プルルルルルル、カチャッ!
『へい、こちら超神田寿司、てやんでい!』
「元気がいいですね。特上七人前、出前お願いします。住所は、×××の△△△です」
『特上七人前だね。待ってな、嬢ちゃん。あっという間に届けてやるよ、てやんでい!』
ガチャッ!
「……江戸っ子?」
それはともかく、お寿司が待ちきれない神谷ハヤテです。
管理局から逃れ自宅へと転移した私達は、凱旋(がいせん)を祝うためにお寿司を取ることにした。美味しい物を食べれば疲れも取れるしね。
「七人前って、私も一緒していいのかい?」
注文を終え受話器を戻した私に、皆と同じようにソファーに身を沈めたマルゴッドさんが、素っ頓狂な質問をしてきた。何を言ってるんだろうか、この人は。
「当り前じゃないですか。今日一日で、マルゴッドさんには返しきれないほどの恩ができてしまったんです。これくらいさせてもらわないと罰が当たっちゃいますよ。あ、勿論おごりですからね。後でお金払うなんて言わないでくださいよ?」
「そうそう、これくらい付き合ったっていいじゃんか。人の好意は素直に受け取るもんだぜ」
ヴィータちゃん、ナイスアシスト。
「……そう、だね。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかな」
うんうん。人間素直が一番。なにより、ちゃんとしたお礼がまだだったから、すぐに帰られたくないしね。
「ハヤテちゃん、そろそろ融合解除してもいいんじゃないかしら? お寿司運んできた人が腰抜かすわよ。あと羽が鬱陶しいし」
あ、そういえばずっとこの厨二スタイルのままだった。でも、元に戻るにはどうしたらいいんだろうか?
「えーと、ザクさん。分離したいんですけど、お願いできますか?」
こういう時のザクさん頼みってね。
『……主、その話の前に、寿司の件なんだが。七人前というと、私の分も入っているのか?』
「え? そんなの当然じゃないですか。やっと本の中から出てこられたんです。一緒にご飯食べながらお喋りするの、楽しみだったんですよ?」
『そ、そうか。楽しみだったのか……フフフ』
なにやら嬉しそうに笑う声が頭の中に響く。彼女も久しぶりに他人と会話できて喜んでるのかな。
『おっとそうだ、解除だったな。待っていろ』
まだ嬉しそうな声音でそうザクさんが答えた瞬間、背中に生えていた黒い羽や身に付けていた服(騎士甲冑?)が光りの粒となって消え去る。そして、気が付いた時には私は普段着を身に付けていて、実体化したザクさんにお姫様だっこされていた。
「あ、解除したら足は動かなくなるんですね。どうもご迷惑をお掛けしてすいませんね」
「い、いや、気にするな」
頬を赤く染めたザクさんが、傍らに置いてあったグレン号に私を座らせてくれる。……この人、実は結構シャイなんじゃないだろうか? いや、人と触れ合うことに慣れてないだけかもしれないな。ずっと本の中に居た訳だし。
「あるじー、寿司が来るまでどうしまするか? 皆でゲームでもやる?」
「あ、それもいいですね。マルゴッドさんの腕前も見たかったことですし」
「いや、ちょっと待ちたまえ。闇の書関連で、まだやることが残っているじゃないか」
やること? そういえば、ラスボス倒してエンディング迎えた気になってたけど、なんか忘れてるような……
「すっかりと忘れていたが、プログラム改変の途中であったな」
「あ、そうでしたね。それがありました」
ザフィーラさんの言葉でやっと思い出したよ。防衛プログラムの破損とかいうの直してそれっきりだったんだっけ。
「そういうことだ。ハヤテ君、お寿司が来る前に直したいから、闇の書を貸してくれるかな」
