「知ってる? 雪って食べられるんだぜ?」
で、始まった最も過酷な冬は通り過ぎた。
それにしても雪に醤油をかければ食べられないこともないとどこかのアニメで言ってた気がする。
確かあのアニメでは雪を寿司に見立てていたような……。
なにぶん古いアニメなので忘れた。
それにしても、この発言をしたときのアリサの引きようはすごかったが、なのはの食い付きようもすごかった。
どうすごかったかと言うと、一緒に美味しい美しいと言いながら雪を食べるほどだった。
なのははその後家に帰ってお腹を壊したようだったが、俺は大丈夫だった。
胃袋もここ数ヶ月で丈夫になったと言うことだろう。
人間の神秘には脅かされると同時、感謝せざるを得ないね。
もっとも、雪でお腹が一杯になるかといえばそんなことはもちろんなく、雪の中でパン屋さんに行くのも愚公。
いや、食料ゲットの為にはその程度の努力はするべきなのかもしれないが、時期を考えれば今は大人しくするべきなのである。
なので、食料は秋のうちに採ったキノコ……もちろん天日干しにし保存の利く状態だ。
他にも、道路に落ちていた柿を中心とする果物。
こちらも同じく、天日干し……干し柿の誕生である。
パンの耳は、四日分程度のたくわえならある。むしろそれ以上はカビが生えてしまうでこれが限界と言うものだ。
よって、おかずは干しキノコと干し果物──かっこよく言うならドライフルーツが、冬をギリギリ越せる分程度はある。
如何にものどが渇きそうだが空からは多量の水分が落ちくるから大丈夫だろう。
うん、これが元々もは空気中の塵やごみと言うのは気にしない方向で。
冬の間はこんなひもじい生活だった。
いや、年間を通してそうなんだが特に冬はと言うことだ。
しかし、最低限の動きしかせずにじっとしていればエネルギーの消費は最小限に防ぐことが出来たためになんとかなった。
まぁ冬の間なんて暖かい日中の間に寝て、寒い夜と朝は起きているんだけどね。
その寒い夜と朝と言っても、基本的には真夜中なのでほとんど起きていないと言う状態かもしれない。
起きているときはなのはたちが来るときぐらいのものだ。
だが、起きているときも基本的にはボーっとしていたので、寝ているのと変わらなかったかもしれないが。
肝心の寒さは思ったより何とかなった。
よくよく考えれば、自分が幼いときは半そで半ズボンで一年中過ごしたものだから、そんなに心配することはないのかもしれない。
なので、一番の敵は寒さより風だったが風は廃墟の中のうえに、ダンボールの家なので完全シャットアウトだった。
嬉しい誤算もあったものだ。
おかげで風邪も引くことなく健康そのもの……とはいい難いものの、生き延びることが出来た。
この経験は次に繋がるものと信じたい。
「来年の冬にはコタツが使えるようにしたいな」
そのためにはまずコタツを拾うことが前提だが、暖房器具はそうそう落ちていない。
まぁ暖房器具のために今からお金を貯めると言うのもいいかもしれない。
現在の収入は、日に100円。これを365日で掛ければ……36500買えるか?
とても微妙な値段であるけど、最終手段は作ればいい。
なければ作るまでとは誰の名言だっただろうか。
まぁそれは後程として、今は暖かい季節のを訪れを喜ぼうじゃないか。
◆
──以下、1年間をダイジェストにてお送りいたします。
春ですよーと言う声がどこからともなく聞こえそうな暖かい陽気の春。
つい一ヶ月ほど前の寒い季節が嘘のように暖かい。
暖かい季節と言うことであり、春休みも終わっていた。
春休みは俺がどの時間帯に自由に行動しても怪しまれないため積極的に動いた。
主にダンボールハウス改造の為の、ガラクタ置き場とか、作物探しの山の中とか、作物リストを作成する為に図書館とか。
ガラクタ置き場は人が滅多に来ないので問題ないとして、山の中にいても自然の中で遊んでいるようにしか思われずにすみ。
図書館でずっと本を読んでメモしても勉強熱心な子にしか見えないので案外便利だった。
おかげで、暮らしの向上がまた出来そうだ。
春休み中の話はほどほどにするとして、春といえば花が咲き桜の季節である。
そこらじゅうで、花見が行われ盛り上がる季節であると同時に、出会いと別れの季節でもあるのだ。
それが俺にどう関係あるのかと問われれば全くと言っていいほど関係ない。
あえて言うなら、春なら花の蜜が吸えるなとちょっと楽しみにしてるぐらいだ。
学校も始めってるらしいので去年と同じく、目立った行動は出来ない。
それでも春休み中の研究を下に食料の確保や人の出入りを調査しなおし、さらなる安全を確保するに至った。
これは現在の主な活動場所は前よりさらに広がった事を意味する。
あ、たんぽぽはやっぱり揚げた方が美味しかった。
素あげだけどね。
油は食物性だから、安全でエコで身体にいいしね。
梅雨といえば、誰もが考える雨の季節。
雨といえばアジサイとカエルですよね!
