「早朝で人通りがなかったから良かったものの、もし人に見られてたら大事になってましたよ」
「いや、面目ねえ。つい熱くなっちまって」
テレキネシスを用いて石の山から少しずつ石をばらして河原に戻す。
新しいアロハシャツに着替えたアロハさんは僕の数倍の効率で後片付けをしている。
あのコートの男が気絶したことで振りまかれていた冷気が収まり、日が昇ってくるにつれていつも通りの気温に近づいていった。
男は未だに伸びていてその辺に転がしてある。
見れば見るほど暑苦しい格好であった。直視すると暑さの幻想が体を駆け抜け、全身が痒くなってきそうだったので、
男を視界に入れないようにして石を戻す作業を続ける。
「もう少しで新聞の一面飾りそうだったんですから。そこのとこ分かってます?」
「分かってるって。しつけーなお前も」
「ったく、あんな大っぴらに能力使いやがって。
こんなこと前に言われた気がするんですが。あ、今の似てませんでした?」
「うっぜーな!ちょっと似てるのが余計腹立つ!
大体、コイツがいきなり攻撃してくるのが悪いんじゃねえか。正当防衛ってやつだろ」
「それにしたってですね、もうちょっと目立たないようなやりようがあったんじゃないですか。
こんなでかい石の山とか作らなくても」
「うるせえ。コイツが悪いの!俺は悪くないの!」
「ぐふっ」
そう言ってアロハさんは男に石を飛ばした。
石は男の後頭部に当りバウンドして飛んでゆく。男は小さい呻き声を上げると再び沈黙した。
「とりあえず、人が来る前に後片付けしてしまいましょうよ。
ふて腐れてないで手を動かしてください。僕がやるより効率いいんですから。あとこれ終わったら話聞かせて貰いますよ」
駄々をこねるように作業を止めたアロハさんに向かって言う。
渋々ながらも作業を再開する。やはり、とんでもないテレキネシスであった。
陽が突き刺さり頭が熱い。暑いじゃなくて熱い。
なんでこんな事を僕はしているんだろうか。あの人はアロハさんを狙っていたみたいだし、僕は無関係の筈なのだけれど。
考えるとモヤモヤした気分になってくる。空が青いのにも腹が立ってきた。
そういえばどうして空は青いんだろうか。分からない事にも腹が立つ。
「あ」
そんな余計な事を考えていたら、集中が切れて運んでいた大きめの石を落としてしまった。
あの男の頭上に。
ごすん、と鈍器で人を殴ったかのような鈍くて嫌な音が鳴った。
男の頭の周辺には赤い水たまりが形成されようとしていた。
「「・・・」」
沈黙が僕とアロハさんの間を満たす。
ついでにあの人も沈黙している。させたと言った方が正しいけれど。
粘ついた汗が背筋を流れた。
「エグイな」
「・・・この人が攻撃してきたのがそもそもの発端ですよね」
「そうだな。こんな派手にやらかしちまったのもコイツのせい、頭が噴水みたいになってるのも自己責任だ」
「・・・片付け、終わらせましょうか」
「ああ・・・」
二人して空を見上げる。
どこまでも青くて遠いあの空には男の人の笑顔が浮かんでいるような気がしたけど、別にそんな事はなかった。
――・・・
「・・・で、結局この人何なんですか?
