冥界の王、冥王ハーデス。
地上界の護戦者女神アテナ。
冥王に付き従いし冥闘士。
女神の下に集った聖闘士。
二神とその下に集いし戦士たちが地上界の覇権を、平和を賭けて繰り広げた戦い――聖戦が終結した。
冥王の野望――地上界への侵攻を防いだ、という点ではアテナの勝利と言えたが、苛烈を極めた戦いの傷跡は深い。
聖戦に参加した多くの聖闘士が倒れ、アテナでさえその力を使い果たし長い眠りについた。
失われた命の中にはアテナを補佐し、聖域を統括していた教皇も含まれていた。
最強とうたわれた十二人の黄金聖闘士もその数を三人にまで減らしていた。
多くの犠牲を払ってなお冥王を滅ぼせたわけではなかったが、アテナの力によって施された封印により、少なくともあと二百年は冥王が目覚める事はない。
神々から、歴史から見れば、二百年の時など些細な時間にすぎなくとも、この時を生きる人々にとってはかけがえのない時間である。
陽の昇らぬ朝、明けない夜は終わりを告げる。
平和を取り戻した地上には再び陽の光が、新緑が芽生え、傷付いた大地を、人々の心を安らぎで満たした。
そう、誰もが感じていたのだ。
戦いは――終わったのだと。
第19話 海龍戦記外伝1015
季節はうつろい時は流れる。
先達を失い、戦力を著しく消耗し、アテナが長き眠りにつき、教皇の座も空位となった聖域。
先の見えぬ混迷の中で、次期教皇とみなされていたジェミニの黄金聖闘士カストルが聖戦より生還を果たしていた事は不幸中の幸いであったといえる。
多くの戦士たちの命が散った聖戦の終結より一年。
新教皇となったカストルはその人望と優れた手腕を持って、僅か一年の間に次の聖戦を見据えられる程までに聖域を纏め上げていた。
聖闘士候補生達も良く育ち、次代を担うに相応しい才覚を発揮し始めた者もいる。
この事は、今は亡きサジタリアス(射手座)の黄金聖闘士アルナスルが残した成果によるところが大きい。
彼は聖戦前から後進の育成に意欲的であり、目前に迫った聖戦の“その後”を見据えていた聖域でも数少ない人物の一人であったのだ。
教皇の補佐役たる助祭長の職に任命したアルター(祭壇座)の白銀聖闘士エイリアも、つい先日聖衣を与えられたばかりの若き少年である。
過ぎ行く季節が樹々の葉を落とし、花を散らせ、そしてまた芽生えさせるように。
若き力に満ちた聖域は、再生を経て新生への道を進もうとしていた。
「手紙、ですか?」
日も暮れ始めた頃。
日課となった聖闘士候補生達の訓練の視察を終え、十二宮、その先にある教皇の間へと向かっていたエイリア。
その彼を呼び止めたのは、先程の視察の中で見かけた事のあった少年であった。
「はい。実は、自分は家族と口論の果てに故郷を飛び出してしまったもので。せめて母だけにでも近況を知らせたいと」
「……ふむ」
そう呟くと、エイリアは口元に手を当てて瞑目した。
少しクセのあるブロンドの髪が風に揺れる。
それだけで華になる美しさがエイリアにはあった。
もっとも、本人は自分の小柄な体格と少女のような容姿を快くは思っていない。
こうした仕草にしても、若くして助祭長となった自分に少しでも威厳や貫禄のようなものがつけば、との思いで始めたのだが……。
その成果の有無については、エイリアのその姿に見入ってしまったこの聖闘士候補生の少年が雄弁に物語っている。
知らぬは本人ばかり、である。
「……その、規律に反している事は分っているのですが……」
黙したまま語ろうとしないエイリアに対して明らかに委縮した様子で少年が続ける。
聖闘士を目指す者は、その修行中には外界との接触を大きく制限される。
家族との連絡を行う、という行為も制限の対象であった。
聖闘士は地上の愛と正義を守る者。
