「闇の書の所在地、及び今回の闇の書に選ばれた主が判明した」
管理局本局にある、限られた士官にしか与えられない豪奢な一室に呼び出された二人の使い魔、リーゼアリアとリーゼロッテは、入室したと同時に自らの主が口にした思いがけないセリフに思わず息を呑んだ。
それもそのはず。今まで自分達が散々調査しても一片の情報も得られなかった闇の書が見つかり、さらにその主までもが判明したと言うのだから。これで驚くなという方が無理だ。
「父様、それは本当ですか? 嘘ではないですよね?」
寝耳に水に等しい情報に、二人は我知らず自らの主に詰め寄るように体を乗り出して真偽を問う。全く嘘をつく必要の無い場面だが、自分達の主、グレアムが年甲斐もなくお茶目な行動をたびたび取る事を知っている二人は、目の前の男性が「いやすまん、嘘だ」とかほざく可能性を捨てきれないでいた。
が、続くグレアムのセリフを聞き、それが杞憂であった事を知る。
「嘘ではない。というかこんな悪質な嘘つくはずが無いだろう。私はそんなに信用が無いのか?」
心外だ、という感じに眉をひそめる主に対して、二人は同じタイミングでコクリと頷き声を揃えて言う。
「信用出来ません」
「信用出来ない」
「……さて、ようやく闇の書が見付かったわけだが、二人にはこれからとある仕事を任せたいと思っている」
視線を横にずらし、グレアムは何も聞こえなかったというように話を進める。これも常の事なので、二人は小さくため息をつきながらも主の言葉に耳を傾ける。一応、闇の書が見付かったというのは嘘ではなさそうだからだ。
「ロッテ、アリア。お前達二人には、第97管理外世界に行ってもらいたいのだ」
「第97管理外世界? あれ、そこって確か……」
首をひねるリーゼロッテに対し、グレアムはうむ、と頷く。
「そう、私の故郷がある世界だ。昔、休暇の折に二人を連れて行った事があったな」
第97管理外世界。その世界にあるイギリスと言う国がグレアムの生まれ故郷であり、リーゼ姉妹は一度だけその国をグレアムと共に訪れたことがあった。
懐かしいな、と昔の出来事を思い出していたリーゼアリアは、ふと気付く。
「そこに行け、ということは、今回闇の書が転移した世界はその世界なのですね」
「その通りだ。なんとも皮肉な事にな」
そう言うグレアムの口調は軽いものだったが、その瞳には確かに怒りの炎が灯っていた。
闇の書を探している自分の故郷に闇の書が存在している。その事実にグレアムは憤りを感じずにはいられなかった。まるで自分をあざ笑っているかのように感じたのだ。
(あの世界に行けってことは、ひょっとしてあの国に闇の書があんの? 行きたくないなぁ)
グレアムがギリ、と歯をくいしばらせている横で、リーゼロッテは憂鬱な気分になっていた。
今回の任務、おそらくは闇の書とその主の監視になるのであろうが……
(イギリス……あの国って料理まずいんだよなぁ)
ロッテは思い出す。あの国に数日滞在していた間に味わった苦しみを。
出される料理、出される料理、全てがまずかった。いや、まずいと言うか味が無かった。どうやったらあんな味になるのか気になったので後で調理法を聞いてみたところ、彼らイギリス人には料理に下味を付けるという習慣が無いと言うのだ。信じられなかった。味が薄いと思うなら自分で付けろ、とテーブルに置かれた塩・コショウを指差された時は思わずコックを殴りたくなったものだ。
しかも味付けをしないだけではない。彼らイギリス人はわざわざ味が無くなる料理法を取っているのだ。野菜を煮るのは三十分、一時間は当たり前ってなんだ。あり得ないだろう。煮汁に染み込んだうまみと栄養が流し台に捨てられる様を見た時は発狂しそうになった。ブロッコリーは十五分以上煮るとビタミンの半分が流れるんだぞ!
