<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

SS投稿掲示板


[広告]


No.18329の一覧
[0] とある『海』の旅路(オリ主によるFate主体の多重クロス)【リリカル編As開始】[よよよ](2018/03/19 20:52)
[1] 00[よよよ](2011/11/28 16:59)
[2] Fate編 01[よよよ](2011/11/28 17:00)
[3] Fate編 02[よよよ](2011/11/28 17:03)
[4] Fate編 03[よよよ](2011/11/28 17:06)
[5] Fate編 04[よよよ](2011/11/28 17:16)
[6] Fate編 05[よよよ](2011/11/28 17:23)
[7] Fate編 06[よよよ](2011/11/28 17:26)
[8] Fate編 07[よよよ](2011/11/28 17:30)
[9] Fate編 08[よよよ](2011/11/28 17:34)
[10] Fate編 09[よよよ](2011/11/28 17:43)
[11] Fate編 10[よよよ](2011/11/28 17:49)
[12] Fate編 11[よよよ](2011/11/28 17:54)
[13] Fate編 12[よよよ](2011/11/28 18:00)
[14] Fate編 13[よよよ](2011/11/28 18:07)
[15] Fate編 14[よよよ](2011/11/28 18:11)
[16] Fate編 15[よよよ](2011/11/28 18:22)
[17] Fate編 16[よよよ](2011/11/28 18:35)
[18] Fate編 17[よよよ](2011/11/28 18:37)
[19] ウィザーズクライマー編[よよよ](2012/08/25 00:07)
[20] アヴァター編01[よよよ](2013/11/16 00:26)
[21] アヴァター編02[よよよ](2013/11/16 00:33)
[22] アヴァター編03[よよよ](2013/11/16 00:38)
[23] アヴァター編04[よよよ](2013/11/16 00:42)
[24] アヴァター編05[よよよ](2013/11/16 00:47)
[25] アヴァター編06[よよよ](2013/11/16 00:52)
[26] アヴァター編07[よよよ](2013/11/16 01:01)
[27] アヴァター編08[よよよ](2013/11/16 01:08)
[28] アヴァター編09[よよよ](2011/05/23 20:19)
[29] アヴァター編10[よよよ](2011/05/23 20:38)
[30] アヴァター編11[よよよ](2011/05/23 22:57)
[31] アヴァター編12[よよよ](2011/05/23 23:32)
[32] アヴァター編13[よよよ](2011/05/24 00:31)
[33] アヴァター編14[よよよ](2011/05/24 00:56)
[34] アヴァター編15[よよよ](2011/05/24 01:21)
[35] アヴァター編16[よよよ](2011/05/24 01:50)
[36] アヴァター編17[よよよ](2011/05/24 02:10)
[37] リリカル編01[よよよ](2012/01/23 20:27)
[38] リリカル編02[よよよ](2012/01/23 22:29)
[39] リリカル編03[よよよ](2012/01/23 23:19)
[40] リリカル編04[よよよ](2012/01/24 00:02)
[41] リリカル編05[よよよ](2012/02/27 19:14)
[42] リリカル編06[よよよ](2012/02/27 19:22)
[43] リリカル編07[よよよ](2012/02/27 19:44)
[44] リリカル編08[よよよ](2012/02/27 19:57)
[45] リリカル編09[よよよ](2012/02/27 20:07)
[46] リリカル編10[よよよ](2012/02/27 20:16)
[47] リリカル編11[よよよ](2013/09/27 19:26)
[48] リリカル編12[よよよ](2013/09/27 19:28)
[49] リリカル編13[よよよ](2013/09/27 19:30)
[50] リリカル編14[よよよ](2013/09/27 19:32)
[51] リリカル編15[よよよ](2013/09/27 19:33)
[52] リリカル編16[よよよ](2013/09/27 19:38)
[53] リリカル編17[よよよ](2013/09/27 19:40)
[54] リリカル編18[よよよ](2013/09/27 19:41)
[55] リリカル編19[よよよ](2013/09/27 19:56)
[56] リリカル編20[よよよ](2013/09/27 20:02)
[57] リリカル編21[よよよ](2013/09/27 20:09)
[58] リリカル編22[よよよ](2013/09/27 20:22)
[59] リリカル編23[よよよ](2014/09/23 00:33)
[60] リリカル編24[よよよ](2014/09/23 00:48)
[61] リリカル編25[よよよ](2014/09/27 01:25)
[62] リリカル編26[よよよ](2015/01/30 01:40)
[63] リリカル編27[よよよ](2015/01/30 02:18)
[64] リリカル編28[よよよ](2016/01/12 02:29)
[65] リリカル編29[よよよ](2016/01/12 02:37)
[66] リリカル編30[よよよ](2016/01/12 03:14)
[67] リリカル編31[よよよ](2018/03/19 20:50)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[18329] アヴァター編01
Name: よよよ◆fa770ebd ID:021312f6 前を表示する / 次を表示する
Date: 2013/11/16 00:26

