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No.17010の一覧
[0] リリカルホロウA’s(リリカルなのは×BLEACH)[福岡](2011/08/03 21:47)
[1] 第壱番[福岡](2010/04/07 19:48)
[2] 第弐番[福岡](2010/03/07 06:28)
[3] 第参番(微グロ注意?)[福岡](2010/03/08 22:13)
[4] 第四番[福岡](2010/03/09 22:07)
[5] 第伍番[福岡](2010/03/12 21:23)
[6] 第陸番[福岡](2010/03/15 01:38)
[7] 第漆番(補足説明追加)[福岡](2010/03/17 03:10)
[8] 第捌番(独自解釈あり)[福岡](2010/10/14 17:12)
[9] 第玖番[福岡](2010/03/28 01:48)
[10] 第壱拾番[福岡](2010/03/28 03:18)
[11] 第壱拾壱番[福岡](2010/03/31 01:06)
[12] 第壱拾弐番[福岡](2010/04/02 16:50)
[13] 第壱拾参番[福岡](2010/04/05 16:16)
[14] 第壱拾四番[福岡](2010/04/07 19:47)
[15] 第壱拾伍番[福岡](2010/04/10 18:38)
[16] 第壱拾陸番[福岡](2010/04/13 19:32)
[17] 第壱拾漆番[福岡](2010/04/18 11:07)
[18] 第壱拾捌番[福岡](2010/04/20 18:45)
[19] 第壱拾玖番[福岡](2010/04/25 22:34)
[20] 第弐拾番[福岡](2010/05/23 22:48)
[21] 第弐拾壱番[福岡](2010/04/29 18:46)
[22] 第弐拾弐番[福岡](2010/05/02 08:49)
[23] 第弐拾参番[福岡](2010/05/09 21:30)
[24] 第弐拾四番(加筆修正)[福岡](2010/05/12 14:44)
[25] 第弐拾伍番[福岡](2010/05/20 22:46)
[26] 終番・壱「一つの結末」[福岡](2010/05/19 05:20)
[27] 第弐拾陸番[福岡](2010/05/26 22:27)
[28] 第弐拾漆番[福岡](2010/06/09 16:13)
[29] 第弐拾捌番<無印完結>[福岡](2010/06/09 23:49)
[30] 幕間[福岡](2010/08/25 18:28)
[31] 序章[福岡](2010/08/25 18:30)
[32] 第弐拾玖番(A’s編突入)[福岡](2010/08/26 13:09)
[33] 第参拾番[福岡](2010/10/05 19:42)
[34] 第参拾壱番[福岡](2010/10/21 00:13)
[35] 第参拾弐番[福岡](2010/11/09 23:28)
[36] 第参拾参番[福岡](2010/12/04 06:17)
[37] 第参拾四番[福岡](2010/12/19 20:30)
[38] 第参拾伍番[福岡](2011/01/09 04:31)
[39] 第参拾陸番[福岡](2011/01/14 05:58)
[40] 第参拾漆番[福岡](2011/01/19 20:12)
[41] 第参拾捌番[福岡](2011/01/29 19:24)
[42] 第参拾玖番[福岡](2011/02/07 02:33)
[43] 第四拾番[福岡](2011/02/16 19:23)
[44] 第四拾壱番[福岡](2011/02/24 22:55)
[45] 第四拾弐番[福岡](2011/03/09 22:14)
[46] 第四拾参番[福岡](2011/04/20 01:03)
[47] 第四拾四番[福岡](2011/06/18 12:57)
[48] 第四拾伍番[福岡](2011/07/06 00:09)
[49] 第四拾陸番[福岡](2011/08/03 21:50)
[50] 外伝[福岡](2010/04/01 17:37)
[51] ???(禁書クロスネタ)[福岡](2011/07/10 23:24)
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[17010] 第漆番(補足説明追加)
Name: 福岡◆c7e4a3a9 ID:4ac72a85 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/17 03:10


