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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第玖番
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/28 01:48


そこは、とある部屋の中だった


中には明かりという物は無く、闇が広がっていた
しかし、完全な漆黒という訳ではない


中には幾つかの淡い緑色に発光する非常灯がついており、中に置いてある物のシルエットが淡く照らされている


恐らく、そこは物置や保管庫の類の部屋だろう
整理と乱雑が入り混じった様に、そこには物が置かれていた。






……きこえ、ますか?……






そして、そこにある無数の物体の中に

ソレはあった。






……私の声が、聞こえ…ますか?……










第玖番「声」










「……退屈だな」


時の庭園のとある一室にて、ウルキオラは呟いた

ここでアリシアと、そしてプレシア・テスタロッサと会ってから既に六日経過していた
そして六日という時間を、ウルキオラはここで過ごした。


もちろん、ウルキオラも最初はそれに対しては否定的だった
プレシア・テスタロッサの事を完全に信用していた訳では無かったし、馴れ合う理由もなかったからだ。

それに、プレシアの力にもウルキオラは一目置いていた
そして一目置くと同時に警戒もしていたからだ。


故に、ウルキオラはここに留まる理由は無かったのだが



「ウルキオラと一緒じゃなきゃヤダー!!!」



一人、それに納得しない者がいた
アリシア・テスタロッサである。


そしてそのアリシアの姿を見て、黙っていない人物がいた



「あら、人の大事な愛娘を泣かすなんて良い度胸ね?」



漆黒の魔女・プレシアである
只ならないプレッシャーを撒き散らして、ウルキオラと対峙したのだ



「どうしても出て行くというのなら、せめて理由を言いなさい」



それが、最大の譲歩とプレシアはウルキオラに言った

先に述べた様に、ウルキオラはプレシアを信用した訳ではない

アリシアの一件があったとはいえ、ウルキオラの中ではプレシアの位置は敵のソレに近いのだ


その事を、包み隠さずウルキオラはプレシアに言った。



「あら、そういう事。なら何の問題も無いわ、私は貴方に危害を加えるつもりもないし、敵になるつもりもないわ
寧ろ、円滑な協力関係を結びたいとも思っているわ」



さも当然の様に、先程までの威圧感が嘘の様に消えた表情でプレシアは言った。


しかし、ウルキオラも簡単にはソレを信じなかった


敵に近い者の言う事を、疑いもせず簡単に鵜呑みにするヤツなどいない

もしいたとしたら、それは馬鹿の領域すら超える愚者だ



「私はこの娘の母親よ。この娘を泣かせる真似は絶対にしないし、娘の恩人を背中から襲う程腐ってはいないわ。
それでも信用できないのなら、貴方がここにいる間はこのデバイスは貴方に預けてもいいわ」



そう言って、プレシアはウルキオラに自分の杖を差し出した


単純な話だが、ウルキオラはこの一連のやり取りでプレシアの評価を改めた


プレシアは、自分の実力の一端を直に見ている
今までの戦闘から、あの杖の様な武器は霊圧・霊力の増幅装置の様なものだとウルキオラは結論づけていた


如何に地力の力が高いとはいえ、その得物が無ければ勝敗は火を見るより明らかだろう

少なくとも、相手が「敵」ならウルキオラは絶対にそんな真似はしない
自分の居る場所が、自分の本拠地の中でもだ。



(……どの道、危険があるのは変わらないか……)



