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No.17975の一覧
[0] (タイトル)モンスターハンター[ファング](2010/04/25 21:41)
[1] 第一話 中盤 『岩山』[ファング](2010/04/25 21:42)
[2] 第一話 後半 壱 『岩山』[ファング](2011/03/13 18:15)
[3] 第一話 後編 弐 『岩山』[ファング](2011/03/13 18:03)
[4] 第一話 『岩山』の後書き[ファング](2011/03/03 21:57)
[5] 第一章 第二話 『メスゴリラとフクロウ』 前編[ファング](2011/05/27 13:01)
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[17975] (タイトル)モンスターハンター
Name: ファング◆24b7f212 ID:94185b10 次を表示する
Date: 2010/04/25 21:41
第一章 一話『岩山』
/1
 遙か大昔、多くの生き物が弱肉強食、作物連鎖に従っていた純粋な「力」が、まだ物を言っていた時代。

 人間ですらも、その絶対的なルールに従って生きていた。この時代の生態系の頂点に立っているのは『竜』若しくは『龍』である。

 その下には、更に多くの生態系が存在しており、ピラミッド式で行けば人間のランクはかなり下である。

 一般的に『飛竜』と分類される「竜」と、『古龍』と分類される「龍」。分かれているが、数多くの生態系にとって脅威であり、災厄であることに変わりない。

 特に人間は知識と道具、環境に対する工夫と閃き次第で、極寒の地であろうと、灼熱の大地であろうと、自分たちの住処に出来た。

 その為、他の生態系よりも、多くの「飛龍」と「古龍」、更にそのほかの生物からの被害が多かった。

 元々、ハンター自体は存在したが、それは人間達がどうにか出来る種族が、相手であり飛龍や他の強力なモンスターを狩ろうとはしなかった。

 だが、何処かの誰か、おそらく世界で初めて「飛龍」と戦いそれに打ち勝った、この初めて「飛龍」に、打ち勝った人間は間違いなく、当時の人々の英雄であり希望となっただろう。

 そして、自分たちも英雄になろうと野心を滾らせた人間達が溢れ始め、何時しか「糧食を得るための狩人」が、「モンスターを狩るための『ハンター』」となっていった。

 やがて小さな村落ですら、「モンスターを狩るためのハンター」が誕生していき、気が付けば、有名で強力なハンターを生み出すことで、栄えようとする村落が出る始末。

 成功した村落は紛争と吸収、合併を繰り返し巨大化していき、商売人や旅路の人間などの、部外者も増えていき遂には、一体誰が何処の村落の者なのかすら、分からなくなるほどの巨大な都市となり、その他大勢のハンター達の活動拠点となった。

 時代は進んでいき、ハンター協会が設立され個人運営が出来なくなり、全てのモンスターハントに関する仕事は協会に依頼を出す形となった。

 逆らう者は大勢居たが国に頼る形で、それらの人間を力づくで、ねじ伏せ従わせた。

 ハンターの秩序と治安が安定しだし、主な仕事が都市に集中することが、多くなったことから地方の村落は、完全な田舎扱いとなり実力者が現れても、ハンターとしての名誉や更なる高見を目指して、田舎を捨てて都市へ移住するものが後を絶たなくなった。

 結果として田舎は田舎、村落は村落として、定着してしまうことになり、吸収合併の末の巨大都市になることは無くなったのである。だが、それでも有力なハンターを生み出すことも有るのは事実である。

 また様々な規律や秩序が構築されていき、一つの依頼に対し最大四人までの参加、未踏差地区に対してのハンターランクなど、多岐に渡って定められていった。

 モンスターから身を守るために、ハンターを雇っても相手が、ゴロツキなどの場合も多々続出しており、国からの依頼でも大半にそういったならず者が出現することがある。

 そういったならず者からも、依頼人を守らなくてはならない為に、護衛や防衛は熟練のハンターに優先して回るように手配されている。

 そんな貧乏くじと呼ばれている、護りの依頼を得意とする一人のハンターが居る。数多く居るハンター達の中でもランス使いは数少ない。

 それこそ、ガンランスなどと言った攻撃的なランスからの派生武器を愛用するランス使いも多いが、純粋なランスを好んで使うハンターは珍しい者である。

 全身をグラビドXで固めて強固な守りに加えて、大龍騎槍ゲイボルゴを背負った一人のハンターは掲示板に隙間無く、ビッシリと張られた大量の依頼文書を吟味していく。

 彼が見ている掲示板は、熟練でも命を落としかねない危険度最大の『G』クラスである。

 普通の人間ならば、最低でも二人で行くのだが彼に至っては大体一人で赴く場合が多い。

 一応、猟友は居ることはいるのだが、両手で数えられる程度しか居らず挙げ句、数名は猟団を運営している猟団長で、他は、それぞれチームを組んだりペアだったりする。頻繁に組むと言うわけではないが、高い確率でチームを組む二人は居る。