黒い要塞の周囲を稲妻が走る
否、それは稲妻ではなく、要塞の周囲に展開された防護結界と空間内の魔力素の反応現象


その黒い要塞の名は、時の庭園

フェイトとアルフは、その時の庭園の中にいた




「……遅かったわね」

「ご、ごめんなさい母さん……今日は、報告する事があって来ました」




時の庭園の玉座
そこで金髪の少女と黒い女は対面していた

金髪の少女は、フェイト・テスタロッサ


そして、向かい合う黒い女
黒い長い髪、どこか気品のある黒い衣装に身を包む、整った顔たちにどこか禍々しさを感じる瞳

正に、魔女というべきその風格



その女の名は、プレシア・テスタロッサ
フェイトの母親である



「ええ、分かってるわ。それで、ジュエルシードは幾つ集まったの?」



どこか冷たい刃物の様な響きを纏わせて、プレシアは言う

その問いに対して、フェイトは一瞬体をピクリと震わせて答えた。



「新しく、二つのジュエルシードを見つけました。今は合わせて七個集まりました」



フェイトの報告の聞いて
その女の顔は、激しく歪んだ



「七つ!!? たったの七つですって! よくもまあそれだけの成果でここに来れたものね!」

「ご! ごめんなさい母さん!」



もはや憎悪とも言える嫌悪に満ちた眼光

激しい憤怒と怒気を含めたその罵声
その罵声を聞いて、フェイトは怯えた様に頭を下げた。



「ああもう……我が娘ながら、本当に悪い子
フェイト、貴方は母さんをぬか喜びさせる為にここに来たの?」


「い、いいえ! 違います! ただ、今日は他に母さんに報告する事があって!」



蝕む悪意、蝕む恐怖
自身を蝕む負の感情に耐えつつ、フェイトは搾り出す様に声を上げた


「……報告? 何?」


苛立ちを隠し切れない様に、吐き捨てる様にプレシアは言う

そしてフェイトは母の了承を聞き、ソレを言った




「母さんは、アリシア・テスタロッサという名前に心当たりはありますか?」




その一瞬
フェイトを襲っていたナニかは途切れた




「……母さん?」

「……どこで、その名前を聞いたの?」




目を鷹の様に鋭くして、プレシアは尋ねる
次いで襲う体を締め上げる様なプレッシャー

その吐き気を催す程のプレッシャーに耐えながら、フェイトは再び問いに答えた。



「実は、私と管理局以外にもジュエルシードの探索者がいて……その人に、私が名前を名乗ったら
その人は、私に『アリシア・テスタロッサ』の名前に心当たりはあるか? と言われて……

無いと言ったら、私以外のテスタロッサの姓を持つ身内に、アリシア・テスタロッサの名前に
心当たりが無いか、聞いて来て欲しいと言われて……」


「……そいつの名前は?」



フェイトの言葉を聞いて、プレシアは再びフェイトに尋ねる。



「その人は、ウルキオラ・シファーと名乗りました」

「……ウルキオラ?……ソイツの特徴は?」



プレシアの言葉を聞いて、再びフェイトはその男の外見を思い出しながら答える。



「……雪の様に白い肌と、白い服、頭には白い割れた兜みたいな物を着けた男の人です。
年は大体二十歳くらいで黒髪、目は緑色、外見は細身の人型ですが、多分人間ではないと思います……

……あと、相当な高ランクの魔導師だと思います。
並みの魔法は殆ど通用せず、少なくとも戦闘と砲撃魔法に関してはSランクオーバーだと思います
それと、腰にはカタナという質量兵器を差していました」

「…………」



粗方の報告を聞いて、プレシアは押し黙る
その瞳は目の前のフェイトを見ず、何かを考える様に宙を漂っている



「……あの、母さん?」

「それで、ソイツは他に何と言っていたの?」

「あ、はい。それで、もしアリシア・テスタロッサの名前に心当たりのある人間がいたら、伝えて欲しい事があると……」

「……伝えて欲しい事?」



その言葉を聞いて、プレシアの目に宿る力は一層強くなる

そしてその視線を受け止めながら、フェイトは言った。






「アリシアは、待っている……だそうです」



「……!!!!!!」






その瞬間

プレシアの瞳は、これ以上にない程に見開かれた


その表情に映るのは、明らかな驚愕、明らかな動揺
今までフェイトですら見たこと無い、母の確かな驚愕の表情であった



「……フェイト」

「は、はい!」



名前を呼ばれて、咄嗟に返事をする

そして、プレシアは言葉を繋げた。




「どんな手段を使っても構わないわ、その男をここに連れてきなさい……分かった?」

「あ、は、はい!」

「もう下がっていいわ。そして一刻でも早くその男を見つけ出してここに連れて来なさい」

(……え?)