仮にここじゃなくても、あの時空管理局という組織の目がある
空間転移系の術と広域結界の術を持つあの組織に、自分は目を付けられている


つまり、危険の度合いで言ったら大して変わらない

寧ろ相手の動向に目を向けられるだけ、ココの方が安全だろう

それに相手は高々三人
戦闘になった時の事を考えても、一つの組織を相手にするよりはずっと相手にし易い。



「良いだろう。但し妙な真似をすれば、その時は容赦しない」




それが六日前のやり取りである。




この六日間、特に何かがあった訳ではない
一日に何度かあの女に呼び出されて、『研究』に付き合うくらいだ



「……まあ、霊子の補充の心配をする必要が無くなったのは幸いか」



ウルキオラは、ソレを手の中で転がした。


『カートリッジ』
それが、ウルキオラの手の中にある弾丸の名前だ

元々は『ベルカ』と呼ばれる形式の魔法で使われる、魔力を込めた弾丸

使い方としては、予め貯蓄していた魔力を自身で収束した魔力に上乗せさせて、その威力・破壊力を爆発的に高める物らしい。


プレシア曰く
「昔、過去の文献を読んで興味が湧いて造ってみたんだけど、カートリッジは再現できたけど、肝心のデバイスには組み込めなかったのよ」


今では殆ど使われていない技術らしく、プレシアでも独学ではデバイスにベルカ式を組み込めなかったらしい


そしてその時から使われていないカートリッジを、ウルキオラの為にプレシアが改造して再利用したらしい。



(……しかし、大した技術だ。これ一つで十刃クラスの霊力が込められている……)



ウルキオラの感覚で言えば『黒虚閃』数発分の霊力が込められている

そしてそれが、ウルキオラの前に一ダース程置かれている。



(……あのジュエルシードとか言う石、複数個を共鳴させるだけで……まさかあそこまで力が瞬間的に跳ね上がるとはな……)



ウルキオラの前に置かれているそのカートリッジは、あくまでその力の一端に過ぎない

プレシアがここ数日没頭している『研究』のオマケの様な物だ。




『ウルキオラー、わたしの声が聞こえますかー? 聞こえたら返事をして下さい、オーバー?』




ウルキオラの前に置かれた緑の宝玉が喋る


これも、プレシアの『研究』の副産物だ。


自分と違い、霊力の低いアリシアはプレシアにその姿は見えず、声も聞こえず、物理的な干渉ができない


これは、霊子の密度の差による物だ


ウルキオラを始めとする破面・虚や死神の高位霊体は、並みの霊体とは比べ物にならない程の霊力と霊子密度の霊体である


故に、霊力の素養がない人間でも触れる事が出来たり、その存在を五感で感じ取る事もできる


だが、下位霊体であるアリシアの姿はプレシアには見えない、声は聞こえない、触れられない

恐らく、プレシアやここの魔導師は自分が知る死神や人間の持つ霊的素質のベクトルが少々違うらしい(……というか、体系そのものが違う)

ウルキオラの印象としては体内霊圧の扱いに長け、周囲の霊的知覚に乏しいという感じだ

まあ世界そのものが違えば、ある程度の相違は普通だろう



しかし、その相違はプレシアには耐え難いものだった。




何度も肉体から魂魄を抜いては、プレシアの体には多大な負担が掛かる

だから、プレシアは造った
アリシアの声を聞ける、姿が見れる、肌に触れられる、そんな装置を


これは、その一環という訳だ。



「ウルキオラー! 返事してよー!」



部屋の壁をすり抜けて、アリシアがその姿を現す

アリシアが、ここで『覚えた』スキルの一つだ
霊体共通の能力である、物体のすり抜けだ。


今までのアリシアは、自分が霊体という事をあまり自覚はしていなかったのだが
今回の一件により「自分は霊体」という事を、初めて認識したらしく、霊体のスキルを扱える様になったのだ。