その修行は過酷を極める。命の危険などあって当然なのだ。
世俗の情を断つ。その程度の意思と覚悟すら持てないようでは到底耐える事などできはしない。無駄に命を散らすだけ。
「分っているのならば、是非を問うまでもないでしょう」
凛とした声でハッキリと。
少年の目を真っ直ぐに見つめてエイリアは言った。
覚悟はしていたのであろうが、やはり面と向かって否と言われた事に堪えたのか。
「申し訳ありません」
失礼致しました、と。そう続けて一礼し、踵を返す少年の足取りは、本人は隠しているつもりであるのだろうが明らかに重い。
「……ああ、そうでした」
背後から聞こえた声に少年の足が止まった。
周囲には他に人影はない。
ならば、これは自分に声が掛けられたのだと、少年はエイリアへと振り返った。
「……私の記憶が正しければ、君の出身はサロネ村でしたか?」
「あ、は、はい。そうです!」
助祭長、そして正規の聖闘士であるエイリアが、自分のような一候補生の故郷の事を知っていてくれた。
その事が少年を高揚させ、その返事にも力がこもる。
「あの村の近くでは、他の土地にはない珍しい植物が育っています。薬草の一種なのですが、昨日切らしてしまいましてね」
「え? え、ええと……」
必死に思い出そうとするが、少年にはそのような心当たりはない。
ひょっとすれば聞いた事があったかもしれないが、草木を愛でるよりも走りまわる事が好きだった自分が気に留めるはずもない、と結論に至る。
「すいま――」
「あの辺りの地理に詳しい者が皆出払っていまして」
すいません、と。
少年が口にするよりも速くエイリアは続けた。
「君さえ良ければサロネへの使いを頼みたいのですよ」
勢いよく駆け出して行く少年の背中を見送ると、エイリアは人知れず深く溜息をついていた。
「まったく、お前は甘過ぎるな。万事そのようでは他の者に示しがつかんぞ」
エイリアが少年に言った言葉は嘘ではないが、急を要する用事ではない事も事実であった。
全ては詭弁に過ぎなかったのだ。
「……どこから見ていらっしゃったんですか?」
「ふふっ、それに気が付かんようではお前もまだまだ修行が足りんな」
ハハハハと、豪快に笑いながらエイリアへと近付くのは隻腕隻眼の巨漢であった。
先の聖戦を生き残った黄金聖闘士の一人、タウラスのエルナトである。
百を超える冥王の冥闘士、その三十近くをただ一人で打ち倒した聖闘士。
三十二歳という聖闘士としては高齢であり、聖戦の中で右目と利腕であった右腕を失っていたが、それでもなお闘将と呼ばれ続けている男である。
「面目ありません」
「気にするな、とは言わん。だが、まあ……」
父親が子供にそうするように。
「オレはそういう甘さは嫌いではない」
くしゃりと、エルナトは項垂れたエイリアの頭を撫でた。
「教皇様ですか?」
「ああ。大した用ではないのだが。カスト――いや、教皇に少々、な」
十二宮。その宮と宮を繋ぐ長い階段を二人は並んで歩く。
肩肘を張る事なく、自然体で話すエイリアはたおやかな少女にしか見えない。
そして、豪放磊落(ごうほうらいらく※度量が大きく快活であり、些細な事には拘らない)を体現するエルナト。
その二人が並ぶ姿はどう見ても父と娘のそれ。
ここにキャンサーの黄金聖闘士アルタルフがいれば、その姿を見て腹を抱えて笑っていた事であろう。
「――もう一年と言うべきか、まだ一年と言うべきか」
この場にいない旧友たちの姿を思い出しエルナトがぽつりと呟いた。
我が強く、一癖も二癖もある者たちばかりであり、中には確かに気に食わない者もいた。
それでも、同じ場所を目指し駆け抜けた仲間であり友であった。
「……エルナト様?」
「ん? ああ、何でもない」