母の言葉を聞いて、フェイトは拍子抜けに近い感情を抱いた

過去の経験から、この手のやり取りをした後は自分は『お仕置き』をされる筈
しかし、今の母はそんな素振りすらも見せず、退出を促したからだ

そのいつもとのギャップに、一瞬フェイトの理解は追いつかなかった。


「……聞こえなかったの、下がりなさい」

「わ、分かりました……失礼します」


そう言って一礼をして、フェイトは玉座から退室する

玉座には、黒い魔女だけが残された。




「……アリシアは、待っている……」




ポツリと、呟いた一言
しかし、その呟きは誰の耳にも届くことは無かった。












第漆番「白と黒」













「……あのガキ……」


何処と無く不機嫌な響きで、ウルキオラは言葉を吐いた

ここは、先程フェイトとアルフと一悶着があった場所から少し離れた街
ウルキオラはその街の虚空から、街を睨みつけていた


――霊絡――


心の中で呟くと、ウルキオラの周囲にそれは起きる

周囲の小さな粒は集まって、一切れの布の様になってウルキオラの周囲に伸びてくる
その数は一つや二つではない、軽く千はあるだろう


その漂ってきた布を、ウルキオラは一つ一つ識別する



「……違う、違う……これも違う……この付近にはいないか……」



ウルキオラの周囲を漂う布の正体、それは視覚化された霊子

ウルキオラは、その霊子を元にアリシアの霊子を探していた

今は探査神経は使っていない
探査神経は効果範囲の生死を問わない全ての霊体に反応してしまい、よほど特徴がないと特定の霊体を探すのは難しいのである

だが霊絡は効果範囲は探査神経ほどではないが、一つ一つの霊子情報を確実に読み取れる

故にウルキオラは霊絡を用いて、アリシアを探していた



(……あの時の霊圧でこれ以上の遠距離まで飛ばされるのは、まず有り得ん……)



霊絡を発動させながら、ウルキオラは考える



(……考えられるのは、あのガキが自身の力で移動しているのか……もしくは……)



――因果の鎖に、変化が起きたかのどちらか――



「…………」



その仮説を立てて、ウルキオラは再び考える

因果の鎖とは、それ自体が本人の強い意志や感情で出来た霊体だ

そしてその鎖は、鎖の持ち主の意識によってその在り方を変える。


例えば、何らかの理由で肉体と霊体が別れてしまった場合
生物としての防衛本能によって、人間は肉体と霊体を因果の鎖で繋いで二つを引き止める


例えば、何らかの理由で特定の場所に強い思い入れや感情を抱いて死んだ場合
霊体はその意思を忘れないため、その場所を忘れないため、自分とその場所を鎖で繋ぐ


アリシアに、どういう経緯で因果の鎖が出来たかはウルキオラは知らない

アリシアは既に自分の心残りを、鎖の存在自体が希薄になる程に忘れていたからだ


……だが、逆を言えばその心残りを思い出したら?

……思い出しはしなくても、何らかの切っ掛けがあったのだとしたら?


