス……」

「話には聞いた事があるけど、あの娘、まさかそういう趣味……なのか」

唖然として私とマスターを見詰めるシロウとデビット。
それに―――

「―――くぅ、何で俺は今幻影石を持ってなかったんだ!」

拳を握り、心底悔しそうにしている男が一人、そんななかでマスターの口が開き。

「……ちょっとびっくりしたよ。
急に唇でするんだもん、息が出来なくて苦しかったんだから」

「……え?」

マスターは何か「めっ」って感じで話す、まさか顔を恥ずかしげに朱に染めていたのは息が出来なかったからなのかしら……
今までの経験から自信はあったんだけど、流石、神が見定めた候補者……如何なる状況にも動揺すらしていないわ。

「私のお母さんもしてくれてたんだけど、おはようの時も、おやすみの時もキスは頬で唇じゃないんだから。
息が出来なくて苦しいから、もう間違えちゃ駄目だよ」

マスターは、飽くまで頬と唇を間違えただけだと思ってるようね。
まあ、それ以前に今のをおはようのキスだと思い込んでいるのは如何かと思うけど……

「しかし、唇を交わす事が挨拶になっている所もあるにはありますが、初対面でそれを行なう者がいるとは……」

何処か呆れた感じのセイバーだけど。

「―――違うわセイバー。唇を合わせた後、あの子が何をしていたのか解るでしょ」

「っ、如何いう事ですかイリヤスフィール!?」

何かを感じたらしく、セイバーがイリヤスフィールへと顔を向ける。

「解ってるのは、あの子がアリシアと体液の交換をした事よ―――これだけ言えば、解るでしょうセイバー」

「体液の交換―――まさか、今のは魔術的契約を結んだという事ですか!?」

表情を変え私へと向き直るセイバー、ふぅん、あのイリヤスフィールって娘は結構契約に詳しいようね。

「ええ、そうよ。マスターはおはようのキスだと思ってるみたいだけど、私はアリシアがマスターに相応しいと思ったから契約したのよ」

そう、これ以上ない程の適正と資質を持った存在は今までにも居ないわ、マスターが持つ力を使いこなせるなら、恐らく召還器すら必要無いのかもしれない。

「ええ、そうだったんだ!」

と、驚いているマスターだけど「―――でも」と続ける。

「マスター……そうなんだ、それなら私が衣食住の面倒みないといけないんだよね」

「マスター」

マスターは、私が一方的に結んだ契約でも、嫌がる素振も見せず受け入れてくれる、何て器が大きいのかしら。

「ちょっと、アリシア!使い魔の契約だと思うけど、その娘がどんなモノか解ってないのよ!?」

「ほえ。だって、ランサーさんと契約した時も、神父さんに頼まれた後、契約しちゃったけど?」

「あのね………たく、もう……何やってたのよ、ランサーは」

諦めたように溜息をつくイリヤスフィール。
後に知った事だけど、ランサーという者は、私の前にマスターと契約したサーヴァントと呼ばれる存在で槍の達人だったらしく、マスターの槍の師匠でもあったらしい。
マスターの世界で行われた、聖杯戦争と呼ばれる儀式に呼び出されたランサーは、セイバーと闘い敗退して世界の外に在る座という所に戻っていったそうだけど、何だか話だけ聞くと、あの危険な世界の『抑止力』に似た感じがするわね。