アロハさんと同じ境遇って事は聞きましたけど、攻撃してくる理由が分からないんですが」
河原を元に戻す作業も一段落し、休憩がてら足を川の流れに浸して涼みながらアロハさんに尋ねる。
「そうだな、昨日俺が機関から逃げ出した事は話しただろ」
アロハさんはキャンプの片付けをするためにテントの中に頭を突っ込み、荷物を整理しながら答えた。
「はい。それで追われる身になったんですよね」
「ああ、それで機関は俺を追う為に他の実験体だった奴らを使ったんだ。
まあ餅は餅屋、化け物には化け物ってことだ。で、その実験体ってのがコイツなんだ。
因みに俺が01号でアイツが03号。名前は無いから好きに呼んでやってくれ」
「え!?じゃ、この人追手なんですか!?」
「まあ聞け」
一瞬攻撃してきた理由を推測して納得しそうになったがアロハさんの制止の声が掛かった。
テントから顔を出し、ついでに荷物も引っ張り出しながら話を進める。
「一応アイツ、03号も昔は刺客やってたんだがな。
一度俺にボコボコにされて目が覚めたらしい。それで機関を抜けて、それ以来俺に付きまといやがる。
今じゃ立派なストーカー野郎だ」
「つまり実験体から刺客に、刺客からストーカーに転職して今はフリーのストーカーって事ですね?」
「そう言うことだ。ま、03号も追われる身って境遇は俺と変わらんな」
「でも、じゃあ何でフリーのストーカーになった今でも攻撃してくるんですか?愛情表現とかですか」
「もし愛情表現だったりしたら気持ち悪すぎてうっかり息の根止めちまうかもしれねえな。
ま、ホントのとこは俺がコイツのことをポンコツ実験体って呼んだのが気に食わなかったらしい。
自分がポンコツじゃねえって証明するために俺に喧嘩売ってきてんだとさ。どうせ勝てないんだから止めときゃいいのに」
そう語るアロハさんは別段嫌そうな表情をしてはいなかった。
普通の人間というのに壁を感じてしまうアロハさんにとって、この男の人は真正面から関われる唯一の人だったのかもしれない。
だから初めにダチと表現したのだろうか。
「そういう事だったんですか。
じゃ、やっぱり僕が巻き込まれたのは完全にとばっちりだったって事ですね」
そう言ってチラリと男の人を見る。
出血は止まったようで、新しく血が流れる事は無かった。
凍りつかせられたのと岩石落とし、痛み分けだったと言うことにして自分を納得させた。
足を流れから取り出し、男の人の額に乗せてあるタオルを交換しに向かう。
ペットボトルの水でタオルを濡らし、再び額に乗せようとしたところで男の人がモゾリと微かに動いた。
瞼も僅かに動いている。もうすぐ目が覚めるのかもしれない。
それにしても、自分が自分であると証明するモノ、名前。
それが無いのはどんな気持ちなのだろうか。
いや、僕もエルモア・ウッドに行ったばかりの頃、名前を忘れていたんだった。
酷く不安。致命的な何かが足りないような気持ち、そんなだった筈だ。
この人が同じように感じたかは分からないが、持つのは良い感情ではなかったのではないだろうか。
アロハさんはこの人を03号と呼ぶ。一応人と関わる為に働いてはいるが、03号というのはあまりに記号的過ぎると思う。
だから。
「・・・っく」
そして男の人の瞳がゆっくりと開けられた。
「あ、起きましたか、マフラーさん。大丈夫ですか?」
「キミは・・・」
「おう、目ぇ覚めたか、03号。調子はどうだ?」
アロハさんが荷物の整理を終わらせこちらに向かって来た。
「01号・・・ああ、僕はまた負けたのか。・・・なんだか頭が凄くズキズキしてるんだが」
「災難でしたね・・・まさかアロハさんがあんな滅多打ちにするなんて。
当たり所が悪くなかったみたいで良かったです」
「オイ、なに人に責任なすりつけてんだ。はったおすぞ。
あとなんだマフラーさんって。アロハといいもう少しまともな名前考えられねーのかよ」
「アロハさん・・・?01号の事か?
それとキミは?普通の人間じゃないみたいだが、どうして01号と一緒に?」
「えと、まあ通りすがりのサイキッカーといいますか。ファイっていいます。
そこの人とは昨日知り合った関係で、晩ご飯と寝る所貸して貰っただけです。
あ、お二方の事はアロハさんから聞きましたからどうぞお気兼ねなく」
「オイ、無視すんじゃねーよ。寂しいじゃねーか」
「ああ・・・そうか。巻き込んで悪かった。
01号との戦いに邪魔を挟みたくなかったんだ」
マフラーさんが体を起こしながら言う。
こうしてアロハさんと並んで立つと随分小柄だという事が分かった。
それでも子供の身長の僕からすれば十分に大きく見えるのだけれど。
「それは、もういいんです。色々ありまして。
それよりどうしてマフラーさんはここに?」
「マフラーさん・・・僕の事か・・・?