「ねえウルキオラー、遊ぼうよー」



そう言って、にっこりと笑いながらアリシアはウルキオラの顔を覗き込む
顔を覗き込まれる事数秒、ウルキオラは小さく溜息を吐いた。



「そうか、なら俺が面白い遊びを教えてやる」

「え! 本当! なになに!!」



予想外のウルキオラの返答に、アリシアは目を輝かせてウルキオラを見る
その背中には、ワクワクしているオーラーが漂っていた。


「まずは、口を大きく開けろ」

「うん」

「利き手の人さし指を立てろ」

「うんうん」

「それを開いた口の中に思いっきり突き入れろ」

「…………」

「相当愉快な気分になれるぞ」



その言葉を聞いて、アリシアの額には青筋が浮かんだ



「ウルキオラのバカー!!」

「なら母親にでも構ってもらえ」

「さっきは退屈だって言ってた癖にー! 
それに、お母さんはこれから『けんきゅう』をしなきゃいけないから、また後でだって」
















プレシアは、一人研究室に篭っていた
その顔は極めて上機嫌なソレであり、鼻歌すらも口ずさみそうな表情だった


「……う、ふ……うふふ……」


笑いを堪えきれない様に、プレシアはディスプレイを眺めながらキーボードを打つ



……今日も、たくさんアリシアと喋る事ができた……


……たくさん、アリシアと遊べる事ができた……



今日の事を思い返して、プレシアは両手の指を絶え間なく動かして、己の理論を組み立てていく



……今日は、絵本を読んで上げた。狼と商人が旅をする話だ……アリシアが気に入った様で何よりだ……


……ああ、そうだ。アリシアはお絵かきもしたいと言っていた…『研究』の実験も兼ねてそういう装置も試してみよう……


……本当は、もっとアリシアと一緒にいたいが…今は我慢、我慢だ……解析さえ終われば時間は取れる……



……そして……

……この『研究』さえ成功すれば、時間なんて幾らでも取れる……




プレシアは、今までの人生の中でも最高に頭が冴え渡る様な感覚だった

アリシアを五感で知覚する為の装置
その為の装置と、プログラムと、実践、これらの事を僅か二日でほぼ完成させていた


アリシアの霊体としての魔力を解析し、特定の魔力に反応してそれを電気信号に置き換える

そしてその電気信号を増幅させて、映像として、音声として出力させる

プレシアが今回作ったのは、そういう物だ


視覚と聴覚に至っては、その完成度は八割を超えている

だが、触覚の方が今一つ上手く言っていない
今のままでは、アリシアの頭を撫でて上げる事も、抱きしめて上げる事も難しい。



「だけど、もうすぐ……もうすぐ、アリシアの魔力の解析は終わり、十分なデータが手に入る」



当面の問題は、やはりジュエルシード


現時点では七つ
だが、やはりこれだけでは心許ない


当初の予定よりも必要な数は少なくて済みそうだが、やはり数は大いに越した事はないだろう。



「ふふふ、フェイトには頑張ってもらわないとね」



正確には、その使い魔にだが
フェイトには既に待機命令を出してある

今となっては、アレも重要な人材だ
下手に外をうろつかせて、管理局に捕縛される様な事態は避けたい


それに万が一の事態に備えて、既にフェイトには保険を掛けてある
仮に時空管理局の一部隊に包囲されたとしても、無事に帰還できる保険がある。



「うふ、ふふ……もうすぐ、もうすぐよ……」



愉悦の表情が、歪な笑みとなる

希望、欲望、願望、野望、そういった全ての念が押し込められた黒い笑み

その黒い笑みを浮べて、プレシアは呟く。



「……だから、ちゃあぁんと良い子にして待っているのよおぉフェイトおおぉ……」




















「……よし、メンテナンス終わりっと」


同時刻・フェイトは地球での本拠地であるマンションの一室にいた

いくつかの部品や工具をテーブルの上に置いて、手に持ったバルディッシュの補修やパーツの取替えなどをしている
最近は急がしくて疎かにしがちだった、バルディッシュの本格的なメンテナンスを行っていた


「……ふぅ」


テーブルの上に置いてあったペットボトルの紅茶を一口含む

喉の渇きを潤しながら、フェイトは思った



(……これから、何をしよう?……)