エイリアの気づかいに、らしくない、と頭をふる。
そうしてエルナトは目前に迫る双児宮を見た。
一体いつ現れたのか。
いつからそこにいたのか。
そこに――男が立っていた。
黄金聖衣とは異なる、異質な黄金の輝きを放つ鎧を身に纏った男が。
その手には黄金に輝く三又の鉾が握られていた。
マスク(兜)に隠れてその素顔を窺い知る事はできない。
その身から発せられる強大な小宇宙は、かつてエルナトが対峙した強敵達と比較しても劣るものではなかった。
「何者ですか!」
エイリアが一歩踏み出し、そう叫んだ。
どこか、ヒステリックささえ含んでいたのは、それが恐怖を誤魔化すためのものであったのか。
虚勢であると気が付いたのか、最初から脅威とも感じていないのか。
男の口元が僅かに笑みの形を浮かべた事がエルナトには分った。
「答えな――」
答えなさい、とエイリアが続ける事はできなかった。
何かが光った、と。
そう感じた瞬間、エイリアの身体はエルナトに抱きかかえられて上空にあった。
続けて、ドン、と。
大気が震え、瓦礫が舞った。
着地したエイリアが見た物は、それまで二人が立っていた場所に生じた巨大なクレーター。
「な、何が……」
「……どうやら、挨拶だけのつもりであったようだな」
エルナトには見えていたのだろう。
しばし呆然としていたエイリアの耳に、ため息交じりのエルナトの声が通り過ぎる。
二人が向けた視線の先、先程まで男が立っていたその場所にはもう何者の姿もなかった。
「……敵、ですか」
「さて、な。敵意も殺気もない相手を敵と決めつけるのも早計だとは思うが」
二人はそう話しながら双児宮へと進む。
周囲を注意深く警戒するエイリアに対し、エルナトは特に何かを警戒しようというそぶりさえ見せていない。
「敵意、って。実際に攻撃されたではありませんか!」
そのあまりの差は、こうして気を張っている自分がどうにも間抜けのようにエイリアには思えてしまい、八つ当たりと分っていても、つい口調が荒くなってしまう。
「本気であれば、足下など狙わず心臓か頭を狙っていたであろうな」
それに、とエルナトは続ける。
「この地にはアテナの結界がある。そう易々と敵の侵入を許したとは思いたくはない。今後の対応が尋常では無く面倒になるぞ?」
「それはエルナト様が楽をしたいだけではありませんか!」
危機感が足りていません、と先を行くエルナトに駆け寄りエイリアは続ける。
「由々しき事態ですよ!! この事は急いで教皇様に――っぷ!? って、急に止まらないで下さいエルナト様!」
背中にぶつけた鼻を押さえ抗議するエイリア。
何事ですか、と問いかけようとして――
「――いや、その必要は……ない。教皇に知らせる必要はない」
これまでの快活な雰囲気から一転し、眉間にしわを寄せて厳しい表情を見せたエルナトの様子にエイリアはかける言葉を失う。
「……!? あれは!」
ならばと視線を動かせば、エルナトの視線の先、男が立っていた場所に古めかしい箱が置かれていた。
それはエイリアにも、いや聖闘士であるならば誰もが馴染みのある物。
「パンドーラ・ボックス!? それに、このレリーフは天馬。ならば、これはペガサスの聖衣!?」
パンドーラ・ボックス。
神話の時代より聖衣を守り、保護してきた箱である。
善悪を見定める力があるとされ、収められた聖衣を身に纏う資格のない者には決して開く事がない、と伝えられている。
駆け寄ったエイリアが確認すれば、その青銅の箱には天駆ける天馬のレリーフが施されていた。
「どうしてこんな所に? ペガサスの聖衣ならば今はジャミールにあるはず……」
「違う。レリーフを良く見るんだ、同じ天馬でも槍を咥えたそれはペガサスではなく――エクレウスだ」