是非もない。これで命の危機が無くなるっていうんだ。貸すどころかあげちゃってもいいくらいだ。……いや、それだと皆がマルゴッドさんに持ってかれちゃうな。やっぱり貸すだけにしとこう。
「どうぞ。……ところで、もうさっきみたいなトラブルはおきませんよね?」
「ToLOVEる? 主、また少年の裸が見たいんすか。あんたも好きねぇ」
「違います! 怪獣のことです!」
茶化さないでほしいものだ。思い出しちゃうじゃないか、もう。
「はは、安心したまえ。もう絶対にあんなヘマはしないよ。それに、流石にジジイの置き土産はあれ一つだけだと思うしね」
「その慢心がさっきの事態を引き起こしたんでしょうが。あなた、後悔はしても反省はしないタイプ?」
「うぐ……」
シャマルさんの辛辣な苦言に顔を引きつらせるマルゴッドさん。この人、意外と自信家なところがあるからなぁ。
「そ、そうだね。慎重に慎重を重ねて直すとするよ。……ゲシュペンスト」
気を取り直した自信家ガールがデバイスを起動させ、指先から触手、もとい、白いヒモを出現させ本の表紙に突き刺す。ああ、これでようやくバトル三昧の日々からおさらばできる。シグナムさんには悪いけど、やっぱり平穏な暮らしが一番だからね。
「いの一番に改変すべきは、ハヤテ君の身体を蝕む呪いだね。これさえ消せば、麻痺の進行が止まるどころか、ハヤテ君の足は徐々に機能を取り戻していく。というわけでさっそく、ちょい、ちょいっと」
鼻歌なんぞ歌いながらヒモを操作するマルゴッドさん。この人、やっぱり後悔しても反省しないタイプだ。どこら辺が慎重なんだか。
「おい、そんなんで本当に──」
「デリート完了、と。ん? ヴィータ君、どうかしたかい?」
「……なんでもねーよ」
納得いかねー、って感じのヴィータちゃん。気持ちは分からないでもない。それにしてもこの人ほんと凄いな。ほんの数秒で私の命を救っちゃったよ。
「お次は、防衛プログラムの生成だね。またあんなことがないように、ちゃんとしたセキュリティを構築しとこう。ふんふーん……と、はい、出来上がり」
「お前、私が懸念していたことを、そんなアッサリと……」
なにやら愕然としているザクさん。よく分からないが、またもや凄い事をやってのけたらしい。
「さて、残るは無限再生機能と転生機能なわけなんだが。……ヴォルケンズの諸君、君達はハヤテ君が天寿を全うした後、また別の主の下へと転生することを望むかい? 永遠に生き続けることを望むかい?」
突然、真面目な顔つきになったマルゴッドさんが皆にそう問いかける。……そうか。今の状態だと、私が死んだら皆は闇の書と一緒にどこか遠い世界の主の下に行っちゃうんだ。皆、それをどう思っているのかな?
私が少し不安げな表情で皆を見守る中、まったく悩む様子もなくそれぞれが言葉を返す。
「あたし達は今までたくさんの主の下を渡り歩いてきた。その中で、ハヤテほどの最高の主は居なかった」
……ヴィータちゃん。
「ハヤテちゃん以外の主に仕えるなんて、もう考えられないわね」
……シャマルさん。
「そうだな。主と生涯を共にすることが、もはや我らの使命のようなものだな」
……ザフィーラさん。
「ウチら、結構長く生きてきたけど、これから後何十年も生き続けられるじゃん。それだけ人生楽しめたら、悔いは残らないっしょ。それに、やっぱりこの主が居ないと物足りないだろうからニャー」
……シグナムさん。
「永遠に続く破滅と転生。それが終わりを告げようとしているのだ。ならば、私達も終焉の時を迎えなければなるまい。……主と共に生きた、その後で、な」
……ザクさん。
「……ふふ、愛されてるね、ハヤテ君?」
茶化すように聞いてくるマルゴッドさん。うん、でも、そうだな。
「……ええ。私は世界一幸せな主のようですね」