その変化は、鎖に現れる

しかも、あの時はあの蒼い石の未知なる霊圧を至近距離で浴びたのだ

鎖に何らかの影響が出たとしても、決しておかしくはない



(……あのガキの心残りのその原因……その場所にまで鎖に引っ張られたという可能性も大いにありえるな……)



その考察に至り、ウルキオラは考える



(……なら、今の俺がしている事は正に無駄かもしれんな……)



自分で自分の行動を、そう評価する

だが



「まあ、それは最後まで分からないか」



そう呟いて、ウルキオラは霊子の読み取りを続けていた。















そして、日は沈み、夜が来て、朝日は昇り

約束の時間となった



「…………」



ウルキオラは既に約束の場所に来ていた

そして、向かい合う位置には昨日の二人・フェイトとアルフも来ていた



「えーと、昨日の件なんですけど、母さんに聞いたら何か心当たりはあるみたいで……
そしたら、母さんは貴方に会ってみたいらしくて……よろしければ、私と一緒に来てもらいたいんですけど」

「……舐めているのか?」



僅かに、ウルキオラの目に力が篭る

昨日は見逃したが……この二人は、ウルキオラから見れば紛れも無い『敵』なのだ

そして、フェイトが言う母
自分に出向いて来いと言った者も、間違いなく敵に準ずる位置の者


……ならば、そちらから出向いて来い……

……なぜわざわざ自分から、ノコノコと敵地に足を運ぶ真似をしなければならん?……


ゴミの指図を、受ける気はない

そんな意思を込めて、ウルキオラはフェイトを睨む



「……ご、ごめんなさい」

「あ、あたしからも頼むよ! あたし達、訳あって時空管理局のヤツ等に追われてるんだよ
本当は、こうやってアンタに会いに来る事自体が結構危険なんだよ」

「……時空管理局?」



その言葉を聞いて、ウルキオラは僅かに反応する

それは昨日、自分に突っ掛かってきた連中が名乗った名前だ
名前から察するに、この世界の治安を維持する様な組織だろう



「……なるほど、確かに面倒だな」



話し合いの最中に、虫がたかって来たら誰でも邪魔に思うだろう



これは十中八九、罠だろう
しかし自分は黒崎一護ほど愚昧ではない


仕掛けてきたのは、そちらからだ


牙を剥いてきたら、その時は容赦しない



「良いだろう、案内しろ」




















・次元航行艦「アースラ」



「……それで、コルド隊長の容態は?」


ブリッジの艦長席に座りながら、リンディは部下の一人に尋ねる


「出血が酷く魔力の消耗も激しい様ですが、何とか一命は取り留めた様です。
コルド隊の隊員も、重傷者こそはいますが皆命には別状は無い様です。今は容態も安定し、既に本局への移送も終わっています」

「……不幸中の幸いとは、正にこの事ね」


死者はいなかった、その唯一の情報を聞いて少し不安は安らいだ

それは一時の、気休めに過ぎないものだったが……



「……それで、件の人物の情報は?」



リンディがオペレーターの部下に尋ねる


「映像と残された魔力痕をデータとして送りましたが、管理局のデータと一致するものは無い様です。
今はバンクにある過去のデータを当たってくれている様ですが、あまり期待は出来ないとの事です」

「そう……件の人物の戦闘データで、何か分かった事は?」


更に、リンディが尋ねる


「魔力値は計測器のノイズが酷くて、ハッキリした数値は分かりません。
ですがコルド隊長のバリアジャケットを簡単に破壊した事から、ランクは低く見積もってもAAA以上だと思われます。」


そして更に、エイミィが戦闘の映像データを見ながら考察に入る


「それとコルド隊への攻撃は、高速で射出された魔力弾の様なものだと分かっています。
件の人物の体の表面を覆う様に魔力が展開されている事から、件の人物が纏っていた服はバリアジャケットの類だと思われます」

「分かったわ……クロノ執務官」

「はい」


リンディの呼びかけを聞いて、クロノが答える


「一つ質問をするわ、貴方はもしAAランクの空間凍結魔法をまともに被弾した場合……あの様に凍結を砕いて脱出できるかしら?」

「……不可能です」


僅かに考えて、クロノが答える


「凍結する前にプロテクションと拡散砲撃魔法の併用での力技で防げるかもしれませんが……
コルド隊長は殺傷設定で、空間凍結魔法を撃ち……彼は凍結した後、脱出をしています