「エクレウス!? 聖戦後に姿を消したというあのエクレウスですか!?」
「……そうだ」
険しい表情のままパンドーラ・ボックスを見つめるエルナト。
その頬に、ぽつりと水滴が落ちた。
ポツリ、ポツリと。
天から降る雫は徐々にその数と勢いを増していく。
それはやがてざあざあと音を立てて雨となり、聖域を濡らし始めた。
「雨? さっきまで雲は出ていなかったのに……。取り敢えず双児宮に入りましょうエルナト様。このままでは濡れてしまいますから」
「……ああ、そうだな。こいつは俺が運ぼう。お前は先に行け」
「え? あ、分りました。お願いします」
一瞬逡巡したエイリアであったが、そう言うと双児宮へと向かい駆け出した。
エルナトは動かない。
雨に濡れるのも構わず、ただじっとエクレウスの箱を見つめ続ける。
レリーフを伝う雨水は、そんな筈はないと分っていても、まるでエクレウスが涙を流しているように見え。
「これが、お前の答えか?」
そう呟いて、エルナトはエクレウスの箱に手を伸ばした。
スターヒル。
代々の教皇のみが立ち入る事を許された場所。
また、その険しさ故に教皇以外には登れぬ場所。
そこには聖域の歴史が、封じられし記録が、英知が、全てがある。
故に禁忌の地。
そして、聖域の中で最も夜空に近い場所でもある。
満天の星空に煌びやかに輝く数多の星々。
その輝きを受けながら、ジェミニの黄金聖闘士であり現教皇でもあるカストルは何をするでもなくただ静かに佇んでいた。
風が吹いた。
身を包む教皇の法衣が風になびき、アッシュブロンドの長い髪がふわりと流れた。
陰と陽、金と銀。
異なる光を宿したその双眸に映るのは、聖域に暮らす者達の営みの明りか。
「あの日から今日で一年、か」
視線を夜空へと移し、カストルが独りごちた。
「ずっと考えていた。なぜ私はあの時お前を止められなかったのかと。例えお前の憎悪をこの身に浴びる事になろうとも、手を下すべきは私ではなかったのか、とな」
「……貴方の悪い癖だ。なまじ力があるからそのように考える。言ったはずですよ、俺は貴方を恨んでなどいない、と」
背後から返された言葉に、カストルはゆっくりと振り向いた。
教皇以外立ち入る事ができぬはずの場所に、黄金の鎧を身に纏い右手に三又の鉾を持った男が立っていた。
双児宮の前でエルナトたちと対峙した男である。
「よくここまで来れたものだ」
「険しいとはいえ、貴方が来れる場所ですよ? ならば、俺が行けない道理はないでしょう?」
そう言って男が左手を掲げると、ぐにゃりとその周囲の空間が歪みを見せる。
「とはいえ、“アナザーディメンション”を使った反則ですが」
「これはどうしたものかな。怒るべきなのだろうが、師としては弟子の成長を素直に喜ぶべきかな?」
「師としては喜んで頂いても結構ですよ? 教皇としては怒るべきでしょうがね」
ふふっ、とカストルと男が笑い合う。
「一年振りだなキタルファ」
男の名はキタルファ。
カストルの弟子であり、共に聖戦を戦ったエクレウスの青銅聖闘士。
聖戦後、突如として聖域から姿を消した男であった。
「貴方は……少し痩せられましたね。我が師カストル」
澄みきっていたはずの夜空をいつしか雨雲が覆い隠そうとしていた。
「今の俺はシードラゴン。海皇ポセイドンを守護する海将軍(ジェネラル)シードラゴンのキタルファ」
平和を取り戻したはずの地上に再び迫る邪悪の影。
「この雨は四十日四十夜降り止む事はない。そう地上の全てを覆い尽くす時まで」
降り続ける雨は、地上に未曾有の水害を引き起こそうとしていた。
「海底神殿には俺の他にもあと六人の海将軍がいます。地上を救いたければいつでもどうぞ。ただし、生き残った黄金聖闘士たちを連れて来る事をお勧めしますよ」
