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No.17694の一覧
[0] 聖闘士星矢~ANOTHER DIMENSION海龍戦記~[水晶](2013/09/09 21:34)
[1] 第1話 シードラゴン(仮)の憂鬱[水晶](2011/03/19 11:59)
[2] 第2話 聖闘士の証!エクレウスの聖衣の巻[水晶](2011/03/19 12:00)
[3] 第3話 教皇の思惑の巻[水晶](2010/11/02 23:03)
[4] 第4話 シャイナの涙!誇りと敵意の巻[水晶](2010/04/23 01:43)
[5] 第5話 宿敵との再会!その名はカノン!の巻[水晶](2011/01/21 12:17)
[6] 第6話 乙女座のシャカ!謎多き男の巻[水晶](2010/04/23 01:48)
[7] 第7話 新生せよ!エクレウスの聖衣の巻[水晶](2010/04/23 01:50)
[8] 第8話 その力、何のためにの巻[水晶](2010/04/23 01:54)
[9] 第9話 狙われたセラフィナ!敵の名はギガスの巻[水晶](2010/04/23 01:56)
[10] 第10話 天翔疾駆!対決ギガス十将の巻[水晶](2010/04/23 01:59)
[11] 第11話 黄金結合!集結黄金聖闘士の巻[水晶](2010/04/23 02:01)
[12] 第12話 ぶつかり合う意思!の巻[水晶](2010/05/12 22:49)
[13] 第13話 海龍戦記外伝~幕間劇(インタールード)~[水晶](2010/07/30 11:26)
[14] 第14話 激闘サンクチュアリ! 立ち向かえ黄金聖闘士(前編)の巻 8/25加筆修正[水晶](2011/01/22 12:34)
[15] 第15話 激闘サンクチュアリ! 立ち向かえ黄金聖闘士(中編)の巻[水晶](2010/08/26 03:41)
[16] 第16話 激闘サンクチュアリ! 立ち向かえ黄金聖闘士(後編)の巻  ※修正有[水晶](2010/09/29 02:51)
[17] 第17話 交差する道!の巻[水晶](2010/10/26 14:19)
[18] 第18話 千年の決着を!の巻[水晶](2010/11/19 01:58)
[19] 第19話 CHAPTHR 0 ~a desire~ 海龍戦記外伝1015 [水晶](2010/11/24 12:40)
[20] 第20話 魂の記憶!の巻[水晶](2010/12/02 18:09)
[21] 第21話 決着の時来る!の巻[水晶](2010/12/14 14:40)
[22] 第22話 邪悪の胎動!の巻[水晶](2011/01/18 21:12)
[23] 第23話 CHAPTHR 1 エピローグ ~シードラゴン(仮)の憂鬱2~[水晶](2011/03/19 11:58)
[24] 第24話 聖闘士星矢~海龍戦記~CHAPTER 2 ~GODDESS~ プロローグ[水晶](2011/02/02 19:22)
[25] 第25話 ペガサス星矢! の巻[水晶](2011/03/19 00:02)
[26] 第26話 新たなる戦いの幕開け! の巻[水晶](2011/05/29 14:24)
[27] 第27話 史上最大のバトル!その名はギャラクシアンウォーズ!の巻 6/18改訂[水晶](2011/06/20 14:30)
[28] 第28話 戦う理由!サガの願い、海斗の決意!の巻[水晶](2011/06/20 14:30)
[29] 第29話 忍び寄る影!その名は天雄星ガルーダのアイアコス!の巻[水晶](2011/07/22 01:53)
[30] 第30話 激突!海斗対アイアコスの巻[水晶](2011/09/06 03:26)
[31] 第31話 謎の襲撃者!黒い聖衣!の巻[水晶](2011/09/08 03:15)
[32] 第32話 奪われた黄金聖衣!の巻[水晶](2011/09/16 09:06)
[33] 第33話 男の意地!の巻[水晶](2011/09/27 03:09)
[34] 第34話 今なすべき事を!の巻[水晶](2011/11/05 03:00)
[37] 第35話 海龍の咆哮、氷原を舞う白鳥、そして天を貫く昇龍!の巻[水晶](2012/04/23 00:54)
[38] 第36話 飛べペガサス!星矢対ジャンゴ!の巻※2012/8/13修正[水晶](2012/08/13 00:58)
[39] 第37話 勝者と敗者の巻[水晶](2012/08/13 04:15)
[40] オマケ(ネタ記載あり)[水晶](2011/11/05 14:24)
[42] オマケ 38話Aパート(仮)[水晶](2012/09/24 23:39)
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[17694] 第5話 宿敵との再会!その名はカノン!の巻
Name: 水晶◆1e83bea5 ID:30aca1a0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/21 12:17
「エクレウス(子馬座)の聖闘士――海斗か」