もしもあれが僕なら、直撃の時点で既になす術なく封じ込められて……氷付けの死体が出来上がっていたでしょう」


クロノの意見を聞いて、リンディは再び考える
コルド隊が抜けた穴
今のアースラの残存戦力

そして、相手の戦力


「……やはり、どう考えても戦力不足は否めないわね。本局への応援要請はどうなっています?」


リンディの問いに、エイミィが答える


「艦長の応援要請『戦闘ランク・Sランクオーバーの魔導師を最低三人、AAAランクを最低十二人』の要請をした所、本局は最短でも三週間以上は掛かるとの事です」

「……三週間、厳しいわね」


そう言って、リンディは溜息を吐く

落胆による溜息ではない。
自分がどれだけ無茶苦茶な要求をしているか、良く分かっているからだ


管理局は万年人員不足に悩まされている
その管理局が、Aランク以上の高ランク魔導師に必要以上の休暇・待機時間を与えるという事は殆どない

それがSランクオーバーなら、尚更だ
一部隊の部隊長クラス、それを最低十五人は纏めてよこせと言っているリンディの方が無茶苦茶なのである


そして、その事もリンディも十分自覚している
寧ろ門前払いをくらわなかった分だけ、本局の対応は良心的とも言えるだろう。



「……でも、これが最低ライン」



しかし、だからと言ってこれ以上の妥協はできない

これはリンディが弾き出した、「確実に任務を遂行できる、最低人員」なのだ

AAランク以下の魔導師を完膚なきまでに破壊したあの白い死神に対抗するには、最低でもAAAランク以上でなければならないのは明白

下手な戦力では消耗するだけ、強大な力を多数集結させる必要がある。



「……厳しいわね、どうも」



部下の前では気弱な姿勢は御法度だが、どうしても溜息が出てしまう

とりあえず今できる事は、戦力を保持しつつジュエルシードを集める事だけ


「現在のジュエルシードの蒐集数は?」

「現時点で七つです」


リンディの問いに、再びエイミィが答える。



「残り、十四個……いえ、彼が持っている分を抜かすと十三個ね。これらを速やかに蒐集する必要があるわね」



そして、リンディは手元のディスプレイにとある魔導師の姿を映す

赤い狼と
金髪のツインテール、赤い瞳、黒いバリアジャケットを纏った少女

自分達以外の、ジュエルシード探索者

あの白い死神の目的がジュエルシードなら、間違いなく彼女も標的にされるだろう

そして、彼女達では間違いなく彼には勝てないだろう



そして、リンディの頭の中で考えは纏まる。



「当面はジュエルシードの探索
及びジュエルシード探索者フェイト・テスタロッサとその使い魔の拘束と保護、この二つを当面の目標とし行動します」
















ウルキオラは薄暗い長い廊下を歩いていた

ウルキオラの前を先行して歩くのは、フェイトとアルフの二人だ
ウルキオラは二人の空間転移魔法で、この『時の庭園』にやってきたのである



「あたしは、ここまでだよ」



とある扉の前まで来ると、アルフはそう言う

どうやら、この扉の向こうにウルキオラを呼び出した人物は待っている様だ



「うん、行ってくるねアルフ」



そう言って、フェイトは扉を開ける
ウルキオラも、それに続いた








「待ちくたびれたわ」







黒い魔女は、その玉座にいた

黒い魔女の視線は、金髪の少女の隣の白い死神に注がれている
まるで値踏みをするかの様なその視線

ウルキオラもその視線に、視線で答える



「…………」


「…………」



睨み合う事、僅か数秒
黒い魔女・プレシアは視線を一旦解いて、フェイトに向けた



「……フェイト、貴方はもう良いわ。下がりなさい、こちらの用件が終わったら呼ぶわ」


「分かりました……」



一瞬、何か言いたそうな表情をしたが
フェイトはその場で一礼して去って行った


フェイトは出て行き
そこにはウルキオラとプレシアに二人きりになった




「……さて、初めまして……かしら?」