昨日この辺りで01号のPSI反応を感じたから、偶々さ。戦った理由は、もう聞いたんだろう?」
「ええ、概ね」
なんだか疲れた目をしていた。まるで高い壁を、果てしない道のりを目の当たりにしたかのような。
アロハさんと戦うことで自分が否定されるのを否定しているように僕の目には映った。
マフラーさんがアロハさんと戦う事は、マフラーさんにとって自分という存在の証明なのかもしれない。
「オイ、泣くぞ?そろそろ泣くぞ?」
横でさっきからなんだかアロハさんが煩い。
アロハさんの方を見ると本当に全身からなんらかのマイナスなイオンが出ていた。
「なんですかさっきから。いい年していじけないでくださいよ」
「あれ?ナチュラルに酷い。
・・・まあそれはともかく03号、喧嘩ふっかけてきた分の謝罪くらいしろよ。お前負けたんだし」
アロハさんがすっぱりと話を切り替えた。引きずる人かと思ってたがそうでもないみたいだ。
繊細なんだか豪快なんだか。
「フン、どうして僕が謝らなくちゃいけないんだ。僕は謝らないぞ」
「謝罪の言葉なんか腹の足しにもならねーよ、誠意見せろ誠意。アレだ、朝飯奢れ」
「もっとお断りだ!大体なんで僕がアンタと食事を共にしなくちゃいけない!」
「お前負けただろ。敗者はおとなしく勝者の言う事に従うもんなんだよ。昔どっかの偉いおっさんが決めただろーが」
真面目な顔でアロハさんが言っている。
言っていることはなんとも大人げない気がするが、そこはスルーすべきなんだろう。
「・・・ッくそ!二百円までだからな!!それ以上は自腹だぞ!」
「どんだけケチくせーんだ!せめて千円くらいいいだろ!!」
「いいわけないだろ!アンタ僕の懐事情知らないからそんな事言えるんだ!!」
「知らねーよ。いいから寄こせ!」
「あッ!?」
アロハさんがテレキネシスを使ってマフラーさんから財布を取り上げた。
どこぞの国民的ガキ大将のようだ。
「さーて、中身はどんなモン・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・その、なんだ、スマン俺が悪かった。財布までポンコツだとは思わなかったんだ」
「ポンコツ言うな!!」
大人二人がさっきからアホらしいやりとりをしている。
僕は蚊帳の外だが全く寂しくない。むしろ僕を巻き込まないでほしいと心から思う。
相変わらず空が青い。暑くなってきてるし帽子被らなきゃ。帽子どこやったっけ。
「仕方ねぇ。五百円で我慢するか。
オイ、ファイよかったな、タダ飯食えるぞ」
「え?」
急に意識が現実に引き寄せられた。
帽子をどこにやったかから始まって、人はどこから来てどこへ行くのかという疑問に発展していたところなのに。
「ちょっと待て!なんでこの子の分まで僕持ちなんだ!しかも二人合わせて千円じゃないか!ふざけるな!!」
「ごちゃごちゃ言うなうるせえ。もう決まったんだよ。
ホラ行くぞ、飯食うとこ探さなきゃならん」
「あ、はい分かりました。荷物取ってきます」
なんだかよく分からないがマフラーさんががっくりとうなだれていた。
どうでもいいか。我思う故にはらへり。今大事なのは、お腹が空いたという事だ。
◆◆◆
「五百円じゃ食えるもんあんましねーなァ」
メニューに顔を突っ込みながらアロハさんが呟く。開いていた店を適当に見つけて入ったのだった。
筋骨隆々の大男に、夏なのに全身耐寒装備の男、頭が白くて顔に刺青の入った子供と人目を引きそうなフルコースだったので、
まだ朝の時間帯で人が少なかったのはありがたかった。
「贅沢言うな!僕は半ライスと水で我慢するんだぞ!!」