「あっ、ところで何て名前なの?」

私の名を尋ねてくるマスター、そういえばまだ言って無かったわね。

「私は、イムニティよマスター」

「そうか、あの娘はイム・ニティっていうのか」

呟くデビット、「っ、誰がイム・ニティよ」と口を開こうとした時。

「ニティちゃんか。うん、いい名前だね」

そうマスターが言いながら私の頭を撫でてくれる、まあ、オルタラもリコ・リスとか名乗っているらしいから、マスターがそれでいいならその名で良いわ。

「でもさ、何だか救世主クラスのリコ・リスに似てないか?」

セルがじっと私を見詰め、シロウが「言われてみれば……」と頷き、マスターも「はっ!そういえば、あの特権を見せびらかしている救世主候補にそっくり!?」と表情を変える。
特権を見せびらかすってオルタラ、貴女一体マスターに対して何をしてたのかしら……
そうね、名も変えた事だし、マスターの実力も知りたいから、一緒に居たいし、上に在る学園で生活するには、オルタラに解らないよう容姿も変えた方がいいかも知れない。
別段、この容姿に対する思い入れも無いし、変える事に抵抗はない、それにマスターからの力の供給には問題が無いから体つきを大きくし髪型も変えてみる。

「気に入らなさそうなので変えてみました、どうでしょうかマスター?」

「お~」

マスターは私が大きくなった事に驚いた様子で、

「変身して大人になったって事は、ニティちゃんは魔法少女だったんだね」

「ま、魔法少女!?」

「魔法少女は、大人に変身するものだからね」

とか何度も頷きながら、よく解らない事を言い出すし。

「す、凄い、見た目は俺達と同年代なのに、胸はありそうで無く、無さそうである、まさに理想の体つきだ!」

デビットがゴクリと唾を飲み込んだ後、「ヒャホー」とやたらテンションを上げて言い放つわ、セルとシロウも「そうか、デビットって貧乳属性か」とか「また……」と洩らしている。
貧乳、貧乳って一度殺そうかしらこの男達?

「では、改めて問おうニティ、何故貴女はこの様な場所に居たのか?
いえ、そもそも、何故、彼女は本の中に居たのか?」

セイバーが真っ直ぐな視線で私を見詰めて来る。
でも、如何しようかしら、私が素直に白の書の精霊と名乗るのは不味いかもしれないわね。
今までの経験から、私とオルタラの事を知った候補者は殺しあう事だってあったし。
まあ、そうはいっても、赤と白の理はそれぞれが違う、当然の事ながら理に選ばれる者も違うのが当たり前、殺しあうのは時間の問題とも言えるけど。

「いいわ、答えてあげる。
そうね………私は、随分昔に悪い魔法使いに捕まってこの本の中に封印されていて、マスターが封印を破って助けてくれた恩を返す為に仕える事にしたのよ」

「何処かで聞いたような話ね。
(それよりも、わずかだけど話している時の間、ニティって娘何か隠しているわね……)」

その昔、私が聞いた事のある話しではこんな感じだったわねと思い出しながら話せば、イリヤスフィールも何処かで耳にしていたらしく聞いた事があると返してきた。

「そうなんだ、だったらニティちゃんは悪い子じゃないから大丈夫だよ」

悪い魔法使いに捕まっていたから逆説的に良い子だとでも判断したのか、私の話を信じるマスターがセイバーやイリヤスフィールに向き合う。
でも、マスター……信じてくれるのは嬉しいのだけど、子供ではあるまいし少しは疑って欲しいわ。
………もう少し、様子を見てから契約すれば良かったかしら?

「……そうでしたか、根の国と呼ばれたアヴァターでも、その様な事は在るのですね。
(ニティの話が本当であるという確証は何処にもない、とはいえ、契約したアリシアが違和感を感じていない以上私が言う事は無い、今は様子見という事でしょう)」