破滅の報をもたらしたのは、かつてアテナの聖闘士として聖戦を戦った男。
「一人で向かう気かカストル。お前にはキタルファを討つ事はできんよ。俺が行く。あいつは俺が討つ」
闘将タウラス。
「ただ待つのも退屈なのでな、遊んでもらおうか聖闘士どもよ」
海将軍リュムナデス。
「死ぬ気はないさ。弟子が道を踏み外したのなら、それを正すのは師の役目だ」
教皇の法衣を捨て、再び戦場に立つジェミニのカストル。
「分っているなシードラゴン。僕らの成すべき事はただ一つだ」
海将軍セイレーン。
様々な思惑が交差する中、アテナなき聖域はこの危機を乗り越える事ができるのか。
「なぜだキタルファ!? こんな事を彼女は望んではいなかったはずだ! それが分らないお前ではないだろう!!」
「分っているさ、そんな事は! それでも俺は戦うと決めた!! 貴方も聖闘士なら覚悟を決めろ! 俺を倒さない限りこの雨が止む事はない。カストル! 貴方の迷いが地上を滅ぼすぞ!!」
「キタルファーー!!」
お互いに譲れぬもののため。
かつての師弟が全てを賭けてぶつかり合う。
「退け! お前も巻き込まれるぞ!!」
「ここまで来て諦めてたまるか! 今度こそ、今度こそーー!!」
「この力だ! この力さえあれば!! 俺は、俺は!!」
伸ばされた手が掴むのは果たして希望か絶望か。
「せめて、その魂に安らぎが訪れる事を。さらばだ――」
CHAPTHR 0 ~a desire~
NEXT CHAPTHR
「ほう、お前が日本から聖闘士になるべくやって来た少年か。黒髪に黒い瞳に眼つきが悪い、と。資料の通りだな。確か――星矢と言ったかな?」
「……海斗です」
「ん? ははは、スマンスマン」
気さくに笑うアルデバランはその巨体もあって確かに強そうには見えたが、城戸の爺さんが言っていた『空を切り裂き岩をも砕く』程には見えない。
いや、確かに岩なら砕きそうなんだが。
おれの向けた微妙な視線、その意図に気が付いたのか、アルデバランはフムと頷くと「ついて来るといい」と俺の手を取って歩き出した。
「聖闘士についてのおおまかな説明は受けていると聞いたが、口で言われただけでは信じる事ができないのも分る。やはり実際に見て体験しなければ本質は分らんものだ」
着いた場所は朽ち果てた古代の神殿跡地。
聖闘士の存在に半信半疑だったおれの目の前で、アルデバランは直径三メートルはあろうかという巨大な石柱を何気ない腕の一振りで――粉砕して見せた。
「……嘘……」
「聖闘士とは――原子を砕くという究極の破壊の術を身に付けた者よ。己の内に眠る小宇宙(コスモ)を感じ、それを燃やして爆発させる事ができれば……お前もこれと同じ事ができるようになる」
唖然とするおれの肩に手を置いてアルデバランは続ける
「もっとも、こんな表面的な力を会得しただけでは聖闘士となる事はできんぞ。アテナと地上の平和を守る。正しき心と正義の意思があって初めて真の聖闘士となる事ができるのだ」
「……なれますか、おれは?」
「それは分らん。全てはお前次第だ。修行は辛く日々が命懸けのものとなる。それでも望むのであれば、一歩でも聖闘士に近づけるよう、このアルデバランが全力でお前を鍛えあげる事を約束しよう」
正直、聖闘士になる事に興味は無かった。ただ城戸邸から外の世界に出られればそれでよかった。
おれの目を正面から見据えるアルデバラン。
その目には子供だからと侮る様子はなく、思い上がりかもしれないが『対等の人間』として接してくれたように思えて。
「――よろしくお願いします」
この日から、おれはアルデバランを師と呼ぶようになった。
CHAPTER 1 ~GIGANTOMACHIA~
To be continued.