さっきからこの人お冷をおかわりしまくっている。水で腹を満たすつもりなのだろうか。
アロハさんがお絞りで手だけでなく上腕辺りまで拭いていた。オッサンかくあるべしといった様である。
色々と疲れるだろうから、僕はもう二人のやり取りに口を挟むのを諦めた。そしてメニューと睨めっこ。
「・・・じゃ僕このモーニングセットってので」
「ちょっと待て!それ五百円超えてるぞ!」
即座にマフラーさんが反応してくる。
よくみると些か、本当に些か五百円をオーバーしていた。
「たかが十数円だけだろ・・・」
アロハさんが呆れ成分を口調に含ませ言う。なんだかこのままでは埒が明かない気がしてきた。
そこでふと思いついた。
「・・・あの、僕お金に困ってはないんで朝食代くらいなら僕が出しましょうか?」
「「え!?」」
二人が一斉にこちらを見る。
四つの瞳に睨まれて少し圧倒された。瞳がギラギラしていた事もある。
「・・・ホントに?」
「ええ」
「・・・・・・ホントにホント?」
「構いませんって。と言っても僕だって貰ったお金なんでそんなに無駄遣いはアレですけど…」
そう言うとギラギラしていた四つの瞳の半分が死んだ魚のような目に、もう半分はよりギラギラに。
ギラギラし過ぎて怖い。そんなに血走っている目で見つめないでほしい。
「子供に飯奢ってもらう大の大人の男二人って…死にたい……俺ステーキセットで」
「メニューのここからここまでで!」
「ああ遠慮とかはないんですね、分かります。将来こんな大人にはなりたくないです」
結局なんだかんだ言いながらアロハさんは一番高い物を頼んでいたし、マフラーさんは論外だった。
・・・まあいいか。もともとお婆さんに全額出世払いで返す予定だったし、返す量が少し増えただけだ。
それに、この騒がしさはエルモア・ウッドを思い出し、なんとなく嫌じゃなかった。
「ああやっぱりこれも追加だ!」
「ドリンクバーって持ちかえりアリか?ポリタンクならあるんだが。
・・・え?ダメ?なんだケチくせえな」
「はあ・・・」
でもやっぱり溜息が自然に出てしまうのは、仕方が無いんじゃないかなと思った。
◆◆◆
トラックが砂埃を巻き上げながら疾走している。
前日の深夜に実験体06号が施設を破壊し、脱走。
施設及び、施設の警備員含む職員は06号の手に掛かり、ほぼ壊滅状態。
そんな中ででも脱走した06号を捜索し、そして始末するための部隊が急遽編成された。
実験体06号が外に出てどういった行動を取るかは不明だが、施設での虐殺を見る限り外でも凶行に走ると思われた。
尚且つ政府は異能力者の存在、そしてそれに纏わる機密研究組織の存在を明るみに出したくない。
それ故に一秒でも早く06号の行方を捕捉しなければならないという焦りが政府にはあった。
しかし、騒動が起きたのが深夜だった事や、施設内にいた異能力者の対処法を知る者達が殺された事で混乱し、
捜索の開始が遅れてしまっていたのだった。
実験体06号の行方は知れず、完全に後手に回るしかなかったが、そんな中今日の未明正体不明の大規模なPSI反応を神奈川方面から感知。
逃亡した実験体06号の可能性が高いと見て、部隊が反応のあった周辺に派遣された。
06号には捕獲命令でなく、見つけ次第即射殺せよという完全抹殺命令が出されている。
緊張が高まりつつあった。
そして今、その場所へトラックが辿り着こうとしていた。
――・・・
「行っちゃいましたね。マフラーさん。随分あっさりしてましたけど」
「いいんだよ、アイツはあれで。どうせまたいつかフラッと俺の前に現れるさ。
それが追われる身になってまで決めたアイツの生き方らしいしな」
店を出ると、マフラーさんがここで別れると言い出した。