ここまで慕ってくれるなんて、主冥利に尽きるというものだ。嬉しくて、思わず涙が……
「う……ぐす……ひっく……」
「あーっ! 泣~かしたー、泣~かしたー。せ~んせいーに言ってやろ~」
「ハ、ハヤテ、泣くなよ。あたしまで泣きたくなって……うう、ぐす……」
もらい泣きをしてしまうヴィータちゃんと私を、皆が生暖かい目で見ている。うう、気恥ずかしい。神谷ハヤテ、一生の不覚だ。
「うん、いいものを見せてもらったよ。まさに理想的な主従関係だね。……さて、それじゃあ最後の仕上げといきますか」
鼻をすすっている私とヴィータちゃんを尻目に、相好を崩したマルゴッドさんがプログラムの改変作業に移る。……これで私と皆は一蓮托生か。長生きしないとね。
「……ふう。完了っと。これで懸念事項は全て解決したわけだけど、……ちょっと気になることがあるんだよね」
「ん? なんだよ」
息を吐いて安堵の表情になったマルゴッドさんだが、すぐに眉にしわを寄せて呟いた。
「いや、所どころにバグのようなものが見られるんだよ。原因は分からないけど、守護騎士プログラムや蒐集機能に若干のバグがね。今のところ特に不都合は無いみたいだけど、どうする? 直すかい?」
「ああ、それかよ。……って言ってもなぁ。もう今となっちゃどうでもいいような気がすんだけど……」
「性格や言動が変化したってやつですね。……まあ、そうですねぇ。むしろ、いきなり性格が変わったら私が対応に困るのですが……皆さんはどうしたいですか?」
今のままでもいい気がするんだけどなぁ。
「大きく変化したのはシグナムくらいなのよねぇ。今のハッチャけた性格と、昔の堅物な性格。どっちがいいかしら?」
「いや、貴様らも十分変化してると思うが……」
「ん~、僕は今のままがいいかなー。昔の自分と比べて、なんかこう、解き放たれたって感じがするんだよね~」
「たぶん、パンドラの箱に入っていたものが解き放たれたんだと思うぞ。厳重に管理しとけよ」
「我もこのままで構わん。不満など無いしな」
こうして、皆があれこれと話し合った結果、
「今のままにしといてくれ。なにか不都合が起きたらお前を呼ぶからよ」
ということになった。私もこれには賛成だ。堅物なシグナムさんというのも見てみたいけど、やっぱりシグナムさんはハッチャけてないとね。……たまにハッチャけ過ぎるのは問題だけど。
「そうかい。なら、私のやることはもう無いね。……ああ、長かった。父さん、母さん、姉さん、おじいちゃん、おばあちゃん。一族の皆。……やったよ。私、とうとうやったんだ。救うことが出来たんだ。これで、ご先祖様も少しは浮ばれるかな……」
肩を震わせて誰にともなく呟くマルゴッドさん。……本当にご苦労様でした。
ピンポ~ン!
『超神田寿司、お届けにあがりましたー! てやんでい、バーロー!』
「おっ? 寿司? 寿司っすね? 待ってました! 今行くぜい」
「あ、シグナムさん待ってください。あなたお財布持ってないでしょう」
ルンルン気分で突っ走るシグナムさんの後に続き、玄関まで寿司を受け取りに向かう私。にしても来るの早かったな。
「嬢ちゃん、どうだい? あっという間だったろ?」
「ええ、本当に。今度からひいきにさせてもらいますね?」
「嬉しいこと行ってくれるねぇ、てやんでい。さあ、特上七人前、お待ち!」
玄関で出迎えたのは、江戸っ子口調が似合わない綺麗な女性だった。代金を支払うと、お寿司の入れ物を私の代わりにシグナムさんが受け取ってくれる。
「まいどあり! 今後とも超神田寿司をごひいきに、てやんでい!」
「はい、どうもご苦労様でしたー」
元気よく去っていくお姉さん。寿司屋の人って皆ああなのかな?