本当なら、今頃は自分もアルフ同様ジュエルシードの探索の出る筈だった


だが、それは今はできない
いや…もうこの状態になってから、既に六日経つ

六日前、フェイトは母親から『待機命令』が出されたからだ



「……母さん」



そう言って、フェイトはその時の事を思い出す








六日前
あのウルキオラという男を母さんと引き合わせて、母さんの命令を待っていた

三時間くらい待っただろうか?
母さんからの通信が入った


『フェイト、少し確認したい事があるから研究室まで来なさい』


正直、意外だった
リニスがいなくなってから、母さんの研究室には立ち寄った事が無い

『お仕置』の場合なら、大抵は玉座で行われる筈

自分から入るつもりも無かったし、何より母さんが他人を入れる事を拒んでいたからだ


頭の中に絶え間なく浮かぶ疑問を考えながら、私は母さんの待つ研究室に向かった

母さんの研究室は、私の僅かな記憶とさほどの違いはなかった
強いて違いを上げれば、昔よりも物が多くなった事ぐらいだ


そして呼び出した私を見て、母さんは意外な一言を言った。



「……フェイト、貴方最近あまり寝てないでしょ?」



正直、一瞬意味が分からなかった

表情に出てしまっただろうか? それでも唖然とする私に母さんは近づいて



「……やっぱり、思った通り。食事もきちんと摂ってないわね?……ん?この臭い、シャワーもここ最近浴びてないでしょ?」

「……ご! ごめんさない!」



反射的に、私は謝った
母さんの言う事はズバリ的中していた

確かにここ最近はあまり寝てなかったし、食事も少し摘む程度を三回とるだけ
お風呂に至っては、もう二日入っていなかった


お仕置されると思った

そうだ、母さんに会うんだから体を綺麗してここに来るは当たり前だ。



「まあ良いわ。帰ったらシャワーを浴びてきちんと食事をして、しっかり寝なさい
これは命令よ……ああ、そうだわ…ジュエルシードの捜索も私が言うまで貴方は待機、捜索は使い魔にでもやらせなさい」


……え?……


「それでフェイト、少し私の『研究』に付き合って貰うわ」


そう言って、母さんは私の血液を採取したり
部屋にあった装置で私の生体データを調べたり、色々な事をした


その間、私は母さんの言葉が頭から離れなかった


いつもとは、少し違う


昔の、今では夢でしか見る事ができない昔の母さんに、ほんの少し戻ってくれた様な気がしたからだ。


そして、帰り際



「フェイト、このデバイスを持っていきなさい」



渡されたのは、紫の宝玉型のデバイス



「高速空間転移のデバイスよ。万が一、管理局に見つかって囲まれた場合はこれを使いなさい
もう貴方の認識データは入力してあるわ。起動ワードさえ言えば大抵のジャミングやクラッキングを無視して転移できるわ」

「は、はい! ありがとう母さん」

「それじゃあ、『体』には気を遣いなさいよ」



……本当に、久しぶりだった……

……あんな風に心配してくれたり、気遣ってくれたり……



「……母さん……」



その後、私はこのマンションに戻ってきた後、シャワーを浴びて体と髪を洗った(一人で髪を洗えなかったから、アルフに手伝って貰った)

