「お、来たか。おーい、ハヤテー、こっちだこっち」
企業ブースから離れ、オタクがひしめく通路をグレン号の徐行運転で抜け、ようやくコスプレ広場に到着。
そこにはすでにヴォルケンリッターのみんなとマルゴッドさんが集合しており、私の姿を発見したヴィータちゃんが手を振ってきた。
こちらも手を振り返し、みんなが集まっている場所に近づいて声を掛ける。
「皆さん、遅れてごめんなさい。待ちましたか?」
「今北産業」
「それは良かったです」
シグナムさんの言葉を聞き、携帯で時間を確認する。時刻は一時ぴったり。時間にルーズなシグナムさんまで集まってるから少し遅れたかと思ったけど、そんなことはなかったようだ。
遅刻しなかったことに安堵の息を吐きながらみんなを見回してみると、やはりというか、シャマルさん以外にはその手に何も持っていなかった。念話で報告していた通り、商品は手に入れられなかったみたいだ。……あ、よく見たらヴィータちゃんだけは人形を手にしていた。私が頼んだのじゃないし、自分用のやつかな?
「ハヤテ、ごめん。グッズゲット出来なくて。それに、あたしだけ欲しいの買っちゃって……」
私の視線が人形に注がれているのに気付いたのか、ややばつが悪そうにヴィータちゃんが頭を下げてきた。
「ああ、いえ、構いませんよ。下調べをきちんとしなかった私が悪いんですから。皆さんはよくやってくれましたし、ヴィータちゃんのそれは正当な報酬ですよ」
「……そっか」
そう、今回グッズを入手出来なかったのは、私が無茶な要求をしてしまったからだ。買えない物を買えと言ったようなものだし、みんなに謝られると逆に私の居心地が悪くなってしまう。
「みんなだらしないわねぇ。自らの主の要求に応えられないで、どうして騎士と名乗れるのかしら?」
が、そんな無茶な要求を平然とクリアしたシャマルさんが、みんなをせせら笑っている。えげつねー。
「テメー、絶対イカサマしただろ、シャマル」
「あら、ヴィータちゃん。勝てば官軍って言葉を知らないの? たとえどんな手を使ったとしても、勝利条件さえ満たしてしまえばこっちのものなのよ」
「イカサマしたのは否定しないんですね……」
そこはせめて否定してほしかった。しかし、やってしまったものは仕方が無い。
本来このグッズをゲットするはずだったオタクよ、済まない。私があなたの分まで愛でるから、どうか許してくださいな。
なんて、心にも無い事を考えながらシャマルさんからグッズが詰まった袋を受け取る。中を確認すると、確かに頼んだ物が全部入ってる。シャマルさん、良くやった。イカサマはよくないけどね。
「ん?」
感謝の言葉を掛けようと口を開きかけたところで、私が受け取った袋とは別に、シャマルさんがもう一つ袋を持っていることに気付く。もしかして、あれってシャマルさんが自分で買った物?
「シャマルさん、その袋って……」
「え? あ、ああ、これ? ハヤテちゃんに頼まれた商品手に入れた後、暇だったからブラブラしてたんだけど、その時にちょっと気になって買った物なの。べ、別に怪しい物じゃないわよ?」
先ほどの余裕ある態度から一転、なぜかオドオドしながら言い訳がましく説明するシャマルさん。……怪しすぎる。
「何を買ったのか非常に気になるのですが」
「あたしも気になるな。ちょっと見せてみろよ」
「た、大した物じゃないわ。見る価値も無いわよ」
……この反応。見られたら困る物が入ってるってことか。一体何を買ったのか、ますます気になるじゃないか。うーん、でも嫌がるのを無理矢理見るってのはしたくないしなぁ。諦めるか?