「……(もしかしたら、ニティは三体の書の精霊の内の一体……いえ、そんな都合の良い話があるわけ無いわよね)」

私を疑いの目で見ていたセイバーとイリヤスフィールの二人は、マスターのおかげでとりあえず納得してくれたみたいね。

「なんだ……魔人とかじゃないのか」

「いや、こんな所に魔人といたら何かと危険だし不味いだろ」

どういう根拠で私を魔人だと判断していたのか、セルの呟く声にシロウは反応する。

「何言ってんだよシロウ。話に出てくる魔人だったら、一回とか三回とか願いを叶えてくれるもんだろ?」

「そんなモノなのか?
なら、仮にそうだとして何を願うんだセルは?」

「ふっ、愚問だなエミヤ、理想の彼女が欲しいに決まってるだろ!」

「………」

セルとシロウの二人は、もしも私が願い事を叶える魔人だったらとか話していて、話を聞いていたデビットは「っ、その手があったか!?」とか驚きを隠せないでいた。

「まあ、あの三馬鹿は放って置くとして」

今回のマスターは神自ら選定した候補者、恐らくは赤の理にも資質が高いはず、ならオルタラにしてもマスターを選ぶしかないのだから暫くは様子を見る事にしましょう。


とある『海』の旅路 ~多重クロス~

アヴァター編 第07話


突然、俺達の目の前でアリシアとキスを交わしたニティ。
どうやら彼女は、随分昔に性質の悪い魔法使いに捕まって本に封じられていたらしい。
それで、封印を破って助けてくれたアリシアに恩義を感じたのか、彼女はアリシアの使い魔なのだろう契約を結んだそうだ。
む、まてよ、昔から居たなら―――
ふとある事に気がついた俺の横では、

「っ、俺はデビットとは違って乳が大きくても小さくても大丈夫―――だが、しかし、それ故に願いを叶えられるのが一回だけだととするなら、俺はどの乳を選べば良いんだ」

とか悩んでいるセルと、

「そんな問いなら簡単さ、魔人に願いを増やして貰えば良いんだからな」

などと答えるデビットがいて。

「その手があった!?」

「ふ、共に理想の彼女を手に入れようぜ!」

「っ、デビット、今までお前の事ただの堅物だと思ったぜ!」

「俺もさ、セル。お前の事よく知らずに、ただの変質者だとばかり思ってた!」

スクラムを組みながら語り、互いに涙を流しあう二人からやや距離をとって、アリシアと一緒にセイバーやイリヤに「これからよろしく」と話しかけているニティに声をかけた。

「なあニティ」

「何よ、三馬鹿」

「さ、三馬鹿!?」

なぜだか解らないが、俺に対するニティはあからさまに不快な表情を向けて来る。

「俺は衛宮士郎、よろしくな」

………俺、ニティの気に障る事でもしたかと思い、思い出そうとするが思い当たる節がないので、とりあえず棚上げした俺は気を取り直して自己紹介から始めた。

「エミヤ―――マスターと同じ?」

「うん、私のお兄ちゃん。
お兄ちゃんの作る料理はとても美味しいんだ、いつかニティちゃんにも作ってあげてね」

「ああ、期待していてくれ」

アリシアと同じ姓できょとんとした表情を見せるニティに、アリシアは補足してくれるのだが、せめて入学費や寮費の支払いが済めば食材などにまわせるのだけど先は長そうだ……
そう思いながら、後ろにいるアリシアに向き直るニティが再び振向くのに合わせ本題に入る。

「ここにブラックパピヨンて盗賊が来た事はないか?」

「ブラックパピヨン、何よそれ?」

「そうですね、確かにニティなら知っているかもしれません、実は―――」

不機嫌なのを隠さずに接してくるニティだが、言いたい事が解ったセイバーが話を続けてくれ、俺達がそもそもここに来る理由となった事を語る。
するとニティは何故だか唖然とし、