カエルは前から一度食べてみたいと思っていた。
いや、去年もそのチャンスはあったのだけど、どうしても最後の一歩が踏み出せないでいた。
だから今年こそは、と言う思いで頑張った。
うん、結果から言うよ。
美味しいです、はい。
姿焼きで十分に食べられるます。
味付けは塩をちょっと大目にするのがコツですかね。
新しい生命線確保でちょっと一安心でした。
アジサイも食べられるかなと思ったけど、食べる前に図書館で発覚した事実。
アジサイは食中毒になる可能性があるとのことだった。
危うく生死の境を彷徨うところだった。
ということで、脳内メモ。
梅雨の時期にカエルを確保し、天日干しに、血抜きした血はちょっとグロいけど飲めば栄養になる。
アジサイには手を出すな、と。
ちなみに、ダンボールハウスは水耐性が強いので問題はなかったりする。
水体制仕様にさらに炎属性に強くすれば、はれて夏対策用に通気性抜群のダンボールハウスが完成である。
春にかけて改造してたのはこの日のためであり、去年は出来なかった夏の快適な暮らしに一歩近づいた瞬間だった。
そして、夏なので木陰が多い山の中にダンボールハウスを設置し、迷彩柄にし人対策も完璧である。
後は将来的にステルス機能ができればと言うところであろう。
これらの改造は主にガラクタ置き場と、忍さんの提供によりできている。
忍さん曰く、
「サイエンティスト同士は協力するものよ」
とのこと。
俺と忍さんが同じサイエンティスト、科学者と同格──技術では忍さんにはまだ遠く及ばないが、仲間として認められたのは少し嬉しかった。
そういえば、忍さんには想い秘めた人がいるとかいないとか……。
俺は詳しく知らないし、お互いに深くは詮索しないと言う約束なので気にしたりはしない。
忍さんにとってもまた俺との関係は秘密の仲みたいなものだしね。
…………なんか、こういうとちょっとした優越感になるのは何でだろう?
まぁダンボールハウスの話はこんなもんでいいだろう。
問題は生活面なのだが、まずは虫対策。
ダンボールハウスが山の中にあるので自然と虫が周りにいることになる。
だが、これを上手く利用できないかと考えたのはもちろんのことである。
まず有名な虫……カブトムシやクワガタなんかと言うのは人気がありほしい人がいるのだ。
欲しい人がいると言うことは需要があるということなので商売にならないか?
そう思いアリサに相談すると、
「ちょっと面白そうね」
と、興味がありげな答えをした。
そこからアリサは人気の出そうな虫を捕まえときなさいと伝言を残し去っていった。
言われたとおり、家で待ち伏せしてるだけでかなりの虫を捕らえる事ができ、おかげで人気の虫はわんさか取れた。
捕り過ぎも悪いと持ったので、小さいのとメスはキャッチ&リリースした。
翌日アリサが再び家にやってきて、俺が虫をバニングス邸に運んだ。
そうすると、虫を一匹一匹写真を撮り、それをパソコンに送りなにやら操作してるようだった。
何をしているのか問うと、
「簡単に言えば虫の売買ね。一部はオークションとかでお金に、一部は物々交換をするのよ。一郎は食事とかに困ってるでしょ?」
「うん」
「なら、近所の子供持ちの家庭をターゲットに食べ物との交換を持ちかけるのよ」
アリサすげぇ。
俺もその考えはあったのは確かだが、ネットをつかってなどとは考えてなかった。
というか、アリサは本当に小学生か? 商売人の娘じゃあるまいし……。
「ほら、さっそく釣れたわよ」
そういうアリサの目は獲物を見つけた獣そのものだった。
なんという商売根性……。
結局アリサのおかげで、夏は充実することが出来た。
一つは例の商売のおかげで、軍資金と調味料を手に入れることができた。
お金はもちろん必要だとして、調味料は野生のものを美味しくいただく為にはほしかったものであり、なにより保存も利くから便利なのだ。
あとはパン粉や小麦粉なども手に入れることができた。
特に小麦粉はかなりの量をもらうことに成功した。
これがあれば製麺することも出来るからだ。
夏はある意味商売時でもあることがよく分かり、またもや生活の向上に繋がった。
その上、夏なら海で泳いでも怪しまれない為、魚や貝の捕獲も成功した。
さすがに魚は手づかみは厳しい(無理とは言わない)ので、手作りの竿で主にアジをメインに釣った。
想像はつくと思うがお得意の天日干しである。
アジの開きの完成だ。