 だが、二人とも攻めることと、回避すること以外は全く考えない。良く見られる光景として有名となっているが、その二人のフォローを機動力のない、彼が補わなくてはならないので、肉体的な疲労より精神的な疲労の方が強い。

 何より仕事を始める前から、一緒にいるだけで激しい疲労を感じるほどなのだ。単独で請けた方が良いと判断したときは決まって個人プレイである。

 依頼を吟味していく内に気が付いたが、護衛系や防衛の類の依頼が、全くというわけではないが殆ど無い。

 ゴツゴツとした兜の顎に当たる部分に、手を当てて悩み始めた。適当な依頼を請けるにしても、あまりにも適当すぎると逆に損しかしない。

 どういった損だかと言えば、彼自身の個人的な「損」、即ち「不完全燃焼」の可能性である。

 幾らG級とは言え、中途半端なモンスターを狩っても物足りず、人間相手では尚のこと物足りない。

 だったら、一人だと少々手こずる依頼にしようと思い至った訳だが、どの依頼もモンスター自体の機動力が高い比較的、小柄な鳥竜種やイャンクックなどの小型飛竜の狩猟依頼ばかりが残っている。

 好んでイャンクックやヒプノックなどの素材を集めるのは、余程の物好きかG級に上がりたての新米程度である。

 つまり、彼が請けたかった大型飛竜や古龍の討伐依頼は、他のハンターが持っていってしまったことになる。

 兜の所為で表情は見えないが、困ったような態度なのは見た目で分かる。耳を澄ませば「う~む・・・・・」と唸り声を出して真剣に悩んでいる。

 ここまで来てしまうと逆に諦め、後日、またギルドに来て依頼を請けた方が良いかと考え始めてしまった。

 そんなとき、後ろから声を掛けられたので振り向いてみると、見慣れたウェイトレス姿のギルドの受付嬢が居た。

 このウェイトレスの格好は立派な女性ハンター用の装備だが、どちらかというと外見重視の装備であるため、本格的な狩猟には向かない。

 何より殺伐としたギルドや酒場では、華は必要不可欠と言う意味の分からない理由により、受付嬢はヒーラー装備を義務化されている。

「どうしたんですかゲンジさん?掲示板を、ずっと見つめて。」

「ああ、護衛防衛の依頼、或いは角竜か鎧竜辺りを狩りに行きたかったんだが、掲示板に張ってあるのが、殆どがヒプノックやイャンクックの狩猟ばかりでな。もう今日は諦めて帰ろうかと考えていた。」

 ゲンジと呼ばれたグラビドX装備のハンターは、低く渋く落ち着いた声で紳士な態度で応対する。

 この都市のハンターギルド兼酒場の「ザ・ロック」の常連で依頼は勿論、飲むためだけに来ることも多い。

 その為、この酒場に集まる面々はゲンジを知っており、見た目からして近寄りがたい彼と、ごく普通にスキンシップが取れる数少ないメンツが揃う酒場である。

 ゲンジが得意としている、角竜「ディアブロス」や鎧竜「グラビモス」を、苦手とするハンターは多いので、それ目当てで彼と一緒の依頼を請けることも多々ある。

「え?でもそこに二つ残っているじゃないですか。」

「至極残念ながら、俺は嫌いなんだよ、その二つは・・・・・」

 ゲンジは、指摘された依頼文書を見ながら大きく溜息を吐く。二つの内片方は「キングチャチャブー討伐」、もう片方は「バサルモス狩猟」であった。

 キングチャチャブーとは、小型の獣人族に分類される亜人種の一つで、メラルーやアイルーと違い、攻撃性が高く何かに擬態して獲物が近づくのをジッと待ち伏せをするなど、時には集団で襲いかかることもある。

 そのチャチャブー達を、統率しているのがキングチャチャブーである。他の個体に比べてやや大きく、王冠の変わりに焼き肉セットを被っているのが特徴で、攻撃力も耐久力も格段に高い。