「今までで、そんな理由でここに来た人達って貴方達が初めてよ……」

とか力が抜けるような口調で呟く。

「………如何やらここには居ないみたいね」

「いえ。そう決め付けるのは早々です、ここは図書館の最下層、かの盗賊がここまで来る必要性は無いでしょう、むしろ―――」

無駄足だったわねと言いたげなイリヤに、むしろこれからが本当の捜索だと言いたげにセイバーは上に続く階段へと視線を向ける。

「―――それもそうね、言われてみれば地下何階だか解らないけど、ここまで来る必要はないものね」

「ええ、彼の賊が最下層まで来るのは無駄が多いいでしょう、恐らく、この上の階の何処かににブラックパピヨンが拠点とするだろう場所が在るはずです」

「じゃあ、早速上の階を調べようよ!」

「………全てはマスターの望むままに。(ここ『試しの場』の最下層に、それも間違ってやって来る人達って……ホント、少し早まったかもしれないわ)」

イリヤとセイバーがこれからの指針を示し、アリシアとニティも頷きを入れ、

「二人とも行くぞ」

俺も理想の彼女を語り合うセルとデビットを連れ上の階へと向かうことにした。
俺は解析を使いながら罠が無いか調べるが、魔術的な罠だと門外漢なので、その辺は俺よりも魔術に長けているイリヤやアリシアに任せる事にする。
何かの罠が在るかもしれず、慎重に上の階に上がった俺達だが、「理想の彼女~」とか「書の魔人は何処だ~」とか口々に洩らしているセルとデビットがむぞうさ本棚から本取り出し開いた時―――なぜかモンスター達が現れた。

「っ、ちょっと待て、ここ学園だろ!?」

「そんな事は後ですシロウ。現れた以上、まずはこのモンスター達を倒すのが先決です!」

突然の出来事とはいえ、一瞬、狼狽えてしまう俺をセイバーが窘め、不可視の剣を振って向かってきた獣人を一刀のもとに斬捨てる。

「あ、ああ……」

動揺する心を落ち着かせ、ふと見ればイリヤとアリシアは突然の状況に対応し、実体化したバーサーカーが迫り来る獣人やらアンデットだろう骸骨達を纏めて薙ぎ払っていて、後ろに控えている魔術師っぽいモンスター達には毒々しい朱色の短槍が容赦なく降り注いで殲滅して行き。

「「………え?」」

突然起きた出来事に、如何すればよいのかも解らず本を手にしたまま固まっているセルとデビットの二人が状況を理解するわずかな間に、現れたモンスター達は物言わぬ亡骸へと変わっていた。
………まあ、俺も突然の事で何もできなかったのだから非難する資格はない。

「セル、デビット、迂闊にここの本には触らない方がいいわよ」

「イリヤスフィールの言う通りです、何処にブラックパピヨンが仕掛けた罠が在るのか解らないのですから十分な警戒が必要でしょう」

「あ、ああ……(―――そうだった、俺はブラックパピヨン捜しに来ていたんだった!?)」

「悪い……注意する(―――俺は馬鹿だ、いくら彼女が出来ないからって、自分を見失っていたなんて……)」

イリヤとセイバーに窘められ、自分のした迂闊さが解ったのだろう、セルとデビットは互いに顔色を青と赤に変えつつも本を戻し、腰から剣を抜いて握り締める。

「………(間抜けなものね―――そもそも、あのモンスター達は皆、ここ『試しの場』に訪れた者達が相応の実力を持っているかどうかを見極めるための試練として召喚されたモンスター達。
間違っても、ブラックパピヨンとかいう盗賊が仕掛けたモノじゃないわ)」

二人の迂闊な行動に呆れているのか、ニティの目には何処か冷たい輝きが見える。

「ねえねえ、ところで」

イリヤとセイバーの話に加わらずいたアリシアが俺達に向き、

「この死体如何するの、このままだと腐っちゃうよ?」

「別に放って置いて良いんじゃないの?」

「っ、言われてみれば」

アリシアの言葉にどうでもいいって感じのイリヤと、反対にこのままでは不味いと頷くセイバー。
そういえばアーチャーも言ってたな、血の臭いがしない魔術師は半人前なのだと、だからなのか、イリヤが放って置けばいいって言うのは?
でも―――

「流石に俺も、このままは不味いと思うぞ」

いくら本棚が両側に在り、飛び散った血で蔵書が染められて無いとはいえ、本来なら通路兼この図書館の書物を読む為の空間であるこの場所に、先程現れたばかりのモンスター達が夥しい血を流しながら絶命しているのは問題だろう。
しかも、放って置けばいずれ腐敗し異臭を放つ事になるのだから問題が更に酷くなる、な。

