世界を渡り、早何年が経っただろうか。
幾重にも同じ魔法……転移魔法ばかりやってきたので、この魔法だけはそれなりに上手くなったと思う。
また狩りをするために身体能力や、バインドと言ったものも昔に比べだいぶ良くなった気がする。
まさに、日本のことわざのひとつである。『可愛い子には旅をさせろ』とは、つまりこういうことなんだろう。
童顔で、幼さ残りまくる甘えん坊の性格やすぐに泣いてしまう様な弱い精神力の子には旅をさせる。
数年後には、童顔だったのが、傷だらけで歴戦の勇者や旅人の顔になり。
甘えん坊の性格は何事も冷静に判断でき、非情な性格になることによってたくましくなるだろう。
数年前まではあんなに可愛いかった子が、可愛さが無くなりたくましくなるのだ。
きっと親も感激するに決まってる。
「ああ、たくましくなったわね。これで社会の荒波にも耐えられるわ!」
みたいな感じで。
そして、将来的には革命家にでもなるのでは無いかと予想する。
「こんな甘ったれた社会は私が粛清する!」
きっとこんな子に育つのでは無いだろうか。
まぁ人類を粛清といか言ってない辺りはまだ平和的でいいよね。
そういう面から考えて、旅と言うのは人を強くする、精神的にも肉体的にも。
書く言う俺も家無しの旅人。
現在もその旅のまっ最中であることには変わりない。
さて、今日も同じくして旅を続けるとしよう……。
◆
──以下、日記のような感じです。
ここ最近急増してるものがある気がする。
行く世界、行く世界にはそれなりの文明があったり、自然に溢れていたりと見ていて楽しいものではある。
見るもの見るものが新鮮だからだとは思うのだが……そんな中で、最近よく見る物がある。
「ロボット……じゃないしな」
それを初めて見たのは、遺跡っぽいものがある世界だった。
確かにその世界はスクライアガイドブックによれば古代に文明があったところで、もしかしたら貴重な品が出るかもしれない。
『トレジャーハントにオススメ。小さい猫みたいな可愛い生物を一緒に連れて行くといいことあるかも』
などと書いてある。
俺が思うにその猫はきっと、一緒に発掘をしたり魚を取ったりしてくれるに違いない。
そして、猫によっては爆弾投げたりして、戦闘を支援してくれるのかな?
今思うがあれは一種の使い魔的存在だよね。
「……あ、質量兵器駄目なんじゃないかな?」
確か、昔になのはから管理局の目が届くところには兵器を持っていかないようにといわれた気がする。
でも、人間兵器は平気なんだよな……なのはみたいな。
そのうち、人造人間みたいなのも出たりしてな……、
「ははは、ないか」
人造人間は無くても、ロボットぽい何かは目の前にあるんだけどな。
俺が色々な想像に馳せている間に出現したようだ。
そのロボットは昔なのはと再開したときの別バージョンみたいな印象だ。
丸っこくて、赤い目みたいなのが八つ。
襲ってくる気配は無い、何かを必死に探しているような様子だ。
「触らぬ神にたたりなし、っていうから、下手に近づかない方がいいかな」
傍観を選択した。
ここでトレジャーハントをしても楽しそうではあったのだが、先客がいるようなのでここは譲るとする。
旅先で無駄な争いは避ける、それは生きるのに大切なスキルだと思っている。
所謂スルースキル……みたいなものだろうか。
俺は結局この世界で何もせずに、ただそのロボットを見るだけで別の世界へ移動した。
ただ移動する際に、何故かロボットの傍で魔法が使えなかったのが不思議だった。
その後も、度々見かけるようになったのだ。
まぁ今となってはちょっとした旅の風物になっている。
別に襲ってくるわけでは無いからいいかな、なんてね。
この世界でピンクの閃光を見た気がする。
その時に体が震えたのはきっと気のせいに違いない。
ああ、そうだ。これはきっと、あの人に勝てると思って体が勝手に武者震いしてるに違いない。
決して怖がってた訳じゃないんだ。
その瞬間白い何かが、俺の上空を飛んでいった。
「あ、あの白いの……尋常じゃないほどの力を持っていた……。周りの奴らもすごかったけど、あの白いのは別格だった……」
恐怖体験だった。死の危険を感じたベスト五に、ちょっと前の昆虫騒ぎを抜いてランクインである。
ピンクと白を見ただけで、だ。
例えばの話だ。
白やピンクという色は普通の人にとってはなんてことは無い普通の色である。
いや、もちろん俺にとっても普通の色に過ぎないが、あくまで例えばの話である。
白──といえば、純白などというように、純粋無垢。
何色にも染まっていないと言うイメージがあるのではないのだろうか?