 下手すればイャンクック以上。しかも、それが他のチャチャブーを引き連れて集団で襲ってくるなら尚のことである。

 もう一つのバサルモスとは、鎧竜グラビモスの幼体である。基本的にどちらも硬く、大抵の武器は弾かれるのだが一部分なら切断系の武器でも通じ、更にボウガンや弓などの貫通系武器ならば大した問題ではない。

 ゲンジがグラビモスを得意としているのは、最も懐に入りやすく、一度入ってしまえば相手が大きな動きを取らない限りは、弱点である腹の下に居続けることが出来るからである。

 バサルモス、グラビモスと双方打撃に弱いのだが、まだ幼体であるバサルモスは懐部分の外殻が非常に硬く、斬撃と打撃、両方を兼ね揃えたランスでも、バサルモスの腹の外殻を突き破ることが出来ない。

 そこにグラビモスよりも、遙かに小さく的として狙いづらいと言う点も付加される。
 槍使いのゲンジにとって、的が小さいというのは致命的な問題である。槍とは、ハンマーや狩猟笛のように面攻撃ではなく、太刀や大剣、片手剣や双剣のように線攻撃でもない、ランスとガンランスは基本的に「点攻撃」である。

 点の攻撃とは、つまり目標の弱点部位を的確に狙っていけると言うメリットがある。

 これはボウガンや弓のような貫通力の高い武器でも同様のことが言える。だが点の攻撃が抱えるデメリットは点で点を捉えるのが難しいことである。

 点に対しては面、面に対しては線、線に対しては点が有効となるが、同じ物に対して同じ物で攻撃しようとすれば非常に難しくなる。

 ゲンジが、キングチャチャブーなどの小さなモンスターを苦手とする理由の一つである。

 またバサルモスで、もっと厄介なのは腹以外に切断系武器が全く通らないことである。

 片手剣ならば、腹はなんとか斬れるが外殻を破壊するのに時間が掛かりすぎる。ランスなど外殻を破壊しない限りてんで穂先が通りもしない。

 だからこそ、今日はもう帰ろうとしている。別にランス以外の武器も使おうと思えば使えるのだが、長年に渡ってランスばかりを使い込んできたゲンジにとって、今更他の武器を使うなど考えられない。

 なり立ての頃は片手剣装備で踏ん張っていたのだが、何時の頃からか、気が付けばランスを装備しており防具も、ランスと防御を中心に考えたスキルを優先していた。

 はて何時の頃からかだろうかと、感慨深く昔のことを思い出そうと、その場で思い老けようとしたが、依頼を探しに来たことを思い出して直ぐにその思考をやめる。

 こんな事を思い出すなどいい加減、俺も歳かなどと思っていると、後ろの受付嬢が心配そうに「大丈夫ですか?」と、尋ねてきたのですぐに「なんでもない」と返す。

 実際、兜で目以外の顔は、全て覆われて隠れているわけだから、心配させてしまうような表情をしていたのか自分でも分からないが、おそらくそんな雰囲気だったのだろう。

「-------しかしどうしたもんか、冗談抜きで困ったな・・・・」

 そんなとき、他の依頼の下に埋もれている一枚の依頼文を、たまたま見つけて下の依頼だけを器用に引き剥がすと、依頼内容を確認する。それを見て不敵な笑みをこぼす。

 依頼内容はティガレックスの狩猟である。ティガレックスとは、通称「轟竜」と、呼ばれており飛竜の祖先ではないかと言われている飛竜である。

 しかし、飛竜の祖と言われる割には、体躯はどちらかと言えば、遙か古代に栄えたと伝えられる恐竜と呼ばれる種族に類似している。

 一説によれば、ティガレックスは本当に遙か太古から存在し続けた飛竜種ではないかと噂されている。

 しかしながら、そのような仮説やら推測やらは、ゲンジにとってはどうでも良いことである。

 ハンターにとって狩るべき対象は幅広ければ広いほど、食い扶持に困らないし、自らの武勲を知らしめる絶好の機会となり得るからだ。

 と言っても、新米にいきなりこのティガレックスを狩れなどと、ギルドや協会は口が裂けても言えないだろう。

 仮に高い実績や実力を持っていたとしても、協定や規律を重んじ拒否をする、或いはそのランクでの実績、つまり、井の中の蛙のようなハンターばかりなのだ。

 そんな尻尾も取れない蛙の赤子に、大蛇と戦ってこいなど無理な話である。

 そもそも、このティガレックスはベテランハンターでも返り討ちにされることが、非常に多いタイプでも有名である。

 近年の武器の多様化によって様々なハンターが生まれているが、このティガレックスと最も相性が悪いのは、ゲンジが考える中では太刀辺りが悪いだろう。

 本格的なガード出来ないのは愛嬌としても、致命打を与えにくいことや、ティガレックス自体が動き回り狙いを定めさせないことも起因する。

 ゲンジ自体が他の武器に慣れていないことも大きい。長年殆どランスしか使っていないからだ。従ってハンマーや双剣、太刀などといった、攻撃性の高い武器との相性は抜群に悪い。

