【俺の日記2スレ目】(勝手に見たらエロいことする)
『8月26日 快晴
前回で日記帳を書ききってしまったので新しく日記帳を購入した。しかし、まさかこんなに続くとは思わなかった。てっきり一週間くらいで飽きて放棄するかと思ってたんだが、書いてみると意外と楽しいことに気が付いて、こんなに長続きしてしまった。なんでもやってみないと分からんもんだな。
それはそうと、今日の出来事。
ネコ耳娘の発案により、寮の住人達と海に行ってきた。ここ海鳴市は周辺を海や山に囲まれているので、漫画女の車で山を下りて少し進んだら、すぐに海に着いてしまった。
ちなみに住人全員が参加したわけではなく、愛さんや、その他の用事がある何人かは来れなかった。愛さんの水着姿が拝めなかったのが今でも悔やまれる。
海に着いた俺達は、浜辺の人間の注目を浴びながらスイカ割りやビーチバレーを楽しんだ。若くて可愛い女ばかりだから注目を浴びるのも仕方ないだろう。
とか思っていたのだが、よく見たら注目を浴びてたのはネコ耳生やした女と半透明の幽霊の二人だった。そういえば、今ではもう当たり前の光景になったが、端から見ればやっぱ異常だよな、アレ。異常と言えば、ここの寮の住人ほぼ全員が異常なわけなんだが。
まあ、そんなこんなで周りの人間にケータイのカメラでパシャパシャと写真撮られながらも、俺達は夏の海を満喫した。
ていうか、ネコ耳娘は耳引っ込められるし、幽霊は実体化できるのになんでしなかったんだろうか。ちょっとは周りの人間に気を遣えっちゅーの。
……それにしても、漫画女の胸、でかかったなぁ。今度アシスタント代の代わりに胸揉ませてもらおうか。寝る』
『9月1日 暗雲立ち込める空
アシ代いらないから胸揉ませろコラァ、と言ったらキンニクバスターを掛けられた。奴は48すべての必殺技を使えるらしい。なんて奴だ。
それは置いといて、今日の出来事。
9月に入り夏休みが終わったため、寮に居る学生達は今日から再び学校に通いだした。夏休み中は、中華娘と空手女が暇があれば俺を鍛えようと修業を迫って来ていたので、これでようやく一息吐けるといった感じだ。
朝、学校に行く学生達をうまい棒食いながら見送った俺は、最近ようやく仲が良くなり始めた電撃幼女と一緒にゲームをして午前を過ごし、昼から夕方にかけては漫画女のアシ、夕方から夜にかけては修業をして午後を過ごした。ここら辺はいつも通り。
だがしかーし! 今日の夜、とうとう念願のエロハプニングが起きたのだ。お風呂場で裸のあの子と俺がこんにちわ。ワンダフォー!
……なんてことが起きたらいいなー、とか思いながら今日もモンモンとした夜を過ごす俺だった。寝よ』
『9月23日 雲一つない青空
今日は愛さんと大事な話をした。俺の今後の事についてだ。
親や家の捜索活動を続けているとはいえ、見付かる可能性は絶望的だと悟った愛さんは、なんと、俺に戸籍を用意してくれると言った。
それはつまり、俺を引き取って養子にするということなのか? と思って聞いてみたのだが、そういうわけでもないらしい。
どうやら愛さんは俺を学校に通わせたいようなのだ。知識は大学生並だとしても、義務教育期間真っ最中の俺がずっとこの寮に閉じこもっているのは、やはりまずいと思ったとか。あと、同世代の友達が居ないのはかわいそうだとも。
どうせもうしばらくしたら出て行くから戸籍とか必要無い、と一瞬思ったのだが、上手くすればなのは達の通う学校に行けるんじゃね? と思い直した俺は、愛さんに了承の言葉を返しておいた。なのは達と仲良くなっておいて損は無いし。
ただ、戸籍ってそんなに簡単に作れんのか? と疑問に思って質問してみたところ、やはりそれなりに時間が掛かるらしかった。
俺の場合は記憶喪失だから本来は戸籍がすでにあるはずだとか、だとすれば二重戸籍がどうだとか、家庭裁判所に就籍許可をどーたらこーたらなどと、愛さんが言うには、中々面倒な手続きをしなければならないそうで、実際に戸籍を得るには最低でも数カ月は掛かるだろうとのこと。