「その心配ありませんマスター」

俺達の懸念を他所に、今まで静かに見ていたニティが口を開いて、

「あのモンスターは一時的に召喚されたモノ、時間が経てば勝手に送還される事でしょう」

「でも―――それだと、戻るまでにここが血だらけになるって事だよな?」

「そうだな。重要な本を見ようと地下室へと降りれば、そこには何かの血の跡が………完全にホラーだぜ」

召喚の罠は時間が経てば自動的に送還されるとニティは話すが、デビットとセルは顔を顰め、

「そうなんだ。やっぱり、このままは不味いんだね」

アリシアは何やら納得した様子でそう返すと、モンスター達の屍骸や床を染めていた血溜りが消え失せた。

「アリシア―――今のは?」

俺は恐る恐る尋ねる。

「うん。学園の森に泉があるから、お魚さんの餌にした方が良いかなって思って屍骸をバラバラにして転移させたの。
そうすれば泉のお魚さんも大きくなるから、後で獲って食べたら美味しくなってるって思うんだよ」

そういえば……時間的にそろそろ暗くなる時間帯だな、もしかしたらアリシアはお腹が空いてきているのかも知れない。

「そっか、転移って凄いな。アリシアはそんな事が出来るのか」

「らしいな。(セイバーさんにバーサーカーとか、周りが滅茶苦茶だからか、今更、エミヤ兄妹が何やっても不思議には感じないがな)」

「―――っ!?(っ、今何をしたの!転移って、私にはマスターが何をしたのか解らなかったわ!?)」

アリシアが空間転移を使える事を知らないセルが思った事を口にし、デビットは冷静なのだろう静かに見定めている。
けど、つい先程アリシアの使い魔になったニティは、何やら衝撃を受けたのだろうか目を見開いて驚いていた。
―――ああ、そうか、俺達の世界でも純粋な空間転移は魔法に近い業だ、もしかしたら、ここアヴァターでも相当凄い業として認知されているのかもしれない。

「では、問題も片付きましたので捜索を再開しま―――」

セイバーが言いかけた時、上からなんだかドタドタと音が響き、見上げれば上の階から獣人や骸骨などのモンスター達が階段を下りて来ていた。

「っ、やられたわねセイバー」

「ええ。先程の事で私達が侵入した事が彼の賊に知られたのでしょう。
恐らくは、今から捜したとしても手掛かりになるようなモノは残されてはいないと思います。
ですが―――この反応といい、どうやらここはブラックパピヨンにとって重要な拠点だった事には間違いないようだ」

イリヤとセイバーは、勢いをつけ階段を降りて来るモンスター達に視線を向ける。

「―――ぅ、皆済まねぇ!」

「くっ、俺が馬鹿だった!俺が馬鹿な事さえしなかれば、何かしらの手掛かりが掴めたかもしれないのに!!」

この状況を招いてしまったセルとデビットの二人は唇を噛み俺達に頭を下げるが、

「セル、デビット、その話は後にしよう、まずはあのモンスター達をどうにかしないと!」

「シロウの言う通りです。ブラックパピヨンなる賊がモンスター達を差し向ける目的を推測するに、痕跡を残さず引き払う為の時間稼ぎだとしても、いつ送還されるのか判らない以上、ここにあのモンスター達を放って置く訳にはいかない。
こうなった以上は、あのモンスター達が外へと出ないようこの場で殲滅する必要がある」

そんな事するよりも、今はやる事があるのを俺は指摘し、俺の意見に同意するセイバーは上より迫るモンスター達から俺達へと視線を変え、

「私とバーサーカーが正面を受け持ちます!
シロウはバーサーカーが存分に戦えるよう、イリヤスフィールとニティの護衛をしつつ援護を、アリシアは回り込んで来るモンスターの迎撃、デビットとセルビウム・ボルトは下から上がって来るモンスターを警戒し、また回り込むモンスターの対処を!」