「──ロッテ。ロッテ、聞いているのか?」
「……はっ」
グレアムの声に、ロッテは正気を取り戻す。意外と料理好きなロッテにとって、あの国の料理の酷さはトリップするほど彼女の心の中に根付いていたのだった。
「ああ、はいはい。えっと、くそまずい料理の国に行って闇の書と主を監視すればいいんだよね?」
「生粋のイギリス人の前でよくそんなセリフが吐けるな」
国名を出していないのにイギリスだと分かる辺り、グレアムも自国の料理の酷さは認めているのかもしれない。
「というかな、勘違いしているようだからもう一度言うが、イギリスではなく日本だぞ。監視に赴(おもむ)いてもらうのは」
「日本? どこそこ。料理は美味しい?」
質問するロッテに、グレアムは至極真面目な顔付きで答える。
「うむ。地球の極東に位置する小さな島国でな、魔法も使わずに分身したり消えたり出来るNINJAという超人や、刀で銃弾を弾きながら戦場を駆け巡るSAMURAIという武人がいたる所に隠れ住んでいる国なのだ。料理はSUSHIという人魚の肉をさばいて酢飯に乗せた物が人気だと聞くぞ」
「なんてデンジャーな国……」
戦慄する二人だが、おののく使い魔を見ながら口元をピクピクさせて今にも吹き出しそうなグレアムに彼女達は気付かない。
からかい甲斐のある使い魔だなぁ、とグレアムは密かに思い、しかし口には出さない。可愛い娘達にはいつまでも可愛いままでいてほしいからだ。
後でバレてえらい目にあうのは自分なのだが、グレアムはそれもある意味父と娘のコミニュケーションと捉えていた。この男、本当にお茶目である。
「それでも治安はかなり良い方だぞ。……幼女が一人で公園で遊んでいても平気なくらいな」
「なんで例えに幼女を出すんですか……」
最近、自分達の主が道行く年端もいかない女の子を目で追っている姿を見ると、どうにも不安が隠せなくなるリーゼ姉妹であった。まさか、うちの主に限ってそんなことあるわけないよね? と自問自答するくらい。
「ん?」
長年寝食を共にしてきた敬愛するべき主の新たな性癖の目覚めに戦々恐々していた二人は、そこである疑問を覚えた。
「そういえば、父様は一体どうやって闇の書の存在を知ったの? アタシ達が仕事の合間を縫って雨の日も風の日もクタクタになるまで探索を続けても全くと言っていいほど成果が得られなかったっていうのに、こんなにアッサリ見付けるなんてどんな魔法を使ったの?」
ロッテの微妙に恨みがましい視線を受けたグレアムは、真っすぐ彼女の顔を見返しながら威風堂々と語り出す。
「うむ。そう、あれはつい先日のこと。私は連日の激務で荒んだ心を癒すため、有給を使って第97管理外世界に行って来たのだが──」
そこで、話し始めたグレアムの言葉を遮ってアリアが口を挟む。
「あれ? 聞いてませんよそんなの」
「ああ、言ってないからな」
自分だけ有給使いやがって! 私達なんて仕事と調査に挟まれてここ一年はまともに休んでないってのに……!