それまでは学校に通えない(自治体に相談すれば通えるかもしれないとも言っていたが、どうしても通いたいというわけでもないので断わっておいた)けど我慢して、と愛さんが頭を下げてきたが、頭を下げたいのは俺の方だった。愛さんにはホント苦労掛けるぜ。
しかし、学校か。クリスマスまでに通えるのかな? 出来れば一回くらいはアリサとテスト勝負して、「なんでアンタみたいな奴が満点取れるのよムキー!」とか言わせてみたいぜ。さて、寝るか』
『10月11日 素晴らしい天気
今日は体育の日。だからどうだというわけではないが、なんとなく書いてみた。
最近では、もう寮の住人達の全員と仲良くなり、あだ名で呼び合う仲にまでなった。みんなが俺をこの寮の住人と認めてくれたようで、少し嬉しい。
ただ、修業中に中華娘と空手女のことをそれぞれ、「このカメ!」、「このおさる!」と親しげにあだ名で呼んだら、二人にツープラトンを仕掛けられて空中コンボを喰らった。なんでだ。あいつらいつもそう呼び合ってるのに。
派手にボコられた俺は、庭をふよふよと漂っていた幽霊に怪我を直してもらった後、再び鍛錬を再開し、夕食まで修業に明け暮れた。
なんだか最近、空手女達と組み手をするのが楽しくなってきた。型を覚えて、技を覚えて、動きを覚えてきたからだろうか? 反射神経や動体視力も上がった気がするな。
それでも相変わらずボコボコにされてるんだがな。しかも、やり過ぎても幽霊が直してくれるから大丈夫とか言って、九歳の貧弱ボディにあいつらは容赦なく攻撃してきやがる。鬼か。
組み手ではいまだに触れることすら敵わないが、俺がここを去るまでにはせめて一発は喰らわせたいぜ。……胸に掌底を。
サイヤ人みたいに死の淵から蘇るたびに強くなる特性を神様に付けてもらえばよかったと思う今日この頃。寝よ』
『11月23日 fine weather
今日は俺の冬物の服を揃えるために、愛さんと一緒にデパートまで行ってきた。本当は一人で買いに行く予定だったのだが、愛さんもデパートに用事があったらしく、せっかくだから一緒に行こうと押し切られたのだ。
デパートに着いた俺は、冬物の服とうまい棒百本を買ってすぐに自分の買い物を済ませたのだが、愛さんの用事が長引きそうだったので、暇を潰すために一旦愛さんと別れてデパートの中を見て回ることにした。
あのデパートは変な物を取り揃えていることで有名で、見ているだけでも割と楽しかった。
しかし、まさかこの年になって館内アナウンスで迷子の呼び出しをされるとは思わなかった。勝手に愛さんから離れた俺も悪かったんだが。
愛さんと合流した後、俺達は近場のレストランで昼食を済ませたわけなんだが、あそこのウェイトレスはなんで日本刀を腰に差していたんだろうか。誰も気にしている様子が無かったから俺も無視していたが、やっぱアレおかしいだろ。謎だ。
昼食を食べ終えた俺達は、そのまま寮に戻っていつも通りの一日を過ごした。
それにしても、寮とデパートの往復の際に乗ったあの赤い車、何回エンストしたっけ? いい加減車買い換えればいいのに。寝る』
『12月10日 <●><●>
十二月も中盤に入り、いよいよクリスマスが近づいてきたとwktkしていた俺に、ビッグニュースが飛び込んできた。なんと、近いうちに愛さんが温泉旅行に連れて行ってくれるというのだ。
温泉。なんと心惹かれる響きか。
やっぱりあれだよな。温泉といったらのぞきだよな。日本男児たるもの、温泉旅行で風呂をのぞかなければ婦女子に対して失礼というものだろうし。
時間が取れる寮の住人も誘って行くということで、さらに楽しみが増えた。やばい、興奮して眠れないかもしれん。でも寝る』
『12月19日 \(^o^)/
温泉旅行当日。今日、俺はかけがえのない友(同志)を手に入れた。
幾多の試練を共に乗り越え、協力し、俺達はあと一歩のところまで行った。しかし、その一歩が届かなかった
でも、それでもいい。俺はこの世界に来て、初めて心の友を見付ける事が出来たのだから。
惜しむらくは、名を聞き忘れたということか。だが、俺は奴のことを忘れないし、奴も俺のことを忘れないだろう。それだけは確実に言える。なぜなら、俺達は同志なのだから。