「ああ、そうだな」




再び、二人の視線が交差する
まるで冷たい刃を互いに突きつける様な、張り詰めた緊張感が場を支配している




「さて、単刀直入に聞くわ。貴方は、アリシアのなに? いえ、どこでその名前を聞いたの?」




その上からの目線

高圧的な響きを纏う物言い


その魔女の態度を目の前にして、ウルキオラは僅かに目を細めた。




「答える義務はないな」




ピシリと、空間に亀裂が入った気がした




「アリシアは、待っている……それはどういう意味?」

「そういう意味だ」

「……そう」




亀裂の入った空間が、裂けた様な気がした









「少し躾が必要みたいね」









紫電が奔る




「…………」




それは、時間にして一瞬
プレシアは握った杖をウルキオラに向け、砲撃を放った


紫電の砲撃
槍の一撃にも見える破壊の閃光

それはウルキオラの体を目掛けて奔った


しかし



「……!!!」



ウルキオラはそれを掌握する

雷光を掴んで、横に薙ぐ
紫電は床を駆け巡り、壁を走ってやがて消えた


その一連の光景を見て、プレシアは息を呑む



(……非殺傷設定とはいえ、今の一撃を掴むなんてね……しかも、電撃によるダメージはほぼ皆無……)



今の一撃は、Sランクの防護も貫ける威力と貫通力を持っていた筈

しかし、それを素手で掻き消した



(……真っ向からやり合うのは得策じゃないわね……)



プレシアは、己の表情を引き締めながらそう思った。








(……この女……)


ウルキオラは、目の前の人物の評価を改めていた

先の砲撃
その霊圧と霊力から、素手で迎撃しても何の問題もない筈だった



しかし



(……俺の鋼皮を、焦がすとはな……)



迎撃した掌は、黒く焼けていた
勿論表面が焦げただけで、ダメージはゼロだ


しかし、そこではない
ウルキオラが警戒したのは、そこではない


問題は、あの黒崎一護の黒い月牙すらも耐え切った自分の鋼皮が焼けたという事実


恐らく今の砲撃は、総合的な破壊力はあの黒い月牙の半分も満たしていないだろう



しかし、問題はその収束率だ



黒崎一護の虚化状態での一撃は、確かに強力だ。
黒い月牙の破壊力に至っては、自分の斬魄刀を破壊しかけた事もある



しかし黒崎一護の黒い月牙は、敵の質量・体積に対して大き「すぎる」のだ



相手の質量・体積にあまりに不釣合いなその一撃は、そこに込められたエネルギーの大部分は逃げてしまっているのだ

10のエネルギーを使っても、その内の6のエネルギーは逃げてしまっているのだ

それは、ウルキオラの過去の経験からでも明らかである。



(……だが、この女は違う……)



目の前の女の霊圧・霊力は、確かに自分や黒崎一護より下だ

だが、この女はエネルギーの無駄が極端に少ない
エネルギーの扱いが、巧いのだ


少なくとも、今の一撃
5のエネルギーを使って、1のエネルギーも逃がしていないのだ


これを、さっきの黒崎一護とのエネルギーと比べてみよう


確かに、総合的なエネルギーでは黒崎一護の方が上だろう

だが




(……力の収束によって生まれる破壊力は、この女の方が上……)




ゴミではない
油断は出来ない、警戒に値する相手だ

ウルキオラは、その事を実感し



(……ん、近くに霊体反応?……この反応は……)



ソレに、気がついた。













「先の非礼をお詫びするわ。ようこそ我が『時の庭園』へ、私はこの庭園の主のプレシア・テスタロッサよ」

「……俺はウルキオラ、ウルキオラ・シファーだ」



今、目の前の相手を敵にするのは得策じゃない
奇しくも同じ考えに至った二人は、順に名乗った



「……貴方に、もう一度お尋ねするわ。どうして貴方は『アリシア・テスタロッサ』の名前を知っているのかしら?
そして、『アリシアは待っている』とはどういう意味かしら?」