憤る可愛い二人の娘から目を逸らしたグレアムは、コホンと一度咳払いしてから仕切り直す。
「で、だ。祖国に帰って優雅に紅茶を嗜んでいた私は、なんとなく、そう、本当になんとなく日本のSUSHIが食べたくなってな。転移で向かう事にしたのだよ」
「SUSHI……!」
「人魚の肉……!」
なんてチャレンジャーな、と怒りを忘れて再び戦慄する二人を、ニコニコ、いやニヤニヤと見ながらグレアムは言葉を続ける。
「それで、日本に着いたのはよかったのだが、肝心のSUSHIがどこで食べられるのか分からなくてな。日本を代表する料理だから適当に歩いてれば店が見付かるかと思って、フラフラと探し回ることにしたのだ」
おのぼりさんの外国人丸出しの行動を取ったグレアムであったが、その行動が功を奏することになる。なぜなら……
「その時にな、偶然通りかかった公園で一人の少女を発見したのだよ。三、四歳ほどのな。見てみると、その少女には未発達ながらもリンカーコアがあり、怪しげな魔力のラインがどこかから繋がっていた。疑問に思った私は、両親に連れられて家に帰るその少女の後を付けていった。そして、発見したのだよ。その子の家の中で、鎖に繋がれた未起動状態の闇の書を」
若干興奮しながら説明するグレアムに、少し引き気味にリーゼ姉妹が質問する。
「あの、父様。家の中で発見したってことは、もしかして勝手に家に上がり込んで家探ししたんですか?」
「いや、それより幼女をストーカーしたわけ? おいおい、まさか本当にロリ──」
「そんなことはどうでもよろしい。とにかく、私は見付けたのだよ闇の書を。結果が全て。過程など顧(かえり)みるものじゃない」
管理局歴戦の勇士がそれじゃいかんだろう、と思うが、二人は反論するのを諦める。この主に何を言ったところでのれんに腕押しなのは火を見るより明らか。長い時間を共に生きてきたが、主が自分達の忠言にまともに耳を貸したことなんて数えるほどしかないのだ。
諦め癖の付いたリーゼ姉妹は今まで何度ついたか分からないため息をつくと、気を取り直してこれから自分達が行うであろう任務について主に確認を取る。
「まあ、闇の書が見付かったんならなんでもいいけどね。それより、今の話の流れからすると、今回の闇の書の主ってその女の子ってことになるよね」
「私達の任務はその子と闇の書を監視して、邪魔者が現れれば排除。闇の書の起動後は守護プログラム達の蒐集行為を援助し、管理局が介入してくるようだったらその妨害をする、と。そして、その後は……その、後は……」
言いごもるアリアを見て、ロッテも悲しそうに目を伏せる。そんな二人の反応を前にしたグレアムも、一旦上を向いて目をつむり唇を噛み締める。が、その後、再度二人に向き直り、覚悟を持って、はっきりとした口調で言い放つ。
「その後は、蒐集を完了した闇の書の暴走を待ち、暴走を開始した瞬間に私が凍結魔法にて闇の書を永久凍結させる。……闇の書の主共々にな」
断固たる決意と共に、グレアムは宣言する。闇の書の主を、闇の書にランダムに選ばれた罪無き少女を殺すのだと。
「………」
「………」
二人の使い魔は、自らの主がどんな思いを持ってそう告げたのかを正確に察知していた。
精神リンク。
主と使い魔の間では潜在的に精神が繋がっているため、使い魔は主の感情の起伏や喜怒哀楽を敏感に察知する。今現在、グレアムからリアルタイムで流れ込んできている感情は、闇の書に対する深い怒り、計画が上手くいくかどうか分からないという不安。そして、殺さなければならない少女への懺悔の気持ちと、強い悲しみ。
ここまで強い感情が流れ込んできたことは今まで無かった。そのことにリーゼ姉妹は気付き、少女を思ってこれからどれほど主が苦しむことになるのかをも知る。
ならば……
『アタシ達も、背負うしかないよね』
『そうね。父様一人だけ苦ませるわけにはいかない。私達使い魔も一蓮托生よ』
念話にて、主と共に少女の命を奪う覚悟を決める。自分達のことをよくからかったりおちょくったりする主だが、数十年間共に歩んできた大切な家族でもある。今まで苦楽を共にしてきたのだ、なら、今回だって苦しみを一人占めさせるなんて出来ない。自分達は家族なんだから、悲しみも、苦しみも、分かち合うべきだ。