なんでもまた力を付けるために旅をするらしい。
『僕は力を付けて戻ってくる、必ずだ。次こそは負けはしない』だ、そうだ。
自分を否定するモノを否定する。
そうして自分が存在する事を周りに認めさせる。それはある意味ではとても真っ直ぐな生き方に思えた。
自分が認めるモノを認めさせる。
確固とした『自分』を持っていないと出来ない生き方。
それが少し、羨ましかった。
「お前はどうすんだ?」
荷物を背負いなおし、歩みを進めながらアロハさんが尋ねてくる。
「探し物、探します。
今のところ、それが僕の生き方みたいなんで」
僕も歩いていた。大柄なアロハさんと並んで歩くと少し早足になる。
「そうか。
じゃ、一緒に行くか?俺も見つけたいモンがあるしな」
「・・・いいんですか?一緒に行ったら回り道になるかも知れませんよ?」
「それもいいんじゃねえか?どうせ明確な行き先なんかないんだしな」
あっけらかんとアロハさんは言った。
その言葉に、繋がりが保たれることに安堵した自分がいた。
難しい事はよく分からないが、誰かの言葉を借りるのなら、人は一人では生きていけないというやつだろうか。
「じゃあ、喜んで。これからよろしくお願いします、アロハさん」
「おう、よろしくな。じゃ、行くか」
「はい」
―その時、数台のトラックが横を通り過ぎて行った。
「・・・ッ今のは!」
「どうかしたんですか?」
通り過ぎて行ったトラックを見た瞬間、アロハさんの表情が一気に険しくなった。
出逢ってまだ短い間にも色んな表情を見せたアロハさんだが、こんなに険しい顔をしているアロハさんは初めてみた。
なんだか、嫌な予感がした。
気になってトラックが通り過ぎ去った方向を見ようとした。
しかし、それよりも早くブレーキがかかる甲高い音がした。
続いて扉を開ける音と人が中から出てくる音。
出てきた人たちはこちらを見ている。いや、正確にはアロハさんを見ていた。
通信機を取りだしてどこかに連絡する者もいた。
「・・・やっぱ、ここで別れた方がいいか」
アロハさんが微かな声で呟いた。
「え?」
トラックの方から音がしてそちらを見る。
通信機で連絡していた人は通信を終えていた。そして、代わりに銃をその手に握っていた。
その人だけでない。他の人達もそれぞれそれ銃を手にしていた。
「まさか!?あれって!?」
アロハさんを見る。
「ああ。御察しの通りだろうよ・・・クソッ!なんで今になって!!」
あれがアロハさんの言っていた機関の追手なのだろうか。
嫌な予感が急に現実のものとなって目の前にあった。
「・・・これは俺のゴタゴタだ。お前が付き合う義理はねぇ」
「でも、」
「早く行け。お前には関係ない事だ」
いや、それよりももっと嫌な感じがしたのはこれか。
せっかく出逢えたのにもう別れだなんて、それが一番嫌だ。
「・・・よろしくって、言ったじゃないですか。一緒に行くって約束したじゃないですか!
なのにこんなのって!!」
目が覚めてから、初めて感じる感情だった。
ああ、そうか。これが怒るって事だったか。
他にも悲しいとか、色んな感情が入り乱れて胸がごちゃごちゃしていた。
「だからって、」
「逃げましょう。逃げ切れれば何の問題もないんですよね。
だったら、行きましょう!今直ぐ!!」
あの人達が銃を構えた。
だけど、関係のない僕がアロハさんの傍にいる以上、直ぐには撃って来ないだろう。そう信じたい。
「・・・ああ、クソッ!!!」
「わっ!」
アロハさんが僕を腋に抱えた。あの人達の間に動揺が広がる。
人質を取ったかのようにでも見えるのだろうか。
「・・・舌、噛むなよ」
そして、アロハさんは駆けだした。
続く