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No.17872の一覧
[0] PSYchic childREN (PSYREN-サイレン-) 【オリ主】[昆布](2011/06/12 16:47)
[1] コール1[昆布](2011/03/04 01:52)
[2] コール2[昆布](2010/12/23 03:03)
[3] コール3[昆布](2010/12/23 04:52)
[4] コール4[昆布](2010/12/23 04:53)
[5] コール5[昆布](2010/12/23 04:53)
[6] コール6[昆布](2010/12/23 04:53)
[7] コール7[昆布](2010/12/23 04:54)
[8] コール8[昆布](2010/12/23 04:54)
[9] コール9[昆布](2010/12/23 04:54)
[10] コール10[昆布](2010/12/23 04:55)
[11] コール11[昆布](2010/12/23 04:55)
[12] コール12[昆布](2010/12/23 04:55)
[13] コール13[昆布](2010/12/23 04:56)
[14] コール14[昆布](2010/12/23 04:56)
[15] コール15[昆布](2010/12/23 04:56)
[16] コール16 1stゲーム始[昆布](2010/12/23 04:57)
[17] コール17[昆布](2010/12/23 04:57)
[18] コール18[昆布](2010/12/23 04:57)
[19] コール19[昆布](2010/12/23 04:58)
[20] コール20 1stゲーム終[昆布](2010/12/23 04:58)
[21] コール21[昆布](2010/12/23 04:58)
[22] 幕間[昆布](2010/12/23 04:59)
[23] コール22[昆布](2010/12/23 04:59)
[24] コール23[昆布](2010/12/23 04:59)
[25] コール24[昆布](2010/12/23 04:59)
[26] コール25[昆布](2010/12/23 05:00)
[27] コール26[昆布](2011/06/20 03:08)
[28] コール27[昆布](2011/06/12 16:49)
[29] コール28 2ndゲーム始[昆布](2011/07/29 00:23)
[30] コール29[昆布](2014/01/25 05:06)
[31] コール30[昆布](2014/01/25 05:05)
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[17872] コール5
Name: 昆布◆de1a5a25 ID:52360afa 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/12/23 04:53
『他人のPSIをコピーする力とな。

フム、最初にPSIを発そうとしただけで暴走したのは、何の能力も持っていない白紙の状態(ブランク)だったからなのかもしれんの。

PSIの出口が無い状態でPSIを放とうとして爆発した、と。』

『あくまでこれは仮説じゃがの。真実はどうか分からん。

PSIが暴走する危険があると分かった以上、早急にコントロール法を身につける必要がある。

それがサイキッカーがこの世界で生きていくのに必須な事じゃ』

『という訳で、お前さんPSIの訓練をしんさい。

前のように暴走する可能性があるか分からんのと違って一度ハッキリと暴走したんじゃ。気合い入れておやんなさい』



庭園。

・・・・・・という訳で僕は再びPSIの練習をしている。

感覚としてはもう呼吸を掴んだ気がするので暴走する気配はないと思うのだけれど、やはりPSIを扱った時間があまりに短い。
故に何か不測の事態が起こるかもしれない。
そう言ったことから、やはり自分の持つ力を完全に把握し、操れるようになっておくことは必要なのだろう。


とりあえず力の持ち主のマリーに力について尋ねておいた。

まず普通のテレキネシス。
これは前にも言われた通り、PSIの基本であるイメージをしっかりと作り出せるか、そのイメージを持続出来るか、
その後イメージを頭の中で操れるか、が大事だという。

これはマリーのテレキネシスをコピーした際に頭の中へやり方が流れ込んできた。
しかし、あくまでやり方を理解した程度なのでテレキネシスを手足のように扱う事は出来ない。

次にレベルが一つ上のテレキネシス。
これは、テレキネシスをイメージする段階で予めテレキネシスの動きを大まかに決めておく、プログラムとマリーは呼んでいた、
を組み込んだテレキネシスである。