黒と相対するものであり、そこには優しい色や正義の色というようなイメージも湧く。
そう優しいや正義だ。
確かに正義……ああ、彼女は自分の正義を持っている。
確かに優しい……ああ、彼女には何度も助けられた。
しかし、なんでだろう……どうしてこう……、
「体が震えるのだろうか……」
原因は……分からないな。
ピンク──といえば、恋心の色、ハート。
そこには甘くもしょっぱいような青春の色とでもいうイメージがあるのではないのだろうか?
俺が青春を語るなんて、ちょっと変だろうけど、俺にだって青春はある。
あるに決まってる! あるだろう。……ある、よ。 ある……よね?
まぁいい、俺のことはさておき、大体の人にとってはこんなイメージだろう。
しかし、俺にとっては……、
「ふ、震えが止まらないぜ……」
ホームレス狩り、ピンクの砲撃、謎の龍使いの少女。
そんなイメージばかりが飛び交う。
そして上空にはまたもや、ピンクの閃光が光り輝く。
全てを一掃するような、全てを薙ぎ払うような……青春を吹き飛ばすような。
というか、青春を砲撃にして飛ばしているような……。
「そうか。ああやってなのはの青春は、ピンクのビームとなって消えていくのか……敵と一緒に」
衝撃の事実発覚。
これはなのはに教えてやらねば……と思ったけど。
「戦闘中のことだし、今は止めとこうかな。うん、そうするべきだ」
この世界は、今までの世界より何かと危険が多そうなので、飛び立つことにした。
この世界……何も無かった。
見るべきものが無かったと言うことである。
実はこういう世界は初めてだった。
どの世界にも大抵は、動物いて自然があったり。
それこそ、砂だらけの世界とか海だらけとかもあるが、しかしそこには動物がいるのでそれはそれで楽しいものなのに。
危険だけど……。
ここには何も無い。あるのは、つまらない廃墟の施設のようなもの。
中もすでに錆びれていたが……
「うん? これは宝石、かな?」
赤い宝石が、ポットのような場所に入っていた。
少し警戒しながらも、ポットを破壊して中の宝石を取り出した。
「ルビー……じゃないよな? でも、どことなくジュエルシードに似ているような……」
姿形は違えど、放つ雰囲気が似ていた。
それに青に対するように赤とは出来すぎなような気もしなくも無い。
「ジュエルシードみたいに、価値のあるものなら……」
持っておいて損は無いだろう。
他に見るべきものはなく、ちょっと早めだがこの世界を旅立った。
目のような点を真っ赤にした丸いロボットのようなものがいっせいにこちらを振り返った。
それは突然の出来事だった。
いつも通りにランダム転移をして、この世界にやってきた、これまたもはやいつも通りの景色になってしまったあの丸いのがあった。
それはもちろん、いつものように何かを探しているようで、俺には関係ないと思っていた……のに、
「え? 何で。こっちを向いて……ち、近づいてきた!」
今までに無い展開で、驚くばかり。
その丸いのの数はかなりある。今、数えても十や二十は軽く越えている。
それが一斉に、こちらを向き近寄ってきたのだ。
怖い以外の何ものでもない。
そして気付けば……囲まれていた。
「なんかすごいシュールな場面だよね。赤い目をした丸いロボットに囲まれてるのって」
しかも、バリアのような物を展開して、防衛体制も万全ときた。
これってもしかして……
「待ちに待ってもいないが、戦闘……ということなのか?」
明らかに敵意むき出しだしな。
これは俺の戦闘能力、魔導師としての力がついに試される時がきたのかもしれない……。
なのはに鍛えられてきた俺の真価が問われる、ということなのか。
ただ、残念ながら俺はこの場面をどうしても楽しめそうではない。
俺はあくまで平和主義者だからね。
「だけど、ここで負けて人生を終わらす気も無い!」
俺は手に魔力を思い浮かべる。
イメージはナイフのような鋭利な刃物。
いつも狩りに使うような物を思い浮かべる。
少しずつ形が模られ……そして……、
「でき──あれ? 光になって消えちゃったよ」
消えてしまった。
もう一回、もう一回挑戦する。
…………結果は同じだった。
上手く魔法が発動しない……ということなのだろうか。
