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No.17872の一覧
[0] PSYchic childREN (PSYREN-サイレン-) 【オリ主】[昆布](2011/06/12 16:47)
[1] コール1[昆布](2011/03/04 01:52)
[2] コール2[昆布](2010/12/23 03:03)
[3] コール3[昆布](2010/12/23 04:52)
[4] コール4[昆布](2010/12/23 04:53)
[5] コール5[昆布](2010/12/23 04:53)
[6] コール6[昆布](2010/12/23 04:53)
[7] コール7[昆布](2010/12/23 04:54)
[8] コール8[昆布](2010/12/23 04:54)
[9] コール9[昆布](2010/12/23 04:54)
[10] コール10[昆布](2010/12/23 04:55)
[11] コール11[昆布](2010/12/23 04:55)
[12] コール12[昆布](2010/12/23 04:55)
[13] コール13[昆布](2010/12/23 04:56)
[14] コール14[昆布](2010/12/23 04:56)
[15] コール15[昆布](2010/12/23 04:56)
[16] コール16 1stゲーム始[昆布](2010/12/23 04:57)
[17] コール17[昆布](2010/12/23 04:57)
[18] コール18[昆布](2010/12/23 04:57)
[19] コール19[昆布](2010/12/23 04:58)
[20] コール20 1stゲーム終[昆布](2010/12/23 04:58)
[21] コール21[昆布](2010/12/23 04:58)
[22] 幕間[昆布](2010/12/23 04:59)
[23] コール22[昆布](2010/12/23 04:59)
[24] コール23[昆布](2010/12/23 04:59)
[25] コール24[昆布](2010/12/23 04:59)
[26] コール25[昆布](2010/12/23 05:00)
[27] コール26[昆布](2011/06/20 03:08)
[28] コール27[昆布](2011/06/12 16:49)
[29] コール28 2ndゲーム始[昆布](2011/07/29 00:23)
[30] コール29[昆布](2014/01/25 05:06)
[31] コール30[昆布](2014/01/25 05:05)
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[17872] コール9
Name: 昆布◆de1a5a25 ID:52360afa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/23 04:54
あの後アロハさんの話を聞いていたら日が暮れてしまっていた。
暗くなってから宿を探すのも一苦労であるし、一人で夜の街をうろうろするのも躊躇われた為、
昨日は結局アロハさんのキャンプにお邪魔させて貰ったのだった。

今日はあのアロハさんと出会った日の翌日。

今日も今日とて頭上に雲は無く晴れ渡っており、後から暑くなってきそうだ。
朝の間だけは空気がひんやりしており、吸い込む空気で胸の内部から熱が奪われるような感覚を覚える。

しかし、アロハさんから聞いた話は衝撃的だった。

PSIの研究、伊豆のエルモア・ウッドで読んだ文献のようにそれは遥か昔から行われていたものである。
それがこの現代でも続けられているらしい。

技術が未発達で、科学と超常現象が混同されていた中世ならばまだしも、
ほぼ全ての理が数字で表されるこの現代でPSIの研究が続けられているとは思わなかった。
恐らく、PSIの一般の認知度の低さからその可能性を頭の中から消していたのだと思う。

だが、よくよく考えてみると、研究が存続しているのは当たり前のことだと気付いた。
PSIとは存在するかどうか怪しい物ではない。はっきりと存在するものなのだ。
その生き証人が例えばエルモア・ウッドのみんな、例えばアロハさん、例えば僕である。

確固とした証拠があれば、研究者もそれを疑ってかかる事はないだろう。
ただの一現象として探究心の矛先を向けるだけである。

先にPSIを超常現象としたがそれも誤りだろう。単なる未だ理解されてない自然現象とした方がまだ納得できる。
そうすると、PSIの研究が現代でも続けられていると言うのは道理に適ったことになる。

・・・話がずれたが、アロハさんはその研究機関にいたのだと言う。そして実験体として生きていた。

しかし、ある時逃げ出した。
実験体である事に嫌気が差したそうだ。アロハさんが体験したものを知りうる事は出来ないが、
逃げ出したことから推測すると、実験体としての生活は決して心地よいものではなかったのだろう。