常に意識していなければならない普通のテレキネシスとは違い、放ってしまえば後は自動で働くテレキネシスなので
使う労力がぐっと減るらしい。
ただ、投影するまでの過程がより高度になってくるのだ。

プログラムは応用技なのでコピーすることはできなかったようである。

マリーのテレキネシスと比べて分かったのだが、僕が出来るのはそのPSIの波長の模倣のみで、その力の大きさは僕の熟練度によるようだ。
マリーのテレキネシスは僕のよりも遥かに精緻で力も強かった。


ついさっき試しにその辺の小石を持ち上げてみた。
その程度の重さなら、僕の拙いテレキネシスでも簡単に持ち上げる事が出来た。

しかし、僕自身が持ち上げられないような重さの石になるとテレキネシスでも持ち上げる事は出来なかった。
要するに今の僕のテレキネシスの力では今現在僕の身体能力程度の出力しか出せないのだ。

暴走した際のPSIの奔流は凄かったとマリーは言っていたが、覚えたてのテレキネシスでは思うように出力を上げられない。
もっと大きな力が欲しいのなら対価となる努力を払う必要があるのだろう。

お婆さんが言うには前例のないような珍しい能力だそうだが、なんとも使い勝手の悪い能力である。
そもそも、周りに他のサイキッカーがいることが前提の能力であり、どこかこの能力には不自然さを感じるとお婆さんは言っていた。

この能力が以前の僕を思い出す手掛かりなのかも知れない。
暴走した際にどこか記憶に無い風景を見たような気もする。

それはともかく、今現在力を欲しているという事は無い。
欲しいのは能力の絶対の手綱。
鍛えるならば、能力の安定性、テレキネシスの精緻さである。

そんな訳で、今僕はイメージ力を高めるために瞑想して精神集中しているというわけだ。

しかし・・・日差しが暖かい。
雨続きだった六月の天気の中で久しぶりの快晴だった。いつもあったじめじめした空気は今日は感じられず、非常に快適である。

目を閉じて瞑想していると眠気が頭の内部から湧き出してきたように感じる。
脳内にセロトニンが分泌され、それによりメラトニンの分泌が促進、蓄積していく。

要するに・・・


「眠い・・・」


そう言う事だ。
そう言って僕は体をベンチの背もたれに預け、頭を垂らした状態で眠ってしまった。


◆◆◆



庭園。

カイルは久しぶりの快晴に、それまで雨で邪魔されていた分を取り返すように庭を跳ね回っていた。
カイルはじっとしている方が苦手な性格であったため梅雨の長雨に閉じこめられるのは苦痛で仕方なかった。


「よッ、と・・・」


高くジャンプしたかと思うと、そのまま空中に着地。空中に着地というのも違和感があるが、
事実着地という表現が正しいだろう。透明なブロックのような足場が出来ており、それに乗っているのだ。


「はッ」


そして次のブロックへ再び跳躍。正しくカイルは跳ね回っていた。

とは言うものの、誰か遊び相手がいる訳でもなかった。シャオには本を読むから邪魔をするな消えろと言われ、
ヴァンは起きたばかりで覚醒しきっておらず、話しかけてもあー、だの、うーとしか言わない。
マリーやフレデリカを誘うという選択肢は初めからない。