 そう呟き、奴が一歩を踏み出した。

「聖闘士になりたてのヒヨッコが、聖衣を得た事で思い上がり、ハネッ返って見せた。そう言ったところか?」

 その瞬間――

「がッ!?」

 全身に、まるで巨大な壁を叩き付けられた様な衝撃を受けて、俺は吹き飛ばされていた。
 奴の繰り出した左拳の一撃だ。
 その拳速は、黄金(ゴールド)聖闘士である師アルデバランのそれに勝るとも劣らない。
 
 聖闘士の基本として、青銅(ブロンズ)聖闘士はマッハ1の速度で動き、秒間に百発近い拳を繰り出す。
 その上位である白銀(シルバー)聖闘士は、マッハ2~5の速度を持つ。
 青銅と白銀、この時点で既に埋め難い差があるのだが、黄金のそれは全てを超越する。
 光り輝く黄金聖衣を纏う彼らの早さは――光速。
 光の拳と光の鎧を持ち、光の速度で活動する究極の聖闘士。

 マッハを超えた光速の拳。
 それを振るう奴の力は、まさしく黄金聖闘士に匹敵していた。

「ぐっ!」

 身体を捻り体勢を立て直す。
 聖衣が軋みを上げている。
 まだ持てよと、俺は着地と同時に左右の連打を繰り出した。

「フッ……しかし青銅如きに本気になろうとしたオレも大人気無かった」

 奴はまるで意に介した様子も無く、僅かな動きだけで俺の繰り出す拳を避ける。

「そうだな、この左拳一つで相手をしてやろう」

 その言葉通り、奴は避けるのを止め、左手一つで俺の繰り出す連打を全て捌き始めた。

「ほう、なかなか速い。それに威力もある。成程、これならば思い上がるのも無理は無い。白銀の中でもこれ程の使い手は多くは無いだろう」

「今世の海闘士は随分と詳しいんだな、聖闘士の事を!」

 バシンと、音が響いた。

 俺の右拳が奴の左手に受け止められ――

 奴の右拳を俺の左手が受け止めていた。

 そのまま俺達は視線を逸らす事無く睨み会う。

「……お前は――何者だ?」

「海闘士の敵なら聖闘士だろう? 聖闘士の敵なら――海闘士だ」

「……!!」

 俺の言葉に奴はその意味を悟ったのだろう。
 奴に僅かな動揺が見えた瞬間、俺は抑えつけていた小宇宙を解き放ちそれを――爆発させた。

「なッ!? 何だこの小宇宙は!?」

 マスク越しでも奴の驚愕が分る。
 前世のオレを殺した男と、この目の前の男が異なる存在だと頭では理解していても感情は別。

「オレの仇を取らせて貰う」

 奴には俺が何を言っているのか分らないだろうが、これは俺自身の区切りだ。
 この期に及んで隠す必要は無い。
 俺は、この生に於いて初めて己の小宇宙を極限にまで高めた。