 そうでなくても、ティガレックスは近年見つかったばかり、もっと悪いのは発見されてから最も被害に遭うのが初心者ハンターだ。

 基本的に何処も危険地帯なのだが、最近の状況を鑑みるに、やはり過酷な地域に住まう飛竜や古龍が強大である。

 と言っても、飛竜の地点で既に危険なことは変わりがない、ようはその過酷な自然と、危険な飛竜と古龍を相手取って生き残れるだけの実力、運、知恵のどれか一つを、他のハンターよりも強く持っているかが重要である。

 ゲンジは、どれを強く持ったかは知らない。己自身でもそこは全く分からないのだ。上に行けば行くほど分かる半端な実力、誰よりも下回る運、知恵に関しては、生まれてこの方生き延びる方法以外、まともな知恵は持ち得ていない。

 何より生を受けてから職業が肩書きだけ変わっただけで内容などは殆ど同じなのだ。

 それを考えれば考えるほど不思議で仕方ない。一体何を間違えたら、ここまで生き延びられたのか全く分からないのだ。だが、今は目の前の仕事にありつくことにした。

 そこで、よく注視すると「ティガレックス二体の狩猟」と記述されている。別に一人でも十分なのだが、雪山は足場が悪く踏ん張りが利きにくい。降り積もった雪は踏みしめる度に沈んでいき機動を損なわせる。

 ガードを主体にじり貧で、獲物をジワジワ追いつめていく、戦い方のゲンジには少々辛い物がある。

 そうなると、武器を変えるか、仲間を募集するか、諦めるかのどれかだが、選択肢として挙げた二つは論外である。

 一つ目は、先述の通りランス以外殆ど使用しないゲンジに、武器の変更は等しく死を意味する。三つ目は金が無く稼がなくては飢え死んでしまうからだ。

 仕事ならば裏の仕事でも有れば、引き受けるが極力関わりを持たないようにしている。傭兵として名が知れ渡るとハンターとしてではなく、傭兵としての自分を求められるようになるからだ。

 それでは、何のために職業を変えたのか、分からなくなってしまうので極力避けたいのだ。

 従って、選択肢としては二番目の募集だろう。幸い近くには大勢のハンターが居座っており賑やかであるが、いざゲンジが依頼で仲間募集をしていると言えば、この中の一体何人が黙り込むだろうか。

 割と実力者が集まる、この酒場でも彼に匹敵する実力者は一握りも居ないのだ、だが、たった一人で挑んで呆気なく殺されて餌に成り下がるのでは笑い話にも成りやしない。ダメ元で協同者募集用の掲示板に張り付けた。

 大きな音は出していないが、グラビド装備でランスまでぶら下げているのだ、何より今掲示板にたっているのは、ゲンジただ一人だけで、他は席に座って酒を飲んだりつまみを摘み、音楽を奏でたりしているのだ。 

 今まで喧騒としていた酒場が、ゲンジの行い一つで誰もが、その掲示板に注目し暫く注視した後に、揃いも揃って沈黙する。

 案の定、と言うより、分かりきっていた結果ではあるが、どうしても溜息を吐きたくなる。

 実力差が有りすぎても、狩りは殺し合いと同義である。ろくでなし共なら、それを楽しみにしているはずなのだが、どういう訳か格の違うハンターが一人居るだけで、賑わっていても沈黙してしまう。

「・・・・・・・・・・・・・」

 これには思わずゲンジも黙ってしまう。ここまで腰抜けの巣窟と化しているのかと、思うだけで吐き気がするのだ。

 金と女を抱けるだけの金が貰えるだけで、良しとしているような連中ならば傭兵に戻れば良い。

 彼らの大勢は、初めからハンターだったわけではない。大半のハンターは殺し屋だったり傭兵であったり、何かの副業を営んでいたりもする。ゲンジもその一人である。

 そんな副業で、有る意味でモンスターとも戦ってきている人間なんぞ、まともな狩猟が出来るのかと言えば無理であろう。動きや戦い方がより洗練されているからだ。

 モンスターばかり相手にしていると、そういった動きが不思議と出来なくなっていくために、副業をしていないハンターは必然的に真っ当なハンターであると同時に、実力者との力の差を大きくされる。