「あー・・・平和だねえ暇だねえ・・・」


仕方ないので目的もなく一人で久しぶりに思いっきり体を動かしているだけで、
手にはサッカーボールが抱えられているが、手持ち無沙汰なのであった。


「むむっ!あれは!!」


と、そこにベンチに座る白い髪の毛を見つけた。ファイである。
初めて顔を合わせて以来、食事の時など会うことはあってもしっかり会話したことはなかった。

PSIの訓練をしていて、邪魔をするのも躊躇われたり、その訓練の為にマリーやシャオが側にいたことも絡みが少なかった原因の内だろう。

しかし、今ファイは一人であり、特に能力を使っていると言う訳でも無さそうだ。
とすればここで遊び相手を増やさない手はない。

そうと決まれば早速遊ぼうぜモーションをかけるのであった。


「おーい!ファイー!!あっそっぼっうっぜッ!!!!!!!!!!!」


手に持っていたサッカーボールの全力投球によって。

カイルの予定ではファイはボールを避けるか、キャッチするか、弾くかする予定だった。
反応はどれでもいい。サッカーボールはカイル式挨拶のようなものだったのだ。

しかし、カイルの予定はどれも外れる。何故ならファイは寝ていたのであり、カイルの声気付くこともなかったからだ。



◆◆◆



夢を見ていた。
最近何度か同じような夢を見た気がするが、はっきりとは思い出せない。
まあ夢ならばそんなものかと夢の中で思う。

しばらくぼんやりしていると光が収束していき、人の形を成した。


・・・やあ、最近よく会うね。


話しかけると、人の形をした光はピカピカと点滅する。


「こ・ん・に・ち・は」


そして声が頭に響く。


・・・こんにちは。


「お・は・な・し」


・・・うん、いいよ。話して遊ぼうか。


「あ・そ・ぼ・・・」


『おーい!ファイー!!あっそっぼっうっぜッ!!!!!!!!!!!』


光が消えた。


「ん、ぁ・・・・・・・・・へぶしッ!!!?」


ふと目を覚まし顔を上げると目の前に迫るサッカーボール。サッカーボールだと気付いた時には顔面にボールがクリーンヒットしていた。
ベンチの上で仰け反り、そのままベンチもひっくり返り後ろに倒れる。


「な、なんなんなんなんなんなんなんなん!?」


なんだ!?何が起こった!?僕サッカーボールと会話してたんだっけ!?
とっさのことに混乱してまともに喋れない。
青空が綺麗だ。あと顔が痛い。凄く痛い。

痛みを意識すると徐々に頭が覚醒してきた。
と、そこにカイルが走ってきた。


「ワリィワリィ、まさか気付かないとは思わなくてさー」


ハハハっと晴天のような笑顔でカイルは言う。

ふふふっと体を起こしながら僕もつられて笑った。
ただし僕の笑顔は冬空のように乾いていて冷たかっただろうが。

穏やかな日差しのなかで眠っていて、モーニングコールがサッカーボールとの顔面接吻だったら、
人はにこやかでいれるだろうか。いや、にこやかでいられない。殺意を抱くレベル。


「お・は・よ・う・ご・ざ・い・ま・すっ!!今日はいい天気だなぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


シュバッと手を伸ばし、カイルの額を掴む。
そしてそのまま力を込めギリギリと締めていく。


「あだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだだ!!!!!!」


カイルが涙目でもがく。
両手で僕の手を引き剥がそうとするが、僕の憎しみの右腕はそう簡単に剥がれない。

そうしてる内に、カイルは諦めたのか両手を僕の片手から離す。
・・・そしてその手を、僕の額へ突き出した!!