義務教育という事もあるが、アリシア自身が希望した事で言峰が動いたのだろう。
何時の間にかアリシアは六歳って事になっていて、幼稚園ではなく小学校に通う事になっていた。

「……ようやく、一学期が終ったな」

でも、死んだ人を悪く言うのは好きじゃないが、プレシアさんはアリシアに一体如何いった教育をしていたのだろう?
一学期の始めには、クラスの皆と仲良くなろうとして、何故かクラスの子達全員を殴りまくるという事をしでかし。
止めに入った先生に対しアリシアは「想いを込めて殴れば、その想いは相手にちゃんと伝わるんだよ」って嬉々として語っていたらしい。
俺もアーチャーと鍛錬をしている時などは、アイツと交える度、俺の中に何やら入り込む様な感じ、磨耗しすぎていてよく解らないが何かが伝わってくる事がしばしあったのは確かだ。
だが、そんな言い分などが普通の人に解る筈も無く、入学早々、担任の先生が家庭訪問する事があった。
俺とアリシアだけなら、友達を殴ってはいけませんと注意して終わりだったのだが。
―――が、セイバーとアサシンが居た事で少し流れが変わってしまい。
互いの全力を用いぶつかり、解り合い、伸ばし合う事の重要性をセイバーとアサシンに説かれた結果。
担任の先生の方が納得してしまい、それまでクラスの目標は『協調』であったのが『競争』へと変わってしまったりもした。
まあ、それでもアリシアがセイバーや担任から怒られたのは語るべくも無いが……

「アリシア、テレビも程々にしろよ」

朝食が済み、洗い物をしながら画面に見入っているアリシアに注意する。

「ん~、これが終わったら止めるよ」

テレビの画面には、マスクを被り上半身裸のレスラーの様な男達が映っている。
『筋肉戦隊マッチョレンジャー』っていう番組らしい、が。
初めのうちは、俺も少し童心に返って見てみたが、腹筋から真空刃を飛ばしたり、ポーズをとり全身の筋肉を震わす事で高温を発して相手を倒している処でもうお腹一杯だった。
クラスに詳しいヤツが居たので聞いてみれば、前の戦隊物は『喧嘩戦隊ボコレンジャー』とかいい、戦闘シーンが過激過ぎてどちらが敵役なのか判らないという問題があったとかで、それを踏まえた『筋肉戦隊マッチョレンジャー』は筋肉で相手を魅了するのが主体の、極力戦闘をしない挑戦的な作品だとか言っていたのを思い出す。
そういえば、藤ねえが見ていた番組も訳が分からないモノだったな……
最近の子供向け番組って一体どうなっているのだろうか?
しかし、そんな番組を見ていて変だと思うのは俺一人なのか、アリシアの横でセイバーがジッと画面を見つめていたりする。
セイバー曰く、世間では正義の味方とは如何いった者達なのかを測る為らしいが。
視線を戻せば、多分一騎討ちなのだろう、赤いマスクを被った男が相手の幹部らしい筋肉男と交互にポーズをとり合っていた。

「っ、たく。あんな変態じみた番組と一緒にされたらアーチャーの奴また磨耗するぞ」

そもそも、何故こんな時間に録画していた番組を見ているかというと。
子供向け番組がある時間帯は、ライダーの趣味のニュース番組があるので「すみません。こちらのニュースが見たかったもので」と言いながらチャンネルを変えてしまい。
藤ねえやアリシアが半泣きだったので土蔵にあったビデオを修理して録画出来るようにし、昨日から夏休みに入った事と、商店街で働くライダーが居ないのもあってこの時間から見入っていた。

「とはいえ、折角の夏休みだし何所か旅行とかも良いかもな」

何より変な番組の影響で、アリシアやセイバーが虎化しては一大事だ。
言峰の仕事で海外へ向かったアサシンも、生前は外国へ行った事が無かったから前日は凄く嬉しそうだったしな。
旅行の資金にしても問題は無いか?
この家の大黒柱である俺のバイトの給料よりも、株や為替で荒稼ぎしているアリシアや、競馬や最近宝くじで一等を当てたセイバーの方が豊富に持っていたりするから……

「………世の中何か間違ってないか?」

セイバーが宝くじを当てた時、商店街で真面目に働いているライダーが『これが英雄と反英雄の差ですか』と言って引き攣った笑顔をしていたのを思い出す。
それに、ポチが霊脈をご飯にしているらしいから、アリシアは遠坂と霊脈に関する契約をしていたそうだけど、何だか三日、四日分の収入で済んだとか言ってた。
アリシアの一日の収入が数百万から何千万だから、一体どれ程の金額が遠坂に渡ったのか……後日、会った遠坂の上機嫌ぶりからして俺の想像を超えた金額が動いたのは確かだろう………
まあ、それは置いておくとして、どうせ旅行に行くならライダーや桜、藤ねえが行ける日が良いな。
そうは言っても、ライダーは働いているし、桜も藤ねえも弓道部の活動があるか。
遠坂と美綴は聞かないと分からないし。
後、誘えそうなのは一成に慎二か、一成も寺の手伝いがあるから日程の調整が必要だな。
でも、女性しかいない遠坂の家に住むわけにもいかない慎二は、今はマンションで一人で住んでるから皆で気晴らしに旅行とかも良いだろう。

「アリシア、準備は出来て―――っ、もう、何のん気にテレビなんか見てるのよ!」

洗い物を終え、台所周りを拭いているとイリヤが居間にやって来るなり声を荒げる。
イリヤが声を荒げるなんて珍しいな?