矢継ぎ早に各々の役目を示し、俺達はそれぞれ頷きながらも即席の陣形が出来上がった。

「自分の身は自分で護れるわ、セイバー」

「解りました、ニティ。
貴女が如何なる存在なのかは知る由もありませんが、この場はその言葉を信じましょう」

本に閉じ込めらていたニティがどれ程なのかを把握できるはずもないセイバーはニティを護るよう俺に指示するが、当の本人がそれには及ばないと告げるのを耳にしたセイバーは、本の中でこの罠で呼び出されるモンスター達を知っているのだろうと判断したのかニティを見据え。

「では、アリシアと共に迂回し回り込むモンスターの迎撃をお願いします」

「ええ、マスターと共に戦えるのなら不満は無いわ」

「あと」とニティは続け。

「最下層からはモンスターは上って来ないわ、代わりに書を守護するモンスターがいたから。
でも、そのモンスターも……そこの丸いポチってのに倒されてしまったけど」

アリシアの足元でクルクルと回るポチに何処か複雑な表情をニティは向ける。

「―――成る程、やはり貴女は本の中でかつて同じ事があった時、その一部始終を知る事が出来たのですね」

「そんなところよ」

セイバーは、時間にすれば一秒にも満たないが、ニティのもたらした情報を噛み砕き、先程、セイバーが脳内に描いていた作戦を修正しているのだろう、その目蓋を深く閉じ―――再び開ける。

「ありがたいニティ、その情報は有益だ。
後ろを気にしなくてもよいのならば、後は前の道を切開くだけ。
(自身の秘密に迫る者は容赦なく殺害してゆく……
ブラックパピヨン、ただの賊という訳ではなさそうだ。
いえ、もしかすれば破滅にすら関わりがあるのかもしれない)」

現状を把握したセイバーは、バーサーカーと並び両手で不可視の剣を構え、

「行きます―――」

「■■■―――」

その言葉を置き去りにするかのような速さをもって、俺達に向い来るモンスター達との距離を一瞬で詰め、確実に一刀のもと一体を斬り伏せるセイバーに対し、バーサーカーの一振りが振るわれると同時に薙ぎ払われ数体のモンスター達が肉塊と化して行く。

「………つーか、バーサーカーの横で戦えるのってセイバーだけじゃね?」

「そう……だろうな」

矢継ぎ早に次々と斬り伏せて行くセイバーとバーサーカーの後姿を見て、零すセルの呟きに俺は頷いた。
仮に援護としても、あの中に入り込んだとしたのなら大怪我で済まない事だけは間違いない、しかし、そうはいってもセイバーが俺を頼りにしてくれたんだから援護をしない訳にもいかない。
なら―――

「投影開始(トレースオン)」

俺は双剣『干将・莫耶』ではなく弓と矢を投影し、あの勢いで階段を駆け下りて来てよく将棋倒しにならないな?
とさえ思えるモンスター達に対し狙いを定め放とうとするのだが―――

「迎撃、行くよー」

と言うアリシアの声が聞こえたかと思うと、この階に下り立ち、セイバーとバーサーカーの戦う姿を見るなり、迂回して回り込もうとするモンスターや後続として階段を下りる途中のモンスター達の姿が全て消え失せた。

「………」

俺が放つべく対象を失い、弓を引いたままの姿で硬直していると。

「マスター!今のは一体!?」

「ん、ついさっきのと同じ転移だよ。
んと、違いがあるとしたら、死んでから転移させるんじゃなくて、転移した先で死んでいる事の違いくらいかな?」

俺も一瞬なにが起きたのかさっぱりだったが、数の差こそあれ、聖杯戦争の時にバーサーカーにしたのと同じ事なのだろう。
でも、以前目撃した事のある俺とは違い、初見のニティには状況が理解出来ずにいて混乱しているのだと思えた。
でも―――アレだけの数のモンスターが一瞬で即死か……既に魔法の域なのか、俺にはまだ魔術の域なのかは理解できないが、アリシアの空間転移は恐ろしいモノがあるのは確か、アリシアの教育は一つ間違ったら大変な事になるのは間違えようがない。
今のところ一緒に暮らしている限りは、そんな感じはしないが、アリシアには物事の分別をつけられるようにちゃんとした教育しようと再び胸に誓う事にした。
後続のモンスター達が殲滅され、セイバーとバーサーカーが交えていたモンスター達を一蹴すれば、その屍骸もまたアリシアの空間転移にて消えて行く。