「……いただき!」
「あっ!」
などと葛藤していると、シャマルさんの背後からそろりそろりと近づいたシグナムさんが、隙を見て袋を奪ってしまった。
そして、取り返そうと手を伸ばしたシャマルさんを華麗に避けたシグナムさんは、袋に手を突っ込み中に入っていたブツを取り出し、ガキ大将のような顔をしながら高々と「それ」を掲げた。……掲げて、しまった。
「じゃじゃーん! 大公開! これがシャマルの秘密……だ……!?」
みんなに見せつけるように「それ」をブンブンと振っていたのだが、「それ」がなんなのか気付いたシグナムさんは目を見開き、その動きを止める。
「おいおい……」
「我には理解出来んな……」
「私にも理解出来んぞ……」
「シャ、シャマルさん、あなた……」
「ほほー、これはこれは。なかなかいい趣味をお持ちのようでござるな」
同様にシグナムさんが持つ「それ」を見てみんなが驚愕の声を上げる。それもそのはず。なぜなら「それ」は──
「同人誌、しかもBL。あまつさえ……ガチムチ」
筋肉ムキムキな上半身裸の男性が抱き合っているイラストが表紙に描かれた、同人誌だったのだから……
「な、何よ。私がこういうの買ってなんか文句ある?」
みんなの視線が同人誌から持ち主のシャマルさんへと移り、その無言の視線の圧力に耐えられなくなったのか、シャマルさんが開き直ったかのようにみんなを見据える。
「いや、文句はねーけど……なあ?」
「人の趣味についてとやかく言うつもりはありませんが……ねえ?」
「……いいじゃない、別に。ちょっと興味が湧いただけよ」
私達の反応に少し傷ついたようで、シャマルさんはいじけたようにそっぽを向いてしまう。いやしかし、これはねーだろ。表紙がまるで超兄〇じゃん。これに興味持つとか、どんだけマイノリティーな性癖なんだよ、シャマルさん。
「ほら、シグナム。返しなさいよ」
「あ、うん。その、ごめんな……」
「なんで謝るのよ」
気を取り直したシャマルさんが、居心地の悪そうなシグナムさんから同人誌と袋を返してもらう。流石のシグナムさんも、アレをネタにシャマルさんをからかう勇気は無いようだ。私だって無い。
「ま、まあそれはそれとして、いよいよみんなでコスプレをする時がやって来ました。皆さん、準備はよろしいですね?」
「お、おう。ばっちこいって感じだぜ!」
「なんか無理に話逸らそうとしてない? 別にいいけど」
シャマルさん、そこは黙ってスルーしてほしかった。せっかくコスプレが苦手なヴィータちゃんが乗ってくれたっていうのに。
まあいいや。ブツを袋にしまってくれたことだし、これで普通に話せる。
「特訓の成果を遺憾なく発揮してくださいね。そして、カメコ共の視線を私達が独占しちゃいましょう」
「おや、特訓とな。これからなにをするのか聞いてもいいでござるかな?」
と、そういえばマルゴッドさんは知らなかったんだっけ。教えてもいいけど、ビックリさせたいから今は黙っておくか。
「見てからのお楽しみということで」
「ほほう。期待してるでござるよ」
ふふん、驚きすぎて鼻から心臓出さないように気をつけることですね。暇に飽かして毎日のように特訓してきたんだ。アレを見て驚きの声を上げない者はいまい。
「では皆さん。着替えに行きましょうか」
いざゆかん、羨望と嫉妬が入り混じる、輝けるステージへ……
道が、割れる。
『お、おい、アレ見ろよ……』
『一体どうし……な、なにぃ!?』
私達が一歩一歩地面を踏みしめるたびに、海を割るモーゼのごとくオタク達が道を開ける。
そのオタク達の顔には、これ以上ないほどの驚きと、まさか、アレをやるのか? という期待の表情が張り付けられている。
カメラや携帯を構える人間も出始めた。が、まだ撮影はしない。
彼らも分かっているのだろう。これから私達がなにかをやらかしてくれるということが。
ザッザッザッ、とオタク達が譲ってくれた道をわざと音を立てながら進む。その足並みは、さながらよく訓練されたドイツ兵のように揃っている。