ご飯はいつもは近くのコンビニという所で買ったお弁当だったが、この日は近くのレストランに食べに行った

母さんに言われた様に、たくさん野菜を食べた。コンビニのお弁当よりもずっと美味しかった

そして、家に帰った後はすぐに寝た
余程疲れていたらしく、気がつけば半日近く寝てしまっていた


三日くらいは、こんな風に体を休めていた
四日目からは体調もずっと良くなり、ジュエルシード探しを再開しようと思ったのだが



「ジュエルシードの方はあたしに任せておきなって! 大丈夫、管理局に見つかる様なヘマはしないさ!
フェイトはゆっくり休んでておくれよ」



と言って、アルフは一人でジュエルシードを探しに行ってしまった

アルフからの定時報告がくるまでは、基本私は一人で過ごしていた
四日目は、部屋の掃除をして過ごした
五日目は、自分でご飯を作ってみようと挑戦し……盛大に失敗した

六日目の今日は、一日掛けてバルディッシュの本格的なメンテナンスを行った



そしてメンテナンスも終わり、再び私は暇になった


私は、切っ掛けを考えていた
母さんが少し変わった、その切っ掛けについて




「……ウルキオラ・シファー……」




その名を口に出す

あそこで、母さんとあの人にどんなやり取りがあったかは知らない

だけど、母さんが変わったのは間違いなくあの日からだ

今は、母さんはあの人に『研究』に付き合ってもらっているらしい



そう言えば、昔から母さんは研究室でいつも何かを調べていた



もしかしたら、あの人がその研究に関して何か重要な事を知っていたのかもしれない

だから研究が進み始めて、それで少し母さんも昔に戻ってくれたのかもしれない


出来れば、私の頑張りで昔の母さんに戻ってもらいたかったけど……
母さんが昔みたいに優しい母さんに戻ってくれるのなら、そんなものは些細な問題だ。



『フェイト、聞こえるかい?』



不意にアルフからの念話が入った



『うん、聞こえるよアルフ』

『多分だけど、ジュエルシードを見つけたよ』

『本当? 凄いよアルフ、それでいくつ?』


多分一個、多くて二個だろうと
私は考えていたのだが、アルフの答えは予想を大きく上回るものだった



『多分だけど、六個』

『……ろ!!』



その言葉に、私の体が跳ねた

今まで私達が集めたのは七つだから、今までの努力に匹敵する程の数だ



『いやね、完全に見つけたって訳じゃないんだよ』

『……どういう事?』



そして、アルフは説明した

ジュエルシードの捜索中
アルフはひょんな事から、ジュエルシードは海の中には落ちていないのか?という考えに至った事


そして付近の海を調べたら、明らかに複数個の反応があった事

だがジュエルシードが海の底に沈んでいる事と、既に幾つかのジュエルシードが共鳴を始めている事
この二つの要素が合わさって、場所の細かな特定が難しい事



『……てな感じなんだよ』



粗方の説明を、アルフが終える

既に私の中での考えは纏まり、答えは決まっていた



『分かった。それじゃあ私もそっちに向かうよ』

『……でも』

『大丈夫。確かに命令違反かもしれないけど、六個もジュエルシードが手に入れば私達の数は十三個
あの人、ウルキオラが持っていた分も入れれば十四個。母さんが最初に言っていた希望の数が手に入る』



だから、きっと母さんは喜ぶ
その為なら、もう待機する必要はない



『最近はきちんと寝たし、食事もちゃんと摂ってたから体調もいいし大丈夫。それにアルフと一緒なら、私達は負けないよ』

『……そうだね、まあ確かに! 相手があのウルキオラでもない限りあたし達が負けるわけ無いか!
……ていうか、こういう時こそあいつの出番だと思わないかい?』

『あはは、そうかもね』



そう言って、私はバルディッシュを手に取る。
普通に考えれば、アルフの言う通りあの人に応援を頼むべきなのかしれない


でも、私は負けたくなかった

ジュエルシードもそうだが、それ以上にあの人に負けたくなかった


だから、私も闘う

沢山のジュエルシードを手に入れて、母さんを喜ばせる


沢山のジュエルシードが手に入れば、きっと母さんも昔の母さんに戻ってくれる



そして、優しい母さんとアルフと私の三人で

もう一度、普通の家族としての幸せを掴みたい

母さんの笑顔と、アルフの笑顔



「バルディッシュ、セットアップ」

『stand by ready』



そして私も笑顔で、普通の家族としての幸せ「これから」を手に入れる!



