それが16年も前のことだそうだ。
それからアロハさんは世界を知った。知ってサイキッカーと人間の違いを思い知った。
アロハさんが力を隠したがった理由がこれだそうだ。

そしてもう一つ。
逃げ出したことで、アロハさんはその研究機関から追われる身になったという。
力を隠したがったのは身を隠す意味もあったらしい。

アロハさんがお尋ね者であることを知ったが、怖くなったりはしなかった。
それはアロハさんが話している最中の目が、とても寂しげだったからだろうか。

むしろ、事情を知り、同じサイキッカーとしてアロハさんが気の毒に思った。
アロハさんの過去は同情に値するものだろう。

それに、長い年月を経て機関の追っ手が来ることもなくなったのだそうだ。
アロハさんは今、人生を取り返そうとしている最中だったのだ。

そして話を聞き終えた時、胸に感じたことのある熱を感じた。
それは僕の力。他人とPSIの波動を同調させる能力の発動。

アロハさんのテレキネシスは、普通のテレキネシスとは根本から異なるものだった。
普通のテレキネシスは目に見える物体に作用する能力であるが、アロハさんのは不可視の物まで力が及ぶものだった。

例えば、大気の組成成分の物質の分子を操ったり、光子を操ったりなど。

試しに使ってみようとしたが、その力を投影する前のイメージが難解すぎて頭が悲鳴を上げそうだったので中断した。
大気中の物質を掌握し、操るとなるとそうとうな集中力と膨大なPSIが要る。
それは僕には少し荷が重い。アロハさんの力はまだ使いこなせない物のようだ。


使えない物はしょうがないと諦めて、今僕はいつもより早めの毎朝の日課のPSIトレーニングを行っていたのである。

河原にいるため、石なら山ほどある。それらをテレキネシスで操る。
それが終わると、マテリアル・ハイを発動させる。ただブロックの形にするのではなく、様々な形をイメージして作りあげる。

カイルは主にブロック、球、そして円刃(ブレード)の形を創造していた。
カイルは集中力によってはブレードを紙のような薄さにまで出来るらしい。

それに倣い、僕もブレードをどこまで薄く出来るか挑戦する。

先ずはイメージ。出来るだけ薄く鋭く。
そして投影し力を安定させる。気を抜くとブレードが大気に溶けていってしまうのだ。
そうならないように集中し、維持に神経を注ぐ。

ブレードが陽を反射して煌めいている。集中がいまいちな為ブレードの透明度は低かった。

玉のような汗が浮かぶ。
シャツが体にくっ付き、普段なら気持ち悪いのだが、この時は集中していてそれに気付かない。

そしてそれを固定解除しようとして、そこで集中力が切れた。
ブレードは陽炎のように揺らめいて消えた。


「・・・はぁっ。なかなか上手くいかないなあ・・・ 」


愚痴るように独りごちる。
アロハさんは盛大ないびきを奏でながらまだテントで寝ている。

いつもより早く起きた理由がこれだ。
あの人、環境基本法に騒音の項目で引っかかるんじゃないだろうか。訴えたら勝つ自信ならある。

頭がボーっとしてきている。
河原にあった手頃な岩に腰を下ろす。冷たい空気が汗に濡れた肌に心地良い。
目を閉じて川の流れる音に耳を傾けようとすると、アロハさんの強めの自己主張が聞こえてきた。


「やれやれ・・・」


少し、休憩してもいいだろう。



◆◆◆



「ふうっ・・・」


テラスの真ん中に立てられたポールにテラスの四隅からロープが張り巡らされている。
これがエルモア・ウッドの物干しだ。
お婆さんの服はどれも高級な品で、洗濯する時はクリーニングに出すような物なので、実質ここは子供達の衣服を干す場となっている。