それに、奴とはまたいつかどこかで会える気がする。その時には、再開の喜びを分かち合うとしよう。
名も知らぬ同志よ。また会える日を楽しみにしているぜ』
『12月24日 晴れ (この日記は朝に書いたもの)
今日はクリスマスイブ。とうとうA's編の決戦日であるクリスマスが明日に迫った。いや、戦闘が起こるのは正確にはイブの夜からクリスマス当日の早朝までだったな。
長かった。ここまでくるのに半年掛かった。しかし、残すところあと半日。夜になれば俺は管理局と接触し、魔導師への道を歩むことになるだろう。
そうして、管理局の任務に従事して手柄を立てて、いずれはエースと呼ばれる存在に。目標はやっぱこれだよな。
……ただ、正直俺はこの寮を出ていくことに抵抗を感じてしまっている。
この寮は、心地良すぎたのだ。初めは住人の非常識さに呆れたものだが、時が経つにつれてそんな住人達とも仲良くなり、やがて、家族とも言えるような絆が芽生えていった。これは、俺の一方的な勘違いではないと思う。
だから、離れるのが辛い。管理局に務めるようになれば、そう易々(やすやす)とは地球に戻る事は出来ないだろうし。
いや、なのはとかは嘱託魔導師になって学校に通いながらも管理局の仕事を両立していたようなんだが、魔法の魔の字も知らないようなペーペーの俺は、しばらくは座学や訓練に時間を費やすことになるだろうから、やっぱり気軽に帰って来るってのは出来そうにないよなぁ。
だが、俺は魔法を使うためにこの世界に来たんだ。この寮で過ごす日々も楽しかったが、魔法という未知の力の魅力には抗いきれん。
決めた。俺はミッドチルダに行く。そうしてミッドチルダで魔法を学び、強くなって、魔導師としての自信が付いた時、その時に、挨拶をしにここに戻ってこよう。俺はこんなに強くなったぞ、と。
ああ、最後まで中華娘と空手女には一発も攻撃が当てらんなかったな。戻ってきた時に、また組み手してもらうとしよう。その時には攻撃が当てられるよう、ミッドチルダでも鍛錬は続けるか。
この日記がここで書く最後の日記になるかな。まあ、ミッドでも書き続けるとは思うが、なんか妙な達成感があるぜ。感無量ってのは今のような状態を言うんだろうか。
そういや、結局学校には通えなかったな。これも心残りと言えば心残りか。まあいいや。
さて、夜に備えて昼間はゆっくりするとしよう。
さらば海鳴。俺はいつか帰って来るぞ』
『12月25日 orz
ただいま海鳴。俺は帰って来たぞ。まあ一日たりとも離れてはいないんだがな!
あり得ない。あり得ない。あり得ないなんてことはあり得ない? 何でもいいけどとにかくあり得ないことが起こった。いや違う。起こるはずの出来事が起こらなかったのだ。
そう、イブの夜に病院付近で起こるはずの戦いが、起こらなかった。
昨日の夜、俺は誰にも見付からないようにこっそりと寮を抜けだし、山を下りて街に向かった。そして、はやてが入院しているであろう病院の近くにあるコンビニに入り、しばらく時間を潰していた。
だが、いくら待っても結界が張られることはなかったし、近くで魔法バトルが展開されることもなかった。
疑問に思った俺は、コンビニを出て病院付近をウロウロしていたのだが、日付が変わる時間になっても周りの景色は変わる事は無かった。
日付を間違えたかとも思ったが、生粋のなのはファンである俺がそんな凡ミスを犯すはずがない。なら考えられる可能性は、俺の体の中にはリンカーコアが無いから結界の中に入ることが出来ない、くらいだが、それこそあり得ないだろう。
だって俺、オリ主だぜ? 神様に転生させてもらったんだぜ? リンカーコアの無い転生オリ主なんて居るはずないじゃん。
だから、要因は他にあるはずだ。だが、それが分からない。
そうして何も分からないまま時間が過ぎていき、結局俺は朝方にさざなみ寮に戻ることにした。管理局と遭遇出来なかったら寮に戻るしかないし。
寮に戻った俺は、一体何が原因でこんなことになったのか一日中部屋に籠って考えていたのだが、この日記を書いている今になっても答えは分からない。
ああ、もう頭使いっぱなしで疲れた。今日はもう寝る』
「ふう……」