「ん?イリヤお姉ちゃん、もうすぐ筋肉大将軍が出て来るんだよ」

「……また………筋肉ですか」

ピクピクと動く筋肉だらけの番組に表情こそ出さないが、ウンザリしていたのだろう、セイバーの声には力が無い。
―――やはり、俺は間違ってなどいなかったんだな。

「もう、そんなに筋肉が見たいのなら見せてあげるわよ、バーサーカー!!」

言うなり居間に現れるバーサーカー。

「■■■■■■■―――」

先程まで、今日も良い洗濯日和だと思っていた和やかな雰囲気が、バーサーカーがポーズをとり筋肉を震わせる事で霧散した。
もう何がなんだか……

「ほら、これで良いでしょ!」

「凄いやバーサーカーさん、これでマスクをしたらマッチョブラックだよ!」

結構広い筈の居間だが、バーサーカーが居る事でやたら狭く感じ。
只でさえ暑い夏の陽気に、バーサーカーの圧倒的な存在感と、全身の筋肉をピクピク動かす異様な暑苦しさがプラスされる。
前を見ても筋肉、横を見ても筋肉、ここからじゃ分からないが多分セイバーの忍耐力も危険域に入る頃だ、うん、そうだな、今の内に止めるべきだろう。

「分かって貰えたかしら、なら、そんな番組は終わらせて準備してある場所に案内しなさいよ」

頬を膨らますイリヤ。
とはいえ、最近は新聞や雑誌等の勧誘も滅多に来ないから、普段は城に置いて来ているバーサーカーを連れて来ているし、イリヤも今日は余裕が無い感じがする、如何したのだろうか。

「ぷう、そんな番組じゃないよ。
もしかしたら、お兄ちゃんもこんな感じの正義の味方になるかもしれないんだよ!」

「―――っ。馬鹿な、正気ですかシロウ!」

そう言ったアリシアの言葉にセイバーが反応し、セイバーの攻撃目標が俺に変更される。

「―――なんでさ」

っ、止める間も無いのか!?
まさか、このタイミングで俺に振られるとは思ってなかったぞ。
俺はプロティンを水道に混ぜて、一つの街の人達を筋肉質に変えようとする変態集団と戦わなければいけないのか?
―――もし、そうだったら俺の髪が白くなる理由は、アーチャーの過去のように魔術の使い過ぎじゃなく単なる精神的なストレスからだろう。

「いや、いくら俺でもそんな正義の味方は嫌だぞ。
そもそも、アリシアはイリヤと何処かに出かけるのか?」

「うん、イリヤお姉ちゃんね、今居る神に代わって世界を自分の思い通りに染めたいから。
救世主になる為に根の世界へ行くんだよ、私はそのお手伝い」

何か嬉しそうに言うアリシアだが、その言い方だとまるでイリヤが魔王か何かだ。

「―――っ、イリヤスフィール貴女は何という恐ろしい企みを!?」

即座に立ち上がり身構えるセイバー。
その横には、いまだにポーズをとり全身の筋肉を震わしているバーサーカーがいたりする―――シュールだ。

「もう、変な誤解をしないでくれるセイバー。
私は至りたいだけ、確かに至れば出来るでしょうけど、私は世界を如何こうしたいまでは望んでいないわよ」

「え~、イリヤお姉ちゃん新世界の神になりたいんじゃなかったの?」

正直、救世主とか良く解らないが、根源へ至れば全ての英知、世界すら変えられる力を得れるから、そう呼ばれるのだと思うのだが。

「アリシア、私は神にまでなりたいとは思わないわよ」

「作業の邪魔になるから、神の座は関係者以外は立入り禁止なんだよ。
それなのに、救世主になったら神の座へ見学に行くけど、新たな神に成りたくないなんて、もう、お姉ちゃん我侭なんだから」

いや、神になるかならないかって我侭とか言うレベルの話か?
それに、関係者以外立入り禁止って、神の座は工事現場か何かなのだろうか?
何だかアリシアの話を聞いてると『根源』の認識が大暴落していくな。

「待ちなさいアリシア。一つ聞きますが、その救世主とかに成る者が居た場合、今あるこの世界は如何なるのでしょうか?」

ああ、確かにそうだな。
救世主の選定とやらは聖杯戦争の時に知っていたけど、具体的に救世主とやらがどんな存在なのかは聞いていなかったか。

「うん、それはね。
赤と白の二つに分かれた世界の理から、必要な理を空の書(からのしょ)に編集して新たな理を創り出すの、その理によりって創り直されるから今ある世界は滅びるよ」

にこやかに微笑みながら、アリシアはトンでも無い事を言い放った。

「―――っ!?」

「ちょ―――っ、まて世界が滅びる!?」

救世主になる者が居たらソイツが世界を滅ぼし、自分の好きな世界を創造するだと!
そんな事をさせたら、一体どれだけ多くの犠牲が出ると思ってるんだ!!