リーゼ姉妹は顔を見合わせて頷くと、拳を握り締めるグレアムの手を取る。
「ホントにしょうがないよね、父様は。自分一人だけ肩肘張っちゃって」
「そうですよ、私達、家族でしょう? 家族は支え合うものです。どんな時だって」
「……お前達」
グレアムは娘達に握られた手を見て、そして次に二人の顔を見ると、苦笑しながら彼女達の頭を順に撫でる。
「済まんな。いらん気遣いをさせてしまったようだ」
撫でられた二人は気持ち良さそうにのどを鳴らすが、ハッ、と正気に返ってグレアムから離れる。……名残惜しそうに。
「そ、それより任務についてです。監視するというのは分かりますが、私達二人一緒に行け、というわけではありませんよね。やはりローテーションを組んで張り付くことになりますか?」
「そうなるな。ああ、そうそう。お前たちの仕事の方は私がちゃんと調整しといたから、二人で交代しながら監視に当たればそれほど支障はないはずだ」
「さすが父様、仕事が早いね」
「それほどでもない」
謙虚だ! とわざとらしく驚くリアクションを取る娘達に心の中でもう一度お礼を言いながら、グレアムは懐から小型のイヤホンを取り出して二人に渡す。
それを受け取った二人は疑問の表情を浮かべてグレアムの顔を見る。
「父様、これなに?」
「受信機だ。高性能のな」
受信機? と再び疑問符を浮かべる二人に、グレアムは懇切丁寧に答える。
「少しでも情報を得たいのでな、あの家に盗聴器を仕掛けさせてもらった。これはその受信機というわけだ。半径十キロ以内ならどこからでも聞きとる事が出来る優れ物で、自動録音機能も付いている。ミッドの高度な技術力が無駄に詰まった素晴らしい一品だ」
「と、盗聴。……そこまでやりますか」
「私だって好き好んでやりたいというわけではない。だが、これがあれば守護プログラム達の行動範囲や、闇の書の進捗(しんちょく)状況などが分かるかもしれないだろう?」
意外とまともな理由にリーゼ姉妹は、なるほど、一理ある、と頷く。リーゼ姉妹のグレアムに対する評価が一段階アップした。
「いいか? 録音した音声は消さずにちゃんと私の下に送り届けるんだぞ。特に、少女のあどけない笑い声などは絶対に消してはならんぞ。いいか、絶対だ」
『こいつの喜びそうな音声は編集して送り届けるべきだね』
『そうね、そうしましょう』
リーゼ姉妹のグレアムに対する評価が三段階ダウンした。
「分かりました、録音した音声はそのままお届けします」
「うむ。それでは、さっそくで悪いのだが今日から監視任務についてもらいたい。ロッテ、頼めるか?」
「うん、了解、父様」
グレアムから闇の書の主が住む家の住所と地図が書かれた紙を受け取ったロッテは、グレアムに一礼すると、アリアの肩を叩いて「おっさきー」と言って元気よく部屋を出て行った。
そんな素行の悪い双子の姿を見送ったアリアも、
「では、失礼します」
「ではな。……頼んだぞ、二人とも」
行儀よく主に一礼し、ロッテの後を追って部屋を出る。
「………ふう」
一人部屋に残ったグレアムは、小さく息を吐いて部屋に備え付けられたソファーにもたれかかる。
(済まんな、二人とも……)
グレアムは心中で二人に謝罪する。
双子の使い魔、ロッテとアリア。あの二人には苦労ばかりかける。しかも、今回のそれは計り知れない。なんせ、殺人の片棒を担げと言っているようなものなのだから。
しかし、あの二人は拒否するどころか私の心中を慮ってくれさえした。本当に頭が下がる。
……頭が下がると言えば、あの少女にもか。いや、彼女には土下座するほど頭を下げても足りないくらいだな。永久凍結と言っても、殺すという事には変わりないのだから。
「……待てよ。永久凍結?」
あどけない少女が、無垢な表情で氷の中で眠りにつく。その姿はまるで聖母のように神々しく、可憐で、美しいものだろう。
って、何を考えているんだ。そんな、殺した少女を見て美しいとか、不謹慎な。
……そんな、なぁ?