 そんなとき、一人だけ席から立ち上がると、何も言わずに掲示板に張られた募集に名前を記入した。

 ゲンジはこのハンターの名前よりも、装備に着目した。どの依頼でも対応できるのは、ライトボウガンと片手剣である。

 が、しかし。このハンターが装備しているのは、ガンランスで装備はバサルモスXで固められている。

 機動力が低いランス系にとって唯一の高速技は突進だが、ガンランスは攻撃面に力を入れたために、ただでさえ遅い機動力は更に遅くなった。

 付け加えるなら、余計なギミックを組み込んだことにより、ランス本来の強さは損なわれている。

 使いこなせれば確かに強い武器ではあるが、生粋のランスに比べると切れ味の劣化が、幾分か早く、よりにもよって刃の真上に銃口があるため、刃の劣化が著しく早い。

 別にこれが、ただの銃と銃剣なら良いのだが、何しろ規模が違う。一発撃つたびに衝撃と熱で刃が痛むのだ。

 挙げ句には龍撃砲と言う、おそらくはリオレウス辺りをモデルにしたのであろう。壮大な火力を持たせたのがガンランスである。

 しかし、お手軽な武器を開発するのは結構なのだが、あまりにもお手軽、或いは攻撃性に特化させすぎると、著しくバランスを損ないハンター自身の実力を育てることが出来なくなる。

 直感と危機感知能力、回避テクニックのコツなどを掴ませるには、丁度良いかも知れない。どちらにしろ、これらを「使い勝手が良い」と言って安易に使い、クエスト中に死亡する新参者が増えている傾向なのだ。だからゲンジとしては、余り好ましくない武器といえる。

 下手すれば、同じ実力者だとしても武器頼りでテクニックなど、持ち合わせていない可能性も充分に考えられる。それだけ近年の武器開発は初心者の熟成と育成に余り貢献していない。

 何かに特化すると言うことは、例えどんな場所であろうと、状況であろうと扱いこなし、対応できなくては話にならないからだ。彼が持っているランスとて、防御に特化した武器で機動力が死んでいる。

 だからこそ、どんな相手でも自身が有利になれる状況を、作り出す技術を編み出し単体でも生き残れる実力を手に入れた。それこそ何度も死にかけてだ。

 だが、このハンターはどうだろうか?少なくとも武器と防具だけを見れば、ゲンジと同等の階級にいるのは間違いないことだが、果たしてどのような人物なのかが気になる。

 先ずは、名を尋ねてからにした。ハンター歴など聞く気にはならない。親友に数名ほどあっという間に自分と同じ階級に来たばかりか、それ以上のクラスに到達しているのだから当てにならない。

「お前、名は?」

「俺の名前か?名はガルフォード、一応お前さんと同じ階級だぜ?武器は説明不要だよな」

 これに対してゲンジは静かに頷いた。だが何やら声からして若い、それも色々な意味で若いと感じられる。つまり、ゲンジは今非常に不安で支配されてきた。

 希に、このような人物は大抵命知らずな場合が多い。調子に乗ってゲンジの邪魔をして、巻き沿いを食らい、獲物諸共狩猟されたハンターは数知れず。

「ま、安心しろよ。足手まといにはならない程度にやるからよ。」

 この言葉を聞くと、余計に不安が掻き立てられる。果たしてこのハンターが同行することを許諾していいのだろうかどうか、思わず悩んでしまう。

 あの二人なら、この不安とは別の不安が掻き立てられるのだ。この不安、つまり検討と予測の付かない不安が、何より嫌いで出来ることなら断って、自分一人だけで挑みたかったが、贅沢は言っていられないと自分に言い聞かせた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった、着いてこい」

「やけに悩んだな、俺じゃ不安か?ん?」

「ああ」

「そ、即答かよ・・・ヒデェ」

 この即答で、どのような態度を取るか気になったが、あまり動じた様子は見せず気にもしていないようだ。

 タフなのか、ただ単に頭が残念なのかよく分からないが、この不安は長年培ってきた、感のみで答えを出すなら間違いなく嫌な予感で当たっている。

 仕方なくこのガルフォードと言う青年と共に、雪山へ赴くことになるが、ゲンジはこの不安がどうか杞憂であることを切に願っていた・・・。


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