そこでマリーは朝から洗濯物を干していた。
マリーの足下には洗濯籠が置かれ、そこから洗濯物がひとりでに浮いていき、ハンガーに掛けられロープに吊るされていっていた。

勿論、勝手に洗濯物が動いているのではなく、マリーのテレキネシスによるものなのだが、
傍目には洗濯物が意志を持って動いているかのように見えていた。

洗濯物を籠から出し、しわを伸ばして、ハンガーに掛けて、ロープに吊るす。

これらの一連の動作を予めプログラムとして組み上げ、発動させているのでテレキネシスが作用している間でも
マリーが集中し続ける必要はない。

そのため、テレキネシスを働かせている間は特にすることが無く手持ちぶさたなので、
マリーは柵にもたれ掛かり、ぼんやりと空を見ていた。


「今日もいいお天気だなぁ・・・」


空を見上げると吸い込まれそうなくらいの蒼さだった。
海のある方角からの風が、ほのかな潮の香りを運んでくる。風がマリーの髪と洗濯物を揺らした。


「・・・・・・」


空は晴れ渡っているが、マリーの心はあまり晴れやかではなかった。

あの白い髪の少年がエルモア・ウッドに来てから、家事を共にする仲間がマリーにできた。
本人はPSIの訓練だと言っていたが、それでも家事を手伝っていた事には変わりない。

何事も一人でやるよりも誰か相手が居る方が良いと相場が決まっている。
洗濯を干している間のこの空虚な時間も、以前なら話をする為に用いられていたのだが今はマリー一人である。

家事自体マリーは嫌いでなく、それまで苦痛を覚えたり、退屈に感じた事はなかったのだが、
マリーは今何とも言えない物寂しさを味わっていた。


「ファイ君、今どうしてるのかなぁ」


ふわっと強い風が吹く。洗濯物が音をたててはためいた。
夏とはいえ朝の冷たい空気に晒され肌も冷えてきている。洗濯物を吊るし終えたのでマリーは家に引き上げる事にした。


「風邪とかひいてないといいけど…」


白い洗濯物が、青い空によく映えていた。
そう言えばあの少年も髪色のためか空によく映えたこと思い出し、マリーは呟いた。



◆◆◆


「ふぇっくしょん!!」


誰かが僕の噂でもしてるんだろうか、いやそんな非科学的な事はないだろう。
汗が蒸発し、気化熱でどんどん体温が奪われ普通に寒くなってきたのだ。
いい加減トレーニングを再開するか切り上げるかして風邪をひく前に体を暖めた方がよさそうだ。

「ふぁ、ふぇっ・・・」


「びゃあックショイ!!!」


・・・なんだ、今の。
二回目のくしゃみがかき消されてしまった。


「あー、寒ィなチックショウ」


そんな事を口にしながらアロハさんがテントから顔を覗かせた。


「おはようございます。起きて早々なんつークシャミしてんですか」


「お?早起きだなお前。白髪といい年寄りかよ。・・・ふああぁぁあ」


テントから体を出して全身で伸びをするアロハさん。大口を開けて欠伸もしている。


「27歳に言われたくありませんよ。

白髪のせいで年より老けて見えるのは事実なんで否定しませんけど、年寄りはあんまりじゃないですかね」


「・・・お前イイ性格してんな」


アロハさんが落ち込んだみたいだった。やはり27歳はNGワードか。
アロハさんが起きたのでトレーニングを中断する。タオルを取り出して体を拭く。ついでにシャツも換えよう。


「それにしても、なんかやけに寒くないですか?朝とは言え今一応7月ですよね?」


「ああ?確かに寒ィが・・・

・・・あれ?なんか息が白いんだけど。鼻水凍ったんだけど」


そうこうしてる間に吐く息の水分で睫毛が凍り始めた。寒さで震えて歯が噛みあわない。
顔に血が通っている感じがしない。自分では見れないが多分顔色は真っ白になっていると思う。
アロハさんも表情を歪ませている。明らかに異常である。


「な、なんですかコレ・・・無茶苦茶じゃないですか!

完全に普通じゃないですよ!!一体何が・・・!」


そこまで言って気付いた。これは自然現象じゃない、人為的なものだ。
こんな不思議な現象は恐らく・・・!