「………では、この階にモンスターが居ないかを確認しつつ上に向かいましょう。
(たった、一工程であれ程の数を……相変わらずアリシアの空間転移は恐ろしい)」

狂気に彩らせた片目を赤く光らせながら、重く低い声で唸り続けるバーサーカーの隣にてセイバーは佇み、空間転移により消え失せたモンスター達がいた所を数秒ほど視線を向け再び歩みを進める。
今の戦いはセイバー、バーサーカー、アリシアの三人で片がつき、俺達は何も出来なかったがセイバーの言葉に頷いて先へと足を進めた。
時折、近くに寄るまで本棚の後ろなどに隠れていたモンスターの襲撃や、床に散らばっていた骨が組み合わさって自身の骨を棍棒代わりに振るう骸骨が現れるので警戒は怠れず、各階のモンスター達を見つけ次第殲滅して行くが、どうやら召喚されたモンスター達は破滅に選ばれた者達らしく、単純に俺達を見つけると襲い掛かって来るだけのようだった。
もし、仮にモンスター達を指揮するモンスターがいたのなら苦戦したのかもしれないが、待ち伏せに近い事が偶然あっても、伏兵や挟撃などの戦術を使う事はないので苦戦はしない。
これで解った事が二つある―――幾ら数で勝ろうとも、統制が無く、個々に向かって来るだけのモンスターならば烏合の衆とまではいかないものの、それ程の脅威ではないという事と。
あのブラックパピヨンという盗賊は、恐らくは破滅に選ばれた人間なのだろうという事。
この事をセイバーに話したら、どうやらセイバーも薄々と感じていたらしく「恐らく、そうなのでしょう」と同意していた。
そうして、図書館地下のモンスター達を殲滅し、一階の出入り口から外に出れる頃には辺りは既に暗くなっていて空は夜の闇で覆われていて。
月明かりを頼りにしたとしても、十分な時間を稼いで拠点を引き払っただろうブラックパピヨンの足取りを捉える難しいと判断した俺達は、これ以上の捜査は出来ないとの結論から足取りを調べるのは次の日に持ち越しとなり。
図書館地下での出来事から、破滅のモンスターを操るのが判った為、念には念を入れて地下墓地の方も調べる事にした。
その地下墓地では、ポチの案内で俺達は封印されていた場所を見つける事ができ、アリシアが封印を一時的に中和させて先に進めば、やはりこの場所もブラックパピヨンに関係があるのか結構な数の破滅のモンスター達が居た。
皆で協力しながら更に進んで行くと、何やらドーム状の大きな部屋に出て、真ん中に設置されている機械のようモノから、俺達の世界でいうところのプラネタリウムかと思いきや、ニティは「レベリオン……」と何に使うのかを知っていて。
聞けば、この機械は魔道砲レベリオンと呼ばれ千年前の戦いで使われた魔道兵器なのだと言う。
でも、こんな地下に砲台なんか置いてどうやって撃つつもりなのだろうか?
いや―――もしかしたら、ここは何処かの倉庫で使う時に荷車とかで引いて動かすのかもしれないが……

「どうやら、ここは違うみたいね」

「そのようだ」

一応、俺達はこの部屋を調べる事にしたが何も見つからず、イリヤとセイバーが結論を下し捜査は終わりを向かえた。
これでブラックパピヨンが潜む可能性が高い場所が無くなってしまい、俺達は途方に暮れながら寮に戻った数日後。
何でも、学園側がブラックパピヨンの行動を見逃せなくなったらしく捜索を始め、学園内には外出禁止令が出された。


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