「うん、そうだよ。
でも、イリヤお姉ちゃんが救世主になったら、どんな世界を創るのか楽しみだよ」

なのにアリシアは嬉しそうに語り続けた。

「馬鹿な―――何故、今ある世界を滅ぼさなければいけないのですか!」

「ほえ、何で?」

アリシアはまるで、俺とセイバーが見当違いの事を言っている様な感じで聞いていた。

「駄目に決まってるだろう、そんな事!!」

「シロウ、セイバー、落ち着きなさい、神の座に至っても世界の理を変えなければ被害は無いわ」

「む、確かにイリヤスフィールの言う事には一理あります」

「そう、だな」

イリヤの言葉で激高しかかった俺は冷静さを取り戻せた。

「あう、でも理を変えずに放って置けば、世界が増えすぎて世界全てが崩壊しちゃうんだよ」

「―――っ、アリシアそれは聞いていなかったわよ」

イリヤが表情を変える。

「アリシア、知っている事を全て話して貰いましょうか」


とある『海』の旅路 ~多重クロス~

アヴァター編 第01話


「もう、結局シロウもセイバーも着いてきて。
これも、アリシアが事前に転送の準備の事を言ってなかったのが原因よ」

ジロっとイリヤお姉ちゃんに睨まれる。

「あうぅ……」

如何やらイリヤお姉ちゃんは、根の世界へ行く準備として転送用の魔方陣とか、儀式とかが必要だと思っていたらしいんだ。
でも、私は転移くらい何時でも出来るから、特に気にしてなかったんだよ。
その意識の差が朝方現れて、正義の味方が出てる番組を見ている時にイリヤお姉ちゃんが確認しに来たらしい。
そうして、話しているとお兄ちゃんにセイバーさんが「知っている事を全て話して貰いましょうか」って迫ってきたんだ。
でも、救世主って世界しか救えないから救世主なのに。
何で皆判らないのかな?
世界に住む命を護るのは、救世主じゃなくて、その地に住むだろう、町の正義の味方だと私は思うんだよ。

一応―――

「世界が増え過ぎちゃって、このままだと、世界を支える枝が持たないから。
世界の理を半分にする事で世界を軽くして、次元崩壊させない為に世界の代表である救世主に選んでもらうんだ。
その救世主の候補者の選定と補助に使われてるのが、根源力、名前の通り根源の力を利用できる能力を持つ存在。
前に救世主になった者達だけど、暇だろうし選定に協力してもらって、世界を代表する存在力の持ち主に成り得る資質を持つ者と呼び合い、武器や装飾品になったりして現れる事からアヴァターでは召還器って呼ばれているんだ」

―――って事や。

「私とイリヤお姉ちゃんの持ってるディアブロとキリツグは『原初の海』に創って貰ったデバイスの機能を持つ魔術礼装で、召還器と同じく根源力を供給する能力はあるんだよ」

そう言って知っている事は話したよ。
まあ、そうは言っても親切にしてくれたお兄ちゃん達や、藤姉さんや桜姉さんが居るこの世界は一旦、枝から切り離して影響を受けない様にするつもりなんだけど。
もしかしたら、お兄ちゃんやセイバーさんに、ちょっと怖いけどイリヤお姉ちゃんなら、私の知らない方法があるかも知れないから。
でも、そんな都合の良い話は無くて、救世主が誕生すれば世界は滅びるけど、放っておいてもやがては滅びてしまう事に変わりは無かった。
しかし、こうして知ってしまった以上、指をくわえている訳にもいかないから、とりあえずは救世主と成り得る相手を見定めようと、お兄ちゃんとセイバーさんも一緒に根の世界アヴァターに行く事になったんだ。