いいね、気分が乗ってきた。でも油断は禁物。家の中とは違って失敗は出来ない一発勝負なのだ。
「………」
「………」
オタクの波を抜けて広場の中央へと到達した私達は、互いに目配せし合う。
言葉はいらない。目を合わせるだけで、すべてが伝わる。なぜなら私達は家族だから。
私達の周りには、期待に顔を輝かせながら今か今かと固唾を呑んで立ち尽くすオタク達が居る。
その期待、応えてみせようじゃないか。
「……ッ!」
時は、来た。
「イイイィィヤアア!……リクーム!」
ザフィーラさんが、練習の時以上に大きな声を上げてポーズを決める。その姿、まさにリクーム。
「ケェーケッケッケ!……バータ!」
シグナムさんが、練習のとき以上に機敏な動きでポーズを決める。その姿、まさに宇宙最速のスピードを誇るバータ。
「ハアアアアア!……ジース」
ヴィータちゃんが、先に名乗った二人に負けまいと必死に長い髪を振り回しポーズを決める。その姿、まさにジース。
「きえええええ!……グルド!」
シャマルさんが、初めの頃はとても嫌そうな顔をしていたあのシャマルさんが、懸命にポーズを決めてくれる。その姿、まさにグルド。
……皆さん、よくやってくれました。
「……ギニュー!」
さあ、後は最後の締め。いきますよ。
「み」「ん」「な」「そ」「ろ」「って」
中央に集まり、各々が極限まで洗練されたポーズを取り直し、そして……
オタクの魂を揺さぶる叫び声を上げる。
『ギニュー特戦隊!』
………これで、どうだ。
パチ……パチパチ、パチパチパチ、パチパチパチパチ、パチパチパチパチパチパチパチ!
「お? おお?」
初めはまばらに、しかし、徐々に私達を称える拍手は大きくなっていき……
『ワアアアアアアア!』
パシャパシャパシャパシャパシャ!
カメラのシャッターを切る音と、オタク達の大声が私達を包み込む。周りに居るオタク、全員がスタンディングオベーション状態だ。
……なんて、気持ち良い。
「あれ? なんだこの気持ち。あたし、オタク共に拍手喝采されて喜んでる?」
「不思議なものだな。我もだ」
「認めたくないけど、私も少し」
「やっべ。注目されるのって結構気持ち良いもんすね」
『ほう、こういうのも悪くないではないか』
ポーズを解いたみんなが、熱に浮かされたような表情でそんなことを呟いている。どうやらみんな、コスプレの真の喜び、「見られる喜び」に気付き始めたようだ。
コスプレとは、他人に見せて初めて価値が出るというもの。そのことに気付いてくれたのなら、満足にグッズを入手出来なかったことを差し引いても、コミケに来た甲斐があったというものだ。
『感動を、感動をありがとう!』
『あんたら、輝いてるよ!』
『ホンマ最高やったでー!』
『ビューティフォー! ワンダフォー! はやてちゃ、ゲフンゲフン……』
次々とオタク達から賛辞の言葉が降ってくる。その人達に手を振り返すと、さらに拍手の音が大きくなる。……ああ、ホンマに最高や。来て良かった、マジで。
「いやー、いいものを見せてもらったでござる。まさかあれほど完璧なスペシャルファイティングポーズを見れるとは夢にも思わなかったで候(そうろう)」
私達を囲んでいるオタクの壁の中から出てきたマルゴッドさんが、パチパチと拍手をしながら近寄って来た。マルゴッドさんも今はコスプレをしていて、どこぞのゴム人間の格好をしている。
「散々家で練習しましたから。これで出来なきゃ嘘ですよ」
「人前でやるのは抵抗あったけど、わりかし楽しいもんだな」
「お、ヴィータどのもコスプレの良さが分かってきたでござるな。重畳、重畳」
うんうん。そうでなきゃコスプレのし甲斐がないからね。コスプレの一番の目的は楽しむ事なんだから。
「さて、ギニュー特戦隊は大好評でしたが、どうします? まだこの格好でうろうろしてますか? それとも別のコスプレします?」
オタクの拍手が収まって来たところで、みんなに意見を聞く。