"心羅万招"


辺りを取り巻くPSIの流れを感じ取り、視覚の情報として捕える。
やはり、辺りには何者かのPSIが満ちていた。


「・・・そこか!!」


そしてそのPSIの出所を見つけ、心羅万招を解除。
"テレキネシス プログラム・投擲"でその出所の方向の木の陰に向けて河原の石を放つ。

そして飛び出してきたのは・・・


「あれ、アイツ・・・?」


夏だというのにロングコートを着込み、さらにそのボタンを全てとめて前を閉じている。
口元までマフラーで覆い、耳あてまでしているあたり、真性の寒がりというかなんというか…
尖った髪を後ろに流していて、背は低め。

とにかく、そんな男だった。


「・・・・・・」


男は無言で掌をかざす。
すると掌の周辺が淡く光ったと思ったら、その手には二丁の、銃身が長く大口径の銃が握られていた。
銃の周りに白い水蒸気が発せられていることから、あれは多分氷で創られたものなのだろう。

そしてそのまま僕達に向けて何かを放ってきた。
速すぎてしっかり目で捕える事は出来なかったが、あれは恐らく銃弾の形をしていた。


「くッ!」


最初に冷気を振りまいてきたこともあるし、僕らに敵意があるとは分かっていたのだが、
本当に攻撃されるとすぐには十分な反応はできなかった。

頭の中でイメージを高速展開。マテリアル・ハイを使用して目の前になんとか空気の塊を投影する。
しかし、急いで拵えたブロックのためあまり硬度は高くない。
最初の一発目の弾でブロックに皹が入り、二発目の弾でブロックが完全に砕け散り、三発目の弾で被弾した。


「あ、っ!!」


左肩に当たったのだが、その当たった衝撃もさることながら、被弾した個所から徐々に氷が浸食していき、
左の半身が氷に呑まれてしまった。そのまま倒れこむ。


「・・・久し振りだね」


「随分な挨拶じゃねーか。俺の連れまでやりやがってどうしてくれんだ」


体が凍りつき動かし辛いので首だけを向けるとアロハさんは弾に触れることなく
見えざるテレキネシスの手で弾を払っていた。


「知り合いなんですか!?」


「ああ・・・なんと言うか、同期の桜というか。こいつも例の実験体で一応俺のダチだ」


「ダチ?勘違いしないでください。あなたは僕の元ターゲット…それだけです」


そう言うと男は跳ねた。
体を捻り空中で上半身をこちらに向けて再び弾を放ってくる。太陽を背にしているので表情は窺い知れない。

アロハさんは迫ってくる弾の正面に掌を翳す。するとレンズのような物体が何層か重なって具現化し、
僕を凍りつかせたあの氷弾を危なげもなく弾いた。


「ふん」


アロハさんが腕を振り払うと目に見えないが、もの凄い衝撃が地面を走った。
まるで地面を割ったかのような一撃。衝撃の通った後には河原の石は四散し存在していなかった。

男が着地する瞬間を狙ったもので、男の体勢が整わず直撃するかと思われたが、
男は地面に足をつけると、膝で着地の衝撃を吸収することなく、重心を後ろに傾け、
そのまま後ろに滑るように移動してアロハさんの攻撃をかわした。いや、滑るようにではなく、実際に滑っていた。

目を凝らして地面を見てみるとキラキラと光っている。どうやら地面に氷を張ったようだ。
そして男の足にはスケート靴の形をした氷が纏わり付き、そのブレードで滑ったのだった。


「少しはできるようになったじゃねーか。ポンコツ」


「・・・僕はポンコツじゃない!」


そして男はスケート靴を装備したまま移動し始め、移動しながら氷の弾丸を撃ってくる。


「おい、ファイ!お前は凍傷になる前にあの川行って氷を溶かしてこい!」


アロハさんが僕の横で弾丸を防ぎながら言う。
男が高速で移動しながら撃ってきているため、前方のガードだけでは対応出来なくなってきていた。


「分かりました!・・・というか、なんで戦ってるんですか!?

あの人ダチとか言いませんでした!?あの人は否定してましたけどあの人ツンデレですか!?」


「戦ってんのにごちゃごちゃうるせーな!後で答えてやるから早く行ってこい!!あとツンデレってなんだ!?」


「なんでもありませんよ!行ってきます」


川に向かって駆け出す。僕があそこに居ても純粋な足手まといだろう。
凍りついた箇所が動かせず、無様な動きだったが、何とか川へ辿り着き凍った所を水に浸けて溶かす。
溶かしながら二人の様子を見る。