「スーシ、スーシ。アナゴ、アナゴ、アナ………ぶるあああああああ!」
気分が良さそうに歌いながらリビングへと寿司を運ぶシグナムさん。お寿司、そんなに好きなのかな。
「うめー! ギガうめー!」
「ほんと、美味しいわ。今度にぎり寿司に挑戦してみようかしら」
「ワ、ワサビが鼻に……」
「ザフィーラさん、今取ってあげますからじっとしててください」
「人間はぁ、平等ではなぁい! そして、不平等は悪ではない! 平等こそが悪なのだ! オール・ハーイル・ヴリターニア!」
「貴様!? 私のアナゴを取るな!」
「ふははははは! 競い、奪い、獲得し、支配しろ! その果てに未来があるのだ!」
「では、そのウニをいただくとしようかな」
「ぬあー!? マル助、貴様!」
現在、寿司パーティーの真っ最中。流石に特上なだけあって、美味しいこと極まりない。そこかしこで奪い合いまで行われてるし。もう少し静かに食べられないものかな。
「どうです、マルゴッドさん。楽しんでますか?」
「ああ、楽しいよ。こっちの世界ではいつも一人で弁当をもそもそ食べてるだけだから、こうして大勢で食卓を囲むというのは久しぶりだ。ハヤテ君には感謝しないとね」
またこの人は……感謝するのはこっちの方だってのに。そこのところを分からせる必要があるな。
「皆さん、寿司の略奪は一旦ストップして、ちょっとこっちに来てください。あ、マルゴッドさんはそのままで」
「ん?」
いぶかしむマルゴッドさんの前に皆を集めて、感謝の意を伝える。
「ちゃんとしたお礼がまだでしたから、今言ってしまおうかと。マルゴッドさん、今日は本当にありがとうございました。あなたは命の恩人です。感謝してもしきれません」
「お、おいおい、よしてくれたまえ。私が好きでやったことだ。そこまでかしこまられると、こっちが委縮してしまうよ」
「いや、謙遜することねーぜ。お前はそれだけのことをしてくれたんだ。あたしからも、改めて礼を言わせてもらう。ありがとよ」
「ヴィータ君……」
「あちきもー。主のピンチを救ってくれてサンキュー。愛してるぜ!」
「シグナム君……」
「そうね、あなたには感謝してるわ」
「うむ、よくやってくれた」
「あれだけのことをしてくれたのだ。私も礼を言わん訳にもいくまい。恩に着るぞ、マルゴッドとやら」
「君達……」
皆からの賛辞の嵐に、目を丸くしているマルゴッドさん。自分のやったことにもう少し誇りを持てばいいと思うんだけどな、この人は。
「……嬉しいよ。こんなに嬉しいことは無い。思えば、その『ありがとう』の一言が聞きたくて、今までがむしゃらに闇の書を探してきたのかもしれないな、私と、私の一族は」
頬を緩ませた彼女は、ポツリとそうもらす。
「それなら、あなたの家族にもお礼の言葉を伝えてください。ありがとうって。あなた達のおかげで、一人の少女とその従者達が救われたって」
「……ああ。そうするとしよう。きっと皆も喜ぶ」
こうして、ヴォルケンズの皆と同様に、長い間続いた闇の書と彼女達一族の因縁は、今日を持って断ち切られたのだった。物語は、やっぱりハッピーエンドじゃなきゃね。
「……さて、お寿司もいただいたことだし、私はここらでおいとまさせてもらうとするよ」
「あれ、もう帰るんですか? もしよろしければ、泊まっていってもらおうと思ったのですが……」
あわよくば、お風呂にて生乳を……
「それは嬉しい申し出だ。でも、早く私の家族に今日の出来事を伝えたいんだ。すまないね」
そっか。それなら仕方ない。マルゴッドさんの家族、きっと喜ぶよね。
「おっと、そうだ。ハヤテ君、よかったら今度、またここに遊びに来てもいいかい?」
「ええ、それは勿論。ゲームで対戦出来る日を楽しみにしてますよ。……あ、住所、分かります?」
「ふふ、さっき電話で注文する時言ってたじゃないか。それにしても驚いたよ。まさかこんなに私の家と近かったなんてね。灯台もと暗しと言うかなんというか」
ん、近い? 確か、遠見市とかいう所に住んでたんだよね、マルゴッドさんは。
「そんなに近いんですか?」
「ああ、近いとも。少し電車に揺られればあっという間に着いてしまうくらいにね」
近っ。まったく気付かなかったよ。場所の確認くらいしとけばよかった。
「では、また会おう。そのうち遊びに来るよ」