 俺を中心に螺旋を描いて吹き上がる小宇宙。
 激流となって立ち昇るその流れから奴は逃れようとしたが、その手を俺が掴んでいる為にそれも出来ない。

「チッ!」

 この場から逃れるのは無理と判断したのだろう。
 奴の左拳が俺の顔目掛けて放たれる。
 だが、その一撃は届かない。

「拳が……弾かれるッ!? か、身体が捻じれっ、こ、これは!?」

 小宇宙の激流が生み出す巨大な竜巻。
 破壊の螺旋に巻き込まれた奴の身体を引き裂かんと激しさを増す。

「シードラゴンを名乗るつもりなら知っておけ。これが――」

 海将軍(ジェネラル)シードラゴンに伝えられる必殺の拳。
 力場に捉えられた奴の顔が苦痛に歪む。

「ぐっ!? こ、この、これしきでッ!! この程――ぐ、ぐわぁああっ!?」

「本物のシードラゴンの技――ホーリーピラーだ!!」

 奴の叫びと共に、俺は小宇宙を爆発させた。





 第5話





 打ち寄せる波の音が聞こえた。

 足下に水の流れを感じて、俺は自分の意識が飛んでいた事に気が付いた。
 急激な小宇宙の消耗によって気を失っていた様だ。

「奴は?」

 周囲を見渡すがそられしき姿も気配も無い。

「倒した……倒せたのか?」

 一切の手加減なし。全力で放った一撃だ。
 どうであれ無事に済んだとは思えない。
 とは言え、その反動で気を失うようでは。

「まだ制御が甘い、か」

 想像以上に高まりを見せたからと言って、己の小宇宙に振り回される様では師匠に未熟と笑われる。

「……さすがに、今のは聖域に気付かれたか?」

 掟により、聖闘士は聖衣を纏っての私闘は禁じられている。
 奴との戦いは、確かに私闘ではあったが、聖闘士と海闘士の戦いでもあった。
 これは屁理屈ではあるが事実だ。
 問い質されても困る事は無いが、面倒な事に違いは無い。

「それにしても、よく持ってくれた」

 そう呟いて聖衣に触れる。
 聖衣はただ身を守る為のプロテクターでは無い。
 持ち主の精神と力に呼応して、その小宇宙を高める力がある。
 青銅から白銀、そして黄金と、位が上がる毎にその効果は顕著だと言う。
 海将軍である俺の力を受け止めきれるか不安もあったのだが、聖衣は見事に応えてくれた。

「シャイナ辺りが戻ってきそうだな。誰かが来る前にさっさと――」

 戻るか、と。
 そう呟きこの場を離れようとした俺だったが、突如感じた巨大な小宇宙にその足を止めた。



「謝罪しよう、たかが青銅、たかが聖闘士と侮った事を」



 その声に俺が振り返れば、そこにはゆっくりとこちらに歩み寄る人影。
 シードラゴンの鱗衣を纏ったあの男。
 纏った鱗衣には亀裂が奔り、その身体は確かに傷を負っていたが、感じる小宇宙に衰えは無い。

「ここは聖域に近い。今はまだ我らの動きを気付かれては困る。お前にも聞きたい事があったからな。そう思い手を抜いていたが」

 奴の拳が放たれる。
 俺も一撃を放つ。
 互いの一撃がぶつかり合い――弾けた。

「どうやら――そうも言ってはおられん様になったな」

「……ホーリーピラーの直撃を受けて……無事だったのか!?」

「フッ、無事では無いぞ。恐るべき威力だった。見ろ、黄金聖衣に匹敵するこの鱗衣がこれ程迄に破損をしている。相手がオレでなければ倒されていただろうな」

 奴の小宇宙が急速に高まるのを感じる。
 このままでは拙いと、俺は直感に従い拳を放つ。

「エンドセンテンス!」

 描かれた四角形より放たれる波動が奴目掛けて襲い掛かる。

「青銅の身で、いや海闘士でありながら小宇宙の真髄『セブンセンシズ』に目覚めたのか」

 しかし、その一撃が奴を捉える事は無かった。

「何!?」

 奴が突き出した両手の前に、破壊の波動が受け止められていた。

「海斗と言ったか。認めよう、お前の力は黄金に匹敵する。その力に敬意を表し、オレの名を教えてやろう。カノンだ、今からお前を殺す男の名よ」

 俺の脳裏に『あの時』の光景が浮かぶ。
 この流れは拙い、と。

「お前の纏う聖衣が青銅では無く黄金であればどうなっていたかは分らん。だからこそ、お前という存在はオレの野望にとって大きな災いとなるだろう」

 奴――カノンの小宇宙にエンドセンテンスの力が呑み込まれ、突き出された両手に尋常ではない程の小宇宙が集束して行くのを感じた。

「聖域に気付かれるかも知れんが最早構うまい。お前は今、この場で倒さねばならん敵だ!」

 空間が歪んで見える程に凝縮された小宇宙。
 それを宿した両腕を、カノンがゆっくりと掲げる。

「受けよ、銀河の星々すら砕くこの一撃を!!」

 俺はこの時、カノンの小宇宙に広大な銀河の星々を見ていた。

「くっ、エンド――」

 俺が技を繰り出すよりもカノンの方が早い。

「ギャラクシアンエクスプロージョン(銀河爆砕)!!」

 打ち合わされるカノンの両手。
 限界まで凝縮された小宇宙がぶつかり合い爆発を起こし、それはまさに銀河の星々すら砕く破壊の奔流と化し俺を目掛けて襲い掛かった。
 圧倒的な奔流の前に、俺は耐える事が出来たのはほんの一瞬だけだったのかもしれない。

