機動戦艦ナデシコ the transmigration of the soul; metempsychosis
プロローグ1
男は今、その思いを成し遂げ笑っていた。
復讐・・・
そう、男の思いとは『復讐』であった・・・
妻を喪い、義妹を裏切り、戦友を裏切り、ただ復讐の為に生きてきた。
その思い、願い、執念を成し遂げたのだ。
そして笑っていた・・・
思いを遂げた達成感なんてものは無かった・・・その思いに浮かぶものは何とも言いようが無い虚しさだった・・・。
「ユリカ、ルリちゃん、アイちゃん、ラピス、みんな・・・すまない・・・」
妻との出会い、エステバリスでの初陣、義妹、皆との出会い、戦争終結・・・
戦後の長屋暮らし・・・結婚・・・そして・・・
男の顔が苦痛に歪む。
男の命の火も消えようとしている、まるで走馬灯のように今までの記憶が駆け足で流れ出す。
火星への新婚旅行、機内にて妻を、自身も拉致される・・・
遺体も発見出来なかったため、世間一般には事故により死亡と公表された・・・しかし、男はA級ジャンパーであった為、拉致され、体にナノマシンを大量に投入され非常な人体実験が行われた。
ネルガルに救助されたものの、五感に障害が残った、自分を拉致した『火星の後継者』へ復讐するため復讐鬼となり、『火星の後継者』を追う過程で救出したラピス・ラズリ(電子の妖精に五感をサポートさせ)と共に、妻を救い出したが、演算ユニットに組み込まれて「人間翻訳機」となった事がその体に負担を掛け、救出後半年で命を落とした・・・。
そして自身ももう長くは無いと知らされる・・・
最後の戦いに赴く前にラプスを戦友そして男を慰めてくれた女性エリナへ託し、『火星の後継者』最後の残党を討ち取った。
「ユリカ、ルリちゃん、アイちゃん、ラピス、みんな・・・すまない・・・」
男はもう一度つぶやく
「目標を補足しました」
マキビ・ハリが報告する。
メインスクリーンには、その名に似合わしくない見るも無残な戦艦が映し出される。
「ユーチャリス搭載のAI=(ピュア)からの信号を確認・・・」
「ユーチャリスのメインエンジン沈黙を確認・・・」
タカスギ・サブロウタの報告に少女は今までに無く取り乱す。
「そんな・・・アキトさん、アキトさん・・・そんな・・・」
「ハーリー君っ、オモイカネを使ってユーチャリス(ピュア)をハッキング、ブリッジ映像を出力」
「タカスギさんはユーチャリスに船内スキャンを実施して生命反応を確認してください。」
少女が取り乱したのは一瞬だった、直ぐに立ち直り命令を下す、自身はユーチャリスへ接岸しようとナデシコBを操舵する。
しかし琥珀色のその瞳からは、今にも涙がこぼれそうだった。
「ユーチャリスからボソン反応・・・ジャンプフィールドが形成されています」
「アキトさんっ、もう、すべて終わったじゃないですか、なぜ逃げるんですっ・・・」
「俺たちは家族だって・・ひっく・・ずっとそばに居るって・・ぅぅ約束したじゃないですかっ」
タカスギの報告に少女が泣きながら問いかける。
通信が繋がっているわけでは無い、その声は届かないが、声を出さずにはいられなかった。
「まさかっ・・・そんな、うそだろ・・・」
振り向くとタカスギが驚愕の表情を浮かべている。
何があったのかと報告を促そうとした時。
「ユーチャリスブリッジ内の映像出ました、メインスクリーンにて開きますっ」
ハーリーが報告する。
目をメインスクリーンへ向けると、黒いバイザーを掛けた男が艦長席に座り、ジャンプフィールドに包まれようとしていた。
「か、艦長・・・ユーチャリスからは、既に生命反応はありません。」
タカスギが報告する。
「そんな・・・誰がジャンプフィールドを形成しているの?」
「ありえませんっ」
少女は自問自答する。
しかしジャンプフィールドは男を包み込みほのかな光を放ち出す。
「アキトさんっ、アキトさんっ、行かないで下さい、私を一人にしないで下さい。」
少女は叫ぶ。
しかし、無常にも光はより一層輝きを増すと、男の姿と共に消えてしまった・・・・・・
~~~~~~~~~~~~あとがき~~~~~~~~~~~~~~~
はじめまして、luteciaです。
このたびは、機動戦艦ナデシコ the transmigration of the soul; metempsychosisをお読み下さいまして有難う御座います。
初めての作品ですので、誤字脱字が有ると思いますが、ご容赦下さいます様お願い申し上げます。
資料設定
ユーチャリスのAIの名前(ピュア)はユーチャリスと言う花の花言葉から頂きました。
ユーチャリス
ヒガン花科
花言葉:きよらかな心
それでは皆さん、次回作でお会いしましょう。