「ここが根の世界、アヴァターです―――っ。
これは、この世界の知識ですか、まるで聖杯戦争に召喚された時と同じ感覚だ」

「聖杯戦争の召喚と同じ―――これが、そうなのか、言葉や文字に、この世界での常識なのか?
どんな文明なのか、とかは詳しく解らないんだな」

街へと視線を変え。

「建物から推測すると、中世ヨーロッパ辺りの文明に近い感じか」

本当は、影に頼んで送ってもらおうと思っていたけど、こうなっては仕方が無いので『原初の海』に頼んで送ってもらった事にして転移した。
勿論、藤姉さんや桜姉さん、セラさんにリズさんが心配しないように時間軸等も確認しているので、アヴァターから戻る時には転移した時間から誤差が無いように戻れるよう配慮している。
後、聖杯戦争の時に確認してた大聖杯のサーヴァントシステムを参考にしているので、転移と同時に世界の記録からアヴァターの基本的な知識が入って来る様にしている。
何せ色々な人達の記憶で確認しても、その人達が知らない知識や、元となる情報が無いと解らない事柄等があるんだよ。
それで、農協って組織を米の国と思い込んでいて、あの世界の覇権を握ってるのは農協だとばかり思っていたんだ。
あの頃の私が想像していた米の国は、広大な水田に戦艦や空母が航行しながら、飛行機が飛びたち農薬を撒いていたりしていて、畔では銃を持った兵隊さん達が、水陸両用の戦闘車両で稲穂が動物に被害を受けていないか見回りをしていたりとかだった、けど。
ライダーさんの見てたニュースで、農協が米の国じゃなかったのを知った時は本当に驚いたよ。
それに、神秘は秘匿するモノとしている魔術師は表には出てこない存在ので、遠坂凛さんを影で市役所で働いている職員さんだと思い込んでしまったりとかの経験を私はしていて。
その経験から人々からじゃなく、世界に記録されている情報の中で、比較的新しい事柄、かつ知らないと意思の疎通すら危ぶまれる言葉や、文字等を含む簡単な知識が入って来る感じにしている。
何せ以前、別の世界へ行った時に試しに全部の知識を詰め込もうとしたら、人間の脳が耐えられない情報量で焼き切れるかと思った経験をした事があるんだ。
後、転移先は最近セイバーさんが遊んでいた『虎クエ』っていうゲームを参考に、一番大きな街の付近にしている。
流石にゲームと同じく、お城へ行って、装備品やお金を手に入れる事はありえないだろうから。
ますは、根の世界で使える所持金も無いので、初めは酒場か街の人達に聞きながらお金を稼いで宿屋に泊まれる位にはしたいかな。
それでも駄目なら駄目で用意はしているから大丈夫だけど。

「で、その白、赤、空の書の精霊が何処に居るのかは知っているの?
(『原初の海』ってアリシアに良い様に使われてるわね……
アリシアが『原初の海』の使い魔のような感じだとしたら、そんなに凄い存在じゃないのかも?
それとも、ただ身内には甘いだけなのかしら……
―――そうね、アリシアにしても、私にキリツグをくれた訳だし、身内には凄く甘いのかもしれないわね)」

「ん~、それは知らないよ」

これは本当の事だよ、座に居る影には選定が終わった時、この度の救世主がどの理を選択したとかなどの重要な報告はさせているけれど、管理効率から、影にはある程度の裁量は必要なので自律性を持たせいる。
だから、私には報告が無い限り影が何をしていたのかは判らなかったりするんだ。
故に、影の創った『理の書の精霊』達が、このアヴァターの何処に住んでいるのかなんて、私に報告する必要も無いし、報告されても当時の私は「だから如何したの?」って答えるだけだろうから。

「では、この世界は傭兵組合がありますから、当面はそこで傭兵でもしながら金銭を稼ぎつつ、その三体の書の精霊を捜し出しましょう。
救世主に成ろうとする者が手にする前に、我々が書の精霊を集めてしまえば、候補者達がどうしようと救世主には成り得ず、救世主による世界の破壊は起こり得ない筈ですから。
そして、救世主となる者を見付けたのなら、その者が世界に相応しいか見極め、相応の者ならば協力し、共に世界の崩壊を防ぐ手立てを考えて貰いましょう。
(だが、相応しく無い者ならば……その時は―――)」

「ああ、そうだな、セイバーの方針で良いと思う。
(次元世界全てを滅ぼさせるなんて―――何も知らない人達が、ある日突然滅ぼされてしまうなんて、そんな事許せるものか!
―――でも、例え救世主を倒す事が出来たとしても、いずれ来る次元崩壊は止められ無い。
皆が救われる方法、何か………何か方法は無いのか!?)」

セイバーさんとお兄ちゃんの視線は厳しい、きっとお金が無いからこの先が不安なんだろうね。
でも大丈夫だよ、その為にちゃんと準備はして来たんだから。
体に強化の魔術を掛け、足元に居るポチを「街に行くからおいで」と抱き上げる。
最近は、よく渦をあげてるので大きさは変わらないものの結構重くなり、体を強化しないと持ち上げられなくなってきていた。

「そうね、私もそれで良いわ。
アリシア、貴女は如何なの?
この世界の事は私達より詳しいんでしょ?」

「ん~、『原初の海』から教わった知識だけだよ。
だがら、私もセイバーさんの言った方針で良いと思う」

あう、自分の事を他人の様に言うのは変な感じがするよ。

「そう、でも聞く限り『原初の海』は全知全能の存在じゃないの?
そんな存在が、知らないなんて事あるのかしら?」

じ~、と私を探る様に見つめるイリヤお姉ちゃん。
あう、もしかして私が『原初の海』だって事がばれているのかな?