パタン、と開いていた日記帳を閉じて溜息を吐く。
どんだけ考えてもどうしてこうなったのかまったく分からん。原作通りなら今日の朝にはすべての決着がついているはずなんだが、なんで何も起こらないんだよ。わけ分かんねえ。まさか決戦の日時がずれてるのか? そんなわけねえよな。
「……寝よ」
一日中考え事をしていたおかげで頭が痛い。取り敢えず今日はもう寝ようと思い、俺は電気を消して部屋に備え付けられたベッドに倒れ込む。が、横になってもなかなか寝付けずにいたので、意識が沈むまで今後の予定を軽く整理していくことにした。
「これからどうすっかな……」
こうなったら明日あたりにでも、引かれるのを覚悟でなのは達に管理局を紹介してもらうか? 管理局と接触する手段はもうそれくらいしか残されてないし。
いや、でも別に今すぐでなくとも構わないか。もうそろそろ戸籍が作れると愛さんが言ってたし、そうすればなのは達の学校に通うことも可能かもしれない。
同じ学校に通えばなのは達と友達になるチャンスはあるだろうし、仲良くなった後、俺の魔法無効化能力を教えた上で魔法の勉強をしたいと伝えれば、引かれることなく管理局に紹介してもらえることだろう、たぶん。
回りくどいかもしれんが、やはり未来の同僚とは良好な関係を保っていたいからな。
学校に通ってなのは達と仲良くなる。取り敢えず当面の目的はこれでいいか。焦ってもいいことは無いしな。
「………」
考えもある程度まとまってきたところで、いい感じにまぶたが重くなってきた。もう意識を保つのも限界か。
おや……す……み………
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!」
「うおおおおお!?」
夢の世界に旅立つ直前、いきなり部屋の中に叫び声が木霊して、俺の意識は覚醒を促された。
驚きつつベッドから飛び上がって周りを見渡すと、いつの間にやらドアの前に人影が立っているのに気付く。暗くて顔はよく見えないが、なんか変な恰好してるような……
「……テメエ、誰だ。どうやって入った」
「気にしたら負けだ、小僧。そんなことより、幸薄そうなお前にビッグなプレゼントをやろう。泣いて喜べ」
……なんだこいつは。突然部屋に現われて大声上げたと思ったら、電波なことを言い出しやがって。頭おかしいんじゃねえのか?
「ほれ。最後のとっておきのプレゼント、インテリジェントデバイスじゃん。友達が少なそうなお前にぴったり。こいつと話して寂しさを紛らわせるといい」
「余計なお世話……って、デバイス!?」
電波なことを言いつつ、怪しさ満点の闖入者(ちんにゅうしゃ)は持っていた大きな袋におもむろに手を入れ、すぐに引き抜く。その引き抜かれた手には、シルバーチェーンのようなものが握られていた。
「ほら、もっと腕にシルバー巻くとかさあ」
「え? お……と」
そして、ぞんざいに扱うようにいきなりそれを俺に放ってきた。俺はなんとかそれを空中でキャッチし、手に握ったチェーンをまじまじと見る。
え、何これ? もらっていいの? というかホントにデバイスなの?
「ではな。せいぜい大事にすることだ」
意味不明の行動に呆ける俺を一瞥(いちべつ)すると、謎の侵入者は背を向けて去って行こうとする。
「いや、ちょっと待てって。お前いったい何なんだよ? なんでこんなもんをくれるんだ?」
その俺の言葉に、奴は振り返らずに楽しげに答える。
「拙者はただのサンタクロースでござる。サンタが子どもにプレゼントを配るのは当然だろう?」
「いや、サンタてお前……」
「ふはーははは! さらば!」
「あ、ちょっ」
けたたましい笑い声を上げると、奴は俺の制止の言葉も聞かずに隣の部屋を隔てる壁に突っ込み、この寮に住む幽霊のようにすうっと通り抜けてしまった。
「何だったんだよ、一体……」
静寂を取り戻した部屋に一人取り残された俺は、奴が消えていった壁を見つめながら呟く。
突然現れて、突然プレゼント渡して、正体も明かさずに去っていく。サンタとか言ってたが、んなわきゃねーだろうし、マジで何者なんだっつーの。
と、そんな風に眉をひそめつつ佇んでいると──
ドガァッ!
