『メリークリスマース!!』
その日、臨時休業だった翠屋では、スクライア家のクリスマスパーティーが開かれていた。
二度目だが、ミッドにはクリスマスという風習はない。
だが、この家には地球出身者が二人いるため、普通にクリスマスパーティーが行われていた。
余談だが、そのおかげか、二人の通う魔法学院では少しずつだが、サンタの存在が子供たちに浸透し始めていたりする。
「おねーちゃん、今年はサンタさんなにプレゼントくれるのかな?!」
スクライア家長男であるユートが嬉しそうに姉ヴィヴィオに尋ねる。
「うーん、お姉ちゃんにはわかんないなあ。でも、きっとユートとユーナが欲しがってたものだよ」
本当はなにが贈られるか知っているがそれを言うのは無粋というものである。
「本当?!」
ユートが目を輝かせて喜ぶ。
「兄さん、はしゃぎすぎです」
と妹のユーナが窘めるものの、彼女もサンタ帽子を被ってうずうずしている。
「はーい、みんなケーキだよー」
と、そこでなのは特性ケーキを抱えるユーノとなのはが登場して、子どもたちのテンションがあがっていく。
『ジングルベールジングルベール、鈴が鳴るー』
こうしてスクライア家のクリスマスはふけていった。
その夜、子ども達が眠りについたことを確認し、サンタのコスチュームに身を包んだユーノがその枕元にそっとプレゼントを置いた。
そして、部屋を出ようとして、
「サンタさん……」
娘の呟きにドキッとした。
そっと後ろを振り向くと、むにゃむにゃと眠り続けるユーナ。
寝言だったと安心してユーノは部屋を出る。
「お疲れ様サンタさん」
「お疲れ様ユーノパパ」
と、二人の妻がユーノを労う。
「はは、一瞬ユーナが起きたかと思ったよ」
と答えながら付け髭と帽子を外す。
この日のためにユーノは忙しい中、地球に言ってサンタクロースのライセンスを取ったりもしていたという。妙なところで凝り性なのだ彼は。
そして、三人でワインを飲みながら、大人だけのクリスマスパーティーを始める。
「早いもんでもう七年なんだね」
ふとユーノが呟くとなのはたちは吹き出した。
「あなた、それこの前の誕生日でも言ってたよ?」
ユーノはうっと唸る。
「でも、そうだね。そんなに経つんだもんね」
フェイトは天井を見上げる。
結婚から八年。子どもができて七年、いろいろなことがあったと。
特に実子より初孫の方が早かった時にはフェイトは特に驚いて喜んだし、離婚寸前の夫婦喧嘩だってあったりした。
それらも、今ではいい思い出だ。
「そうだ、二人にも……」
ごそごそとユーノは自分の取り出す。
「はい、クリスマスプレゼント」
と、ユーノは箱を差し出す。
その言葉に物思いにふけていたフェイトは慌ててプレゼントを受け取る。
「えっ? あ、ありがとう」
いきなりのプレゼントにフェイトは一瞬戸惑ってからにっこり微笑む。
「開けていいかな?」
なのはの問いにユーノはどうぞと笑う。
二人は包装を解いて、箱を開ける。
「わあ」
「素敵……」
知らず知らず二人は呟いていた。
なのはは魔力光を意識した桜色の綺麗な髪留め。
フェイトはネックレス。
だがその中心に三角の窪みがある。
「フェイト、バルディッシュ出して」
「え? うん」
ポケットからフェイトはバルディッシュを取り出す。
「填めてみて」
言われるままに填めるとぴったりとバルディッシュは収まった。まるでそこが昔からの定位置のように。
「いつもポケットだからレイジングハートみたいにできないかなって思ってね」
「ありがとうユーノ」
『Thanks sir』
嬉しそうにフェイトは笑う。
「ユーノくん、ありがとう」
なのはもさっそく髪留めを付けて愛する夫にお礼を言う。
いつの間にか昔の呼び方に二人は戻っていた。
「あの、ユーノ」
「ちょっと我がままだけど、私たちもう一つプレゼント欲しいな」
と二人は切り出す。
「えっ? うーん、僕にできるならなんでも」
の答えに二人は苦笑する。
だって今からのお願いはユーノにしかできないのだから。
そして、
「ユーナの新しい兄弟が欲しいの」
「ユートの新しい兄弟が欲しいな」
翌日、ユートとユーナはサンタさんからのプレゼント……自分たちだけのデバイス『グラム』と『ルシフェリオン』に喜んだ。
しばらくして、新たに兄弟ができることがフェイトから告げられて二人は喜んだ。特にユーナは下の姉妹ができることを特に喜んでいた。
ただ、そのことに少しの間なのはが少しだけ不機嫌そうだったことを記しておく。
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連続でこれでした。
なんとなく、いつの間にかできてたんですよ……