「えと、全知って未来とか知ってたら面白く無いよ?」

だとしたら拙いなと思いつつ一旦、区切り。

「だって、そうでしょ。
例えば、ライダーさんが本を読んでる時に、この話はこうで最後はこんな感じだよって話したら。
きっとライダーさんも、その本がつまらないと感じちゃうだろうし。
未来は分からないからこそ楽しいんだ。
それは、きっと『原初の海』も同じなんだよ」

そう、未来は白紙だからこそ、可能性に満ちているからこそ楽しいんだから、お金を稼ぐのには便利だったけど必要な事以外で未来なんて知っていても面白くも無いと思う。
そもそも、全てを知ってしまっているだなんて―――それなら、私にとってその世界に価値は無くなり、必要無いから消してしまっても問題が無い世界って事になるんだから。

「……推理系の小説読んでいて、横からそう言われたら確かに読む気無くすな。
(『原初の海』って神みたいな存在だからな、そんな奴からしてみれば、俺達の事もその程度にしか思えないのか?)」

顔を顰めつつも、お兄ちゃんは納得してくれる。

「………未来を知ったらつまらないから知らないって、何それ……呆れた存在ね。
(無知全能って……でも、反対に言えば、その気になれば全知全能になれるって事ね。
案外、アリシアに上手く強請らせれば書の精霊の居場所も簡単に教えてくれるんじゃ無いかしら……)」

何か思うところがあるのかイリヤお姉ちゃんは目を閉じ溜息をつく。

「では、決まりですね。
(己の故郷すら守れなかった私だが―――この身に代えても、世界とそこに住む者達を護る!!)」

「おう!」

アヴァターの街ってどんな感じなのだろう。



王都、九つの州からなる根の世界、アヴァターの、実質的に中心とも呼べる国の中枢。
その街へ辿り着いてから、傭兵組合を探すのにはそう時間は掛かりませんでした。
知名度もあり、街の人に聞くと簡単に場所の特定が出来たですが、どうもアヴァターでの傭兵とは資格が要るらしく、訓練校にて傭兵科という学科を卒業しなければならないそうです。

「世界を滅ぼすだろう救世主が、まさかアイドルの様な扱いをされているとは思わなかったな」

何とも言えない表情をし王都を見下ろすシロウ。

「そうですね。
私も当初、魔術師の如く救世主とは秘密裏に動いているとばかり思っていました」

確かにこれは予想外でした。
千年も続いた王国というのにも驚きはしましたが、この街から一番近い学校、フローリア学園という、おおよそ千年もの歴史を持つ王立資格学院があるそうです。
そして、そのフローリア学園には、驚く事に救世主クラスという、救世主になり得るだろう候補者達が在籍しているとの事でしたから。
何故、自らを滅ぼそうとする存在を擁護しているのか?
私がこの国の王であったならば、既にその候補者達は処刑しているでしょう。
そうすれば一時凌ぎとはいえ、破滅は回避出来るのですから。
よもや、救世主を別の目的の為に利用しようとの思惑があるのでしょうか?

「きっと、このアヴァターの人達は、次元崩壊してしまうとそれまでの事が無駄になっちゃうから。
せめて、世界だけでも残そうって思ってるんじゃないのかな?」

「その逆よ、普通の人達が知っていたら、まず救世主は害悪とされて民衆から私刑にされてる筈よ。
それが無いのは、アヴァターの人々が救世主に対して何か思い違いをしている可能性の方が高いわ」

アリシアの意見をイリヤスフィールが真っ向から斬り捨てる。
確かにイリヤスフィールの言う通りでしょう、救世主こそが世界を滅ぼす存在である事を人々が知っているのならば、彼らは既に討伐されている筈ですから。
なのに候補者達を英雄―――いえ、アイドルとして見ているのは、この国の人々が救世主に対して誤った認識をしている可能性が高い。
そして、救世主に至った者が選ぶ赤と白の理、アリシアの説明では赤の理は精神的な要素が重要な意味を持つ世界の理であり、白の理は赤の要素を取除いた等価交換や弱肉強食的な世界。
要は、赤の世界は精神が高揚している者ほど強者となり、白の世界では努力した者だけが報われ強者となれるという事でしょうか。