「……さて、凍結魔法の訓練でもしてくるか」
デバイスを片手にグレアムは自室を出る。
その後、訓練室で「もっと、もっと透明感を!」とか叫びながら凍結魔法の訓練に勤しむ管理局歴戦の勇士の姿が見られたとか、見られてないとか。
「おー、ここが日本か~」
グレアムからの任務を請け負ったロッテは、中継ポートを介して転移し、ここ、第97管理外世界、惑星「地球」へと降り立った。
今彼女が物珍しそうに歩いているここは、日本の関東に位置する都市、海鳴市。中心部にはビルが立ち並んでいてまるで都心を思わせるが、周辺には森や山が多く残されており、綺麗な海も脇に控えているという風変わりな場所である。
そんな海鳴市内を練り歩くロッテは今、とあるお店を探して街中をフラフラとさまよっていた。
(監視の前に腹ごしらえしても怒られないよね)
彼女が探している店、それは……
(SUSHI! 父様の話を聞いて食べてみたいと思ったんだよね~)
怖いもの見たさというのもあるが、これから長い事滞在する国の代表的な食べ物とはどんなものなのか、一度食してみるべきだろう。そうすれば、この国の食文化のレベルがある程度推し量れるはずだ。もしイギリスと同程度とかだったら携帯食料持ってこなきゃならないし。
ゴクリ、と未知の味に挑戦する緊張感に思わず喉を鳴らし、ロッテは探索を続ける。
(SUSHI……すし……寿司、と)
自らに翻訳魔法を掛けながら店を探し続けること三十分。
「お……発見!」
ついに目的の店、寿司屋を発見した。扉の横には「営業中」の木札が下げられている。よし、あそこに決めた。
ガララ!
「へい、らっしゃい。一人かい?」
「うん」
「好きなとこ座ってくれ」
ロッテが扉を開けると、そこでは細くねじった手ぬぐいを坊主頭に小粋に巻いた板場のオヤジが包丁を研いでおり、彼は入店した彼女の顔を一瞥すると無愛想に席へと促した。
ロッテは彼の接客態度に気を悪くするでもなく素直に近場の席に座り、ガラガラの店内を見まわしながらオヤジに話しかける。
「ねえねえオジさん。この店大丈夫? 昼時なのにお客全然居ないじゃん」
おしぼりと湯呑みをロッテの前に置いたオヤジは、辛辣な小娘のセリフにぐさりとダメージを受けるが、それを表に出さずに無表情で返す。
「はっきり言うねぇ、嬢ちゃん。でも安心しな。味は保証できるぜ」
「ならいいけど。メニュー見せてよ、メニュー」
「メニューじゃなくて品書きだ。ほら、そこの壁に掛かってるだろ」
言われて、ロッテは横の壁に掛かっている文字が書かれた木札を見る。
イカ、ホタテ、びんちょう、えび、まぐろ、サーモン、たまご、アナゴ、数の子、etc……。知っている食材もあれば知らないものもある。
が、ちょっと待て。父様の話ではSUSHIとは人魚の肉を使用した料理のはず。しかしどこにも「人魚」と書かれた木札は下がっていない。これはどういうことなのか。
「ねえ、オジさん。ここってSUSHIを食べさせる場所でしょ? なんでたまごとかイカとかあんのさ。人魚の肉はどこ?」
「ああ? 何言ってんだ嬢ちゃん。そんなんあるわけねえだろうが。あったとしてもどうやってさばけってんだよ」
「え? だって人魚の肉をさばいて酢飯に乗せた物がSUSHIなんでしょ? 日本で大人気って聞いたけど」
「外人さんはこれだから……」
事ここに至って、ようやくロッテはグレアムが自分達にデタラメを教えていたということに気付く。
「えっと、なんか勘違いしてたみたい。ちなみに本当のSUSHIってどういうのなの?」
「簡単に言えば酢飯に魚介類の切り身を乗せた物だ。魚肉は乗せるが人魚は乗せないぞ」
惜しい! でも全く違う!
あのジジイ……帰ったら健康に良い料理と偽って激辛料理食わせてやる。今世紀最大の奴を。
そう反骨心を露わにするロッテに、オヤジは面倒くさそうに質問する。
「で、注文は?」
「あー、適当でいいや。オジさんのオススメをちょうだい」
「あいよ」
お茶目なグレアムのイタズラによって、またもやいらぬ恥をかいてしまったロッテであった。
……で十分後。
「うんまぁー! 何これ、うまー! これがSUSHI!」
「良い顔で食うねぇ、嬢ちゃん」
常連になろう。そう心に誓ったロッテであった。
あとがき
今回、初めて三人称(一人称寄りの三人称?)で一本書いてみました。これからも使っていこうと思うのですが、ここおかしいだろ! ここはこうした方がいい、といった場所がありましたら、教えていただけると助かります。
次回、それとたぶんその次も今回の外伝の続きになるかと思います。
ちなみにロッテが料理好きとか、今回色々と独自設定入ってます。