「な、なに!!フィンガー返しだと!!?カイル貴様、やるな!!」


カイルは涙目ながらもニヤリと強気な笑みを見せた。
口角が持ち上がり犬歯が覗く。


「ふ、フフ・・・そう簡単にくたばってたまるかっての!!」


いつの間にかフィンガー勝負に持ち込まれていた。
互いが互いの魂を指に賭け、力を込め合う。


「ぐッ・・・オオオォォォ・・・!!!!!!!」


「ぬッ・・・アアアァァァ・・・!!!!!!!」




◆◆◆



「あやつらなにしとるの」


「自分が馬鹿であるというアイデンティティの証明でしょう。ファイも巻き込まれて可哀想そうに」


「いや、ファイも馬鹿やっとるがな」


二階のテラスから一部始終を見ていたエルモアの呟きにシャオが答え、エルモアがまた呟く。
シャオはもう知らねェと言わんばかりに再び視線を本に戻そうとした。


「しかし、"空隙"が変化していたとな・・・?」


「ええ、今朝見たとき、昨日まで無かった色が"空隙"に付いていました」


「ふむ。魂の性質が変化するか・・・

どうもあ奴の力は不自然じゃ。まるで意図的にそう作られたかのような・・・」


「"空隙"からはかすかにマリーと同じ波動を感じました。恐らくファイのPSIを模倣する能力と関係しているのでしょう」


「変化する魂と変化する能力、か・・・

どうも嫌な予感がするんじゃが、これが予知にならなければええのう・・・」


「・・・万が一の為にこの家に置いて監視しているの、ですか?」


「それは違う。あ奴が記憶を取り戻す手助けになりたいと思ったのは偽りない本心じゃ。

それに、あ奴はもう家族じゃ。親が子の行く末を心配するのは当然のことよ」


「・・・・・・」


「そんな顔をするでない。ワシの予感など大したものでないわ。お前さんもあ奴と仲良くの」


そう言ってエルモアはテラスから室内へ戻っていった。


「空隙(ケイオス)のざわめきが、どんどん増していく…」


ファイを見つめての呟きに、答える者は居ない。



◆◆◆




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!もう埒があかねぇ!」


カイルが言い、手を僕の額から離す。
急に離されたのでつい僕も手を緩めてしまった。その隙をついてカイルがバッと距離を取る。


「ハア、別の、方法で決着を、ハア、付けようじゃねぇか・・・!」


「ほう、別の方法か。ハア、いいだろう、何を、ハア、するんだ・・・?」


お互い息がゼエゼエと荒い。
カイルが別の決着方法を示して来たので乗ってやる。


「ふ・・・コイツさ!!」


そう言って差し出したのはにっくきサッカーボールだった。


「・・・サッカー、じゃないな。何をするんだ?」


「"一対一飛球"(タイマンドッジボール)」


そのとき僕に電流走る。


「た、タイマンドッジボール…だと…!?」


「そうさ、これを互いにぶつけ合い、ヒットした後地面にボールを落としたら負け…シンプルだろ?」


「面白いじゃないか…!ルールはそれだけか?」


「それと、ラインは無し。エリアはこの家の庭全体。顔面はセーフ。

球はどちらがどこで拾ってもよし、つまり奪い合いだ。ビビんなよ?」


カイルが挑発的な笑みを浮かべる。


「ククク、上等じゃないか。そっちこそビビっておもらしするなよ?」


僕も自然と挑発が口をついた。
アレ、僕ってこんなキャラだっけ?まあいいや。今は頭に血が上ってるんだ。余計なことは考えない。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


静寂が両者間を支配する。
しかし、その間は目に見えない闘気で埋められていた。


『ッ!!!』


カイルがボールを空高く放り投げた。

戦いが、始まった。


先に動いたのは、僕だ。
上を見つめると太陽の光に目をやられるのは分かっている。
ならば!太陽の位置、ボールの影の位置から逆算してボールが降ってくる場所を導き出す!

僕は土を踏みしめ、予測ボール落下地点へと駆けだした。

カイルは・・・なにッ・・・!!?

嘲るような笑みを浮かべながらつっ立っている。どういうつもりだ・・・!?


「くくく、とんだお間抜けだナァ?……誰がPSIを使ったらダメだと言った!?」


そう言ってカイルは空へと駆け上がって行った。
ッ!!!クソッ!そういう事か!!
そう、これはなんでもあり。ただの"一対一飛球"じゃない!!


"超能力一対一格闘飛球"(サイキックバトルドッジボールロワイヤル)だ!!


カイルの能力は以前聞いていた。
空間に大気を超圧縮変換したPSIブロックを造り出す。


空間操作(ゾーン)系PSI 『マテリアル・ハイ』


それがカイルの能力。
クソッ!完全に失念していた!!


「ホラホラホラァ!気ィ抜いてるとあっという間に終わっちまうぜぇ!?」


カイルが球を上空でキャッチし、地に向かって投げつけてくる。
狙いは正確!だが、球速はそれほどでもない!十分に対応できる!!