「…………」


時の庭園での戦闘訓練室

そこで、ウルキオラは一人佇んでいた
体中の力を抜いたリラックスした状態でそこに立ち、斬魄刀に手を掛ける


刀を抜いて一閃


空を切り裂く軽い音が僅かに響く
そして持った刀に霊子を収束させる

その霊子は刀に伝い、淡く翠色に発光する



「…………」



更に霊子を収束させる、翠の淡い発光は徐々に研ぎ澄まされた様に光そのものが刀に収束していく


そして、ウルキオラは一気に振り抜く

翠の斬撃が弧を描いて、空を切り裂いた



「……やはり、見様見真似では無理か」



どこか不機嫌そうに、ウルキオラは呟く

今のは、黒崎一護の月牙の模倣だ
斬魄刀に虚閃の要領で霊子を収束させ、斬撃を飛ばせないかと試したのだが



「……直接叩きつける分には問題ないが、飛ばす事は厳しいか……」



なぜこんな事をしようと思ったのか?
それは至って単純だ


ウルキオラにとって、黒崎一護は井上織姫に並ぶ計り知れない『心』の力を持つ存在だ


心を理解するにはどうしたら良いのか?

あの時の黒崎一護を理解するにはどうしたら良いのか?


そう思った時、何となくこの技がウルキオラの頭を過ぎった


月牙天衝、黒崎一護の代名詞とも言える技だ

黒崎一護の技……これを使えば何かが分かるかもしれないと、ウルキオラには似合わない極めて安直な発想で試してみたのだ



「……まあ、こんな事をしても解る筈は無いか……」



斬魄刀を鞘に収める

部屋に戻ろうと、ウルキオラが訓練室から出た
その時だった









……きこえ、ますか?……







耳に響いたその言葉で、ウルキオラは足を止めた。








……私の声が、聞こえますか?……







どうやら空耳の類ではないらしい
その声の存在が妙に気に掛かり、ウルキオラは周囲を探る

そして探査神経を起動させて、周囲の霊子情報を収集する。




(……こっちか……)




大凡の発信源の場所を特定して、ウルキオラは足を進める

廊下を歩き、幾つかドアを潜る

そして、そこに辿り着いた



「……ここか」



一見すると、そこは物置の様な倉庫の様な場所だった

明かりは少なく、視界が悪い

だが、ウルキオラにはそんな事は関係なかった



「ここに居るのは分かっている。さっさと出て来い」



そう言って、突き出した片手に霊子を収束させる

その部屋に翠色の光に包まれて、中のものが照らされる



――妙な真似をしたら、排除する――



そんな意思を込めて、霊子を収束する






……よか……った……






……わたしの、声が……や、っと……とどいた……






そして、ソレは起きた


粒子状の霊子が収束していき、形を成していく


それはやがて人の形となり、衣服を纏い、徐々に鮮明となっていく



「……なんだ、貴様は?」



ウルキオラは尋ね、それは名乗った







……わたしは、リニス……プレシアの、使い魔だった者です……















続く











あとがき
 今回の話を描いている時
「アレ? アルフって単体でジュエルシードの探索って出来たっけ?」
と疑問が湧きましたが、本編では単体でも探索できる仕様でお願いします。

あと、何気にウルキオラのアリシアに対する接し方が変わってきています
さて、今回いきなり「ベルカ式」のカートリッジが出てきましたが、作中でも言っているようにプレシアがデバイスにも組み込んでいないので、まだ登場する予定は無いです

ちなみに、プレシア製のカートリッジはジュエルシード様に改造されてあるので、かなり容量がでかいです。


さて、今回は新たにリニス登場です。
今の段階では言えませんが、実はこの娘……これからとあるイベントを控えております

次回は久しぶりに管理局側も描くかもしれないです。


ですが、作者は明日から東北で一人暮らしをしている兄貴に会いに行って来るので、帰ってくるまで更新は難しいと思います。


それでは、次回に続きます!





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