マルゴッドさんがそう言うや否や、彼女の足元に魔法陣が現れる。転移する気か。……あ、そうだ。
「マルゴッドさん。次に会う時には、いつものあの喋り方でお願いしますね。失礼ですが、あちらの方がなんだかマルゴッドさんらしくて……」
「はは、そうだね。私もあちらの方が調子が出るんだ。……それじゃ、帰るとするよ。あ、そうそう。騎士諸君、最後の主と幸せに暮らすんだよ? では……カイカイ!」
最後の最後にそう告げて、自信家で、少しおっちょこちょいで、オタクで、心優しい英雄は、転移していったのであった。
「……へ、言われるまでもねえ。これからハヤテが死ぬまでずっと、幸せに暮らしてやるよ」
「あるじー、いきなり事故でおっちんだりしないでくだせえよ?」
「……ええ、そうならないように、気をつけないといけませんね」
これから、皆で楽しく過ごしていくにはね。
「そういえば、さっきから気になってたんだけど、ハヤテちゃんはどうしてこの子をザクさんなんて呼んでるの? 名前をつけてあげたの?」
お寿司もあらかた片付け終わり、お茶を飲みながら皆で雑談していると、シャマルさんがザクさんを見ながらそんなことを言ってきた。
「そういやそうだな。ていうか、つけるならもっとマシな名前にしようぜ」
「え? ザ・クリエイターって名前じゃないんですか? ご自分でそうおっしゃってましたけど」
「……主、それは便宜上の名だ。私にはまだ正確な名前はついていない」
そうだったんだ。でも、いつまでも名無しのごんべいじゃかわいそうだな。
「そうですか……それなら、皆で名前を考えてあげるというのはどうでしょうか。流石に、これから一緒に暮らしていく中で、管制人格さん、とか、ザクさん、とか呼ぶのは気がひけますし」
「いいのか? では、なるべくカッコイイ名前を頼む。飛影とか、庵(いおり)とか、アシタカとか」
そうだなあ。カッコイイ名前か。色々ありすぎて悩んじゃうな。
「ヤムチャ! ヤムチャにしようぜい。これぞお前にピッタリの名前じゃん」
「却下だ。サイバイマン程度に殺されるほど、私は弱くない」
なんで知ってるんだろうか。あ、皆に放置されている時にでも読んでたのかな? ……本が本を読む、か。なかなかにシュールだ。
「さっちんなんてどう? 幸薄そうであなたにピッタリじゃない?」
「貴様は私をなんだと思っているのだ」
「じゃあアクセラレータなんてどうだ。強そうでカッコイイし」
「悪くは無いが……やめたほうがいい気がする」
「ではシルバはどうだ。銀髪だし」
「なんで貴様らはマンガのキャラばっか選ぶんだ」
あーだこーだと皆が議論しているが、なかなかいい名前が決まらないまま時間だけが過ぎていく。
「あーもー! こうなったらハヤテに決めてもらおうぜ。主なんだし」
「それがいいわね。さっきから黙ってるけど、なにかいい名前が思いついたんじゃないの?」
「そうなのか、主?」
期待を込めた目で私を見つめる皆。しょうがない。真打ち登場と行きますか。
「ふふ、とっておきのがありますよ。もうこれしかないってのが」
「ほう、楽しみだ。私を失望させてくれるなよ、主」
その顔、今すぐ歓喜にあふれさせてくれるわ。
「いいですか。あなたの名前、それは──」
これから、よろしくお願いしますね。新しい家族さん。
「私を『強くする』もの、という意味で──」
「──リインフォース」
あとがき
と、いうわけで、闇の書蒐集編、終了となりました。少々強引に解決させてしまった気もしますが……
まだ課題は残っていますが、またしばらく、というか、かなり長い間まったりとした日々が続きます。むしろこっちが本命のようなものですから、この作品は。
さて、一区切りついたところで、次は番外編、と見せかけて、『外伝その一、賭博黙示録ハヤテ』をお送りします。ハヤテが、なのは、アリサ、すずかに挑みます。この外伝とは、作者が突発的に書きたくなった話を、一話完結方式でまとめる、といったものです。今後も唐突に出現するだろうと思いますので、その時は、またこんなバカ話を……といった感じに流していただけると幸いです。本編とやってることはあまり変わりませんが、本編は時系列に沿った現在の話を。外伝は過去、及び未来の話を書くつもりです。
まだまだ話は続きます。