「これってやばいよね?」
丸いのが、また前進して俺に詰め寄ってきた。
そして、一斉にキュィィィィンと言いながら魔力をチャージし始めた。
「ランダム転移も……駄目か。とすると……」
反撃できない、異世界に逃げることも出来ない。
残る選択肢は……この世界内での逃亡を他においてなかった。
「逃げる、か……いや……」
こんな時のために……何かが起きたときに、引きこもれるように造っておいたものがあった。
なのはの砲撃を耐えられるように改造した、あれがある。
そして、俺は”それ”を被った。
その瞬間、衝撃が伝わる。
しかし、その衝撃にそれは破れることは無く、しっかり受けきり防御しきった。
相手の第一波を防いだ、ということである。
「ふぅ……まだ試作段階だったが……何とかなったか、だけど……」
防げるのは一回のみ。
理由は、その分しか今の貯めてある魔力では防ぐことは出来ないからだ。
”それ”に貯められた魔力は、いずれは『攻守共にパーペキ、まさに空中要塞』にするために、俺が毎日毎日魔力を地道に貯めてきたものである。
魔法の攻撃に対抗するにはどうするか、それはつまり相手の攻撃より魔力の多い防御をすることだった。
あとは、その防御できる魔法を”それ”に組み込み、魔力を貯める。これが俺の必勝法だった。
ちなみに、”それ”に砲撃魔法も出来るようになればなと思う。砲撃じゃなくても、ビーム的な何かでもいいけど。
話は戻るが、今の状態では攻撃は一回しか防げない。
されど、一回防げば……、
「このステレス布が際立ってくることを教えてやる!」
姿を消して逃げるだけだった。
俺はこの後、なんとかその丸い群れから逃げ切り、事無きを終えた。
しかし、この先毎度のことのように奴らに追いかけられるようだと気が思いやられる。
けれども……、
「試作品は順調だね。この分なら完成は案外早いかもしれない……」
どちらにしろ、魔力との戦いだけどね。
あ、いっそ魔力を吸収できるようにして、なのはに砲撃とか撃たせれば……。
ふふ、これは研究のし甲斐がありそうだ。
さぁ次の世界……どうか、あの丸いのに会いませんようにと願った。
その願いが願ったのか、それとも俺が強運なのかは分からないが、着いた世界は建物の中だった。
転移してまず確認するのは周囲の状況。
建物の中なのはすぐに分かったが、もっとよく周りを見てみると。
教会のような場所。
見覚えのあるような人が居る。
みんながこっちを見てる。
俺が頭上に落ちてしまい、足元で倒れている人をみる……わぉ、格好いい新郎さん。
横を見た……あら、綺麗な花嫁さん。
「ウェディングドレス似合ってますね、結婚おめでとうございます」
「あ、はい。ありがとうございま──って、く、クロノ君!?」
うん、どうやらとんでも会場に来てしまったらしい。
やばいなぁ、みんなの目が痛いなぁ。
どうしようかなぁ……逃げちゃおうかな。
「では、お二人さん。末永くお幸せにー!」
「……はっ! あれ? い、一郎君!?
座っていた観客の一人が驚きの声を上げた。
見知った声のような気がするけど、気のせいであり。
また、複数の知り合いの声も聞こえたがそれも気のせいだ。
どちらにしろ、色々とやばいので、これはある意味あの丸いのより危険なので早く逃げたいのだが……。
ええい、ランダム転移よ早く転移しないか!
「ま、待って、一郎君! せっかく会ったんだから、お話しようよ!」
「この状況で、言うべき言葉がそれなのか? なのは」
ここは絶対に、俺を注意するべき場面である。
でも、これは非効力であり、決して狙ったわけでは無いので怒られるのも勘弁だけど。
起こるならランダム転移に怒ってね。
それでもやっぱり、俺が悪いのかな?
罪悪感は無いわけでは無いので、転移が完了する前に一つ祝いの品でも上げるとしよう。
「じゃあこれ祝辞とお詫びを含めてあげますね」
「あ、ありがとうございま──ダンボール!?」
「愛の箱庭を築いてくださいね。それでは、今度こそお幸せに」
どの世界でも結婚ってめでたいね。
{Stsに向けて着々と……。ホームルーム(HR)をホームレス(HLかな)と読んでしまう辺り、作者はもう駄目かもしれない}