「アリシア。確認しますが、救世主が現れれば世界は滅びてしまう、これは間違いでは無いですね」

「うん、それに近いかな。
救世主が選ばれたら、一旦神の座へ行って、必要な理を組上げるから、今在る世界は書き換えられ、そこに住む命は滅んじゃうんだ」

赤と白、二つの理を、空の理といわれる存在に纏めると世界は破滅を迎える―――

「―――っ、それ程までに、世界は増えているというのですか」

「うん、その為の救世主だって聞いてるよ」

草原に敷いたシートに座り、食べていたお弁当を片付けた後、ペットボトルのお茶を飲むアリシア。
その仕草を見てふと思い出す、何でもアリシアは、聖杯戦争終了後、すぐに行動を起こし準備を始めていたそうです。
荒稼ぎとも思えてた取引は、全てこの世界へ行く為の事前準備。
イリヤスフィールとアヴァターへ行く為に用意していた弁当すら、二万二千食、約十年分の食料を確保していたそうですから。
道理で最近、商店街の弁当屋のシャッターが閉まったままだった訳です。
(これは後に知りましたが、弁当の注文は新都の方も含め数十件に分散していたらしく、この弁当屋は偶々人手が不足してしまい閉めていただけのようです)
他にも水や医療品、衣服に生活雑貨。
それに―――此処での移動拠点となるだろう、キャブコンバージョンと呼ばれるキャンピング車に視線を向ける。
この車は、乗員五名、就寝四名まで対応するそうです。
当然、必要とされる燃料も相応に用意している事でしょう。
更にはポータブルバスやら、ユニットハウスと呼ばれる小型の家までも用意しているとか……
確かにこれだけ用意するのなら、あれ程荒稼ぎをしていた理由も解ります。
そして、如何にアリシアが稼ごうが、言峰綺礼の協力が無ければ、これ程揃える事は出来なかった事も。
アリシアを神と崇めている為、アリシアの教育上問題がある神父ではありますが、この様な事に対する手腕は評価するべきでしょう。
その用意した物資を悪くならないように時間凍結させ、何でも『原初の海』に頼んで保管用に小さい空間を創造して貰い、そこに保管しているそうですから驚きを越して呆れるばかりです。
しかし、本来人間である私に英霊の力を被せた異常性を考えれば、アリシアのやる事に一々驚いているのは意味の無い事なのかもしれませんが。
それに、欲しがられたからといって、軽々しく創造し与えてしまう『原初の海』にも問題は有ります。

「どの道、フローリア学園へ行かないと傭兵として依頼も受けられないし、行くしか無いだろう。
(王都で聞いて分かったが、小さな村などは破滅のモンスターや、山賊の被害を受けている所が多いらしい。
平和な村に突如押し寄せた悲劇―――っ、俺で力になれるなら、俺は俺の出来る限りの事をしよう、こういった事の為に魔術を得たんだから!)」

「ええ、確かにその通りです」

弁当の味も悪くありませんでしたが、やはり私はシロウの味の方が好みだ。
とはいえ、見晴らしの良い場所と、心地良いそよ風に吹かれ食べる食事もなかなか良い物です。
これで、世界が滅びる危機が無ければピクニックとして最適と言えたでしょうね。

「―――ですが、傭兵組合へ行ったときの奇異な視線もありましので、イリヤスフィールとアリシアが傭兵科に入れるのは難しいのではないのでしょうか?」

バーサーカーに護られ、シロウよりも魔術師としての技量は遥かに上のイリヤスフィール、神霊級の力を持つアリシア、この二人のは決定的な欠点がありますから。

「そうだよな、二人共まだまだ子供だ。
実力はあっても、子供を戦場になんか行かせられる訳無いよな」

そう、二人共見た目は―――いえ、イリヤスフィールは兎も角、アリシアは力こそあれ、子供そのものですし。
これでは傭兵に必要な信頼を得る事は出来ないでしょう。
そういうシロウにしても、幾ら私やアーチャー、気紛れにアサシンからも手解きを受けているとはいえ、まだ経験は足りないのは確か。

「ぷう、子供じゃ無いよ。
こう見えてもイリヤお姉ちゃんは、お兄ちゃんよりも年上なんだよ」

頬を膨らまし、両手を上げ抗議するアリシア。

「えっ、そうなのか!?」

「お姉ちゃんは、車だって運転出来るんだから。
この車だって、初めはお姉ちゃんに運転して貰おうと思ってたんだよ」

む、そうでしたか。

「私はシロウの姉であり、妹でもあるからいいのよ。
でも、貴女は子供じゃない」

まったくシロウもアリシアも、イリヤスフィールの年齢の話で驚いている場合ではないでしょう。
問題は、如何にあの背丈で車の免許を習得出来たかです。
先程は運転出来るとは思わず、私が騎乗のスキルを使い運転していました。
しかしながら、如何に運転の免許が在るとはいえ、イリヤスフィールの身長を考えるとこの車の運転は厳しいと思いますが。

「もう、皆して私を子供扱いして、いくよディアブロ、セットアップ」

「了解、セットアップ」

アリシアが呟くと魔術礼装である腕輪から声が響き。
体格と服装が変わり、大人の姿へと変身した。
一緒によく馬券を買いに行きますので、大人の姿のアリシアは見慣れていますが。
服装、確かアリシアの学校の体操着、ブルマでしたか、それに変わっています。

「……何でブルマなのさ」

シロウはシロウで、二日に一度は洗濯をしている筈なのに、体操服姿のアリシアに絶句しています。
シロウの事だ、恐らくは、私達の世界で中世とも思えるアヴァターへ来て鎧姿などでは無く、日常的に見るでしょう、学校の体操服を見た事に違和感を持ってしまったのかもしれない。

「ん、だって、学校で運動する時はこの服に着替えるよ」

「……いや、そういう意味じゃなくてな。
(たく、大人の姿になっても実際変わったのは外見だけなのは解ってる。
けど、年頃の女の子らしさや、キレイで、俺としては色々と眼のやり場に困るっていうのに。
よりよって、何でブルマなんだか……なるべく露わになってる太股とか見ない様にするしかないか)」

何処か苦々しく表情を変えるシロウ、この世界に来てまだ僅かしか経っていませんが、破滅からこの世界を護れるかを考えていたのでしょう。
そんなシロウから、アリシアはイリヤスフィールに視線を向け。