そういえば、干物類は真空状態が大切とのことだったので、真空パックぐらいは買っておいた。
冬なら天然保存と冷凍が出来るがこれからは秋なので冬に比べたらあまり保存は利かないんだけどね。
それでも普通の食べ物よりは長く持つので、干物にはする。
実りの秋と言われるからには作物には困らないはずである。
これは事実だった。
去年の経験から、秋の間は食べ物に困ることはまずないのだ。
落ちている栗はもちろん、どんぐりに柿、魚とまさに食材パラダイス。
それでも基本生は危ないので火は通すのだ。
そうそう、火といえばどうやって出しているのかと言うと昔ながらのあれである。
あれは素人ががむしゃらにやっても、まず火が上がることがないらしいのだが俺は昔、とある無人島で生活してみると言う番組のおかげで、多少の知恵があったためできるようになった。
もちろん一朝一夕で出来るわけではないのだが、できるようにならないと死ぬと言う環境から必死になったら、今ではお手のもだった。
人間やれば出来るとはまさにこのこと。
そんな余談はさておきとして、秋は食べ物に困らない。
しかし、次の季節はいよいよ……。
去年も苦労した、寒さは思ったよりは平気だったが、夜寝れないのは中々に苦痛のものだった。
よって、今年は寒さ完備をしなければならないのだ。
もちろん食べ物もであるが、今回は秋の間に我慢して残しておいた調味料と小麦粉もある。
いざとなれば、ちぎり作業も……あ、あんな地道な作業はいやだけど。
つまり、去年よりは食べ物については余裕がある。
なので残す課題をクリアするだけだった。
そのためのお金でもあるわけだし、そのためのこの技術だ。
ふふっ、腕がなるね。
Zダンボールハウスが完成した。
なぜZかと言うと……精神エネルギーを使うからとだけ言っておこう。
精神エネルギーと言っても、別にそんなすごいものと言うわけではない。
ただ、気力でカバーそれだけだ……あれ? なんかちがくないと気付いたのは完成した後だった。
具体的にはダンボールハウスにこたつが導入されただけで、こたつは人力発電機で動くため、気力でカバーということだ。
俺はあまりエネルギーを使うことはよくないことは分かっているので、とりあえずなのはを上手く利用することに決める。
「はぁはぁ……ねぇ一郎君暖まってきた!?」
「おお、こたつあったかーい」
「ほ……はぁはぁ、本当!?」
なのはは必死に人力発電機を動かしている。
こたつは棄てられたちょうどいいくらいのテーブルを基にして、作ったのだ。
今回の作品はさすがに一人では大変だったので忍さんと協力である。
といっても、忍さんが設計図を作りその通りに俺が作っただけなのだが……うん、いつかは自分もあんなふうに自分でなんでも作れるようになりたいね。
「でも、い……はぁはぁ、一郎君本当にこれで」
「ああ、これで……」
運動音痴直るといいね。
俺は去年と同じく、冬の間はあまり動かないようにしないとね。
エネルギー削減のために……。
冬は去年とほぼ同じで、変わった点といえば、食料が去年より豊富でこたつがあること。
来年の冬がもっと楽に過ごせるように、どうしようかと改良と改善を考える冬になった。
◆
季節はめぐり、三度目の春。
去年は食料調達や夏場のお金稼ぎと食べ物確保が上手く行ったため1年目に比べはるかに生活能力は上がったと思う。
昔までは、保護の人に怯えたり、パンの耳で生活していたが今はなんのそのである。
もちろん週一ぐらいで貰いに行ったりもしているのも事実でもあるのだが……。
そして今でも、人目につかないように。
ついたとしても、目立たないようにするのは心がけている。
いわゆるスニーキングミッションと言う感覚でもあり、忍者っぽいのかもしれない。
後はこの生活を保持できるように俺の努力次第なんだろうな。
もう食糧難で死ぬと言うことはないと思うしね。
だからと言って、向上心を止めたら人間そこまでだ。
今年も去年以上を目標に頑張るのはもちろんとして、さらなる飛躍も目指したい。
そんな時だった。
変な夢を見たのだ。その夢は夢と言うにはあまりに現実的なのだが、どう考えても現実ではありえないものだった。
だったが…………あの赤い宝石は売ったら高そうだったなぁ。
{この作品がみなさんのちょっとした暇つぶしになればいいなと言う思いを胸に頑張っております。 レイハさん逃げてぇーっ!}