先程の攻撃的な姿勢と表情は消え、柔らかな物腰でどこか控え目な態度で尋ねる



「……とりあえず、順番に答えてやろう。アリシアを知っているのは直に会って知り合ったからだ」

「……直に会った?」



そのウルキオラの言葉に、プレシアの眉が動く

アリシアとの知り合いなら、自分とも過去に会っている可能性が高い
特にこの男の容姿は特徴的だ

過去に一度でも会ったのなら、そう簡単には忘れはしないだろう


そして、ウルキオラは続けて言う。



「そして、『アリシアは待っている』と言ったのは本人がそう言っていたからだ」

「……どういう意味かしら?」



プレシアの顔に浮かぶ疑問の色が、更に濃い物となる

そして、ウルキオラは何を思ったのか
プレシアから、視線を外す


プレシアはその視線を追うが、『そこ』には『何も』ない



「……やはり、思ったとおりか」

「……どういう事?」



イマイチ、相手の真意が見えない
そう思って、プレシアは僅かに語尾を強くする

ウルキオラは、ゆっくりとプレシアに歩み寄った



「イチイチ説明するのは面倒だ」



ウルキオラはプレシアの前に立つ

そして









「後は、本人から直接聞け」









驚愕の言葉


「……え?」


その言葉で、プレシアはこれ以上にない驚愕の表情を浮かべ



ウルキオラの掌が、プレシアの胸を貫いた



「……っ!!!」


「魂魄剥離」



プレシアの顔が、再び驚愕に染まる
そして、それは起きた

ウルキオラの掌は、プレシアの体に傷一つつけていなかった


そして、ウルキオラの掌に押される様に

プレシアの体から、まるで脱皮する様にもう一人の『プレシア』が出てきた


その胸には、一本の鎖
その鎖は、二人のプレシアを繋ぐように生えていた


魂魄剥離
肉体を持った魂魄を剥離して捕食するための、虚の能力である



「……な、なに……何が起きたの!? どうして、私の体がそこに!!?」



目の前に転がる自分自身を見て、プレシアは僅かに混乱するが



「もう隠れる意味はない、出て来い」



そんなプレシアを尻目に、ウルキオラはそう言う



「ちょっと! どういう事よ! なんで、なんで私の体がそこに!!」



噛み付くように、顔を歪めてプレシアはウルキオラに歩み寄る
事と次第によっては、タダじゃおかない


そんな表情を浮べて、ウルキオラに掴みかかる

――筈だった




















「ウルキオラー、もうそっちに行っても大丈夫?」




















――ドクンと







……………………………………………………………………………………………………え?









一瞬


心臓が跳ね上がった気がした






…………イマの、コエは?…………





世界が、停止した様な気がした



時が、凍った様な気がした



声が、出ない


視界が定まらない


意識がグラグラ揺れていて、まともに脳が働かない







「……ぁ、あ……あ……ぁっぁぁ……」







だけど、分かった




本能で分かった




直感で分かった




ずっと、会いたかった




ずっと、忘れなかった




ずっと、愛していた








「……アリ……シ、ア……」








自分の、プレシア・テスタロッサの最も大切な存在が


最も愛しい存在、アリシア・テスタロッサが



目の前に、立っていた。
















続く








あとがき
 プレシア登場→最初からクライマックスな回でした!
プレシアはウルキオラと違って行動理念と目標がハッキリしているので、結構書き易かったです
 
 あと、補足としましてはプレシアは一護ほど強くないです。
ただ、力の使い方は一護よりも上、という感じです。実際、月牙天衝ってもの凄いエネルギーに無駄に使っている気がするんですよね


追加補足
 一護の月牙天衝の考察で、一部の方から「月牙天衝って、たしか超高密度の霊子で斬撃を飛ばすから無駄がないんじゃ?」という意見を貰いました。

 これに関して、補足させて貰います。一護の月牙って大きい黒いエネルギー状の斬撃が飛んでいくじゃないですか?
アレってアニメや漫画だと、敵に当たった部分以外は全部そのまま進んで行って敵に殆ど当たっていないですよね?

本編で言っている、一護が無駄にしてしまっているエネルギーとは、その敵に当たらなかった分のエネルギーの事です。



 さて次回、ついにやってきました(作者の)最大の修羅場が!!!
もしかしたら、次の更新は遅れるかもしれません

もしもこんな作者を応援してくれる方がいらっしゃるのなら、感想欄に


「プレシアさん、マジぱねえっす!!」


と書き込んで下さい!…………スイマセン、冗談です。

それでは次回に続きます!!



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