「ぐ、くぅう!! が、あああああぁ……!!」

 亀裂が奔り砕けて行くエクレウスの聖衣が見える。
 薄れ行く意識の中、すまないと、俺は聖衣に詫びた。





 砂浜に力無く倒れ伏した海斗の前で、カノンは膝をつき荒い呼吸を繰り返していた。

「聖衣も肉体も残ったか。しかし――」

 オレでなければ倒されていた、そう言った言葉に嘘は無かった。
 海斗の放ったホーリーピラーはカノンの身体に大きなダメージを与えていた。
 万全の状態で放たれたギャラクシアンエクスプロージョンの前では、全ては塵芥と化してもおかしくはない。
 それ程の力を秘めた正しく必殺の技であったのだ。

「……恐るべき小宇宙であったが、オレの方が上だった。力も技も経験も、だ」

 そう漏らしたカノンであったが、ピクリと、僅かながらも海斗の身体が動いた事に気が付いた。

「まだ息があるか。せめてもの情だ、この場で止めを刺してやろう」

 手刀の形とした腕をゆっくりと振り上げる。
 狙いは海斗の首。

「お前が何者であったのか、出来れば知りたくもあったがな。……さらばだ」

 振り下ろされる手刀。
 それが海斗の首に触れようかというその時だった。

「貴方は一体何をしているのですか?」

 静かでありながら凛とした声に、カノンは動きを止めた。
 振り下ろされた手刀は、海斗の首の薄皮一枚を切り裂いたところで止まっていた。

「……セイレーン(海魔女)のソレントか」

 手刀を解き立ち上がる。
 カノンが振り返った先には七人の海将軍の一人、セイレーンを司る海闘士ソレントが鱗衣を身に纏い鋭い視線を向けていた。

「地上に出るのは構わん。しかし、どうしてお前が鱗衣を纏い此処にいる?」

「それはこちらのセリフですよ、シードラゴン。まだ動く時では無いと、我々に力を振るう事を禁じた貴方が鱗衣を纏い外に出た」

 それにと、ソレントはその視線を聖域へと向ける。

「この地はあまりにも聖域に近過ぎる。貴方のその姿から何があったのかは想像出来ますが、だとするならば我々の存在を気付かれた恐れもある」

 ソレントは海闘士として覚醒するまでは世界でも有名な音楽生であり、彼が奏でるフルートの美しく澄んだ音色は聞く者の心を癒す奇跡の音色と賞賛されていた。
 彼はおよそ戦いには向かない穏やかな心の持主であったが、海闘士としての使命に対する姿勢は誰もが認める程に強い。

 問い質す様な視線、その言葉に含まれる怒気を感じ、厄介な奴に気付かれたとカノンは内心で舌打ちをしていた。

「……この男は海闘士でありながらアテナの聖闘士となった我らの裏切り者よ。始末を付けるのは当然の事」

「そんな馬鹿な。海闘士として目覚めた者がアテナに付くなどと!?」

 ソレントの驚愕はカノンも同じ。
 もっとも、裏切り者の存在に驚いているソレントとは違い、カノンのそれは相手が本来のシードラゴンであった事だが。

「事実だ。それに聖闘士でありながら海闘士になった者もいる。過去そういった海闘士がいた様にな。ならばあり得ぬ話ではあるまい」

 だから、これは制裁なのだと、カノンは再び海斗へと視線を向けた。
 手刀を振り上げ狙いを定める。
 聖域に気付かれては拙いのは確かであったが、それよりもソレントに海斗の事を知られる事だけは絶対に避けねばならない。

 自分が偽りのシードラゴンである事を。
 海皇すら知らぬこの事実を、カノンは誰一人として知られるわけにはいかなかったのだから。

 十一年。
 己の野望を果たさんと費やしたこの十一年間を無駄にする事など出来る筈が無い。

「待て、シードラゴン!」

 なのに何故、こうも邪魔が入るのか。
 振り上げられたカノンの腕を、ソレントが掴む。

「何故止めるソレント!」

「貴方の言葉が真実なら、裏切り者とは言え彼は海闘士なのだろう? 貴方にそれ程の手傷を負わせる程の。だとするならば、彼は未だ覚醒者が現れていないシーホース(海馬)かスキュラ、クラーケンの海将軍である可能性がある」