「ふふん、これでイリヤお姉ちゃんより、私の方がお姉ちゃんだよ」

イリヤスフィールは「むっ」と頬を膨らまし。

「そう、いいわ。
この世界では魔術が公になってる様だし、キリツグ、変身魔術をお願い。
(この世界では魔術の事も、魔法って扱いで呼ばれてるけど、魔術を魔法って言うのには抵抗があるわね)」

「変身」

アリシアが着けているモノと同じ形の腕輪から声がし、イリヤスフィールの背丈が伸び。

「―――っ、馬鹿な、その姿は……まるでアイリスフィール」

イリヤスフィールは、かつて第四次聖杯戦争で共にいたアイリスフィールと瓜二つの姿に変わっていました。

「………」

シロウは急に大人になったイリヤスフィールを見て、「あり得ないだろ」といった表情で見ています。
成る程、聖杯戦争の時は私も、あの様な表情をしていたのでしょうね。

「キリツグに、もし私が成長出来るとしたらってシミュレートして貰ったのだけど、そんなにお母様に似ているかしらセイバー」

「クス」と微笑み視線を変え。

「如何かしらアリシア、私はまだ姉の座を譲る気は無いわよ」

姿こそ似ているが、私が知っているアイリスフィールとは感じが違う。
恐らくは、母であった者とそうで無い者の差であるかと思いますが。
それでもアリシアには効果があったらしく、「う~、いつかお姉ちゃんより、お姉ちゃんになるもん」と「ガー」と両手を上げ吼えています。

「それにしても、いつからイリヤも世界を書換えられる様になったんだ。
(俺もアーチャーから言われて固有結界が出来るって知ったけど、イリヤも出来るなんてな。
それにしても、アリシアだけじゃなく、イリヤまでこう大人っぽくなると……なんか困るな)」

「もう、シロウたっら。
世界なんて、そうそう簡単に書換えなんて出来るものじゃ無いのよ。
これは変身魔術、外見を変えられるだけよ」

「いや、それだけでも十分凄いけどな。
(そういえば、藤ねえが見ていたテレビにもそんな感じで変身する、俗に魔法少女ってヤツがあった、か。
魔法少女イリヤ……か、これでアリシアから本当に魔法を教えて貰っていたら洒落にならないかもな)」

シロウは、大人になった姿のイリヤスフィールを珍しそうに見つめています。
しかし、アインツベルンにはあのような魔術は無い筈、姿を変える魔術はオーソドックスと言えなくもないですが、変身魔術等いったい何処で学んだのでしょうか?
いえ、もしかしたら、四次に召喚されてから十年もの歳月がありましたから、その間に出来た可能性も否定は出来ませんが。

「これは、アリシアに教わった『ミッド式魔術』なんだから」

「ミッド式ですか」

確か、聖杯戦争の時にアリシアが使っていた魔術ですね。
普通の魔術師達が扱う魔術とは過去へと向うのですが、ミッド式は真逆の未来へ向う異端の魔術。
あの時は、光の矢か槍の様な魔術を使っていたのは知っていましたが……

「そうよ、魔術としては異端だけど、覚え易いし、デバイスの補助も有れば結構簡単に使えるわよ」

飲んでいたペットボトルを置き。

「キリツグ、セットアップ」

「了解、セットアップ」

言うなり、服装が変わりアリシアと同じくブルマ姿になるイリヤスフィール。

「ほら、こんな事だって出来るんだから」

宙に浮き上がり。
更に高度を上げ、速度を増して空を自在に飛び回ります。
聖杯戦争でさえ―――いえ、全ての宝具の原典を所有するだろうギルガメッシュやライダーは兎も角、キャスターでは、この様に空を高速で飛ぶ者を私は見ていません。
成る程、私はミッド式という魔術の認識を侮っていたようだ。

「そうだ、この際だからお兄ちゃんにセイバーさんにも教えるよ。
あると便利なんだ、えっと―――聞えたかな?」

「っ、何か頭の中に直接聞える感じだな。
(急に頭に「聞える?」って声がした時は驚いたけど、これって、もしかすると便利かもしれないぞ)」

「うん。これが『念話』、離れてても話せるんだよ」

「いえ、何も聞えませんが……」

アリシアの声を、シロウは聞えたそうですが、私は何も聞えませんでした。
もしかすると、私にまだ話しかけていないだけなのかも知れませんが。

「……え、そっか、セイバーさんのクラススキルには対魔力があったら、それが邪魔しちゃたのかな?」

「じゃあ」と言った瞬間、凄まじい魔力を感じました。

「……アリシア、それはまさか?」

「うん、渦だよ」

「って、こんな事で聖杯使うのか!?」

「だって、その方が時間も短縮出来るんだよ?」

聖杯の中身である無色の力。
既に聖杯を求めていないとはいえ、持てる者はこうも容易く使ってしまうものなのでしょうか?
何処か釈然とせず、空を見上げれば、まだイリヤスフィールが気持ち良さそうに飛び回っていました。


前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.036448001861572