体を捻り、ボールをかわす。

上から投げつけられたため、ボールはバウンドし、僕の手の届かない所まで再び跳ねる。
ボールが跳ねた先へは既にカイルが空を駆けて向かっていた。


僕は内心舌打ちをしていた。
このままでは、僕はボールを手にする事は出来ない・・・!僕に、出来るのか?いや、やらなければならない!

空がカイルに支配されているのなら、僕は陸を支配する!!

カイルが再びこちらへとボールを投げてくる。
またも狙いは正確!・・・・・・思わずニヤリと笑う。

狙いは正確、だからこそボールの落下地点が読める!


"テレキネシス 物体浮遊"!!


テレキネシスを放った先は、地面!
僕の未熟なテレキネシスでは高速移動するボールを上手く捕えられないかもしれない。だから、地面に。

力を抑えめに放ち、地面を浮かせるのではなく少しだけ隆起させる程度。
だが、角度は綿密に計算してある。

ボールが地面に着いた瞬間、本来あるべき反射角で跳ねる事は無かった。
イレギュラーな軌跡を描き、ボールは僕の手の中に収まる。

カイルが驚愕の表情を浮かべている。


「勝負はこれから、だよ?」


ボールの土を払い、僕は言った。



◆◆◆



エルモア・ウッド庭園。


「はぁ・・・」


「でね、この、トリに愛が語れるか!?ってセリフがね、ちょっとマリー聞いてるの!?

ここから最高に熱いとこなんだから!!」


フレデリカとマリーは庭園のベンチに座っていた。
せっかくの晴れた日なのでマリーは部屋の掃除や布団を干したかったのだが、運悪くフレデリカに捕まってしまっていた。
フレデリカは晴れだというのに外へ漫画を持って行って読んでいるという始末。


「はぁ・・・」


フレデリカは漫画に夢中でマリーの様子に気づかない。
何度目か分からない溜息を、マリーはついた。


「いいお天気・・・お布団、干したかったなぁ・・・」


「それでね、この主人公が狐を殴りつけるとこがね――・・・」



◆◆◆



「おらぁ!!!!!!!」


空へ向かってボールを投げる。
しかし、僕の投げる球速も大した事が無いため、上半身を捻じったカイルに簡単に避けられる。
そしてそれをカイルが追いかけキャッチ。

カイルが投げた球を、僕がギリギリまで読んでかわす。
そして地面を操り僕がキャッチ。

・・・このような事を長い間繰り返していた。
暫く勢いは均衡していたのだが、ある時流れが変わった。


「うおらぁ!!!!!!!」


僕はまた空へと、カイルへと向け投げる。その時!
急に射線上にブロックが生成された。ご丁寧に射線に対して面が垂直になるように調節されている。


「ッ!!!!」


反射された位置が近かった事、投げた後で体勢が崩れていた事などが原因で、避けられない!!!


「へぶしッ!!!?」


帰ってきたボールは僕の顔面へと吸い込まれた。
痛みで思わず後ろに吹っ飛ぶ。

今日ホントツイてないな・・・と思いながらすぐに体のバネを使って跳ね起きる。
顔面は、セーフだ!球はまだ生きてる!!

球を見ると僕の顔でバウンドした後、地面を転がっている。そしてカイルは・・・等距離・・・!!


『うおおおおおおおおおお!!!!」』


二人揃ってボールへ飛びついた。ズザザザと地を滑る。
ボールを手にしたのは、僕だ!

すぐさま体を起こしカイルの方へ向く。カイルは空へ駆けていた。
体の方向を変えてすぐ、狙いをしっかり定める間もなく投げつける。

そのスイッチの速さにカイルは驚いたようだが、狙いが出鱈目なのですぐに安心していた。
だが、それが命取りだ!!!


"テレキネシス ベクトル干渉"!!


出鱈目な方向へ飛んでいたボールが急に向きを変えカイルに迫る!


「なッ!?」


他人が投げたボールなら分からないが、自分が投げたボールならば速さ、向きなどが分かっているためテレキネシスで捕えられる。
そしてボールはカイルの後頭部にあたり、カイルは地に落ちてきた。

空を落とした!!!
だがしかし後頭部もセーフなのである。球は、やはり生きている!!