「うおっ!?」
奥の方から何かを破砕する音が聞こえてきて、続けざまに建物の崩壊音までが重なった。
さらにそのすぐ後、
『覚えてろよー! 来年のクリスマスもまた来ちゃうもんねー!』
と、さっきの侵入者の叫び声までが聞こえてきた。……あいつ、何やってんだよ。
気になった俺は、部屋を出て音のした廊下の奥に行き、何があったのかを見てきたのだが、なんか天井とか壁が悲惨なことになっていた。
その場に居た住人に何があったのか事情を聞いてみたところ、不審人物を見付けたので捕らえようとしたのだが、相手が思わぬ強敵だったので思わず本気でやってしまったとのことだった。それでも取り逃がしてしまったらしいが。
何をどうやったら天井を壊せるのかが不明だが、ここの住人たちには常識は通じないことは十二分に理解しているので、俺は「へえ、そうなんだ」の一言を残して部屋に戻った。人外連中の非常識さに付き合ってたら、疲れるだけだと判断したからだ。
で、部屋に戻った俺は今何をしているのかというと、自称サンタにもらったシルベーチェーンを手に持ち、ベッドに座ってそれをいじくり回している。
あいつはこれをデバイスだと言っていたが、本当にそうなのだろうか。確かに、小さな宝石のような物が取り付けられてて普通のチェーンとは違うようだが、どうにも胡散臭い。
しかし、本当にこれがインテリジェントデバイスだと言うのなら、何か反応があってもいいと思うのだが。
『Please……』
「お?」
俺が疑問に思いつつチェーンをいじくっていると、そこでようやく反応があった。
『Please call my name……』
私の名前を呼んでくださいってか。こりゃまじでデバイスっぽいな。しっかし、インテリジェントデバイスなんて高価なもんポンポンとプレゼントするあのサンタはマジで何者だよ。まあ、デバイスもらえたのは嬉しいんだが、喜びより不信感の方が強いんだよな。
『Please call my name……』
……取り敢えず、今はこいつの相手をしてやるか。なんか今にも泣きそうな感じで必死に呼びかけてきてるし。
「あー、名前呼べって言われても俺そんなの知んないぜ。それとも、まだ名前が付いてないから俺に名前を決めろと、そう言ってるのか?」
『!? Yes, that's right! Just like that!』
「日本語でおk」
『……失礼。その通り、あなたに名前を決めてもらいたいのです』
おお、即座に日本語に切り替わった。便利だなぁ。
「っと、そうだ。一つ聞いときたいんだが、名前を決めるってことは、俺がお前のマスターになってもいいってことか?」
デバイスに拒否権は無いと思うが、一応聞いておこう。もしかしたら、こいつが俺の生涯のパートナーになるかもしれないんだし。
『私達デバイスは人間に使われることが存在意義なのです。誰であろうと私を使用していただけるならば等しくマスターです。もう暗い倉庫の中に放置はまっぴらごめんです』
……こいつは一体今までどんな人生(?)を歩んできたんだろうか。なんか悲壮感がにじんで見える。
「そういうことなら構わないか。なら、これからよろしく頼むぜ」
『はい、こちらこそ』
「んじゃ、さっそく名前を付けてやるとするか」
つってもなぁ、はっきり言って、俺ってネーミングセンス無いんだよな。学校で友達に付けるあだ名は軒並み却下されて採用されたことねえし、家で新しく飼うことになった猫の名前も、俺の付ける名前はダサいからっていつも弟が付けてたしな。
『………』
うう、期待した眼差しで俺を見つめている気がするぜ。これじゃ下手な名前はつけられんな。
「……よし、決めた」
そうして一分ほど頭を悩ました俺は、いつまでも考えているのもアレなので、思いついた中で比較的マシな名前を口に出すことにした。これは別にダサくはないよな?
「いいか? お前の名前は……」
『私の名前は?』
一度息を吐いてから、もったいつけるように名前を呼ぶ。そう、俺のパートナーとなるお前の名前は……
「ひろし」
『……ほ、ほほう。ひろしですか。な、なかなか良い名前ですね。気に入りました。ええ、気に入りましたとも!』
なんで投げやりそうに答えてるんだろうか。でもまあ、気に入ってくれたのならなによりだ。俺のネーミングセンスも捨てたもんではないのかもしれない。
「じゃあ、ひろし。魔法も使ったこともない俺だけど、これからよろしく頼むぜ」
『はい、マイマスター。どこまでもお付き合いいたします』
うーん、チェーンと話すってのも慣れないなぁ。ま、これから長い付き合いになるだろうし、追々慣れていけばいいか。
「あ、そういえばさ、お前が俺をマスターとして認めてくれるってことは、俺には魔力資質、リンカーコアがあるんだよな?」
『ええ、その通りです』
そうだよな! やっぱオリ主はそうでなくちゃ。
「じゃ、じゃあさ、俺ってどんな感じよ? すごい魔力とか持ってたりしちゃうわけ?」
将来機動六課に入ってスカ達と対峙するためには、最低でもせめてAAランクくらいは欲しいところだ。いや、俺はオリ主なんだからオーバーSはあってもおかしくないか。ふへへ。
「そうですね、時空管理局基準の数値で言えば、現在のマスターはDランク相当の魔力量を有しています」
ふへへ……へ?