「ホントお前しつけーな。いい加減うぜーぞ」


アロハさんが僕の動かせる数とは比べものにならない量の河原の石を男に向かって飛ばす。


「アンタに勝ってボクがポンコツじゃないと証明出来るまで纏わり付いてやるさ」


男が華麗なステップで石を避ける。避けられない物は銃で撃って相殺していた。


「チッ。おいファイ!お前PSIの訓練してたよなあ!?せっかくだから見とけ、これがサイキッカーってやつだ!!」


どうやらアロハさんは先程寝たフリをしていたらしい。
出て来なかったのは様子を窺っていたからか。人が悪い。

アロハさんは左手で弾丸を防ぎつつ、右手を川に向けて翳した。
僕の近くの水面が揺れたと思ったら、水が空へ舞い上がっていき、巨大な水の塊が浮かんでいた。


「オラァ!」


右手を振ると塊は飛んでいき、男に迫る。


「クッ!」


男は銃を放り捨てると、両手を塊に向けた。
男の両の掌が強く光り目の前に氷の壁が現れる。

水の塊は壁に激突し、球形を崩したと思ったら壁に触れた部分から凍りついていく。
しかし、一瞬の膠着の後壁は結局その膨大な水の質量の前に破れ粉々に砕け散った。

だが、男にはその一瞬で十分だったようで瞬時に移動し、水から免れていた。
そして一気にアロハさんに接近する。
遠距離は不利だと悟ったようで、近接攻撃に切り替えるつもりのようだ。

・・・というか、この二人の戦いは凄すぎる。目で追うのがやっとなくらいだ。

しかも心羅万招で流れを追っていたら、二人の思念が流れ込んできたのだが、二人に殺気と言うようなものは無かった。
つまり、これでまだまだ本気ではないのだ。手合わせをしているような物でしかない。
サイキッカーってみんなこんなんなのだろうか。頭が痛い。

男の接近を拒むかのようにアロハさんは石を放つが、どれも避けられる。


「フッ!」


男が膝を折り曲げ、体が前倒しになった状態から、一気に跳んだ。
そしてアロハさんの手前で一度左足を地面に着き、左足を軸足にして右側からアロハさんの胴体に向かって回し蹴りを放つ。

アロハさんは身を捩って躱すが、後にはためいたアロハシャツがスケート靴のブレードで切られてしまった。
どうしよう、アロハさんがアロハシャツを失ったらアロハさんとは呼べなくなる!

間を置かず男は右足を納め、背を向けた状態から左足で後ろ回し蹴りを叩き込んだ。
踵の部分の尖った刃が元アロハさんを襲う。


「ぐ!」


アロハさんは左の肘で男の足を打ち上げ、刃の軌道を逸らす。
今までずっと不動だった元アロハさんが初めて一歩後ろに下がった。

バランスを崩したようで、男の体が傾く。しかし倒れる寸前男が薄く、冷たく笑った

手には再び先程と同じ銃が握られていた。
それをほぼ零距離で元アロハさんに向けて放つ。PSIが発たれる際の光はマズルフラッシュのようだった。
懐に潜り込まれているため、レンズのような物や、テレキネシスで払う事は出来ない!

しかし・・・


「こんの・・・!いい加減にしろやァ!!!」


元アロハさんが全身からPSIの奔流を吹き出させ、弾丸もろとも男を吹き飛ばした。

何というか、すごく・・・強引です・・・

そして男が滞空している間に元アロハさんは河原中の石を集め、それらを全て男に放った。
しかもそれらはただぶつけるのではなく、男を全方位から取り囲み、男を石の牢獄に閉じ込めてしまった。

男は石に圧迫されて、気を失ったようだった。


「どーだ!ざっとこんなもんよ!」


元アロハさんがこちらに向けてガッツポーズをしてくる。
普通27歳の男が浮かべるようなものでない純粋な笑みだったので、僕も力なく笑った。



◆◆◆



その頃、某所。


「神奈川方面で大規模なPSI反応を感知。脱走した被験体06号の可能性有り。

直ちに現場へ向かい、捜索せよ。なおこれは特殊任務である。

くれぐれも一般市民に被害が出る事がないように。繰り返す・・・」


逃げ出した獣を追う猟犬が、また別の獣の臭いを嗅ぎ付けていた。




続く


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