顔面から地に落ちたカイルもすぐさま復活し、ボールの行方を捜す。
だが、やはり僕の方が速い。

先に僕がボールにたどり着きそのまま陸に居るカイルに向かって球を渾身の力で投げつける。
さらに、テレキネシス ベクトル干渉でボールを後ろから押し、加速させる。

これで、チェックメイトだ!!!

ボールは、カイルの腹に叩き込まれた。
あまりの勢いにカイルはゴロゴロと後ろに転がって行く。


勝った・・・!


だが、終わってみれば何とも言えない空虚さが胸に渦巻いていた。
僕は、この戦いで何を得た?
むしろ、好敵手(ライバル)を失ってしまった…。カイル亡き今、僕はボールの矛先を誰に向ければいい?

ただただ、空しかった。
振り返ることなく、好敵手を見ることなく立ち去ろうとする。


「・・・待てよ。試合は、終わっちいゃねーぜ」


ピタリと歩みを止め、後ろを見ずに言う。笑みが作られるのを止められない。
考えられるのは、カイルが僕の球を、魂を受け止めきったという可能性。


「流石は、僕の好敵手」


「効いたぜ・・・魂の乗ったいい一撃だった・・・だが、俺の勝ちだ!!!!!」


カイルが叫ぶと同時にバッと振り返る。
正面なら、真正面なら、捕える事は出来なくても反らす事なら出来るかもしれない!

テレキネシス ベクトル干渉!!!


『うああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!』


二人揃って雄たけびを上げる。
・・・そして、ボールは僅かに反れ、僕の頬を掠めて後ろへ飛んで行った。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


再び静寂。両者に言葉などという無粋な物は要らないようだった。
魂を球に込め、魂をぶつけ合い、彼らは互いに認め合えた。


「ふふ、ふふふ!」


「はは、ははは!」


賛辞は要らない。称賛も、健闘を讃えあう事も、そしてもはや勝敗を決める事でさえも彼らには不要だった。
ただあるのは深い満足感。ただただ胸に満ちる喜びを彼らは味わっていた。


「楽しかったぜ、ファイ!」


「ああ、僕もだよ。カイル」


そして拳を突き合わせる。それで十分だった。

と、そこに。


「本当に・・・・・・野蛮人どもが・・・」


僕とカイルの二人がとてつもない殺気を感じ、声のした方を向く。

向いた先にはフレデリカが佇んでいた。その身から漏れる膨大な殺気。
PSIも漏れ、周りに火花が散り始めている。


「お、落ち着け!フレデリカ!一体どうしたってんだ!!」


カイルが焦燥の表情で言う。声は僅かに震えていた。


「どうしたもクソも無い。お前ら覚悟出来とんのやろなああああああああああああああああああああああああ!!!!」


手にはサッカーボール。
顔面に付いた跡から察するに、僕が反らしたボールは後ろにいたフレデリカの顔にクリーンヒットしたようだ。
あのサッカーボール、顔面に当たる呪いでも掛けられてるんじゃないのかな。


「ま、マズイ!関西弁だ!!おい、ファイ!逃げるぞ!!黒こげにされちまう!!」


「あ、あれがフレデリカの関西弁・・・!確かにマズイ!!」


事前にフレデリカが切れると関西弁になることは聞いていたが、じかに見るのはこれが初めてだった。
黒こげにされるのは嫌なのでカイルと一緒に一目散に駆けだす!


「逃がすかあああああ!!ボケェェェェェェェェェェエ!!!!!!」


サッカーボールが炎に包まれ、必殺の弾丸と化した。
そして着弾。盛大な火柱が上がり、僕とカイルは仲良く吹っ飛ばされたのだった。

レアくらいの焼き加減となった僕は、胸に熱を覚えていた。
フレデリカの炎じゃない熱。元気な気持ちになれそうな熱だった。

そして、熱が引いた時、僕はマテリアル・ハイの扱い方を本能的に理解していた。




続く


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