時間は限られてるから、私としてはどんどんチェンジしていきたいんだけどな。ギニューだけに。なんちゃって。
『主……そのギャグはどうかと思う』
『ちょっ!? 勝手に思考を読まないでください!』
くっ、油断していた。融合中はたまに考えてることがリインさんに伝わるんだった。気を付けなければ……
「あたしは別にどっちでもいいぜ」
「んー、オラは別のコスプレやりたいんだぞぉ」
みんなに聞いてみると、コスプレチェンジしたい人が二名、どちらでもいい人が三名。
と言う訳で、チェンジに決定。それじゃ、さくさく着替えてこよう。移動時間が勿体無いしね。
「グレートサイヤマン、一号!」「二号!」「三号!」「四号!」「五号……」
『世界の平和は、私達が守る!』
「……やっぱり、恥ずかしいことには変わりないわね」
我慢していただこう。
「バカブラック!」「バカレッド!」「バカブルー!」「バカピンク!」「バカイエロー……」
「みんな揃って!」
『バカレンジャー!』
「……なに、この自虐的な名前」
みんなバカですから。
「ウルトラマン!」「ウルトラマンゾフィー!」「ウルトラセブン!」「ウルトラマンジャック!」「ウルトラマンA……」「ウルトラマンタロウ!」
「我ら、ウルトラ六兄弟!」
『デュワ!』
「……なんか一人多くない?」
せっかくなので、参加してもらいました。
「いやー、大ウケでしたね。やはり五人組というのが大きかったんでしょうね。まあサイヤマンは捏造でしたが」
「拙者も楽しませてもらったでござるよ。あの発想は見事でござった」
ギニュー特戦隊以降、時間の許す限りコスプレをしまくったのだが、どのコスプレもオタク達にウケまくって、コスプレ会場は大盛り上がりだった。シャッター音は途切れることなく鳴り続け、カメコ達も大満足の様子で、別れる際にはありがとう、ありがとうと十数人の人間が感謝の言葉を述べに来たりもした。
「そういや、カメコの中にやけにハヤテばっか写真撮るオッサン居なかったか?」
「ああ、そういえば居ましたね。白髪のダンディな方が。子供好きなんでしょうか」
今私達は、コスプレ広場から離れ、駅へと向かう道を歩いている。
時刻は午後四時。コミケの終了時間を迎えたため、周りのオタク達同様に私達も帰路についているというわけだ。
コスプレに熱中していて他の場所を回るのを忘れていたが、みんななんだかんだ言って楽しんでいたようだし、今回は良しとしておこう。これから何度だって来る機会はあるんだから。
「それにしても今日は疲れたわ、精神的に。早く帰ってゆっくりしたいわぁ」
「あはは、ご苦労様でした。……ん?」
心地よい疲労感に包まれながらのんびりみんなと話していると、前方に見知った人影を発見した。
あの特徴的なツインテール、それに白いリボン。後ろ姿でも誰かはっきりと分かる。そう、あれは……
「なのはちゃん!」
「……はい?」
偶然の出会いに興奮してしまったのか、私の口から出た声は意図せず大きくなってしまった。が、そのおかげでわりと離れた所に居た彼女に声が届いたようで、こちらの存在を知らせることが出来た。
「あ、ハヤテちゃん! ハヤテちゃんもやっぱり来てたんだね~」
振り返った彼女は、私の顔を見ると嬉しそうに笑いながらこちらに小走りでやってくる。
「ハヤテ、知り合いか?」
寄って来るなのはちゃんを少し険のある顔で見ながらヴィータちゃんが聞いてくる。
「ええ。休日によく一緒に遊ぶ友達の一人で、なのはちゃんっていいます」
「ふうん……」
オタクの波をかき分けて私達のすぐ前までやって来たなのはちゃんは、いつものように元気いっぱいに挨拶をしてきた。
「ハヤテちゃん、こんにちわ……って、マルゴッドさんも?」
「へ?」
笑顔で挨拶をしたなのはちゃんが、私の右隣に居るシグナムさんを見て目を丸くしている。というか、マルゴッドさん? マルゴッドさんはそっちじゃなくて、私の左隣に居る彼女でしょうに。いや、その前になのはちゃんはマルゴッドさんと知り合いなのか?