……ちょい待ち。今このひろし君はなんて言った? えーと、D、D、D……
「Dカップか。うん、俺もそれくらいのでかさの方が好みだな。小さすぎてもでかすぎてもいかんよな。あ、でもシグナムは別な?」
『私は小さい方が好みですね。って、胸の大きさではありません。マスターの保有魔力量の話です』
「聞きたくなーい! そんなリアルな現実嫌だぁ!」
『マスター、落ち着いて。言語がおかしいです』
これが落ち着いてられるか! だってDだぞ。あの凡人のティアナだって登場当初はBランクあったんだぞ? 俺はそれに劣るというのか?
「絶望した! 魔力アップのサービスもしてくれない神様に絶望した!」
『だから落ち着いてください。いいですかマスター。今、この体もリンカーコアも未発達な状態でDランク相当の魔力量を有しているということは、なかなかすごいことなのですよ? 魔力量も、成人になる頃にはもっと増えているでしょうし、上手くいけばBランク、いえ、ひょっとしたらAランクに手が届くかもしれません。すごいじゃないですかマスター。将来はエリートですよ?』
「んなリップサービスいらんっちゅーねん! 同情にしか聞こえんわ!」
『本当のことなのに……』
確かにAランクあれば、管理局員としては十分エリートだろう。だが、俺の目標はもっと上、エース級の魔道師なのだ。Aランク程度で喜んでられるかっての。
……しかし、こうなってしまってはもうどうしようもない。魔力を有していると分かっただけでも良しとしておくしかないか。はあ、やるせねえ。
『マスター、気を落とさないでください。魔力量だけがすべてではないですよ』
こいつ、慰めてくれてるのか?
……デバイスに慰められるとか、かっこ悪いにも程があるな、俺。仕方ない、魔力云々についてはもう気にしないようにしよう。いつまでも愚痴ってても何も変わらんしな。
「ありがとよ、ひろし。そうだよな、魔力がすべてじゃないよな」
それに、俺には魔法無効化能力がある。これがあれば、エース級の働きをすることも夢ではないかもしれんし。
「あ、そうだ。忘れてたけど、お前の中には今どんな魔法がインストールされてるわけ? なんでもいいから魔法使ってみたいんだけど」
『えっと、マスターは魔法の構築も制御も全く出来ないんですよね? そうなると、たとえ私が補助をしたとしても、今現在はほとんどの魔法は使えませんね』
くっ、厳しいぜ。なのはなんかは色々と使ってたってのに。……ん? まてよ。
「なあ、バリアジャケットは生成出来ないのか?」
『あ、それならなんとか出来ると思います。生成しますか?』
「もち! 今すぐやってくれ!」
おお、流石にこれくらいは出来るのか。へへ、どんなデザインにしようかな。ここはやっぱ主人公っぽく真っ黒でイカしたのがいいよな。
『マスター、自分が身にまとう服のイメージは決まりましたか?』
「おう。どんとこい」
『では……』
そうひろしが呟いた瞬間、俺の体の周りに光が発生し、俺を包み込む。おお、きた、きた、なんかキター!
さあ、今こそ俺の魔法使いとしての第一歩を踏み出す時!
「来い、バリアジャケット!」
高らかな叫びとともに光が収縮していき、服の形に固まっていく。
そして、次の瞬間──
パァン!
「……へ?」
光が粒となって霧散した。
体を見てみるが、バリアジャケットを纏っているというわけでもない。
あれ? これって……
「……失敗、したってわけじゃないよな?」
『……ええ。一瞬生成には成功したのですが、なにやら不可思議な力がそれを弾き飛ばしてしまいまして』
……ええっと、これは、まさか、あれか?
俺の魔法無効化能力は、触れたものすべてを見境なく無効化しちまうってか?
「……」
『……』
………どうしよう。