「裏切り者だぞ!」

「私は海闘士に裏切り者はいないと信じている。きっと何か理由がある筈だ」

「ぐっ、くく……!!」

 どうしてこうなるのだと、カノンは怒りに身を震わせる。

『そんなことはあり得ない』と。

『この男は自らシードラゴンだと言ったのだ』と。

 そうソレントに言ってやりたかった。
 カノンにとって、ソレントの海闘士としての使命感と仲間に対しての信頼の強さは非常に頼もしいものであったが、この時ばかりは恨めしくあった。
 こうしている間にも、時間は刻一刻と過ぎて行く。

「……分った、この場で命を取る事は止めよう」

「シードラゴン」

 カノンの言葉に安心したのか、ソレントは掴んでいた手を離す。

「ならば、せめて海皇が目覚めるまでこの世界から消えて貰う事にしよう。その時には、この男が残る海将軍であったかどうかの答えが出ている筈だからな」

 そう言ってカノンは右手を高く上げると空間に巨大な三角形の軌跡を描く。

「シードラゴン! 何をする気なんだ!!」

「言った筈だ、暫くこの世から消えて貰うと。命までは取らんのだ、黙って見ていろ」

「ううっ、これは!? シードラゴンが描いた三角形軌跡、その内側の空間が歪んで見える!!」

「フッ、バミューダトライアングルを知っているか? その海域に侵入した船や飛行機が突如として消えてしまうと言う魔の三角地帯の伝説を」

「何? ……まさかそれは!?」

「そのまさかよ。時の狭間に落ちろエクレウスの聖闘士よ!」

「ま、待て! 待つんだシードラゴン!!」

 ソレントの制止の声も、今のカノンには通じない。

「もう遅い、ゴールデントライアングル!!」

 時空の狭間へと導く力が海斗目掛けて放たれる。

 ――消えろ、エクレウスよ。オレこそがこの世界でのシードラゴンなのだ!

「フ、フフフフフッ、フハハハハハハハハッ!!」

 ソレントにはああ言ったが、海斗を呼び戻すつもりも生かしておくつもりもカノンには無かった。
 最大の危惧とした、己の野望を脅かすであろう敵の消滅を前にして、カノンは笑っていた。

 そう、この時のカノンには海斗を消し去る事しか頭に無かった。
 ソレントは自分の邪魔をする者でしかなかった。
 だからこそ、ソレントの言葉の意味を捉え間違ってしまった。

「その場から離れるんだシードラゴン!!」

「なん――」

 そこから先の言葉は継げなかった。

 突如として放たれた目も開けられぬ程の眩い光。
 今にも海斗の身体を呑み込もうとしていたゴールデントライアングルの力が、巨大な小宇宙によって打ち砕かれる。
 その余波をによって吹き飛ばされるカノン。
 気配を察知していたソレントはとっさにガードした事で何とかその場に踏み止まる事が出来ていた。

「くっ、いったい何が!?」

 ソレントが目を凝らせば、倒れ伏した海斗の前に黄金の輝きが見える。

「……あれは」

「黄金聖衣、だ」

「シードラゴン、無事か!?」

 何なのかと、そう思ったソレントの心を読んだかの様に、カノンがふらつきつつも立ち上がり答えた。
 右と左、陰と陽、表と裏。
 同じ身体でありながら、決して向き合う事のない双子の姿。
 カノンは憎悪の炎を宿した瞳で、海斗を護るかの様に現れた黄金聖衣を睨みつける。

「あれは――双子座(ジェミニ)の黄金聖衣だ」

「……あれが黄金聖衣。何という輝き――」

 ソレントが呟いたその瞬間、双子座のオブジェ形態であった聖衣が弾け飛び、まるでそこに聖闘士が存在しているかの様に人の形へと姿を変えた。
 無人である筈の双子座の黄金聖衣から立ち昇る巨大な小宇宙に、思わずソレントの足が一歩下がる。
 それに対してカノンは一歩も引く事無く、むしろ獰猛な笑みを浮かべると、

「フッ、クククッ、クハハハハハハッ!! 良かろう、今日のところはこのまま大人しく引き下がってやる」

 そう言ってその身を翻し、この場から立ち去るべく歩き出した。

「シードラゴン?」

「フン、交換条件だそうだ。あの聖闘士を助ける代わりに今日この場の事は忘れるとな」

 そうソレントに言うと、カノンはもう一度だけ双子座の黄金聖衣へと振り返った。

「……良いだろう、今回だけは貴様の提案に乗ってやる」



 だが、いずれはオレの手でその首を貰い受けるぞ――サガよ。


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