「おいマル助、この小娘お前を呼んでるっすよ」
「え、拙者この女子(おなご)とは面識が無いんでござるが……」
「ち、違いますよ。私がマルゴッドさんと呼んだのはこちらの女性で……」
「え、あっしの名前はシグナムでやんすよ?」
「え? ええ!? シグナム? マルゴッドじゃなくて?」
なにやらシグナムさんの言葉を聞いてなのはちゃんがひどく驚いている。どういうことなんだろうか?
「おーい、なのはー。急に戻ってどうしたの? 知り合いでも……マ、マルゴッドさん!?」
そこに、なぜか混乱しているなのはちゃんに声を掛ける人物が現れた。視線を前に向けると、どっかで見たような可愛い顔した少年がこちらにやって来る姿が見える。さらにその後ろから複数の人間が私達の所に向かって来ている。あの人達、なのはちゃんの知り合いかな?
「だーかーらー、僕はマルゴッドじゃないって。シグナム。僕の名前はシグナム!」
「うぇええ!? いや、どこからどう見てもマルゴッドさんでしょう?」
「マルゴッドは拙者でござるが」
「え、あなた誰です?」
「いやだからマルゴッドだと」
なんだかひどく混迷としてきたな。訳が分からなさすぎるぞ。シグナムさんがマルゴッドさん? どういうことさ?
「……シグナム、だと?」
「え……」
そこで突然、前方からまるで感情を押し殺したかのような声が聞こえてきた。新たに現れた少年から視線を外し前に向き直ると、そこには異様なプレッシャーを放ちながら下を向いてプルプルと震えている黒髪の少年の姿があった。
そして、その隣にはおっとりとした感じの女性が一人、後ろに特盛り級のおっぱいを装備したワイルドな女性と、綺麗な金髪が特徴的な私と同い年くらいの女の子が居て、こちらを見ていた。……おや、あの金髪の子は確か──
「思いだした。思い出したぞ……」
「……げ」
黒髪の男の子が俯かせていた顔を上げ、ギリ、とこちらに届くほど大きく歯を鳴らした。何事か、と思考を中断してそちらに目をやったのだが、なんというか、その、すごく見覚えがある顔だったので、思わず声を漏らしてしまった。
「なるほどな。記憶を消してたのは、そういうことだったのか……」
低い声でそう呟く黒髪の男の子。この子のことはよく覚えている。なぜなら、私が生まれて初めて生で裸を見てしまった男だから。
そう、この子は以前防衛プログラムを倒した後に現れた──
「僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウン。大人しく投降しろ。さもなくば、痛い目を見てもらうことになるぞ、守護プログラム共」
管理局の人間なんだよね。
………ど、どうしよう。今度こそ捕まっちゃうのかな、私達。なんか消した記憶が戻ってるっぽいし、言い逃れは出来そうにないよな。
「封時結界!」
テンパる私を無視するかのように、クロノとか言う少年が魔法を発動。瞬時に、周りの風景が一変する。
先ほどまで腐るほど居たオタクの群れが一瞬で消失し、靴音や人の話し声などのざわめきも無くなった。
今この場に居るのは、私とマルゴッドさん、ヴォルケンズの七人と、黒髪の少年、おっとりした女性、特盛りの女性、可愛い顔した男の子、金髪の女の子、なのはちゃんの六人で、合計十三人。
………おい、待て。なんでなのはちゃんとか金髪の子とか居るんだよ。確かこういう結界の中って一般人は入れないはずじゃなかったっけ? いや、そうでなくても関係の無い一般人を結界の中に残すなんてこと、警察っぽい組織である管理局の人間がするわけない。
あれ? もしかして、もしかすると、なのはちゃんとか金髪の子、いや、まさかここに居る全員……
魔法使いってこと?
「……なぁにこれぇ」