「もう、嫌や……」
部屋のベッドにうずくまった少女は、震えた声でそう呟いた。
少女は孤独であった。両親を早くに亡くし、足を患っており満足に学校にも行けないため、友人と呼べる存在もいない。
「どうして、私だけ……」
少女はその辛い境遇にひたすら耐えてきた。掃除も洗濯も料理も、小さな頃からずっと1人でこなしてきた。そうしなければ、生きていけなかったから。
「うぅ、あ……」
今までは、悲しいとか寂しいといった感情は、日々の生活の忙しさに忙殺されていた。しかし、そんな生活に慣れて、周りを見渡す程度の余裕が生まれた少女は気付いた。自分は孤独であると。
親、兄弟、友達、そういった当たり前にあるものが、無い。
少女は泣いた。家族が欲しい、友達が欲しい。お喋りして、遊んで、たまにケンカして、どこかに一緒に出掛けたり、喜びを分かちあえる存在が欲しい。そう願いながら泣き続けた。
泣き続け、そして、力尽きたかのように、少女は眠りにつく。素晴らしい明日が来ますようにと、無理だと思いつつも願いながら。
うつろう意識の中、少女の頭の中に声が響く。
《寂しい?》
少女は答える。
(……寂しい)
《お父さんやお母さんが欲しい?》
(欲しい)
《それがアナタ本来の両親でなくても?》
少女は少しの間考え、
(私の両親、もう顔もろくに覚えとらんもん。かまへんよ)
《……そう、それじゃあもうひとつ質問、今の自分は気に入ってる?》
(足が動かんこの体じゃ、友達もできん。気に入るわけがないやろ。健康な体と交換してほしいくらいや)
《新しい家族と健康な体、両方ともアナタにプレゼントしてあげる》
(ほんまか! あんたもしかして神様なん?)
《……そんなものかしら》
(神様ってほんとにいたんやなぁ)
《……さて、それじゃあそろそろ新しい家族に会わせてあげる》
(もう会えるんか! なんやドキドキしてきたわ)
《……幸せにね、はやて》
(え……)
何か言葉を返す暇もなく、少女の視界は光に包まれ、そして――――